ドラール錠は1999年に発売された睡眠薬で、ベンゾジアゼピン系という種類に属します。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、脳のGABA受容体をいう部分を増強することで催眠作用を発揮します。効果も良く、重篤な副作用も少ないため、不眠治療によく使われるおくすりです。
ここではドラール錠の効果の強さや他の睡眠薬との比較などを紹介します。
1.ドラール錠の特徴
睡眠薬にはたくさんの種類があり、それぞれ特徴が異なります。睡眠薬を選択する際は、主治医とよく相談して自分に合ったものを選ぶことが大切です。数ある睡眠薬の中で、ドラール錠はどのような位置づけのおくすりなのでしょうか。
ドラールの最大の特徴は、その作用時間の長さにあります。
だいたいの睡眠薬は、人の睡眠時間に合わせて数時間~10時間前後の作用時間になっています。しかしドラールは約30~40時間という非常に長い作用時間を持っています。
作用時間が長いと日中にも眠気が残ってしまうデメリットがありますが、一方で長く効くおくすりは依存を形成しにいため、ドラールは依存形成を起こしにくいというメリットがあります。
また、効き始めが遅いのも特徴です。即効性のある睡眠薬であれば、飲んでから1時間以内に血中濃度が最高値に達するものもありますが、ドラールは血中濃度が最大値に達するまでに約3.6時間かかります。
即効性は乏しく、ゆっくりと効き始め、長く効き続ける。依存性は少なめ。ドラールはこのようなおくすりなのです。
2.ドラールの作用時間
睡眠薬は半減期(≒作用時間)で4種類に分類されます。
超短時間型・・・半減期が2-4時間
短時間型 ・・・半減期が6-10時間
中時間型 ・・・半減期が12-24時間
長時間型 ・・・半減期が24時間以上
半減期というのは、おくすりの血中濃度が半分になるまでにかかる時間のことで、「おおよそのおくすりの作用時間」の目安として使われています。
ドラールは「長時間型」の睡眠薬に分類され、服薬してから約3.6時間ほどで血中濃度が最高値になり、半減期は約37時間前後です。
ゆっくりと効き始め、非常に長く効き続けることがドラールの特徴です。
飲んでから効果が最大となるまで約3.6時間かかるため、即効性は期待できません。入眠障害には不適です。しかし、作用時間が長いため、夜中に何度も起きてしまう方や長く眠りたいという方には効果が期待でき、中途覚醒や早朝覚醒には向いています。
しかし約37時間という半減期は長すぎるため、日中にまで眠気が残ってしまう可能性は高いと言えます。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬には多少の抗不安作用もあるため、上手く使えば夜はゆっくり眠れて、日中も多少の抗不安作用を発揮してくれるという事もありますが、日中の眠気によるふらつきや転倒には注意が必要なおくすりです。
3.睡眠薬の作用時間比較
よく使われる睡眠薬の作用時間を比較してみましょう。
睡眠薬 | 最高濃度到達時間 | 作用時間(半減期) |
---|---|---|
ハルシオン | 1.2時間 | 2.9時間 |
マイスリー | 0.7-0.9時間 | 1.78-2.30時間 |
アモバン | 0.75-1.17時間 | 3.66-3.94時間 |
ルネスタ | 0.8-1.5時間 | 4.83-5.16時間 |
レンドルミン | 約1.5時間 | 約7時間 |
リスミー | 3時間 | 7.9-13.1時間 |
デパス | 約3時間 | 約6時間 |
サイレース/ロヒプノール | 1.0-1.6時間 | 約7時間 |
ロラメット/エバミール | 1-2時間 | 約10時間 |
ユーロジン | 約5時間 | 約24時間 |
ネルボン/ベンザリン | 1.6±1.2時間 | 27.1±6.1時間 |
ドラール | 3.42±1.63時間 | 36.60±7.26時間 |
ダルメート/ベジノール | 1-8時間 | 14.5-42.0時間 |
作用時間が睡眠薬によって様々であることが分かります。
最高濃度到達時間が早いお薬は、「即効性がある」と言えます。ハルシオン、ルネスタ、マイスリー、アモバンなどの「超短時間型」は1時間前後で血中濃度が最高値になるため、「すぐに寝付きたい」という方に向いています。
しかし、3~4時間で効果が切れてしまいますから長くぐっすり眠りたい方には不適であることが分かります。
反対に7~8時間ぐっすり眠りたい場合は、リスミー、サイレース/ロヒプノールやデパス、ロラメット/エバミール、ユーロジンなどの睡眠薬が適していることが分かります。
ドラールは即効性は皆無ですので、寝付きの改善に用いるのは不適です。寝付きを改善したい場合は、超短時間型や短時間型を用いるべきでしょう。
しかし半減期が長いため、夜中に何度も起きてしまう方であったり長く眠りたい方には向いています。長く効きすぎて日中にも眠気が持ち越してしまう可能性がありますので、注意して使用しましょう。
睡眠薬はそれぞれ特徴が違いますので、主治医と相談して自分に合うものを選ぶことが大切です。
4.ドラールの強さは?
