全てのおくすりには「半減期」いうものがあり、添付文書などに記載されています。
半減期は「薬の作用時間」と大きく関係しており、くすりが効いている時間を知る目安として使われます。
簡単に言うと
「半減期の短いお薬は作用時間も短い」
「半減期の長いお薬は作用時間も長い」
ということです。
ここでは、レスリンの半減期の紹介、半減期から言えるレスリンの特徴をお話します。また、「半減期」の具体的に意味するところについても少し詳しくみていきましょう。
1.レスリンの半減期
レスリンの半減期は約6~7時間と言われています。主な抗うつ剤の半減期を紹介します。
抗うつ剤 | 半減期(時間) | 抗うつ剤 | 半減期(時間) |
---|---|---|---|
(Nassa)リフレックス/レメロン | 32時間 | (SSRI)パキシル | 14時間 |
(四環系)ルジオミール | 46時間 | (SSRI)ルボックス/デプロメール | 8.9時間 |
(四環系)テトラミド | 18時間 | (SSRI)ジェイゾロフト | 22-24時間 |
デジレル | 6-7時間 | (SSRI)レクサプロ | 24.6ー27.7時間 |
(三環系)トフラニール | 9-20時間 | (SNRI)トレドミン | 8.2時間 |
(三環系)トリプタノール | 31±13時間 | (SNRI)サインバルタ | 10.6時間 |
(三環系)アナフラニール | 21時間 | スルピリド | 8時間 |
(三環系)ノリトレン | 26.7±8.5時間 | ||
(三環系)アモキサン | 8時間 |
レスリンの半減期は、抗うつ剤の中では短いことが分かります。そのため、1日を通して効果を持続させたいなら、1日に複数回服薬しないといけません。
半減期が分かると、そのおくすりの特徴がいくつか見えてきます。例えば、レスリンの半減期が6-7時間ということは、次のように言えます。
- 1回内服すると6-7時間くらい効果が続く
- 血中濃度を安定させるには、6-7時間に1回の間隔で内服するのが良い
- 内服をしっかり続ければ、30ー35時間後くらいで血中濃度が安定する
- 内服後、6-7時間経ってもお薬が再投与されないと離脱症状がおきやすい
1回内服すると6-7時間くらい効果が続く
レスリンは半減期がおおよそ6-7時間、
つまり血中濃度が半分になるまでに6-7時間ほどかかるおくすりです。
個人差がありますが、血中濃度が半分くらいまで落ちると薬の効果はだいぶ消失します。
そのため、約6-7時間で効果がかなり少なくなると言えます。
正確には、内服してから血中濃度が最大になるまでに3-4時間かかり、
そこから6-7時間後に血中濃度が半分になるため、内服直後から考えるともう少し長くなります。
しかし、そこまで細かいことを考え出すと、体質によっても違うし数値にできなくなってしまいますので、
単純に「半減期=おおよその作用時間」と考えるのがよいでしょう。
約6-7時間に1回の間隔で内服するのが良い
6-7時間で効果が切れてしまうのであれば、6-7時間置きに内服すれば
血中濃度が安定しそうです。
現実的には「きっちり6時間おきに内服!」なんてできる人はいないでしょうから、
1日3回程度に分けて内服するのが良いでしょう。
添付文書では、1日1~数回に分けて投与すること、となっています。
実臨床では、レスリンは睡眠の質を改善する作用に優れるため、
抗うつ剤として1日中効果を持続させるよりは
睡眠補助薬として夜だけ使われることが多いです。
この場合は、1日中効果を持続させる必要はありませんから、寝る前に一回だけ服用すればOKです。
もし「1日中効果を安定して持続させたい」のであれば、1日3-4回に分けて内服するのがよい、という事です。
内服を続ければ、30ー35時間後くらいで血中濃度が安定する
おくすりが定常状態(≒血中濃度が安定してしっかり効果が出る状態)になるには、
半減期の5~6倍の時間かかると言われています。
そのため、単純計算で、6時間×5=30時間、7時間×6=35時間ですから、
レスリンを飲み始めてから、定常状態に達するまでには1-2日ほどかかるということが分かります。
添付文書にも、1日3回内服した場合、定常状態に達するまでには「2日」かかると書かれています。
内服後、6-7時間経ってもお薬が再投与されないと離脱症状がおきやすい
レスリンを飲んでから、6-7日前後経過して、しびれやめまい、耳鳴りなどの症状が現れた場合は、
離脱症状の可能性があります。
ただしレスリンは離脱症状をほとんど起こさないため、
実際には起こる頻度はそこまで多くありません。
このように半減期から、様々な情報を得ることができるのです。
あくまで半減期から理論的に予測できる事ですから、現実とは異なることもありますが、
おくすりに対する情報は少しでも多いに越したことはありません。
私達は、半減期からこのような事を考えて処方するおくすりを決めていきます。
2.半減期とは?
