心療内科と精神科はどう違うのか?

精神的な問題が生じて病院の受診を考える時、一般的には精神科や心療内科を受診すると思います。

精神科と心療内科って同じように扱われることの多い科ですが、これらって実際全く同じ科なのでしょうか。それとも、こういった症状の時には精神科を受診した方が良くて、こういう時は心療内科を受診した方がいい、などの違いがあるのでしょうか。

今日は精神科と心療内科の違いについてお話させて頂きます。

1.現状はほぼ同じと考えて良い

精神科と心療内科は、厳密に言えば扱う疾患に違いがあります。そのため、正確な回答としては「こういう時は精神科で、こういう時は心療内科ですよ。」と症状によって受診する科を分けることが可能です。

しかし現状を見てみると、両科ともほぼ同じ疾患を扱っているのが実情です。この現実を踏まえれば「現状としては両者はほぼ同じような科」と考えても差し支えはないでしょう。

そのため「自分は精神科と心療内科、どっちを受診すべきか迷っている」と悩んでいる方がいれば、「厳密に言えば両科に違いはあるけども、現状はほぼ同じだからどちらを受診しても大丈夫だよ」 というものが実情を踏まえた回答となります。

精神科も心療内科も、どちらも「こころ」が原因である疾患を扱うという共通点があります。

簡単に言えば、こころが原因でこころの症状が生じている場合は精神科で、こころが原因で身体の症状を生じている場合は心療内科になります。

しかし、どちらも同じく「こころ」が原因の疾患であるため、精神科医も心療内科領域の疾患に遭遇する頻度は多いですし、心療内科医も精神科領域の疾患に遭遇する頻度は多く、どちらの医師も自然とお互いの領域の疾患を診る能力が付いています。そのため、どちらの科の医師の診療を受けたとしても、一定の水準の医療は享受することができます。

また、病院は自分の診療科を自由に標榜して良い事になっているため、精神科の病院が心療内科も標榜したり、反対に心療内科の病院が精神科も標榜していることもよくあります。

「精神科」は一昔前までは偏見が非常に強く、患者さんが訪れにくかったため、敷居を下げるために「心療内科」とも標榜していた精神科は少なくありませんでした。   また、心療内科側も、精神疾患も対象とした方が患者さんを集めやすいため、精神科も標榜することもよくありました。

そのため、ざっくりと言ってしまえば現状は両者ともほとんど同じようなもの、というのが実態なのです。

2.厳密には精神科はどんな疾患を扱うのか

厳密に言えば、精神科というのは精神疾患を扱う科になります。

うつ病、不安障害、統合失調症などが代表的ですが、「こころの病気」を扱うのが精神科で、診察する医師は「精神科医」になります。ちなみに厚生労働省によると平成20年度における精神科医数は13,534人となっています。

精神科が扱う精神疾患というのは、こころが主な原因で生じ、その症状もこころ(精神症状)にあります。

例えば精神疾患の代表であるうつ病は、落ち込みや無気力、睡眠不足、集中力低下などの精神的な症状が生じます。統合失調症を見ても、幻覚や妄想、無為自閉などの精神的な症状が生じます。

精神的な症状は、身体の症状と違って実体のないものであるため、画像検査や採血などの検査値で確認することができないという特徴があります。こういった症状が生じる場合は、厳密には精神科が専門になります。

3.厳密には心療内科はどんな疾患を扱うのか

厳密に言えば、心療内科というのは心身症に代表される、「こころに原因がある身体の病気」を扱い、診察する医師は「心療内科医」になります。

ちなみに心身症とは、次のような疾患を言います。

心身症とは、身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的な因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態を言う。ただし、神経症やうつ病など、他の精神障害に伴う身体症状は除外する。

(日本心身医学会による心身症の定義)

定義なのでとても難しく書かれていますが、これは簡単に言うと「ストレスで生じた身体の病気が心身症ですよ」という事です。ちなみに厚生労働省によると平成20年度における心療内科医数は883人となっています。精神科医と比べると1/10以下と、非常に少ないのです。

心療内科で扱う疾患は、原因はこころにありますが、扱うのはあくまでも身体の症状になります。そのため心療内科は、精神科ではなく「内科」に属しているのです。

心身症に該当する疾患は非常に多岐に渡りますが、

・ ストレスで生じた胃潰瘍
・ ストレスで生じた心筋梗塞
・ ストレスで生じた喘息
・ストレスで生じた高血圧
・ストレスで生じた下痢や腹痛、便秘

などなど、こころが原因で生じた身体の病気は全て該当します。

これらの原因は「ストレス」という精神的なものであるため、一見精神科領域の疾患にも見えます、しかし、実際に表れている症状は、胃潰瘍による胃の痛みだったり、血圧上昇による心筋梗塞だったりと身体疾患になるため、心療内科という内科領域の疾患になるのです。

こころが原因であっても、実体のある身体疾患であり、画像検査や採血などの検査値で異常を確認できるものも多く、これらは心療内科医が専門になります。

4.精神科と心療内科の違い

精神科は純粋な「こころ(精神)の病気」を扱う科目になります。

心療内科は、内科に属する科であるため、こころが原因ではあるけども「身体の病気」を扱う科目になります。

これが両者の大きな違いになります。そのため、純粋な精神科医というのは「精神の専門家」になり、純粋な心療内科医というのは「内科(身体疾患)の専門家」になります。

しかし、現状ではうつ病などの精神科で扱う疾患でも、胃痛や頭痛、腰痛などの身体症状が出ることもあるし、心身症でも身体症状が軽い場合もあります。こころへのダメージが大きければ、こころの症状と身体の症状の両方が現れてしまうことだってあります。

そのため、両者の境界というものを明確に区切ることは困難で、お互いある程度オーバーラップしているところはあります。

精神科と心療内科のどちらを受診するか迷っている場合、「現状はどちらも大きな違いがないから、どちらを受診しても大丈夫」というのが答えになると先ほどお話しました。しかし、もし定義通りの正確な回答をするのであれば、こころが原因であって「身体症状が主」であれば心療内科、「精神症状が主」であれば精神科というのが答えになります。

しかし、実際は精神科と心療内科の両方を標榜している病院が圧倒的に多いため、どちらを受診するかで悩むことはそこまで多くはありません。