ゼストロミンの全て 【医師が教える睡眠薬の全て】

ゼストロミンは東和薬品が発売していた睡眠薬です。レンドルミン(一般名ブロチゾラム)のジェネリックで、効果・効能はレンドルミンと全く同じです。

最近は、多くのジェネリック薬の台頭によって現場が混乱しているため、ジェネリック薬は「一般名+社名」という名称に統一する流れがあります。

東和薬品もこれに従い、平成26年4月から「ゼストロミン」という名称は使われなくなりました。レンドルミンの一般名は「ブロチゾラム」なので、ゼストロミンの現在の名称はブロチゾラム錠0.25mg「トーワ」です。

ここではブロチゾラム錠0.25mg「トーワ」(ゼストロミン)の効果効能、副作用についてお話します。

なお、ゼストロミンはレンドルミンと同じですので、詳しく知りたい方はレンドルミンの記事もご覧下さい。

レンドルミンの全記事はこちらです

1.ゼストロミンの効果・作用時間

現在、「ベンゾジアゼピン系」「非ベンゾジアゼピン系」の2種類の睡眠薬が
睡眠障害の治療の中心となっており、ゼストロミンは「ベンゾジアゼピン系」に属します。

これらのお薬はɤアミノ酪酸(通称GABA)の作用を強めることで、鎮静・催眠作用を発揮します。

睡眠薬は作用時間で大きく4種類に分類されています。

  • 超短時間型・・・半減期が2-4時間
  • 短時間型 ・・・半減期が6-10時間
  • 中時間型 ・・・半減期が12-24時間
  • 長時間型 ・・・半減期が24時間以上

半減期というのは、その薬の血中濃度が半分になるまでに要する時間の事で、
薬の作用時間の目安としてよく用いられます。あくまでも目安ですが、
「半減期」=「おおよそのお薬の作用時間」と考えて下さい。

ゼストロミンは「短時間型」に分類されます。
服薬してから約1.5時間で血中濃度が最高値になり、半減期は約7時間と言われています。

健康成人の平均睡眠時間は6-8時間程度と言われていますから、7時間前後の作用時間がある
ゼストロミンは、使い勝手のよい睡眠薬であることが分かります。

強さはというと「普通」くらいです。

睡眠薬を処方する際、「これって強い薬ですか?」とよく聞かれますが、
実は「ベンゾジアゼピン系」「非ベンゾジアゼピン系」睡眠薬はどれも強さに大きな差はありません。
どれも量を多くすれば強くなるし、量を減らせば弱くなります。

2.ゼストロミンの副作用

頻度がものすごく少ないものまで挙げるとキリがありませんので、
臨床で比較的よく見られる副作用を中心に紹介します。

当然ですが、レンドルミンの副作用と全く同じです。

Ⅰ.眠気

睡眠薬なので当たり前ですが「眠気」が生じ、これが副作用になり得ます。

夜に睡眠薬を飲んで、眠くなるのはゼストロミンの「効果」ですから問題ないのですが、
「朝、起きる時間になってもまだ眠い」「日中眠くて仕事に集中できない」
となるとこれは問題で、副作用と判断されます。

日中まで睡眠薬の効果が残ってしまう事を「持ち越し効果(hang over)」と呼びます。
眠気だけでなく、だるさや倦怠感、ふらつき、集中力低下なども生じます。

ゼストロミンは半減期(薬が効く時間の目安)が7時間と言われてますので、
6-8時間ほど睡眠をとっていれば、持ち越し効果が出てしまう事は多くはありません。

しかし、4時間ほどしか眠らない人だったり、
薬の代謝(分解)が遅い体質の人だったりすると、ゼストロミンが持ち越してしまう事があります。

この場合の対処法は、半減期が短い睡眠薬に変えることです。

半減期が4時間程度のアモバン、5時間程度のルネスタ、6時間程度のデパス
などが候補に挙がるでしょう。

もし、ゼストロミンが合っているからあまり薬の種類を変えたくない、という場合は、
内服する量を減らしてみるという方法もあります。

例えばゼストロミン0.25mgを内服しているのであれば、半分の0.125mgにするのです。
効果も弱くなってしまいますが、量を減らすと一般的に半減期は多少短くなります。

