ドラールの副作用【医師が教える睡眠薬の全て】

ドラールの副作用

ドラール(一般名:クアゼパム)はベンゾジアゼピン系という種類に属する睡眠薬です。

ベンゾジアゼピン系は効果も程良く、重篤な副作用も少ないため、現在でも不眠治療の主役になっているおくすりです。

しかし副作用がまったくないわけではありません。医師の指示のもとで正しく使わないと、副作用に苦しむことになってしまいます。

ここではドラールの主な副作用や、その対処法について紹介していきます。

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1.ドラールの副作用とその対処法

副作用が全く無いおくすりは無く、どんなおくすりでも副作用は起きえます。ドラールは特に副作用が多いおくすりではありませんが、おくすりである以上、主治医の指示を守って正しく使用する必要があります。

ドラールの副作用総評

ドラールの特徴は、その作用時間の長さにあります。半減期(おくすりの作用時間の目安になる値)は約37時間前後と言われており、これは睡眠薬の中でも最長クラスです。

作用時間が長いということは、長く眠れる反面で眠気が日中に持ち越しやすいという事でもあります。「日中の眠気」はドラールに見られやすい副作用であり、注意しなくてはいけません。

しかし、半減期が長い睡眠薬は依存形成しにくい傾向があるため、ドラールは依存性が低いという利点もあります。

ドラールは上記のような特徴はあるものの、標準的な強さの睡眠薬です。医師と相談の上、必要な期間のみ内服するのであればリスクは大きくはないでしょう。

それでは、ドラールの副作用をひとつずつ詳しくみていきましょう。また、対処法についても考えていきます。

Ⅰ.眠気

睡眠薬の副作用で一番多いのが眠気です。ドラールは長時間型の睡眠薬であるため眠気は特に注意する必要があります。

夜に睡眠薬を飲んで眠くなる。これは睡眠薬の「効果」ですから問題ありません。しかし、「起床時間になってもまだ眠くて起きれない」「日中眠くて仕事に集中できない」となると問題で、これは副作用になります。

日中まで睡眠薬の効果が残ってしまう事を「持ち越し効果(hang over)」と呼びます。眠気だけでなく、だるさや倦怠感、ふらつき、集中力低下なども生じます。

持ち越し効果は、半減期の長い睡眠薬で多く認められます。ドラールは半減期が37時間前後と非常に長いため、持ち越しを起こす頻度が多めです。

特に睡眠時間が短い方では起こりやすくなりますし、おくすりを分解する力が弱い方なども持ち越しが起こりやすくなります。おくすりを分解・排泄する力が弱い人というのは、元々の体質もありますので、いつもおくすりが効きやすいという方はあらかじめ主治医に伝えておきましょう。

また、肝臓や腎臓が弱っている方は分解・排泄能力が落ちてしまいますので、持ち越し効果が起こりやすくなります。

眠気が日中に持ち越してしまう場合、一番の対処法は「睡眠時間をより多くとる」ことです。例えば、6時間睡眠で、翌朝に持ち越してしまっているようであれば、7~8時間と睡眠時間を増やしましょう。

当たり前のことですが、睡眠時間を多く取れれば持ち越しは起きにくくなります。これが、一番確実で効果のある対処法になります。

どうしても睡眠時間を確保できない、という方は半減期のより短い睡眠薬に変えることが次の対策になります。

ドラールは半減期が約37時間と最長クラスです。ほとんどの睡眠薬はドラールよりも半減期が短いため、他の睡眠薬に変更すれば持ち越しを少なくできる可能性があります。

また、服薬量を減らしてみるという手もあります。例えばドラール30mgを内服しているのであれば20mgや15mgに減量してみます。量を減らすと効果も弱くなってしまいますが、持ち越す可能性も少なくなります。

Ⅱ.耐性・依存性形成

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、すべて耐性や依存性が形成される危険性があります。長期的に見ると「耐性」「依存性」は睡眠薬の一番の問題と言ってもいいでしょう。

バルビツール系睡眠薬などと比べると、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の耐性・依存性形成はかなり少なくなりましたが、それでも起こさないわけではありません。

耐性というのは、身体が徐々に薬に慣れてしまって効きが悪くなる事です。耐性が生じると、最初は1錠飲めばぐっすり眠れていたのに、だんだんと効きが悪くなり、2錠、3錠飲まないと眠れず、必要量がどんどん増えてしまいます。

依存性というのは、その物質がないと居ても立ってもいられなくなってしまい、その物質を手放せなくなる状態です。

耐性も依存性もアルコールで考えると分かりやすいかもしれません。アルコールにも耐性と依存性があります。

アルコールを常用していると、最初に飲んでいた程度の量では酔えなくなるため、次第に飲酒量が増えていきます。これは耐性が形成されているという事です。

また、飲酒量が多くなると、飲酒せずにはいられなくなり、常にアルコールを求めるようになります。これは依存性が形成されているという事です。

耐性、依存性は、

  • 睡眠薬の効果が強いほど起こりやすい
  • 睡眠薬の量が多いほど、服薬期間が長いほど起こりやすい
  • 睡眠薬の半減期が短いほど起こりやすい
  • 非ベンゾジアゼピン系よりもベンゾジアゼピン系の方が起こりやすい