ドラールの睡眠薬としての強さはどのくらいなのでしょうか?
おくすりの効きは個人差が大きいため一概には言えませんが、一般的には睡眠薬の中で「中等度(普通)」くらい強さであることが多いようです。
現在の不眠治療は、ベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系睡眠薬が主流となっていますが、これらの睡眠薬はどれも薬効の強さには大きな差はないと言われています。
睡眠薬は強さはどれも同じくらいで、「強さがピークになる時間帯」や「効果が続く時間」が違うだけです。
この図のように、睡眠薬はどれもピーク時の強さには大きな差はありません。強さがピークになる時間帯が違うのです。
そのため、もし睡眠薬の効果を強めたい場合は、睡眠薬の種類を変えるよりも「量を増やす」方が効果的です。ドラールは30mgまでの量の間で使いますが、量を増やせばそれだけ効果は強くなります。
ただし量を増やせば効果も強くなりますが、副作用も現れやすくなります。そのため、まずは少量から開始し、効果が不十分な場合に限り増量するようにして下さい。
5.ドラールが向いている人は?
ドラールを使うケースは主に次の3つが考えられます。
Ⅰ.中途覚醒の改善のため
Ⅱ.中途覚醒の改善+日中の不安軽減のため
Ⅲ.依存予防のため
もちろんこれ以外の使い方もあり得るため、詳しくは主治医の指示に従って頂きたいのですが、ここでは主にこの3つの使い方について説明します。
Ⅰ.中途覚醒の改善のため
不眠には2つのタイプがあります。
一つ目が「寝付けない事」で、これは「入眠障害」とも呼ばれます。そして二つ目は「寝てもすぐに起きてしまう事」で、これは「中途覚醒」と呼ばれます。
一般的には、
- 入眠障害には超短時間、短時間型
- 中途覚醒には中時間型、長時間型
の睡眠薬が適していると言われています。
ドラールは長時間型ですから、セオリー通りに考えると、「夜中に何回も起きてしまう」という中途覚醒タイプの不眠に向いていることになります。
実際もその通りで、即効性はないため入眠障害に使っても効果はほとんど期待できません。中途覚醒の改善に用いられる場合がほとんどです。
しかしドラールは睡眠薬の中でトップクラスに長い半減期を持ちます。約37時間というのは人の睡眠時間から考えると明らかに長すぎます。おくすりが長く効くという事は、くすりの効果が日中にも持ち越しやすいということでもあります。
夜は眠れるようになったけど、日中も眠くて仕方ない。これでは困ります。
そのため、一般的な中途覚醒の治療をする場合は、まずはもう少し半減期の短いものを試してみて、それでも「効きが短い」と感じる場合に、ドラールを検討することが多いようです。
例えばまずは半減期が10時間前後のリスミーやロラメット/エバミールなどからはじめて、それでも「このおくすりでは効果がまだ短い」と感じるのであれば、ドラールは役立つかもしれません。
このようにドラールは不眠の薬物治療を行う際、まず最初に使うおくすりというよりは、他の睡眠薬で不十分であったときの二番手として使われることが多いようです。
Ⅱ.中途覚醒の改善+日中の不安軽減のため
ベンゾジアゼピン系睡眠薬は抗不安作用(不安を和らげる作用)を多少持っています。もちろんドラールにも軽い抗不安作用があります。そのため、日中の不安も少し抑えたいという場合にはドラールは試す価値はあります。
上手く効けば、夜は催眠作用で中途覚醒を改善し、日中は抗不安作用で不安を改善してくれるということが期待できるからです。
Ⅲ.依存予防のため
一般的に半減期の長いベンゾジアゼピン系は依存形成を起こしにくいと言われています。睡眠薬の中で最長クラスの半減期を持つドラールは、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の中で依存を一番起こしにくいと言えます。
睡眠薬の使用が長期に渡ってしまい、依存形成などが心配である場合は、ドラールなどの半減期の長い睡眠薬に切り替えることがあります。
(注:ページ上部の画像はイメージ画像であり、実際のドラール錠とは異なることをご了承下さい)