過呼吸症候群(過換気症候群)は、強い不安・恐怖・緊張などの精神的ストレスで過呼吸発作が誘発されることが知られています。
その中でも、特に過呼吸が誘発されやすくなる状況として「泣くこと」が挙げられます。不安なことや怖いことがあって、大泣きをしてしまい、そこから過呼吸発作に至ってしまうというケースは少なくありません。
なぜ泣くことで過呼吸発作が更に誘発されてしまうのでしょうか。また、泣きそうになった時に過呼吸を抑える方法などはあるのでしょうか。
今日は泣くことと過呼吸発作の関係について考えてみましょう。
1.泣くと呼吸中枢が刺激される事が原因
泣くと過呼吸発作が起こりやすい理由は2つあります。
過呼吸発作が生じやすい状況というのは、主に精神的ストレスが高まった時です。具体的には不安や緊張・恐怖などが急に襲ってきた時に起こりやすいと考えられます。
泣いている時、気分が安定した状態の人はいないでしょう。泣くのは、それが嬉し泣きにせよ悲しみの涙にせよ、感情が大きく揺れ動いている時です。つまり泣いている状態というのは、ほぼ間違いなく感情が不安定になっており精神的ストレスがかかっている状態だと言えます。
元々泣いているという状態は、精神的ストレスがかかっている状態と共通するため、過呼吸が生じやすいというのが理由の一つです。
そしてもう一つの理由は、更に泣くと、呼吸が荒くなり呼吸中枢への刺激が高まるためです。泣くと呼吸が荒くなることはみなさんも経験があると思いますが、この時には呼吸中枢が刺激されており呼吸器系の自律神経が不安定になりやすい状態となっているのです。
これらの理由から、泣く時に過呼吸発作が誘発されやすいと考えられます。
2.泣いてしまった時に過呼吸発作を起こさないためには
過呼吸発作は、繰り返されやすいことが知られています。一度過呼吸を経験すると、その後も精神的ストレスが生じた時に過呼吸が生じやすくなってしまいます。
過呼吸発作が繰り返されてしまい、クセのようになってしまうと、精神的ストレスがかかって泣きそうな時に「やばい、このままだと過呼吸発作になる」という感覚的に分かる方もいらっしゃいます。
そのような時、過呼吸発作を起こさないようにする工夫はどんなものがあるでしょうか。
Ⅰ.発作止めの抗不安薬をもらっておく
過呼吸発作は、精神的ストレスによって不安・恐怖・緊張が高まると誘発されます。この時にもし、不安を和らげることが出来れば発作が生じるのを防ぐことが出来ます。
発作が起きそうになった時、即効性のある発作止めの抗不安薬を服用すると、その後の不安の増悪を抑えることができますので過呼吸発作への進行を食い止めることが出来ます。
そのため、過呼吸発作を何度も繰り返してしまう場合は、あらかじめ主治医と相談して発作止めの抗不安薬を処方してもらうと良いでしょう。
発作止めは、実際に発作を抑えてくれるという効果以外にも、持っているだけで安心できるという効果も期待できます。不安が襲ってきても、「いざとなったら発作止めを持ってるから大丈夫だ」と思えるため、持っているだけでも気分が落ち着き、過呼吸発作を起こしにくくしてくれるのです。
Ⅱ.人と話す
過呼吸発作が起きそうになった時、それを抑える方法として有効なのが「話すこと」です。周囲に人がいる場合は、なるべく話す事を意識しましょう。
これは話すことで会話に気持ちが向くため、不安・恐怖・緊張から気持ちをそらせるという効果もあるのですが、一番重要な効果はそこではありません。
話すことは呼吸中枢への刺激を弱め、それだけで呼吸の安定化につながるのです。よく思い返してみると私たちは話している時って呼吸はしていません。呼吸を中断しないと会話は出来ず、会話と呼吸は絶対に両立できないのです。つまり会話をしていると、その間は呼吸をしないため、過呼吸に進行しにくいということです。
Ⅲ.大泣きしない
悲しい時に泣くことは、悪いことではありません。涙を流すことは気分を発散させ、その後の気分を安定させる作用があると言われています。
しかし過呼吸発作の誘発を考えると、声を荒げて大泣きはしない方が良いでしょう。大泣きして呼吸が荒くなれば、それだけ呼吸中枢が刺激され、過呼吸発作も誘発されやすくなってしまいます。
泣いている時は、なかなか感情をコントロールするのが難しいのですが、出来る範囲内で静かにひっそりと泣くようにすると過呼吸発作への進行を抑えられます。
Ⅳ.ゆっくりと浅く呼吸する
呼吸が早くなると、過呼吸へ進行しやすくなります。そのため、できるだけゆっくりと呼吸するようにしましょう。
息を吸った時に、一回軽く止めることが出来ればなお良いです。
過呼吸になりそうな時は、深く呼吸をする必要はありません。浅くでいいので、ゆっくり呼吸してください。過呼吸発作は呼吸が出来ない感覚に襲われますが、実際はちゃんと呼吸が出来ており、体内の酸素濃度は十分に足りています。むしろ多すぎるくらいで、反対に二酸化炭素が減りすぎています。
そのため、呼吸浅くするように意識した方が、酸素・二酸化炭素濃度は適正な値になります。