ストレスで胃痛が生じる機序と治し方

ストレスと胃痛

生きている中で、私たちは毎日ストレスを受けています。

適度なストレスであれば、心身に大きな害はありません。ストレスにより一時的に緊張状態になるため、ここ一番という場面で集中力が上がったり、作業量を上げることが出来ます。このようなことはストレスのおかげだとも言えます。

一方でストレスが過剰になってしまうと、ストレスは心身を徐々に害を与え始めます。ストレスは身体、そしてこころとあらゆる部位に症状を引き起こします。

ストレスで生じることが多い症状の1つとして「胃痛」が挙げられます。「ストレスで胃が痛い」というのは誰もが一度は経験したことがあるのではないでしょうか。

今日はストレスで胃痛がなぜ生じるのか、そしてストレスで生じた胃痛に対する対処法・治療法にはどのようなものがあるのかを紹介します。

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1.ストレスで胃痛が生じるのは何故か

ストレスで生じる胃痛の治し方を知るために、まずはストレスでなぜ胃痛が生じるのか、その機序からみていきましょう。

ストレスで心身に症状が生じるのは、主に

  • ストレスホルモン(副腎皮質ホルモン)の乱れ
  • 自律神経系の乱れ

の2つが原因だと考えられています。

ストレスホルモンは、副腎皮質から分泌される「コルチゾール」などのホルモンのことで、これは体内で合成・分泌されているステロイドになります。

ステロイドの作用の1つに免疫力(病原菌に対する抵抗力)を下げてしまうという作用があります。お薬のステロイドを長期間服薬していると、ばい菌などに感染しやすくなってしまうという副作用が生じる可能性があります。コルチゾールの過剰分泌が続いた場合も、これと同様のことが起こります。

過剰なストレスを受け続けると、感染に弱くなり、胃腸炎の原因となるような細菌・ウイルスが悪さをしやすい状態を作ってしまうため、これにより胃痛が生じることがあります。

また自律神経系の乱れも、胃痛の原因となります。自律神経は全身に分布しており、胃にも当然分布しています。

リラックスしているような状態では、自律神経系のうち副交感神経というリラックス系の神経が活性化しています。この状態だと胃への血流が豊富になり、胃腸は活発に活動しています。しかし反対にストレスがかかったときは交感神経という緊張系の神経が活性化します。

緊張時は食べ物を消化・吸収している場合ではないため、交感神経が優位だと、胃への血流は少なくなり、胃腸の動きも低下します。

胃への血流が少なくなると、胃壁を胃酸から守る「胃防御因子(プロスタグランジンなど)」が十分に働けなくなり、胃が傷つきやすくなります。また胃腸の動きが低下すると消化が十分に行えなくなるため、胃は胃酸を多く分泌することで何とか食べ物を消化しようとします。

