ウインタミンの効果と特徴【抗精神病薬】

ウインタミンの効果

ウインタミン(一般名:クロルプロマジン)は1957年から発売されていた抗精神病薬(統合失調症の治療薬)です。

2014年に発売終了となってしまいましたが、長い間に渡って統合失調症をはじめとした精神疾患の治療に使われてきた代表的なお薬の1つです。

ちなみに現在はウインタミンはもうありませんが、同じ主成分からなっている「コントミン」があり、コントミンを使用する事で同じ効果が得られます。

ウインタミン、そしてコントミンは一番最初に発売された歴史的な抗精神病薬です。これらのお薬から統合失調症の薬物治療の歴史が始まりました。

抗精神病薬には古い第1世代と比較的新しい第2世代があり、ウインタミンは第1世代に属します。新しい第2世代の方が安全性は高いため、現在では第2世代を使うことがほとんどですので、近年ではウインタミンを使用する頻度は少なくなっていました。

しかし第2世代が開発されるまではウインタミンは統合失調症治療の主力選手でした。長い実績のあるウインタミンは使い慣れている先生も多く、また強力な効果が期待できるというメリットがありました。

古いお薬であるため副作用に注意しなくてはいけませんが、ウインタミンは統合失調症をはじめとした精神疾患の治療に大きく貢献してきたお薬です。

ここではウインタミンの効果や特徴、どんな作用機序を持っているお薬でどんな人に向いているお薬なのかを紹介していきます。

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1.ウインタミンの特徴

まずはウインタミンの特徴について紹介します。

ウインタミンは第1世代抗精神病薬で副作用が多めであるため、近年ではあまり用いられなくなっていました(現在では発売終了となっています)。

第1世代抗精神病薬の中では、脳の様々な受容体を遮断(ブロック)することで鎮静作用に優れるという特徴があります。

抗精神病薬はどれも脳のドーパミンのはたらきをブロックする作用を持っています。これは、統合失調症は脳のドーパミンのはたらきが過剰になってしまっていることが一因だと考えられているからです(ドーパミン仮説)。

ウインタミンももちろん、脳のドーパミンのはたらきをブロックするはたらきがあります。しかしウインタミンはそれ以外にも様々な受容体をブロックする作用を持ちます。そのため、多くの効果が期待でき、特に脳を鎮静させる受容体に多く作用するため、鎮静力に優れるという特徴があります。

様々な作用を持つウインタミンは統合失調症の症状に対して、幅広く作用してくれます。ドーパミン過剰によって生じている症状「幻覚」「妄想」「興奮」などの陽性症状に効く他、鎮静によって生じている不眠やイライラ、攻撃性などを改善させるのにも役立ちます。

【陽性症状】
本来はないものがあるように感じる症状の総称で、「本来聞こえるはずのない声が聞こえる」といった幻聴や、「本来あるはずのない事をあると思う」といった妄想などがある。

このように幅広い受容体に作用して多くの効果が期待できるというのはウインタミンの良い特徴ですが、これは余計な副作用が出やすいという事でもありますので注意も必要です。

ウインタミンと同じく第1世代の抗精神病薬に属する有名なお薬に「セレネース(商品名:ハロペリドール)」がありますが、セレネースはドーパミンのみをピンポイントで狙うようなお薬です。セレネースはドーパミン以外には作用しにくいため、ドーパミン系の副作用(錐体外路症状や高プロラクチン血症など)は多いものの、その他の副作用は生じにくい傾向があります。

反対にウインタミンはドーパミン系の副作用は比較的少ないものの、それ以外の副作用が多いという傾向があります。

これらはどちらも一長一短あるため、どれらが優れているというものではなく、症状によって適切な方を使い分けます。しかしどちらも第2世代抗精神病薬と比べると副作用は多めですので、現在では第2世代抗精神病薬から使われる事が一般的です。

コントミンは様々な受容体をブロックするため鎮静力に優れますが、過剰に鎮静させてしまう事で眠気やふらつきをはじめ、食欲増加、抗コリン作用(口渇、便秘、尿閉など)や血圧低下などの副作用が生じ得ます。

しかしドーパミンだけを狙うお薬ではないため、セレネースのようなお薬と比べると、ドーパミンをブロックしすぎてしまう事で生じる副作用は少なくなっています。これは具体的には、錐体外路症状(EPS)や高プロラクチン血症などになります。

【錐体外路症状(EPS)】
ドーパミンが少なくなりすぎる事で、ふるえやしびれ、手足が勝手に動いてしまうなどの神経症状が生じる。

【高プロラクチン血症】
ドーパミンが少なくなることで乳汁を出すホルモンであるプロラクチンが増えてしまい、胸の張りや乳汁分泌が生じてしまう副作用。プロラクチン高値が続くと、乳がんや骨粗しょう症なども発症しやすくなる。

