ジプレキサ(一般名:オランザピン)は主に統合失調症や双極性障害(躁うつ病)をはじめ、うつ病や認知症など幅広い疾患に用いられているお薬です。
ジプレキサは、イーライリリー社が発売しているお薬ですが、同じ会社から「ジプレキサザイディス」というお薬も発売されています。
ジプレキサとジプレキサザイディスは、一体何が違うのでしょうか。「ザイディス」とは一体なんでしょうか?
今日は、ジプレキサザイディスというお薬について説明させていただきます。
1.ジプレキサ「ザイディス」の意味
ザイディス(Zydis)というのは、お薬の製法のひとつで、「口腔内崩壊錠(OD錠)」の一種です。
インスタント食品などによく使われているフリーズドライ製法という技術がありますが、ザイディスはこれと似たような製法で、お薬の液体を凍らせてから乾燥させるというお薬の作り方のことです。
ザイディスという製法を使って作ったザイディス錠は、水に触れるとすばやく溶けるという特徴があります。
つまり、ザイディスというのは、水(唾液)に触れるとすぐに溶けるお薬の事で、水が無くても飲めることのがメリットのお薬です。口腔内崩壊錠(OD錠)とほぼ同じだと思って頂いて良いと思います。
ちなみに一般的な口腔内崩壊錠(OD錠)の中でも、ザイディス錠はより素早く溶ける部類に入るようです。
2.ジプレキサとジプレキサザイディスの違い
ジプレキサ錠は錠剤であるため、服薬する際はお水と一緒に服薬する必要があります。
ジプレキサザイディス錠は、唾液に触れるとサッと溶けるため、水が無い状況でも服薬することができます。外出先や仕事の合間などでも飲みやすいのがメリットでしょう。
しかしそれ以外にこの両者の違いはあるのでしょうか?
結論から言うと、これ以外の違いはありません。口に入れただけで溶けるか、水と一緒に飲まないといけないのか、違いはただそれだけです。
ザイディス錠について、患者さんから良くいただく質問を紹介します。
Ⅰ.お薬の効能は同じなのか?
ジプレキサとジプレキサザイディスは、お薬の効果としては全く同じなのでしょうか。
これは「全く同じ」です。
ザイディスは口に入れるとあっという間に溶けてしまうため、人によっては「飲んだ感じがしない」「効く感じがしない」と感じるようですが、薬理学的にはどちらも同じものであり同じ効果を発揮します。
服薬してからの血中濃度の推移もほぼ同等であることが研究から示されています。
Ⅱ.素早く溶ける分、ザイディスの方が即効性があるのでは?
みなさんがよく勘違いするのが、「サッと溶けるザイディスの方が即効性があるんじゃないか」という点です。
確かにサッと溶ける分すぐに効くようなイメージがあるのは理解できますが、実はどちらも効果発現までの時間に差はありません。
どちらも服薬してから3.5時間ほどで血中濃度が最大になり、半減期は30時間前後です。
(半減期・・・服薬したお薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間)
詳しくは、ジプレキサザイディス錠の添付文書に、ジプレキサ錠とジプレキサザイディス錠の血中濃度の推移が載っていますのでご覧ください。
(「ジプレキサ 添付文書」で検索すればオンライン上でも見ることができます。)
Ⅲ.薬価は同じなのか?
ジプレキサとジプレキサザイディスは、お薬の値段(薬価)は違うのでしょうか?
イメージとしては、ザイディスという技術を使って製造しているジプレキサザイディスの方が、製造コストがかかっているため高価である印象があります。
しかし、ジプレキサ錠とジプレキザイディス錠は、どちらも全く薬価です。
参考までにそれぞれの薬価を紹介します。
ジプレキサ | ジプレキサザイディス | |
2.5mg | 134.5円 | -(剤型なし) |
5mg | 251.3円 | 251.3円 |
10mg | 476.8円 | 476.8円 |
(2015年3月現在)
3.ジプレキサとジプレキサザイディスどっちを選べばいいの?
ではジプレキサとジプレキサザイディス、どちらを選べばいいのでしょうか。こういった人はこっちが良いとか、あるのでしょうか。
効能には全く差がありませんので、完全に好みで決めて頂いて構いません。
水と一緒に飲む普通の錠剤か、唾液でサッと溶ける水がいらないタイプか。違いはこれだけです。
出先で飲むことが多いとか、水がなくても飲めた方がありがたい、という方であればジプレキサザイディスがよいでしょう。しかし、普通のお薬のように錠剤タイプの方が飲んだ感じがして安心という方であればジプレキサがよいでしょう。
効果も値段も全く同じお薬ですから、医学的にはどちらを選んだ方が良いというものはありません。患者さんがそれぞれ飲み心地などの好みで選んでよいのです。