統合失調症の分類。3つのタイプ「妄想型」「破瓜型」「緊張型」とは

統合失調症は、幻覚・妄想といった陽性症状、無為自閉・感情平板化といった陰性症状、集中力や判断力・記憶力の低下といった認知機能障害などを認める疾患です。

これらの症状は統合失調症の代表的なものですが、どんな患者さんでも一様に同じ症状を発症するわけではありません。

統合失調症には主に3つのタイプがあります。そのタイプによって生じやすい症状の傾向があります。中にはどのタイプにも分類できないような方もいらっしゃるのが現状ですが、代表的なタイプを知っておくことは、より良い治療を行うために重要です。

今日は統合失調症の分類について、どのようなタイプがあってそれぞれどのような特徴があるのかについて紹介します。

1.統合失調症の3つのタイプ

統合失調症は、大きく分けると

妄想型
破瓜型
緊張型

の3タイプに分けることができます。これに「単純型」を加えて4タイプに分類する専門家もいますが、単純型は破瓜型と似ているため両者をまとめて「破瓜型」として扱うこともあります。

また、これら3つのタイプのいずれにも当てはまらない場合は「分類不能型」となります。実際は教科書通りにキレイに分類されるわけではありませんので、分類不能型となる方もいらっしゃいます。

統合失調症を発症した方に、必ずタイプ分類を行わないといけないわけではありません。しかしタイプが分かると、おおまかな症状や経過の予測がしやすくなるため、患者さんにとってよりよい将来を送るためにはどうしたらいいのかを考えやすくなります。

ではそれぞれのタイプの詳しい傾向をみてみましょう。

Ⅰ.破瓜型(解体型)統合失調症

「破瓜(はか)」というのは聞き慣れない言葉ですが、「16歳」「思春期」という意味があるそうです。

破瓜型統合失調症というのは、主にそれくらいの年代に好発するタイプの統合失調症という意味で名付けられました。破瓜型は専門家の間ではHebe(ヘベ)と呼ばれることもあります。(hebe(ヘベ)は若年、思春期を意味します)。

また破瓜型は、症状から「解体型」と呼ばれる事もあります。

破瓜型(解体型)統合失調症には次のような特徴があります。

・発症は15~25歳頃と早め
・陰性症状(無為自閉・感情平板化など)が主体
・予後は一般的にあまり良くない

破瓜型は、陰性症状を主体とした統合失調症になります。派手な症状は認めないものの、

・無為自閉
・意欲消失、無気力
・社会性の欠如
・感情鈍麻・感情平板化
・会話や行動のまとまりのなさ

などの症状を徐々に認め始めます。地味な陰性症状が主体であり、発見が遅れやすい傾向にあります。学生であれば徐々に不登校となって、やっと気付かれるケースもあります。陽性症状はほとんど認めないか、あっても軽度です。

Ⅱ.妄想型統合失調症

妄想型統合失調症は、その名の通り「妄想」などの陽性症状が主体となる統合失調症です。「妄想」をはドイツ語で「Whan(バーン)」と言うため、専門家の間では妄想型は「バーン」と呼ばれることもあります。

妄想型統合失調症は一番多く認められるタイプで、次のような特徴があります。

・発症は30歳前後と遅め
・陽性症状(幻覚・妄想)が主体
・基本的に予後は良い

統合失調症の中では比較的遅い時期に発症する疾患です。症状は幻覚・妄想といった陽性症状が主であり、感情鈍麻・意欲低下・無為自閉などの陰性症状はあまり目立ちません。人格水準の低下も軽度であり、統合失調症の方に特有の「プレコックス感」があまり認められません。

プレコックス感:オランダの精神科医リュムケが名付けた名称。統合失調症患者さんに相対した相手が感じる、言葉で表しようのない特有の感情をいう

妄想の程度によっては発症したまま社会生活を何とか送れている方もいらっしゃいます。

一般的に陰性症状主体の統合失調症は予後が悪く、陽性症状が主体の統合失調症は予後が良いと考えられています。そのため、妄想型統合失調症の予後は一般的に良好であり、人格水準の低下もあまり認められません。

Ⅲ.緊張型統合失調症

近年少なくなってきたと言われているタイプで、実際に私の感覚としてもほとんど見かけることがなくなってきたと感じます。

発症は比較的早く、20歳前後に発症しやすいタイプです。

・興奮や過動といった「緊張病性興奮」
・無動や拒絶、蝋屈、反響言語といった「緊張病性昏迷」

を症状を呈します。このような急性期症状は数週間程度で改善しますが、その後も周期的に繰り返されます。これらの症状と症状の間(間欠期)は、症状をほとんど認めないケースもあります。

発症時期は破瓜型と似ていますが、予後は破瓜型と異なり悪くはありません。

2.統合失調症のタイプと予後の関係

近年、緊張型統合失調症が減少してきているため、実際の臨床で見かけるのは

  • 破瓜型(解体型)
  • 妄想型

の2タイプが多くなっています。

ざっくりいってしまうと、妄想型は幻覚妄想といった派手な症状を呈するけども、比較的治りやすく、その後の経過も良好です。反対に破瓜型は、症状は地味だけどもジワジワと病気が進行していき、お薬の効きも悪いため、経過は不良となります。

基本的に、妄想型はすぐに発見され、すぐに治療が導入されます。明らかに妄想的なことを言っていれば周囲は「病院に連れていかなきゃ!」と普通は思うからです。問題は破瓜型で、ただでさえ予後があまり良くないのに、地味な症状のため発見も遅れてしまい更に予後が悪くなってしまうことが少なくありません。

「年頃だし、色々思う事があってひきこもっているだけかな」
「不登校って最近多いらしいし、しばらく放っておけば治るだろう」

と安易に考えていたら、実は破瓜型の統合失調症だった、ということもあります。この場合、発見が遅れれば遅れるほど、治療の導入も遅れてしまい、患者さんの将来に不利益を来たしてしまいます。

破瓜型は目立つ症状が少ないのですが、早期に発見することが何より大切で、それが予後を良くする一番の方法です。

この2つのタイプに限らず、統合失調症の全体的な傾向として、

  • 発症時期が早い
  • 陰性症状が主体
  • 緩徐にジワジワと発症していく

といったタイプは経過があまり良くないことが多く、反対に

  • 発症時期が遅い
  • 陽性症状が主体
  • 急激に発症する

といったタイプは経過が良好である傾向があります。

3.どのタイプにも当てはまらない統合失調症もある

上記の3つの分類は、統合失調症を理解する上で分かりやすいため、用いられている分類になります。

しかし実際の臨床では「必ずどれかのタイプに当てはまる」という事はなく、それぞれのちょうど中間くらいの症状であったりと判断に迷うケースもあります。そのような場合は「分類不能型」などと分類されることもありますが、この分類法はあくまでも病態や症状を分かりやすくするための便宜上のものに過ぎません。

分類にこだわるのではなく、症状や経過をしっかりと見極め、個々人にあった最適な治療を行うことが大切です。