Ⅱ.耐性・依存性形成

ゼストロミンのみならず、多くの睡眠薬に言える事ですが、長期的に見ると
「耐性」「依存性」が睡眠薬の一番の問題です。

耐性というのは、身体が徐々に薬に慣れてしまう事。
最初は1錠飲めばぐっすり眠れていたのに、だんだんと身体が慣れてしまい、1錠飲んでも
眠れなくなってしまう、という状態です。

依存性というのは、次第にその物質なしではいられなくなる状態をいいます。

アルコールにも強い耐性と依存性があるので、アルコールでイメージすると分かりやすいと思います。

アルコールを常用していると、次第に最初に飲んでいた程度の量では酔えなくなるため、
次第に飲酒量が増えていきます。これは耐性が形成されているという事です。

また、飲酒量が多くなると、飲酒せずにはいられなくなり、常にアルコールを求めるようになります。
これは依存性が形成されているという事です。

ゼストロミンをはじめとした睡眠薬には耐性と依存性があります。
しかし、アルコールと比べるとはるかに軽度であり、医師の指示通りに内服していれば
問題になる事はほとんどありません。

たまに「睡眠薬は依存が怖いから」といって寝酒をして眠ろうとしている方がいますが、
これは全くおかしな話だという事が分かります。
だって、睡眠薬よりアルコールの方が数倍依存性は高いのですから。

睡眠薬で耐性・依存を形成しないためには、まず「必ず医師の指示通りに服用する」ことが鉄則です。
アルコールも睡眠薬も、量が多ければ多いほど耐性・依存性が早く形成される事が分かっています。

医師は、耐性・依存性を起こさないような量を考えながら処方しています。
それを勝手に倍の量飲んだりしてしまうと、急速に耐性・依存性が形成されてしまいます。

アルコールとの併用も危険です。
アルコールと睡眠薬を一緒に使うと、これも耐性・依存性の急速形成の原因になると言われています。

また、「漫然と飲み続けない」ことも大切です。
睡眠薬はずっと飲み続けるものではなく、不眠の原因が解消されるまでの「一時的な」ものです。

時々、「睡眠薬の量を減らせないか」と検討する必要があり、必要があるかないか分からないのに
漫然と長期間内服を続けてはいけません。

服薬期間が長期化すればするほど、耐性・依存形成のリスクが上がります。

Ⅲ.もうろう状態、一過性前向性健忘

ゼストロミンの内服後、自分の記憶はないのに、歩いてたり人と話してたりする事があります。
これは超短時間型の睡眠薬(ハルシオンなど)で多く、ゼストロミンで生じることは稀ですが、
可能性は0ではありません。

睡眠薬はまれに中途半端な覚醒状態にしてしまう事があり、この中途半端な覚醒状態が
「もうろう状態」「一過性前向性健忘」の正体です。

一般的には急激に効くお薬(超短時間型)に多く、
また多くの量の睡眠薬を内服しているケースで起こりやすいようです。

万が一、ゼストロミンでこれらの症状が起こってしまったら、量を減らすか、
作用時間の長い睡眠薬へ切り替える事が対応策となります。

3.他剤との比較

ゼストロミンと他剤の半減期(≒作用時間)の比較を紹介します。
セストロミンはレンドルミンのジェネリックですので、「レンドルミン=ゼストロミン」と考えてご覧下さい。

睡眠薬最高濃度到達時間作用時間(半減期)
ハルシオン1.2時間2.9時間
マイスリー0.7-0.9時間1.78-2.30時間
アモバン0.75-1.17時間3.66-3.94時間
ルネスタ0.8-1.5時間4.83-5.16時間
レンドルミン約1.5時間約7時間
リスミー3時間7.9-13.1時間
デパス約3時間約6時間
サイレース/ロヒプノール1.0-1.6時間約7時間
ロラメット/エバミール1-2時間約10時間
ユーロジン約5時間約24時間
ネルボン/ベンザリン1.6±1.2時間27.1±6.1時間
ドラール3.42±1.63時間36.60±7.26時間
ダルメート/ベジノール1-8時間14.5-42.0時間

4.ゼストロミンの薬価

ブロチゾラム錠0.25mg「トーワ」(=ゼストロミン)   8.5円

レンドルミン0.25mg錠(先発品)                       27.5円

ゼストロミンの薬価は0.25mgで8.5円です。

正規品のレンドルミンと比べると大分安いですね。

(注:ページ上部の画像はイメージ画像であり、実際のブロチゾラム錠0.25mg「トーワ」(旧名:ゼストロミン)とは異なります)