適正な飲酒量ってどのくらいなの?

「お酒は飲みすぎると身体に悪い」これは誰もが知っている事でしょう。

しかし一方でアルコールは仕事の付き合いや娯楽の一環などでも利用されることが多く、全ての人を禁酒させるのは現実的ではありません。

そのため、「適度な飲酒を心がけましょう」という事をよく言われます。

でも、この「適度」ってどのくらいの事を指すのでしょうか?

お酒の強さには体質もありますので一概には言えません。しかし、ある程度の目安を知っておく事は大切なことです。

我が国でもアルコール依存症は問題となっておりますし、米国CDC(疾病対策センター)の報告によれば生産年成人口(20歳~64歳)の死亡の1割には過剰飲酒が関与していると言われています。

長く健康を保ち、長くお酒を楽しむためにも、今日は適正飲酒について考えてみましょう。

1.自分の身体と相談する事が一番大切

適正飲酒量というのは個人差が大きくあります。

飲み会で周りを見渡してみても、ビール一杯で二日酔いになってしまう人もいれば、
何十杯飲んでも翌日にはお酒がまったく残っていなさそうな人もいます。
アルコールの強さには個人差が大きくあるのです。

一人一人で違うため、適正飲酒量を知るためには
まず第一に「自分の身体としっかりと相談すること」が大切です。

ポイントは、支障を来さない程度、です。

何事にも支障をきたさない程度に保てる飲酒量があなたの適正な飲酒量であり、
何らかに支障をきたすレベルまで至ったとすれば、それは過剰な飲酒量です。

お酒を飲んで、適度に楽しんで、他者に大きな迷惑をかけずに、安全に帰宅できる。
翌日も支障なく仕事ができる。

これは問題のない適正飲酒だと言っていいでしょう。

しかし、

〇 明らかに第三者からみて悪酔いしている
〇 途中から記憶があいまいで他者に迷惑をかけたり、イヤな思いをさせた可能性がある
〇 一人で帰宅できずに誰かに送ってもらった
〇 翌日の仕事でボーッとして集中できない、あるいは遅刻・欠勤してしまう

これは支障をきたしているため、過度な飲酒の可能性があります。

また、年に1回程度は血液検査を行い、肝臓などの内臓系にダメージがないかを確認しましょう。
アルコールが原因と思われる異常値を認めるようであれば、それは過度な飲酒といっていいでしょう。

ちなみに「アルコールは飲めば強くなっていく」と誤解している方がいますが、
基本的にこれは嘘です。

アルコールには耐性がありますので、初めて飲酒をするときと比べれば、
飲酒を続けることによって同じ量を飲んでも酔いにくくなってはいきます。

でもこれは、脳が多少アルコールに対して耐性を獲得したというだけで、
アルコールを分解する力が強くなったわけでもなければ
臓器が強くなって障害されにくくなったわけでもありません。

アルコールを分解する力は、主に肝臓の酵素の力によると言われています。
肝臓でアルコールはアルコール脱水素酵素(ADH)の作用によってアセトアルデヒドになり、
アセトアルデヒドはアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の作用によって酢酸に分解されます。
(ALDHにはⅠ型とⅡ型の2種類があります)

そして、これらの酵素の強さは生まれつきのものです。
日本人の46%の人は生まれつきALDHのⅡ型の活性が低いか欠けていると言われています。
これは努力や訓練で強くなるものではありません。

アルコールは飲み続けても分解する力が強くなるわけではなく、
耐性ができることによって見かけ上強くなったように感じるだけなのです。

耐性ができると、脳は慣れたと感じているけども、臓器は耐性獲得前と同じように弱いままですので、
「脳は気づかないけど、臓器は痛み続けている」という状態になり、より危険だとも言えます。

自分に適正な飲酒量を知り、その範囲内で楽しむのが正しい飲酒法なのではないでしょうか。

2.数値でみる「適正飲酒」

「お酒の強さは人それぞれだから、自分の身体とよく相談しなさい」

これが事実なのですが、そうは言っても何か目安が欲しいですよね。
いくつか目安になるような情報を紹介します。

日本においては、厚生労働省が推進する「健康日本21」によると、
「節度ある適度な飲酒」というのは1回量として純アルコール量20g程度としています。

社団法人アルコール健康医学協会は、1回量としての限度は純アルコール量40gまで
だとしています。

また、どちらも

〇 女性は男性よりも少ない量が適当
〇 お酒に弱い体質の人はより少量の飲酒が適正
〇 高齢者にはより少量の飲酒が適正

などと補足されています。

では具体的に純アルコール量20gというのはどれくらいでしょうか。

〇 ビール・酎ハイ(アルコール度数5%)であれば中瓶1本(500ml)
〇 ワイン・日本酒(度数15%)であれば1合(180ml)
〇 焼酎(度数25%)であれば0.6合(110ml)
〇ウイスキー(度数43%)であればダブル1杯(60ml)

この量が適正、限度はこの量の2倍までだという事ですね。

次に「過剰な飲酒」というのはどこら辺からを指すのでしょうか。

同じく厚生労働省の「健康日本21」によると
「多量飲酒」というのは1回量として純アルコール量60g以上としています。

この多量飲酒を続けていると、臓器障害やアルコール依存症のリスクが高まることが指摘されています。

また、CDC(米国疾病対策センター)によると、過剰な飲酒というのは、

〇 過量飲酒・・・男性:5杯以上/回、女性:4杯以上/回
〇 過度飲酒・・・男性:15杯以上/週、女性:8杯以上/週
〇 妊婦と未成年(法定飲酒年齢未満)の飲酒

を指すとしています。

ちなみにCDCが定義する「1杯」というのは、

〇 ビール(アルコール度数5%)なら360ml
〇 モルトリカー(度数8%)なら240ml
〇 ワイン(度数12%)なら150ml
〇 蒸留酒(度数40%)なら45ml

と説明されています。
これはあくまでアメリカ人を想定して作られたものですので、私たちにそのままあてはまるとは
言えませんが、ひとつの指標にはなりますね。

お酒を全く飲んだ事のない人は少ないでしょうし、飲み会などに全く参加した事の無い人も少数だと思います。

お酒は決して悪者ではなく、適度であれば死亡率を低下させるという報告(Jカーブ効果)もありますし
楽しい場を作る助けになってくれるものでもあります。

自分にとっての適正量を把握し、上手にお酒と付き合いましょう。