強迫性障害のチェック法と診断基準について

強迫性障害 チェック

強迫性障害(OCD)は、ある考えやイメージに強くとらわれてしまい、その考えを打ち消すために何度も繰り返し行動を起こしてしまう疾患です。

打ち消すための行動は過剰で多くの時間を浪費するため、患者さんは非常に苦しい思いをします。

代表的な症状として、「鍵をかけ忘れたのではないか」という考えが頭から離れず、何度も家に戻って鍵を確認したり、「手が汚れているのではないか」という考えが頭から離れず、何度も手洗いを繰り返したりといったものが挙げられます。

強迫性障害は「疾患」であり、俗にいう「潔癖症」「完璧主義」という性格傾向とは異なります。後者はそのような傾向はあるにしても、それによって本人が多大に苦しんだり、生活に支障を来たすことはありません。しかし強迫性障害は発症すると生活に大きな支障をきたします。

実際、強迫性障害はWHO(世界保健機関)が挙げる「生活の質と経済的損失に関わる10大疾患」の1つに位置付けられており、大きな支障を来たす疾患であることがここからも分かります。

自分が正常範囲内の完璧主義・潔癖症なのか、それとも強迫性障害なのかはどのようにして判断すればいいでしょうか。

今日は強迫性障害を自分でチェックする方法についてお話したいと思います。

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1.強迫性障害の診断はどのように行われるのか

強迫性障害の診断は、精神科医の診察によってのみ行われます。疾患の診断は医師しか行うことはできません。そのため、診断を受けるためには必ず医師(精神科医)の診察を受ける必要があります。

では精神科医はどのように強迫性障害の診断を行っているのでしょうか。簡単にではありますが、どのような手順で診察がなされているのかを紹介します。

Ⅰ.診察所見から

強迫性障害に限らず、精神疾患を診断するにあたって一番重要な情報となるのが診察所見です。

精神疾患の症状はこころの症状が主であり、目に見えるものではありません。血液検査や画像検査などでは分からないため、精神科医が入念に診察を行い、その所見をもとに診断を行います。

診察においては、本人が一番困っている症状(主訴)や、今までの経過(現病歴)、患者さんの性格や環境、精神疾患の家族歴、既往歴や服薬歴などを入念に聴取していきます。患者さんは「とらわれ」やすい状態になっている事が多く、症状や経過をお話している中でも1か所にとらわれてしまい、全体的に話すことが苦手な場合があるため、診察者もそれを踏まえた診察が望まれます。

強迫性障害の代表的な症状には、

  • 強迫観念(ある考えやイメージに過剰にとらわれてしまう)
  • 強迫行為(主に強迫観念を打ち消すための行動を繰り返す)
  • 回避行動(強迫症状が出る状況を避けるようになる)

といったものがあり、これらの症状の有無やその程度を診察を通して判断していきます。患者さん自身が、その観念や行為について「過剰だ」「非合理的だ」と認識しているかも大切です。

また強迫性障害は、周囲を巻き込んでしまうこともあり、その巻き込みの程度も重要です。ある行動によって「身体が汚れてしまったのではないか」という強迫観念が生じていると、「そんな事はない」という確証を求めて、「汚れてないよね?」と周囲の人間(主に家族)に何度も何度も確認するようになります。これが続くと家族も疲弊してしまいます。

また、多くの精神疾患に共通する事ですが、これらの事によって、

「本人(あるいは周囲)が困っている」
「生活に大きな支障が出ている」

ことが診断のためには重要になります。

物事を完璧にやらないと気が済まないという人でも、それで別に誰にも迷惑をかけておらず、自分も困っておらず、生活や仕事に大きな支障を来たしていないなら、あえて病名をつけて治療をする必要はありません。

Ⅱ.診断基準との照らし合わせ

疾患には診断基準というものがあります。

精神疾患においては、アメリカ精神医学会(APA)が発刊しているDSM-5という診断基準と、世界保健機構(WHO)が発刊しているICD-10という診断基準の2つが有名で、日本でもこの2つが主に用いられています。

これらの診断基準の診断項目と、診察で得た所見を照らし合わせて、強迫性障害の診断基準を満たすかどうかを判定します。

(診断基準については後で詳しくお話しします)

Ⅲ.補助的に心理検査を行う

心理検査は、その結果から直接診断を下せるものではありませんが、診断の補助的な役割を果たしてくれます。心理検査は上手に利用すれば、強迫性障害の診断の精度を上げてくれます。

具体的には次のような心理検査が用いられることがあります。

A.Y-BOCS

Y-BOCSは「Yale-Brown Obsessive-Compulsive Scale」の略で、強迫性障害の重症度を点数としてみることができる検査です。

診断の補助として用いられる他、経過中に「どのくらい良くなっているのか」の判定として用いることも出来ます。

Y-BOCSは患者さんが1人で行える検査ではなく、検査者が患者さんの面接をして、質問しながら点数をつけていくような検査方法になります。そのためセルフチェックには用いにくいのですが、最近ではY-BOCSを改定してセルフチェック用に使えるようにしたものもあります。