半減期というのは「お薬の血中濃度が半分になるまでに要する時間」のことです。
薬の本には、全ての薬の半減期が記載されており、私たち医師も薬を処方する際は、
「半減期がどれくらいのお薬なのか」ということを必ず意識します。
半減期が分かれば、そのおくすりの様々な特徴が見えてくるからです。
具体的に言うと、
- 何時間くらい効果が続くお薬なのか
- 服薬間隔がどれくらいがベストなお薬なのか
- 何日くらい飲み続ければ、血中濃度が安定するのか
- 離脱症状が起きやすいお薬なのか
といったお薬の情報がある程度見えてきます。
例を一つ出します。
このような薬物動態を示すお薬があるとします。
お薬を内服すると、このグラフのようにまず血中濃度がグンと上がり、
それから徐々に落ちていきます。
このお薬は、投与10時間後の血中濃度は「10」ですが、
投与20時間後には血中濃度は半分の「5」に下がっています。
血中濃度が半分になるのに要する時間は「10時間」ですので、
このお薬の半減期は「10時間」ということになります。
そして半減期が10時間のお薬だということは、
このお薬に関して次のように言う事ができます。
- 10時間くらい効果が続くお薬である
- 10時間に1回の間隔で内服するのが良い
- 内服を続ければ、50ー60時間後くらいに血中濃度が安定する
- 内服後、10時間経ってもお薬が再投与されないと離脱症状がおきやすい
詳しく説明していきます。
10時間くらい効果が続くお薬である
半減期が10時間ということは、内服して10時間くらい経つと効果がなくなるということ。
半減期は、薬効が消失する時間とある程度一致します。
ただし半減期はあくまでも目安で、個人差はありますので気を付けてください。
お薬を分解する力が強い人もいれば弱い人もいます。
人によって誤差があります。
特に肝臓が悪い方は、お薬を分解する力が弱まっているため、
一般的に半減期よりも長く時間お薬が身体に残ってしまいます。
10時間に1回の間隔で内服するのが良い
薬の効果が消失しないようにするには、約10時間の間隔で内服を続けるのが
よい事が分かります。
正確に10時間間隔で、というのは難しいでしょうから
1日2回朝夕食後とかが現実的な内服間隔になるでしょう。
この間隔で内服を続ければ、理想的な効果が得られやすいということです。
内服を続ければ、50ー60時間後くらいに血中濃度が安定する
血中濃度が一定になるようペースで5-6回の反復投与を続けると、血中濃度は安定すると言われています。
この血中濃度が安定した状態を「定常状態」と呼びます。
半減期10時間のこの薬を5-6回飲み続けると定常状態に達しますから、
このお薬の服薬を始めた場合、50-60時間後に定常状態に達することが分かります。
飲み始めて2-3日経つと十分な効果が出る薬だということが分かります。
内服後、10時間経ってもお薬が再投与されないと離脱症状がおきやすい
お薬の血中濃度が最大値の半分以下になると離脱症状が出やすくなると言われています。
このお薬でいうと、10時間後に再度お薬を投与して血中濃度を再上昇させないと、
離脱症状が出やすいということです
半減期が来る頃にお薬を再投与することが理想です。
このように半減期が分かるだけで、そのお薬の特徴がたくさん見えてくるのです。
半減期を意識しておくすりを選び、服薬方法を選ぶということはとても大切なことなのです。