パニック障害を治すために、患者さんに持って欲しい治る考え方

パニック障害を治す考え方

パニック障害は、現在では精神疾患の1つとし明確に位置付けられており、その治療法についてもある程度確立されています。

しかし、同じような治療を行ったとしても、患者さんの疾患に対するとらえ方・考え方で治療の成功率は大きく異なります。

精神疾患の治療の際に、「自分がもっとしっかりしなければ」「甘えちゃダメだ」と自分を厳しく律するような考えで治療に望む方は少なくありません。しかし精神が不安定な時にプレッシャーをかけすぎてしまうと、治療にかえって悪影響を与えてしまうことがあります。

パニック障害の治療でも同じで、疾患に対する正しい理解をして、自分を不必要に責めることのないような正しい考え方を持って治療に望まないといけません。そうしなければ、せっかく良いお薬を使っても、良い精神療法を受けても、良い結果にはならないでしょう。

今日はパニック障害の治療を行う時、患者さんはどのような考え方を持って取り組んで頂きたいのかをお話させていただきます。

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1.パニック障害が悪化する悪循環を理解する

病気の治療を行う時、その病気について正しく理解することは非常に重要です。自分が今から立ち向かっていく相手が、どのような性質を持っている相手なのかを分かっていなければ、勝率は大きく低下してしまうでしょう。

中でもよく見かける誤解があります。それは、「パニック障害って気持ちの問題なんじゃないだろうか」「自分の根性が足りないだけなんじゃないだろうか」というものです。こういった間違った考えを持ったまま治療に望むことは絶対に避けなければいけません。

パニック障害は、「気持ちのゆるみ」や「甘え」「根性が足りない」ために生じるものではありません。パニック障害は「脳の病気」であり、病気である以上適切に治療をする必要があります。

実際、パニック障害に対してSSRIなどのお薬や認知行動療法・暴露療法などの精神療法は一定の効果を認め、これらはパニック障害に対する有効な治療であることに間違いはありません。

しかし精神疾患は目に見えないし、数値化も出来ないものであるため、「もしかして自分が甘えているだけなんじゃないか・・・」と考えてしまう人は少なくないのです。

パニック障害の治療に薬物療法や精神療法が有効なのは間違いありませんが、病気に対して正しい理解をしていないと、「自分が悪いんだ」という自責の気持ちから治療経過が悪くなってしまうことがあるのです。

パニック障害は、突然に生じるパニック発作が繰り返される中で、「また発作が起きたらどうしよう」と不安が強くなってしまい(予期不安)、次第に一人では外に出ることが出来なくなってきます。また、発作がいつ起こるか分からないことの恐怖から、常に誰かと一緒にいないと不安になってしまうこともあります。

この状況で、

「一人で外に出れないなんて、自分は情けない・・・」
「家族に頼ってばかりで申し訳ない・・・」

このように考えてしまう方は多いでしょう。

こう考えてしまう気持ちはとても良く分かります。しかし、このような考えを続けていると、自己評価がどんどん低下していきます。自分に対して価値を感じられなくなっていき、その結果出来ないことが更に増えていき、より誰かに頼らないといけなくなっていくのです。

そして、それに対して更に自己評価が低下し・・・、となり、どんどんとパニック障害悪化の悪循環に陥っていきます。

パニック障害がなかなか治らない方は、高い確率でこの悪循環に陥っています。もしあなたがパニック障害を患っていて、なかなか改善しないことを悩んでいるのであれば、この悪循環に陥っていないか、自分自身を見直してみて下さい。

パニック障害の悪循環に至る考え方

2.悪循環を断ち切るためにはどう考えればいいのか

この悪循環に嵌まってしまうと、パニック障害がどんどん悪化していくのは明らかでしょう。

例え有効なお薬を使い、有効な精神療法をしていたとしても、十分な改善が得られずパニック障害はいつまでも治らないでしょう。

ではパニック障害を治すためには、どのように考えていけばいいのでしょうか。

上の悪循環の図をもう一度しっかり見直してみてください。この悪い循環が問題なのですから、どこかを断ち切るしかありません。

この悪循環から脱出するための第一歩は、病気に対しての正しい理解をすることです。

「今まで出来ていた事が出来なくなって情けない・・・」
「家族や友人などに頼ってしまって申し訳ない・・・」

このような考えが浮かぶのは、どこかでパニック障害を

「自分の気持ちの問題では?」
「自分が甘えているだけでは?」

と考えてしまっているからであることに気付きましょう。これはパニック障害を正しく認識しているとは言えません。「パニック障害は脳の病気なのだ」と改めて正しく理解する必要があるでしょう。

あなたの気持ちがたるんでいるから、出来ないのではありません。あなたに根性が無いから他者に頼っているのではないのです。パニック障害という病気は、不安や恐怖をどんどん呼び込み、今まで普通に行えていた行動が行えなくなってしまう病気なのです。

  • 恐怖で外に出れない
  • 怖くて一人だと電車に乗れない
  • 誰かと一緒じゃないと落ち着かない

これは甘えではありません。「病気の症状」です。ここを勘違いせずに、正しく理解しましょう。

確かに、ある程度病気が改善してきたら、「一人でも頑張ってみよう」と努力しなくてはいけない時期はあります。しかしそれはある程度改善してからの話であって、不安や恐怖で頭がいっぱいになっている時にすべきことではありません。

