みなさんは、大うつ病という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
大うつ病、正式には大うつ病性障害と言いますが、これはれっきとした医学用語です。
うつ病と大うつ病は何が違うのでしょうか。
「大」ってついてるくらいだし、なんかうつ病の重い状態を表しているような感じもしますね。実際、診断書に「大うつ病性障害」と記載され、「先生、この大うつ病ってなんですか?私のうつ病はそんなにひどいんですか!?」と患者さんからびっくりされてしまうこともあります。
時々、このような質問を頂きますので今日は「大うつ病(大うつ病性障害)」の意味をお話したいと思います。
1.大うつ病は、普通のうつ病のこと
大うつ病(大うつ病性障害)と聞くと、「すごく重症なうつ病」をイメージしてしまう方は多いようです。「大」がついてますからね。
でも、実は「大うつ病」というのは、普通の「うつ病」のことです。「うつ病=大うつ病性障害」であり、全く同じ意味になります。
うつ病は、大うつ病性障害とも呼ばれることがあり、どちらも正式な名称です。
ですので、診断書に「大うつ病性障害と診断する」と書かれていたとしても、驚かないでください。それは「うつ病と診断する」と全く同じ意味です。
ちなみにうつ病が重い場合は、大うつ病ではなく「重症うつ病」と表現します。
2.なぜ大うつ病と言うのか
ではなぜ、単にうつ病と言わず、わざわざ「大」をつけて大うつ病と言うのでしょうか。
実はこれ、医学英語を和訳したときについてしまったようです。
うつ病は、英語では何と言うでしょうか?
一般的には「Depression」ですが、アメリカ精神医学会が発刊しているDSM-Ⅴという診断基準には、正式名称として「Major Depressive Disorder」と記載されています。この「Major」を和訳するとき、かつての偉い日本の先生方が「大」と訳したため、「大うつ病性障害」となったのです。
確かにMajor Depressive Disorderを和訳するのは、難しいですね。「主うつ病」とか「重要うつ病」じゃ変です。
やはり「大うつ病」という訳が一番良さそうです。
ちなみにうつ病を単に「Depressive Dirorder」と言わずにわざわざMajorをつけているということは、「Minor Depressive Disorder」もあるということなのでしょうか。
実はDSM-Ⅳまでは「Minor Depressive Disorder」という用語があり、これは小うつ病(小うつ病性障害)訳されていました。小うつ病とは、うつ病の診断基準の症状がいくつかあるんだけど、診断基準を満たすほどには無い状態を指します。
しかしDSM-Ⅴでは、「Minor Depressive Disorder」の用語は消えています。
(代わりに「他の特定される抑うつ症状-症状不足の抑うつエピソード」という病名がもうけられています)
3.まとめ
つまり、まとめると、
大うつ病というのは、普通のうつ病のこと
です。
ただし、最近は「うつ病」という言葉が一般に浸透してきましたので、「大うつ病(大うつ病性障害)」という用語を臨床現場で使う事はほとんどありません。精神科界の学会や研究発表などで目にするくらいでしょうか。
診断書には、「大うつ病性障害」と書かれる先生はいらっしゃいます。もちろん、「うつ病」と書いても問題ありません。どちらも同じ意味です。
というわけで、大うつ病は「大きいうつ病」とか「重いうつ病」という意味ではありませんので、びっくりしないでくださいね。