セディール錠にはどんな副作用があるのか?副作用と対処法

セディール錠(一般名:タンドスピロン)は1996年に発売された不安薬です。抗不安薬は、不安感を取る作用を持つおくすりで、「安定剤」「精神安定剤」と呼ばれることもあります。

抗不安薬というと、現在使われているもののほとんどがベンゾジアゼピン系と呼ばれるものです。ベンゾジアゼピン系は即効性があり効果も感じやすいため人気がありますが、依存性などの副作用があることは知っておかなければいけません。

セディールは、ベンゾジアゼピン系ではない唯一の抗不安薬です。セディールはセロトニン1A部分作動薬という種類のおくすりになり、ベンゾジアゼピン系と異なった作用機序で不安を和らげます。

作用機序が異なるため、副作用もベンゾジアゼピン系とは異なります。

今日は、セディール錠にはどんな副作用があるのかについて紹介していきます。

1.セディールの副作用の特徴

セディールは、副作用が極めて少ない抗不安薬です。

副作用が極めて少ないのが、セディールの副作用の特徴といってもいいでしょう。特に、依存性が無いというのはセディールの大きな利点です。

抗不安薬の代表選手はベンゾジアゼピン系ですが、ベンゾジアゼピン系には依存性があります。ベンゾジアゼピン系は抑制系の受容体であるGABA-A受容体のはたらきを増強することで全身に鎮静をかけるため、眠気やふらつき、健忘などの副作用が起こることもあります。

それに対してセディールは、依存性は認めず、眠気やふらつきは認めるものの、ベンゾジアゼピン系と比べれば軽度なものがほとんどです。

セディールは、主に大脳辺縁系に存在するセロトニン1A受容体を刺激することで抗不安作用を発揮します。副作用は出ない事がほとんどですが、時に

  • 眠気、ふらつき
  • 倦怠感
  • 悪心、食欲不振

などが生じることがあります。しかし、いずれも軽度であることがほとんどであり、問題になるほどの重い症状になることは稀です。

ただし、セディールは副作用が軽い分、効果も弱めです。セディールには不安や恐怖、そしてうつを改善させる作用がありますが、いずれも効果は穏やかで弱く、物足りなさを感じる方が多いのも事実です。

セディールが安全性に優れる良いお薬であるにも関わらず、抗不安薬の主役になれないのは、この効果の弱さがネックとなっています。

2.セディールの副作用と対処法

先ほど説明した通り、セディールの副作用は極めて少なく、出ても軽度であることがほとんどです。

しかし副作用が問題になる可能性が絶対にないか、そんなことはありません。副作用が少ないとは言え、おくすりである以上は副作用には注意を払わないといけません。

セディールで副作用が出た場合、どのように対処するのかを紹介します。

なお、副作用の対処は独自の判断では行わず、必ず主治医の指導の下で行ってください。

Ⅰ.眠気、倦怠感、ふらつき

セディールはセロトニン1A受容体を刺激するはたらきがあります。セロトニン1A受容体が刺激されると、セロトニン神経の活動が抑制されます。このセロトニン神経の抑制が抗不安作用をもたらすと考えられています。

不安が改善するということは、「リラックスする」ということになります。適度なリラックス効果であればいいのですが、効きすぎてリラックスさせすぎてしまうと、眠気やふらつき、だるさなどが出現します。

セディールで眠気やふらつき、倦怠感が出現した時、第一にとるべき対処法は「様子をみること」です。セディールで生じるこれらの症状は軽度であることが多く、またしばらく飲み続けると身体がおくすりに慣れてくるため、副作用は自然と軽減していくことがあるからです。

様子をみれる程度の眠気、ふらつき、倦怠感であれば1-2週間ほど様子をみてみましょう。

それでも症状が改善しない場合、次の対処法は「服薬量を減らす」ことになります。一般的に量を減らせば作用も副作用も弱まります。抗不安作用も弱まってしまうというデメリットはありますが、相対的にみて抗不安作用というメリットよりも、副作用というデメリットの方が大きいようであれば減薬を考えましょう。

例えば、セディールを1日60mg内服していて副作用がつらい場合、1日量を40mgや30mgに減らしてみるのがよいでしょう。

「抗不安薬の種類を変える」という方法もありますが、ほとんどの抗不安薬はセディールよりこれらの副作用が強いため、種類を変えることでかえって症状が悪化してしまう可能性があります。種類を変える場合は、主治医としっかり相談してから適応を判断してください。

Ⅱ.悪心・食欲不振

セディールはセロトニン受容体に作用するおくすりですが、実はセロトニン受容体というのは消化管(胃や腸)にも多く分布しています。そのため、消化管のセロトニン受容体に作用してしまい、悪心(気持ち悪さ)や食欲不振を生じてしまうことがあります。

また、セロトニン受容体は摂食中枢にも関与しており、主に摂食行動を抑制する方向に働きます。そのため、食欲不振が出てしまうこともあります。

悪心・食欲不振が出現した場合も、第一にとるべき対処法は「様子をみること」です。理由は先ほどと同じで、セディールで生じるこれらの症状は軽いことが多く、またしばらく飲み続けることで身体がおくすりに慣れてきて、副作用が軽減することがあるからです。

様子をみれそうな程度であれば1-2週間ほど様子をみてください。

それでも症状が改善しない場合、次の対処法も同じく「服薬量を減らす」ことです。副作用が改善せず、つらい場合は減薬を検討します。

悪心、食欲不振などの症状はつらいけど、セディールの効果も感じるから減薬はしたくない、という場合は、胃薬を併用することで消化器症状を改善させるという方法もあります。おくすりの副作用をおくすりで抑える、という状態になってしまいますが、セディールをやめたくない場合にはこの方法も取られます。

また、このような消化器症状は、セロトニンが原因で生じていますので、セロトニンには影響を与えないベンゾジアゼピン系抗不安薬に変更すれば、消化器症状の副作用は改善します。

そのため、これら消化器症状がつらい場合はベンゾジアゼピン系への変薬も方法になります。ただし、消化器症状は改善するでしょうが、依存性などその他の副作用の可能性が今度は出てきます。そのため、変薬を検討する時は主治医とよく相談の上で判断する必要があります。

Ⅲ.その他

  • 眠気、ふらつき、倦怠感
  • 悪心、食欲不振

これら以外にも副作用として生じるものはありますが、頻度が少ないためここでは詳しくは紹介しません。

セディールに限らず、おくすりの副作用というものは、稀なものまで含めれば非常に多くあります。このコラムの目的は、副作用を稀なものも含めて全て羅列することではなく、臨床でよく見られる副作用とその対処法を紹介することですので、副作用全てを列挙することはここではしません。

ある程度の頻度で起こりうる副作用を挙げると、頭痛、手足のしびれ、不眠、肝機能障害、腎機能障害、動悸、頻脈、口渇、便秘、発疹、目のかすみ、ほてり、多汗などが報告されています。

しかしその頻度は少なく、全体的に見ればセディールは副作用の非常に少ないおくすりであると言えます。