ドラールの半減期・作用時間【医師が教える睡眠薬の全て】

ドラールは長時間型に分類されている睡眠薬です。

長時間型は半減期が24時間以上のものが多いのですが、ドラールの半減期は約37時間と長時間型の中でも最長クラスの長さを持ちます。

半減期とは、内服したおくすりの血中濃度が半分になるまでの時間のことで、これはおくすりの作用時間とある程度相関します。

半減期が分かると、そこからそのおくすりの様々な特徴が見えてくるため、半減期はとても重要な情報なのです。

ここでは、ドラールの半減期や他睡眠薬との比較、そこから考えられるドラールの効果的な使い方について紹介していきます。また、「半減期」の意味についてもみていきましょう。

1.ドラールの半減期と作用時間

睡眠薬は半減期(≒作用時間)で大きく4種類に分類されています。

  • 超短時間型・・・半減期が2-4時間
  • 短時間型 ・・・半減期が6-10時間
  • 中時間型 ・・・半減期が12-24時間
  • 長時間型 ・・・半減期が24時間以上

半減期は、おくすりの血中濃度が半分になるまでにかかる時間のことです。血中濃度が半分にまで落ちると薬の効果はある程度消失するため、半減期はおくすりの作用時間とある程度一致すると考えられています。

おおまかに「半減期」≒「おくすりの作用時間」と考えてよいでしょう。

おくすりが身体がから抜けていくスピードは個人差があるため、半減期はあくまでも目安に過ぎませんが、おくすりを作用時間で選択する際に大きな指標になる数値なのです。

ドラールは「長時間型」の睡眠薬に分類されています。服薬してから3.4時間ほどで血中濃度が最高値になり、半減期は約37時間です。

長時間型の中でも最長クラスの半減期を持ち、とにかく長く効き続けることが特徴です。また、即効性はほとんどありません。

2.睡眠薬の半減期一覧

睡眠薬は、半減期によって4種類に分類されることをお話しました。主な睡眠薬の半減期を比較してみると下図のようになります。

睡眠薬最高濃度到達時間作用時間(半減期)
ハルシオン1.2時間2.9時間
マイスリー0.7-0.9時間1.78-2.30時間
アモバン0.75-1.17時間3.66-3.94時間
ルネスタ0.8-1.5時間4.83-5.16時間
レンドルミン約1.5時間約7時間
リスミー3時間7.9-13.1時間
デパス約3時間約6時間
サイレース/ロヒプノール1.0-1.6時間約7時間
ロラメット/エバミール1-2時間約10時間
ユーロジン約5時間約24時間
ネルボン/ベンザリン1.6±1.2時間27.1±6.1時間
ドラール3.42±1.63時間36.60±7.26時間
ダルメート/ベジノール1-8時間14.5-42.0時間

睡眠薬によって、半減期や最高濃度到達時間が様々であることが分かります。

最高濃度到達時間が早いお薬は「即効性がある」と言えます。例えばマイスリー、アモバン、ハルシオンなどの「超短時間型」は1時間前後で血中濃度が最高値になるため、「すぐに寝付きたい」という方に向いています。

しかし半減期が3~4時間ですから、長く眠りたい方には向いていません。

反対に、長く眠る事を目的にする場合は、エバミール/ロラメットやリスミー、ユーロジンなどが
第一選択としては向いていることが分かります。

ドラールはというと、3.4時間ほどで効きが最高値に達し、薬効が37時間程度も続きます。即効性がほとんど期待できない代わりに、持続力はかなりのものですね。

睡眠薬はそれぞれ微妙に特徴が違いますので、主治医とよく相談して自分に合いそうな睡眠薬を選びましょう。

3.半減期から考えるドラールの使い方

不眠は大きく分けると2つのタイプがあります。

一つ目が「寝付けない」タイプで、「入眠障害」と呼ばれます。
二つ目は「寝付けてもすぐに目覚めてしまう」タイプで、「中途覚醒」と呼ばれます。

教科書的には、

入眠障害には超短時間型か短時間型、
中途覚醒には中時間型や長時間型

が適していると書かれており、まずはこのセオリーに沿っておくすりを決めていきます。

ドラールは「長時間型」に属するため、セオリー通りであれば中途覚醒に使われるべきです。実際もドラールは即効性に乏しく入眠障害にはほとんど効果がありませんので、夜中に起きてしまうのを改善したい、長く眠りたい、という中途覚醒タイプに使用されます。

しかし37時間という半減期は長すぎることも多く、中途覚醒の第一選択として使われることは少ないようです。まずはもう少し半減期の短い中時間型などから試してみて、それでも効果が短い場合にはドラールなどが検討されます。

その他、ドラールは半減期が長い分、依存性が少ないと言われていますので、依存形成が心配な方に使用されることもあります。睡眠薬の使用が長期に渡っていて依存が懸念される方や、依存が怖いからなるべく依存が少ない睡眠薬にしたいという方などですね。

4.半減期とは?

せっかくなので「半減期」について勉強してみましょう。

半減期というのは「おくすりの血中濃度が半分になるまでに要する時間」のことです。

半減期は、おくすりの作用時間とだいたい一致するため、半減期が分かれば作用時間がだいたい推測できます。

例えば、下記のような薬物動態を示すお薬があるとします。

半減期イメージ

だいたいのお薬は内服すると、このグラフのようにまず血中濃度がグンと上がり、それから徐々に落ちていきます。

このお薬は、投与10時間後の血中濃度は「10」ですが、投与20時間後には血中濃度は半分の「5」に下がっています。血中濃度が半分になるのに要する時間は「10時間」ですので、このお薬の半減期は「10時間」です。

そして半減期が10時間ということは「だいたい10時間くらい効くおくすり」なんだと分かります。

正確には半減期と作用時間の長さは完全に一致するわけではありません。

実際は、おくすりを飲むとまずは血中濃度は上がり最高血中濃度に到達してそれから下がっていきますので、厳密に言えば最高濃度に到達するまでの時間も加味しなければいけないでしょう。

もっと言えば、すべての人が、血中濃度が半分になったら薬効を感じなくなるとは言えません。血中濃度がどれくらい下がれば薬効を感じなくなるかは人それぞれでしょう。半分の人もいれば、それ以上・それ以下の方もいます。

更に個々人の体質や代謝能力まで考え出すとキリがなく、そうなると作用時間を数値化することは不可能です。

でも、「どれくらいの効くかは、人それぞれですから分かりません」では話にならないので、ひとつの目安として、半減期を使用しているのです。

細かいことを考え出せばキリがありませんが、あまり難しく考えずざっくりと「だいたい半減期が作用時間と同じくらいだ」と考えていいのではないかと思います。

半減期はあくまでも目安で、絶対的な値ではないという事は気を付けてください。お薬を分解する力が強い人もいれば弱い人もいます。人によって差があります。

特に肝臓が悪い方は、お薬を分解する力が弱まっているため、一般的に半減期よりも長い時間お薬が身体に残ってしまいます。