胃の防御因子が減っている中で、胃酸が多く分泌されてしまうため、胃壁は傷つきやすくなり、胃炎や胃潰瘍が生じやすくなります。

これにより胃痛が生じてしまうのです。

2.ストレスによる胃痛で考えられる疾患

ストレスで胃痛が生じたとき、胃内はどのような状態になっている事が考えられるでしょうか。

Ⅰ.神経性胃炎

ストレス性胃炎と呼ばれることもあります。

胃カメラなどで胃を確認しても何の異常もないのに、胃痛が生じるような状態です。精神科的には正確には「身体表現性障害」とも呼ばれます。

【身体表現性障害】
痛みなどの身体的症状が生じているが、検査をしても内科的には何も異常を認めないもの

実際に胃に傷はないものの、自律神経系の乱れが生じていることが原因だと考えられます。

Ⅱ.胃炎

ストレスによって胃に炎症が生じてしまうこともあります。これは「胃炎」と呼ばれます。

胃炎はタバコ・アルコールなどの刺激物や食生活の不良、感染などでも生じますが、ストレスで生じることもあります。

ストレスホルモンの影響により免疫力が弱まっていることが原因であったり、自律神経系の異常によって胃の防御因子が減ったり胃酸の分泌が増えることが原因です。

Ⅲ.胃潰瘍

胃炎が進行し、胃壁に潰瘍が出来てしまうと「胃潰瘍」と呼ばれます。

胃潰瘍も胃炎と同じような機序で生じますが、その程度はより重篤で痛みも更に強いものとなります。

Ⅳ.逆流性食道炎

胃よりやや上の胸のあたりに焼けるような痛みを感じる場合は、逆流性食道炎の可能性もあります。

逆流性食道炎は、強力な酸である胃酸が食道に逆流してしまい、食道壁を傷付けてしまうために生じます。

食道と胃の境目には噴門という関門があります。普段は噴門は閉じており、これによって胃酸が逆流しないようになっているのですが、ストレスで噴門のはたらきが弱まってしまうと胃酸が逆流することがあります。またストレスで胃酸が多く分泌されるようになるとこれも逆流しやすくなります。

Ⅴ.心臓神経症

これも胃よりやや上側の胸のあたりが痛くなります。心臓に分布している自律神経系のバランスが崩れることにより動悸や胸痛(胃痛)を感じることがあります。

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3.ストレスによる胃痛と、その他原因による胃痛の見分け方

このように、過剰なストレスを受けると胃痛が生じることがあります。

しかし一方で胃痛というのは、他の原因で生じることもあります。

胃腸の感染によって胃痛が生じることもあるし、食生活の不良で胃痛が生じることもあります。あるいはタバコやアルコールなどが原因で胃痛が生じることもあるでしょう。

これらの胃痛とストレスによる胃痛というのはどのように見分ければ良いでしょうか。

この見分け方はなかなか難しいことも多いのが実情です。ストレスというのは数値化できるものではないため、「今自分がどのくらいストレスがかかっているのか」ということは客観的な指標として出すことはできません。そのため、ストレスと胃痛の関係性がどのくらいかというのは正確に判断することが難しいのです。

またストレスとその他要因が合わさっていることも多く、この場合はどっちが原因なのか更に分からなくなります。

例えば強いストレスを受けていて、そのストレス発散としてやけ食いやアルコール飲酒、タバコの本数を増やすなどをしていて、それで胃痛が生じた場合などでは、これはもはやどちらが原因なのか分かりません。

このようにストレスとその他の原因を見分けるということは難しいのですが、それでもできる範囲で「こっちの可能性の方が高そうだ」と原因に近づくことは大切です。なぜならば、どちらが原因なのかによって治療・対策が異なってくるからです。

ストレスが原因なのであれば、ストレスに対して対処を行わないといけません。一方で例えばアルコールの飲みすぎが原因なのであれば対処法はアルコールを減らすことです。このように対処法が全く異なるのです。

両者を見分けるための一番の方法は、やはり「ストレスと胃痛の関連」を正確に見てみることです。これを判断するためには、「自分が受けているストレスの強度」と「胃痛の強さ」をそれぞれ10段階で評価し、毎日記録するという方法が一番確実です。

ストレスが原因であれば、やはりストレスが強いときにストレスホルモンが多く分泌され、自律神経系がより強く乱れるわけですから、症状が強くなります。ストレス以外が原因であれば、ストレスの強さに関係なく症状は現れるはずです。

