ルネスタは超短時間型に分類される睡眠薬です。
超短時間型は半減期が短い睡眠薬のことで、すぐに効き、すぐに効果がなくなります。半減期は、くすりの効きの長さを表す用語で、「何時間くらい効果が続くおくすりか」というのをある程度知る目安になります。
短いと言われているルネスタの半減期はどのくらいなのでしょうか。ここでは、ルネスタの半減期や他睡眠薬との比較、そこから考えられるルネスタの効果的な使い方について紹介していきます。
また、「そもそも半減期って何?」ということもお話します。
1.ルネスタの半減期
睡眠薬は半減期(≒作用時間)で大きく4種類に分類されています。
- 超短時間型・・・半減期が2-4時間
- 短時間型 ・・・半減期が6-10時間
- 中時間型 ・・・半減期が12-24時間
- 長時間型 ・・・半減期が24時間以上
半減期は、おくすりの血中濃度が半分になるまでに要する時間の事で、作用時間の目安としてよく用いられます。
薬の効きや分解能力には個人差があるため、半減期はあくまでも目安にすぎませんが、
「半減期」≒「おおよそのお薬の作用時間」と考えていただくと分かりやすいと思います。
ルネスタは「超短時間型」の睡眠薬に分類されます。
服薬してから1~1.5時間ほどで血中濃度が最高値になり、半減期は約5時間と言われています。
人の平均睡眠時間は6-7時間程度と言われていますから、
5時間以内に効果が切れるルネスタは翌朝に持ち越す可能性が少ない睡眠薬です。
2.睡眠薬の半減期一覧
睡眠薬は、半減期によって4種類に分類されることをお話しました。
ルネスタが属する「超短時間型」は、半減期が非常に短いため、
寝付けないタイプの不眠症に使われることが多く、また朝に持ち越すのが困る場合にもよく選択されます。
ここで睡眠薬の半減期を比較してみましょう。
睡眠薬 | 最高濃度到達時間 | 作用時間(半減期) |
---|---|---|
ハルシオン | 1.2時間 | 2.9時間 |
マイスリー | 0.7-0.9時間 | 1.78-2.30時間 |
アモバン | 0.75-1.17時間 | 3.66-3.94時間 |
ルネスタ | 0.8-1.5時間 | 4.83-5.16時間 |
レンドルミン | 約1.5時間 | 約7時間 |
リスミー | 3時間 | 7.9-13.1時間 |
デパス | 約3時間 | 約6時間 |
サイレース/ロヒプノール | 1.0-1.6時間 | 約7時間 |
ロラメット/エバミール | 1-2時間 | 約10時間 |
ユーロジン | 約5時間 | 約24時間 |
ネルボン/ベンザリン | 1.6±1.2時間 | 27.1±6.1時間 |
ドラール | 3.42±1.63時間 | 36.60±7.26時間 |
ダルメート/ベジノール | 1-8時間 | 14.5-42.0時間 |
半減期や最高濃度到達時間が睡眠薬によって様々であることが分かりますね。
最高濃度到達時間が早いお薬は「即効性がある」と言えます。
ルネスタをはじめ、マイスリー、アモバン、ハルシオンなどの「超短時間型」は
1時間前後で血中濃度が最高値になるため、「すぐに寝付きたい」という方に向いています。
しかし半減期が3-4時間ですから、長くぐっすり眠りたい方には不適であることが分かります。
反対に7-8時間ぐっすり眠りたい場合は、レンドルミンやリスミー、サイレース/ロヒプノールや
デパス、ユーロジンなどが第一選択としては向いていることが分かります。
それぞれ微妙に特徴が違いますので、主治医と相談して自分に合いそうな睡眠薬を選びましょう。
3.半減期から考えるルネスタの効果的な使い方
不眠は大きく分けると2つのタイプがあります。
一つ目が「寝付けない事」で、これは「入眠障害」とも呼ばれます。
二つ目は「すぐに起きてしまう事」で、これは「中途覚醒」と呼ばれます。
教科書的には、入眠障害には超短時間型か短時間型、
中途覚醒には中ー長時間型の睡眠薬が適していると言われています。
ルネスタは「超短時間型」に属し、1時間程度で効きが最高値に達して5時間程度で効果が切れます。
超短時間型の中では半減期が長いルネスタは、
入眠障害が主でありつつ、中途覚醒も若干困っているという方に向くおくすりだと考えられます。
半減期が2-3時間であるハルシオンやマイスリーは、入眠障害に特化したおくすりだと言えますが、
これらと比べるとルネスタは緩やかに効くおくすりです。
ルネスタで、多少不眠がよくなったけどもう少し改善させたい、
という場合はどうしたらいいでしょうか。
寝付くまでまだ時間がかかるという事なら、最高濃度到達時間がもうちょっと早いお薬の方がいいのかもしれません。
この場合、マイスリーやハルシオン、アモバンなどが候補に挙がります。
あるいは、寝付きは十分改善されたけどもう少し長く眠りたい、という事でしたら、
半減期がもうちょっと長いお薬がいいのかもしれません。
この場合は、レンドルミンやデパスなどが候補に挙がります。
ルネスタは、内服してから20-30分くらいで眠気が出てきます。
そのため、ベッドに入る直前に内服し、内服後はすぐにベッドに横になりましょう。
飲んだのに、なかなかベッドに入らずに起きていると
ふらついたり転んでしまう可能性がありますので、注意してください。
4.半減期とは?
せっかくなので「半減期」について詳しく勉強してみましょう。
半減期というのは「お薬の血中濃度が半分になるまでに要する時間」のことです。
半減期は、お薬の作用時間とだいたい一致するため、
半減期が分かれば作用時間がだいたい推測できます。
お薬の本を読むと、全ての薬に半減期が記載されています。
私たち医師が薬を処方する際も、「半減期がどれくらいのお薬なのか」は必ず考えて処方します。
例えば、下記のような薬物動態を示すお薬があるとします。
だいたいのお薬は内服すると、このグラフのようにまず血中濃度がグンと上がり、
それから徐々に落ちていきます。
このお薬は、投与10時間後の血中濃度は「10」ですが、
投与20時間後には血中濃度は半分の「5」に下がっています。
血中濃度が半分になるのに要する時間は「10時間」ですので、
このお薬の半減期は「10時間」です。
そして半減期が10時間ということは「だいたい10時間くらい効くおくすり」なんだと分かります。
ただし半減期はあくまでも目安で、個人差はありますので気を付けてください。
お薬を分解する力が強い人もいれば弱い人もいます。
人によって誤差は多少なりともあります。
特に肝臓が悪い方は、お薬を分解する力が弱まっているため、
一般的に半減期よりも長い時間お薬が身体に残ってしまいます。