ロゼレムの副作用【医師が教える睡眠薬のすべて】

ロゼレムはメラトニン受容体作動薬と呼ばれる新しいタイプの睡眠薬です(2013年発売)。

今までの睡眠薬は、薬の力で強制的に脳に鎮静をかけて眠らせるような効き方でしたが、ロゼレムは自然な眠りを導く後押しをするような効き方をするのが大きな特徴です。

生理的な作用機序を持つロゼレムは副作用が少なく、安全性が高く評価されています。

しかしおくすりである以上、副作用がまったくないわけではありません。

ここでは、ロゼレムの主な副作用を紹介し、その対処法についても考えていきたいと思います。

1.ロゼレムの副作用とその対処法

ロゼレムは、非常に副作用の少ない睡眠薬です。

その理由はロゼレムの作用機序にあります。
ロゼレムは、おくすりの力で無理矢理眠らせる従来の睡眠薬と異なり、
ヒトが眠くなる自然なメカニズムに沿ったはたらきをするため、身体に無理な負担がかかりにくいのです。

ヒトは夜、暗くなると脳の松果体という部位からメラトニンという物質が出ることが知られています。
そして、このメラトニンが脳の視交叉上核という部位にあるメラトニン受容体にくっつくことで
私たちは眠気を感じます。

ロゼレムはメラトニン受容体作動薬と呼ばれており、メラトニンと同じようなはたらきをします。
メラトニン受容体にくっついてメラトニンと同じように眠気を導くため、
自然な眠りを後押ししてくれるのです。

また、ロゼレムは内服してから1時間未満で血中濃度が最大に達し、半減期は1~2時間程度と短いため、
翌朝や日中にまでおくすりの効果が持ち越す可能性も低く、この点からも副作用は少ないと言えます。
(半減期:おくすりの血中濃度が半分になるまでにかかる時間。おくすりの作用時間の目安になる値)

このようにロゼレムは副作用の少ないおくすりではありますが、
おくすりである以上、副作用が0ということはありません。

ここでは、臨床で見られるロゼレムの副作用を紹介していきます。
また、副作用が出てしまったときの対処法についても考えていきましょう。

Ⅰ.眠気

睡眠薬の副作用で、一番多いのが眠気です。
ロゼレムも睡眠薬ですから当然飲めば眠気が生じます。

夜に睡眠薬を飲んで眠くなる。
これは「効果」ですから問題ありません。

しかし、「起床時間になってもまだ眠くて起きれない」「日中眠くて仕事に集中できない」
となるとこれは問題で、副作用と判断されます。

日中まで睡眠薬の効果が残ってしまう事を「持ち越し効果(hang over)」と呼びます。
眠気だけでなく、だるさや倦怠感、ふらつき、集中力低下なども生じます。
朝まで眠気が続けば頭重感や頭痛を感じることもあります。

持ち越し効果は、半減期(薬が効く時間の目安)の長い睡眠薬で多く認められます。
ロゼレムは半減期が1~2時間前後と非常に短いため、持ち越しを起こす頻度は多くありません。

持ち越しは、特に睡眠時間が短い方で起こりやすくなりますし、
おくすりを分解する力が弱い方などでも起こりやすくなります。

おくすりを分解・排泄する力が弱い人というのは、元々の体質もありますので、
いつもおくすりが効きやすいという方はあらかじめ主治医に伝えておくべきでしょう。

他にも肝臓や腎臓が弱っている方は、分解・排泄能力が落ちてしまいますので
持ち越し効果が起こりやすくなります。

眠気が日中に持ち越してしまう場合、一番の対処法は「睡眠時間をより多くとる」ことです。

例えば、4時間睡眠で、翌朝に持ち越してしまっているようであれば、
6時間以上眠るなど睡眠時間を増やすようにしてみましょう。

当たり前のことですが、睡眠時間を多く取れれば持ち越しは起きにくくなります。
これが、一番確実で効果のある対処法になります。

どうしても睡眠時間を確保できない、という方は
睡眠薬の変更が次の対策になります。

メラトニン受容体作動薬という種類の睡眠薬は、2014年現時点ではロゼレム以外ありませんので、
ベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系など、別の種類の睡眠薬などを検討する事になります。

理論的には服薬量を減らしてみるという方法も有効ですが、
我が国においてはロゼレムの適正用量は8mgのみですので、
保険診療上は用量を変えるのは難しいでしょう。

2.ロゼレムは耐性・依存性形成は生じるのか?

多くの睡眠薬で、耐性や依存性という副作用が問題となってます。

1950年代頃より使われているバルビツール系睡眠薬は、作用が強力な代わりに
耐性・依存性形成も強い事が知られています。

現在もよく使われているベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬も
バルビツール系と比べれば安全性は高いものの、耐性・依存性があります。

多くの睡眠薬に言える事ですが、長期的に見ると「耐性」「依存性」は睡眠薬の一番の問題なのです。

ちなみに耐性というのは、身体が徐々に薬に慣れてしまう事です。
最初は1錠飲めばぐっすり眠れていたのに、だんだんと身体が慣れてしまって
2錠、3錠飲まないと眠れなくなり、必要量がどんどん増えてしまう状態です。

依存性というのは、次第にその物質なしではいられなくなる状態をいいます。

耐性も依存性もアルコールで考えると分かりやすいかもしれません。

アルコールにも強い耐性と依存性があります。

アルコールを常用していると、次第に最初に飲んでいた程度の量では酔えなくなるため、
次第に飲酒量が増えていきます。これは耐性が形成されているという事です。

また、飲酒量が多くなると、飲酒せずにはいられなくなり、常にアルコールを求めるようになります、
これは依存性が形成されているという事です。

この耐性、依存性ですが、
ロゼレムにおいては耐性や依存性は認めないと言われています

これはロゼレムの大きな利点です。

眠気やふらつき、頭痛などの副作用はあり得るものの頻度が少ない。
耐性や依存性の形成もない。

安全性を優先するのであれば、ロゼレムはまず候補に挙がる睡眠薬と言っていいでしょう。