「今まで出来ていた事が出来なくなって情けない・・・」ではなく、「病気なのだから、今まで出来ていたことが今は出来なくても仕方ないのだ」と考えましょう。

「家族や友人などに頼ってしまって申し訳ない・・・」と考えるのではなく、「今は他者にある程度頼るのは仕方がない。自分が元気になったらしっかり恩返ししよう」と考えてください。

そうすることで、悪循環は徐々に好循環に変わっていきます。

パニック障害の好循環の考え方

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3.パニック障害は病気だと言う事をしっかり理解しよう

パニック障害などの精神疾患では、「自分が病気であることを受け入れる」ということが非常に大切になってきます。この意識を持って頂けるかどうかで、治療成功率は大きく変わることを私は患者さんの診察をしている中で強く感じています。

実はこれ、みなさん頭では分かっているようで意外と出来ていないのです。

「私はパニック障害です」と口では言っていても、心のどこかで受け入れができていない、というケースは非常に多いのです。

内科など他の科の病気というのは、目に見えやすいため、受け入れやすいと言えます。

血圧を測って、160/100mmHgであったのであれば、自分は高血圧だと受け入れられます。血液検査で血糖が糖尿病の診断を満たす数値であったのであれば、自分は糖尿病だと受け入れざるを得ないでしょう。これらは、「数値」という目に見える結果があるため、受け入れることが出来るのです。

他にも、レントゲン検査で骨が折れている所見があれば、「自分は骨折したのだ」と受け入れるでしょう。レントゲンで骨折がハッキリと写っているのに「いや、俺の骨が折れているはずがない!」と言う人はいません。胸のCTを撮って、肺の中に炎症所見があるのを確認したら、「自分は今、肺炎を起こしているのだな」と受け入れるはずです。

このような疾患は、目に見えるため、発症したら受け入れざるを得ません。

しかし精神疾患は目に見えません。更に精神疾患にかかってしまう方は自分に厳しい方や一生懸命な方が多いため、「これは自分の気持ちの問題なのでは?」「自分が甘えているだけなのでは?」と考えてしまうのです。そしてそれは、「自分は本当は病気なんじゃなくて、気持ちの問題なのではないか・・・」という誤解を生みだしてしまうのです。

病気であるにも関わらず、「自分は甘えている」「自分は根性がない」と考えてしまうのは、病気を受け入れていないということです。病気を受け入れていない状態で、いくら外から治療を施しても、その効果は十分に発揮されるはずがありません。

理屈では、「パニック障害は脳の病気」と理解してはいても、心の底では「自分の問題では?」と受け入れが出来ていない方というのは少なくありません。

あなたはどうでしょうか。しっかりと受け入れることが出来ていますか。

しっかり受け入れられていない場合、それは治療に悪影響を与えている可能性があります。

4.他者に頼ってもいい。お薬に頼っていい

パニック障害が「甘え」なのであれば、お薬や他者などに頼るのは良くないのかもしれません。なるべく自分の力で何とかすべきでしょう。

しかしパニック障害は病気です。これは疑う余地のない事実であり、世界的にも広く認められていることなのです。

そして病気の時にある程度、出来ない事があるのは当たり前だし、他者に頼らざるを得ないのも当たり前のことです。

肺炎がひどければ、抗生物質に頼らないといけません。「自力で治す!」なんて言えば、下手すれば命を落とすことになります。

骨折をしてしまったら、手術に頼らないといけません。術後もしばらくは荷物を持ってもらったりと他者に頼る必要があります。自力で骨のズレを戻してくっつけることなど大変危険でしょう。場合によっては動脈などを傷つけ、大量出血で死んでしまうかもしれません。骨折後の腕で重いものを持つのは危険で、しばらくは他者に持ってもらわないといけません。自分で持ったりすれば、それも大変危険なことです。

骨折した時、現実でこんなことをする人がいれば大問題となりますよね。でも、この大変危険なことを同じようなことが精神疾患では行われてしまっているのが現状なのです。

パニック障害は病気ですから、これらと同じ扱いであるべきなのです。病気になのに、自力だけで治そうとするのはおかしいし、他者の助けをかりないのもおかしいことですよね。

骨折であれば、素直に受け入れられることが、精神疾患になった途端、受け入れることに違和感を感じてしまう方が多いのです、しかしこれはどちらも同じ病気なのですから、同じように考えてください。

病気がひどい時は、お薬を飲まないといけません。お薬に頼らなければ、いつまで経っても治りません。パニック障害が悪化すれば、不安や恐怖から死にたくなってしまうことだってあります。パニック障害は放置すれば、最悪の場合命を落とすことだってあるのです。だから、しっかりと治療しなければいけません。

パニック障害で、気持ちが不安定である時に、ある程度他者を頼ることは仕方がないことでしょう。無理して自分で何でもやろうとすれば、より気分が不安定になってしまい、心はいつまで経っても安定しないでしょう。

パニック障害は病気なのですから、お薬に頼るべきだし、他者にも頼るべきなのです。

パニック障害という「病気」について正しく理解し、正しい考えを持って治療に望んでくださいね。

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