またウインタミンのような第1世代の抗精神病薬は古いお薬であり、時に重篤な副作用を起こすリスクがある事も忘れてはいけません。重篤な不整脈(心室細動、心室頻拍など)や悪性症候群、麻痺性イレウスなど、命に関わるような副作用が生じることがあり、これが第1世代があまり使われなくなってきた一番の理由になります。

第1世代抗精神病薬であるウインタミンは、その副作用の問題から処方される頻度は少なくなっていました。第2世代で似たような作用を持つものにはセロクエル(一般名クエチアピン)などのMARTA(多元受容体作用抗精神病薬)があり、現在ではウインタミンの適応となるような症例では、まずはMARTAなどが用いられることが一般的です。

以上から、ウインタミンの特徴として次のような事が挙げられます。

【良い特徴】

  • 統合失調症の様々な症状に幅広く効果を示す
  • 特に鎮静力に優れる

【悪い特徴】

  • 過鎮静、体重増加、抗コリン作用、血圧低下などの作用が生じやすい
  • 重篤な不整脈や悪性症候群など命に関わる副作用も起こり得る
  • 副作用が多い第1世代であるため、現在ではあまり用いられない(現在では発売終了)

2.ウインタミンの作用機序

ウインタミンはどのような機序を持ったお薬なのでしょうか。

抗精神病薬はドーパミンのはたらきをブロックするのが主なはたらきです。統合失調症は脳のドーパミンが過剰に放出されて起こるという説(ドーパミン仮説)に基づき、ほとんどの抗精神病薬はドーパミンを抑える作用を持ちます。

ウインタミンは抗精神病薬の中でも、「フェノチアジン系」という種類に属します。

フェノチアジン系には、ウインタミン(一般名:クロルプロマジン)以外にも、

  • ヒルナミン・レボトミン(一般名;レボメプロマジン)
  • ノバミン(一般名:プロクロルペラジン)
  • フルメジン(一般名:フルフェナジン)
  • ピーゼットシー(一般名:ペルフェナジン)

などがあります。

フェノチアジン系は様々な受容体に作用し、特に鎮静力に優れるという特徴があります。そのため、統合失調症の治療薬として用いられる他、興奮症状の鎮静や不眠の改善などに用いられることもあります。しかし多くの受容体に作用するという事は、多くの余計な作用が出やすいという事でもあり、眠気やふらつきや抗コリン症状(口渇・便秘・尿閉など)、体重増加、血圧低下などの副作用が時に問題となります。

フェノチアジン系の中でもウインタミンは、このようなフェノチアジン系の特徴通りのお薬になります。

ちなみにウインタミンのような第1世代抗精神病薬は統合失調症の陽性症状には非常に有効ですが、陰性症状や認知機能障害はむしろ悪化させてしまうリスクもあると言われています(特に高用量を使用している場合)。

【陰性症状】
本来はある能力がなくなってしまう症状の総称で、活動性が低下しこもりがちになってしまう「無為自閉」や、感情表出が乏しくなる「感情鈍麻」、意欲消失などががある。

【認知機能障害】
認知(自分の外の物事を認識すること)に関係する能力に障害を来たすことで、情報処理能力、注意力・記憶力・集中力・理解力や計画能力・問題解決能力などの高次能力(知的能力)に障害を認めること。

そのため近年ではウインタミンのような第一世代はあまり用いられておらず、ウインタミンを用いるような症例に対しては、第2世代抗精神病薬が用いられます。第2世代の中でも特にMARTAという種類の抗精神病薬がフェノチアジン系と比較的作用が似ているため、用いられます。

MARTA(Multi Acting Receptor Targeted Antipsychotics:多元受容体作用抗精神病薬) は、1990年頃より発売され始めた比較的新しいお薬で、その名の通り多くの受容体を遮断する作用に優れるお薬のことです。

具体的には、

  • ジプレキサ(一般名:オランザピン)
  • セロクエル(一般名:クエチアピン)

などがあります。

MARTAとフェノチアジン系はまったく同じ作用機序を持つお薬ではありませんが、共に多くの受容体をブロックする作用に優れ、鎮静力があるという点では似た特徴を持っています。更にフェノチアジン系と比べたMARTAの利点として

  • 全体的に副作用が少ない
  • 命の関わるような重篤な副作用が少ない
  • 陰性症状にも効果が期待できる

というメリットがあります。そのため、現在ではまずはMARTAを用いることが多くなっており、ウインタミンなどの第1世代が検討されるのは、第2世代では効果が不十分な場合など、やむを得ないケースに限られます。