と考えられています。

そのため、特に気を付けるのが超短時間型のベンゾジアゼピン系睡眠薬を大量に飲んでいるケースです。代表的なものでいうとハルシオンなどは特に気を付けないといけません。

また、サイレース/ロヒプノールもベンゾジアゼピン系の中では強い効果を持つため、依存を形成しやすく注意が必要です。

ドラールはというと、ベンゾジアゼピン系には属しますが、半減期が非常に長いため、医師の指示通りに正しく内服をしていれば、依存形成が起こる頻度はそこまで多いわけではありません。むしろ睡眠薬の中では依存形成は起こしにくい部類に入ります。

睡眠薬で耐性・依存を形成しないためには、まず「必ず医師の指示通りに服用する」ことが鉄則です。

アルコールも睡眠薬も、量が多ければ多いほど耐性・依存性が早く形成される事が分かっています。医師は、耐性・依存性を起こさないような量を考えながら処方しています。それを勝手に倍の量飲んだりしてしまうと、急速に耐性・依存性が形成されてしまいます。

アルコールとの併用も危険です。アルコールと睡眠薬を一緒に使うと、これも耐性・依存性の急速形成の原因になると言われています。

また、「漫然と飲み続けない」ことも大切です。睡眠薬はずっと飲み続けるものではなく、不眠の原因が解消されるまでの「一時的な」ものです。

定期的に「睡眠薬の量を減らせないか」と検討する必要があり、本当はもう睡眠薬が必要ない状態なのに漫然と内服を続けているということは避けるべきです。服薬期間が長期化すればするほど、耐性・依存形成のリスクが上がります。

Ⅲ.もうろう状態、一過性前向性健忘

睡眠薬を内服したあと、自分では記憶がないのに、歩いたり人と話したりする事があります。もうろう状態、一過性前向性健忘などと呼ばれる現象です。

健忘とは、記憶障害の事です。前向性健忘とは、ある時点(睡眠薬内服時)以降の記憶が障害された(≒記憶がなくなっている)状態ということです。

最高血中濃度到達時間が早い睡眠薬(即効性のある睡眠薬)に多く見られるため、超短時間型のベンゾジアゼピン系に多いと言われています。また大量に飲んでいたり長期間飲んでいると起きやすいようです。

睡眠薬は脳を中途半端に眠らせてしまう期間があり、この中途半端な覚醒状態が「もうろう状態」「一過性前向性健忘」を引き起こします。この「中途半端な覚醒状態」は睡眠薬の内服直後に一番起こりやすいと言われています。

内服直後は、おくすりの効きがまだ不十分だからです。睡眠薬は中途半端ながらも効いているため、身体は動くんだけど脳はほとんど眠ってしまっているため記憶には残りません。

これが、もうろう状態や一過性前向性健忘の正体です。

ドラールは最高血中濃度到達時間が3.6時間前後と遅く、ゆっくり効き始める睡眠薬です。そのため、もうろう状態や一過性前向性健忘は起こりにくいと考えられています。

万が一ドラールでこれらの症状が起こってしまったら、量を減らす事が対応策となります。睡眠薬の種類を変えるのも手になりますが、ほとんどの睡眠薬はドラールよりも早く効き始めるため、かえって悪化してしまう可能性もあります。

健忘が起こると、自分は全く覚えていないため、患者さんは「自分がおかしくなってしまったのでは・・・」と不安になりますが、睡眠薬が中途半端に効いた結果起こっただけですので、心配はいりません。

脳がおかしくなってしまったのではなく、睡眠薬の副作用で起こっただけです。この状態を放置すれば問題となりえますが、眠剤を変えたり量を減らしたりと適切な対応を取れば後遺症が残ったりすることはありません。

Ⅳ.ふらつき、転倒

ベンゾジアゼピン系睡眠薬には、眠らせる「催眠作用」以外にも、

  • 筋弛緩作用 (=筋肉をゆるめる)
  • 抗不安作用 (=不安を和らげる)
  • 抗けいれん作用 (=けいれんをおさえる)

といった働きがあります。
それぞれの作用の強さは、睡眠薬の種類によって様々です。

ドラールにも、催眠作用の他のこの3つの作用がありますが、その作用の強さは弱めであり、他のベンゾジアゼピン系睡眠薬と比べて特別に強いことはありません。

ベンゾジアゼピン系はGABA-A受容体にくっつくことで効果を発揮するのですが、更に詳しくみるとω1受容体とω2受容体という2つのくっつくところがあります。ω1受容体は主に催眠作用を持ち、ω2受容体は主に抗不安、筋弛緩作用を持つと言われています。

ドラールはベンゾジアゼピン系の中でω1受容体に対する選択性が高いと言われており、そのため筋弛緩作用は少なく、ふらつきが起こりにくいという特徴があります。

適度に不安をとってくれたり、筋肉の緊張をほぐしてくれるのは良い作用でもあるのですが、筋肉を緩めることで、ふらつきやすくなったり、転びやすくなったりするということでもあります。

ω1受容体選択性が高いとは言っても、ドラールは半減期が約37時間と長いため、1日中効果が続いてしまう事も多く、日中のふらつき・転倒の原因になりえるため、注意する必要があります。

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