4.ストレスで胃痛が生じたときの対処法・治療法

ストレスで胃痛が生じているとき、その対処法・治療法としてはどのようなものがあるでしょうか。

Ⅰ.ストレスから離れる

胃痛の原因がストレスにある以上、一番の対策はストレスから離れることになります。

実際は、「それが出来れば苦労しないよ」という話であり、そう簡単に離れられるものではありません。

しかし少しでも距離を取る、離れる時間を増やすことを意識することが大切なことです。

Ⅱ.ストレス発散の手段を持つ

胃痛の原因はストレスですから、一番の解決策は「ストレスから離れること」に尽きます。

しかしこれは現実的な方法ではないため、現実的に大切になるのは、「受けたストレスを発散できる場を持つこと」になります。

ストレスを無限に溜め込める人はいません。どんなにメンタルが強そうに見える方であってもストレスを受け続ければ必ず症状は現れてしまいます。

ストレスを発散する方法はたくさんありますが、「自分が心から楽しいと思える行動」か「副交感神経を活性化させる行動」のどちらかを満たす行動をとるようにしましょう。

「自分が心から楽しいと思える行動」というのは、その人によって異なるため、一概に言えるものではありません。

「カラオケで思いっきり歌う」
「友達に心ゆくまで愚痴を話す」
「スポーツで汗を流す」

などが人気の行動ですが、人によって異なります。

「副交感神経を活性化させる行動」というのは、「リラックス状態」を作れるような行動です。例えば、

「銭湯で温泉にゆっくりつかる」
「静かな場所でゆっくりと好きな本を読む」
「いつもより少し多めに眠る」

などがあります。

Ⅲ.オンとオフを意識した生活を

ストレスを受け続けていると、常に緊張の神経である交感神経が活性化しています。この状態が続くと「緊張」⇔「リラックス」の切り替えがうまくいかなくなります。

通常私たちは、仕事などの緊張時は交感神経のスイッチがオンになっていますが、仕事が終わると副交感神経のスイッチがオンになりリラックス状態が作られます。これが仕事が終わっても交感神経がオンになっているままだと、24時間ストレスを受け続けていることになります。これでは胃痛が生じてしまっても仕方ありません。

このように交感神経がずっと活性化してしまうような状態を防ぐには、意識して生活にメリハリをつけることです。

仕事を自宅に持ち帰るという方は、仕事が終わったあとも交感神経がオンになってしまいやすいでしょう。休日も仕事の事が頭から離れない方も交感神経が常にオンになっている可能性が高いといえます。

「仕事中はしっかりと集中する」
「仕事が終わったら仕事の事は考えない」

などのメリハリをつけた生活は、非常に大切になります。

Ⅳ.生活習慣を改める

ストレスを受けているときというのは、生活習慣も悪くなりがちです。

ストレスから

・過食、やけ食いする
・食生活が不規則になる
・睡眠不足となる
・タバコの本数が増える
・アルコール飲酒量が増える

ということはみなさんも経験があるのではないでしょうか。

これらの行動はどれも胃を更に荒らしてしまう行動になります。

ストレスを受けているときこそ、このような行動を控えることが大切です。ストレスがひどいときこそ、意識して、

・三食規則正しく食べる
・夜はしっかり眠る
・タバコ・アルコールは控えめに

を意識すると、胃痛がどんどん悪化することを防ぐことが出来ます。

Ⅴ.補助的に胃薬を使うことも有効

胃薬で胃酸の分泌を抑えたり、胃の防御因子を強めるという方法もあります。これは根本の解決にはなっていませんが、胃痛があまりにつらいと更にストレスも溜まっていくという悪循環になってしまうこともあるため、この悪循環を断ち切るためには有効です。

胃酸の分泌を抑えるお薬としては、

  • プロトンポンプ阻害薬(タケプロン、タケキャブ、ネキシウムなど)
  • H2ブロッカー(ガスターなど)
  • 胃防御因子増強薬(ソロン、ムコスタ、アドソルビンなど)

などがあります。主治医に相談して必要があれば処方を受けることが出来ます。

ただしⅠ.やⅡ.の方法でストレス自体を何とかしないと、お薬だけでは根本の解決にはならないため注意が必要です。

6.補助的に抗うつ剤、抗不安薬を使うことも

場合によっては、抗うつ剤や抗不安薬が胃痛に効果があることもあります。

抗うつ剤、抗不安薬は直接胃に対する作用はありませんが、抗不安作用により心身をリラックスさせてくれるため、これにより副交感神経が活性化しやすい状態を作ることが出来ます。

実際、抗不安薬の一部は「心身症」に対して適応を持っています。

【心身症】
ストレスが原因となって生じる身体疾患。例えばストレスによって生じる胃潰瘍やストレスによって生じる高血圧など。

どうしてもリラックス状態が作れない状態になっている方は、このようにお薬でリラックス状態を作ってあげることも時には有効です。

ただし、この方法も根本の解決にはなっていません。同様にⅠ.やⅡ.の方法でストレス自体を何とかしないと、お薬だけでは根本の解決にはならないため注意が必要です。

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