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3.ウインタミンの適応疾患

ウインタミンはどのような疾患に使われていたのでしょうか。

添付文書にはウインタミンの適応疾患として、

統合失調症
躁病
神経症における不安・緊張・抑うつ
悪心・嘔吐
吃逆(きつぎゃく)
破傷風に伴う痙攣
麻酔前投薬
人工冬眠
催眠・鎮静・鎮痛剤の効力増強

が挙げられていました。

かなり多くの疾患名が挙げられていますが、現在の臨床現場での主な用途は統合失調症、躁病とあとは鎮静をする目的での使用がほとんどを占めます。

吃逆(きつぎゃく)というのはいわゆる「しゃっくり」で、横隔膜の痙攣で生じると考えられています。ウインタミンは心身を鎮静させることにより、横隔膜の痙攣を抑えてくれるため、効果を示します。

「人工冬眠」という言葉は、聞き慣れない言葉ですが、これは手術時などにおける全身麻酔のような作用の事です。現在では全身麻酔にウインタミンを併用することはほとんどないと思われますが、昔は使われていたそうです。

ちなみにウインタミンが統合失調症に効果があるという発見がされたのも、1950年に外科医がウインタミンを麻酔薬として使って患者さんの手術をしたところ、術後に患者さんの精神症状が改善していることに気付いたということがきっかけです。ウインタミンの統合失調症への効果は、実は偶然に発見されたものなのです。

ウインタミンは統合失調症の中でも多彩な症状を呈しているタイプによく使われます。また双極性障害の躁状態もドーパミン過剰が関係していると考えられているため、ドーパミンのはたらきをブロックするウインタミンは効果を発揮します。

また、ウインタミンは鎮静力に優れるため、

  • 不眠症の患者さん
  • 不安や緊張が強い患者さん

に用いられることもあります。

しかし前述の通り、第1選択として用いられるお薬ではありません。

4.抗精神病薬の中でのウインタミンの位置づけ

抗精神病薬には多くの種類があります。その中でウインタミンはどのような位置づけになっているのでしょうか。

まず、抗精神病薬は大きく「第1世代」と「第2世代」に分けることができます。第1世代というのは定型とも呼ばれており、昔の抗精神病薬を指します。第2世代というのは非定型とも呼ばれており、比較的最近の抗精神病薬を指します。

第1世代として代表的なものは、セレネース(一般名:ハロペリドール)やコントミン/ウインタミン(一般名:クロルプロマジン)などです。これらは1950年代頃から使われている古いお薬で、強力な効果を持ちますが、副作用も強力だという難点があります。

特に錐体外路症状と呼ばれる神経症状の出現頻度が多く、これは当時問題となっていました。また、悪性症候群や重篤な不整脈など命に関わる副作用が起こってしまうこともありました。

そこで、副作用の改善を目的に開発されたのが第2世代です。第2世代は第1世代と同程度の効果を保ちながら、標的部位への精度を高めることで副作用が少なくなっているという利点があります。また、ドーパミン以外の受容体にも作用することで、陰性症状や認知機能障害の改善効果も期待できます。

第2世代として代表的なものが、SDA(セロトニン・ドーパミン拮抗薬)であるリスパダール(一般名:リスペリドン)やMARTA(多元受容体作用抗精神病薬)と呼ばれるジプレキサ(一般名:オランザピン)、DSS(ドーパミン部分作動薬)と呼ばれるエビリファイ(一般名:アリピプラゾール)などです。

現在では、まずは副作用の少ない第2世代から使用することがほとんどであり、第1世代を使う頻度は少なくなっています。第1世代が使われるのは、第2世代がどうしても効かないなど、やむをえないケースに限られます。

ウインタミンの抗精神病薬の中での位置づけは、

  • 効果も強力、副作用も強力
  • 統合失調症の症状を幅広く抑え、特に鎮静力に優れる
  • でも副作用の多さから、現在では最初から使う事はないお薬

といったところです。

かんたんに言えば「昔のお薬」であり、現在では「今のお薬が効かない場合に限って使用を検討されるお薬」という位置づけになります。

5.ウインタミンが向いている人は?

ウインタミンの特徴をもう一度みてみましょう。

  • 統合失調症の様々な症状に幅広く効果を示す
  • 特に鎮静力に優れる
  • 過鎮静による副作用が生じやすい
  • 重篤な不整脈や悪性症候群など命に関わる副作用も起こり得る
  • 副作用が多い第1世代であるため、現在ではあまり用いられない

といった特徴を持つことが挙げらました。

古いお薬であり、副作用の多さもありますので、現在ではあまり使われる事はありません(そもそも現在では発売終了となっています)。

ウインタミンを使うのは、

  • 第2世代がどうしても使えないケース
  • 第2世代では効果が不十分なケース
  • 特に鎮静が必要だと考えられるケース

などに限られるでしょう。

昔であればウインタミンの使用を検討された症例は、現在では作用機序が比較的似ているMARTA(セロクエル、ジプレキサなど)が検討されます。

ちなみに現在ではウインタミンはもう発売終了となっていますので、ウインタミンを用いるような症例は、現在では同主成分からなる「コントミン」が用いられます。

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