Y-BOCSではまずは検査や強迫性障害に対する説明が行われた後、「症状評価リスト」という一般的に認められる強迫症状の一覧リストに沿って、患者にどのような症状があるのかを確認していきます。

この時、ただ確認するだけではなく、

  • 今、認める強迫症状は何か
  • 今はないけど過去には認めた強迫症状は何か
  • もっとも障害となっている強迫観念は何か(3個選ぶ)
  • もっとも障害となっている強迫行為は何か(3個選ぶ)

といったことをチェックしていきます。

次は主に問題となっている強迫症状に対しての「重症度」を判定します。主に問題となっている標的症状に対して、

  • その症状でどのくらいの時間が奪われてるのか
  • その症状で生活にどのくらいの障害が出ているのか
  • その症状にどのくらいの苦痛を感じているのか
  • その症状にどのくらいの抵抗をしているのか
  • その症状をどのくらい制御できているのか

の5項目を強迫観念、強迫観念それぞれで点数化していきます。点数は0〜4点の5段階で、計40点満点となり、点数が高いほど重症度は高くなります。

おおよそ、

0~7点 正常
8~15点 軽度
16~23点 中等度
24~31点 重度
32~40点 最重度

と判定されます。

2.強迫性障害の診断基準

強迫性障害の診断は、

・診察所見
・診断基準との照らし合わせ
・心理検査(補助的)

という、3つの手順で行われることを紹介しました。

自分でチェックする場合を考えると、精神科医の診察所見は受診をしないと得ることができませんので、

・自分で診断基準に照らし合わせてみる
・自分で心理検査を行ってみる

の2つがセルフチェックで出来ることになります。

もちろんセルフチェックは医師の診察とは異なるため、診断と同じ精度を持つものではありません。そのため、セルフチェックで強迫性障害の基準を満たしても「強迫性障害の可能性がある」と言えるに過ぎません。

しかしセルフチェックの結果、強迫性障害が強く疑われた場合は、強迫性障害の可能性がありますので、精神科を受診し相談をすることをお勧めします。

それではまずは強迫性障害の診断基準をみてみましょう。

診断基準にはDSM-5とICD-10があることをお話しましたが、ここではDSM-5の診断基準を紹介させて頂きます(どちらの診断基準を使っても問題はありません)。

なお診断基準は難しい用語で書かれていて分かりにくいため、後ほど改めて分かりやすく紹介します。

【強迫症/強迫性障害の診断基準(DSM-5)】

A. 強迫観念、強迫行為、またはその両方の存在

<強迫観念は以下の1.と2.によって定義される>
1.繰り返される持続的な思考、衝動、またはイメージで、それは障害の期間の一時期には、侵入的で不適切なものとして体験されており、 ほとんどの人にとって強い不安や苦痛の原因となる。

2. その人はその思考、衝動、またはイメージを無視したり抑え込もうとしたり、 あるいは何か他の思考や行為(例:強迫行為を行うなど)によって中和しようと試みる。

<強迫行為は以下の1.と2.によって定義される>

1.繰り返しの行動(例:手を洗う、順番に並べる、確認する)または心の中の行為(例:祈る、数える、声を出さずに言葉を繰り返す)であり、その人は強迫観念に対応して、または厳密に適用しなくてはならないある決まりに従って、それを行うよう駆り立てられていると感じている。

2. その行動や心の中の行為は、不安または苦痛を避けるかまたは緩和すること、 または何か恐ろしい出来事や状況を避けることを目的とし ている。しかし、この行動や心の中の行為は、それによって中和したり予防したりしようとしていることとは現実的な意味ではつながりを持たず、または明らかに過剰である。(注:幼い子供は、その行動や心の中の行為について十分な言語化による説明ができないことがある。)

B.強迫観念または強迫行為は、時間を浪費させる(1日1時間以上かける)、または臨床的に意味のある苦痛、まはは社会的、職業的、あるいはその他の重要なりょういきにおける機能の障害を引き起こしている。

C.強迫症状は、物質(例:乱用薬物・薬物)または他の身体疾患の生理学的作用によるものではない。

D.その症状は、他の精神障害では上手く説明されない。

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3.診断基準から強迫性障害をチェック

それでは診断基準から強迫性障害をセルフチェックしてみましょう。強迫性障害は、比較的分かりやすい疾患であるため、診断基準もそこまで難しいものではありません。

これらを全て満たす場合、診断基準的には強迫性障害の診断となります。

それでは診断基準の項目を1つずつ紹介していきます。

Ⅰ.強迫症状(強迫観念・強迫行為)が存在する

A. 強迫観念、強迫行為、またはその両方の存在

<強迫観念は以下の1.と2.によって定義される>
1.繰り返される持続的な思考、衝動、またはイメージで、それは障害の期間の一時期には、侵入的で不適切なものとして体験されており、 ほとんどの人にとって強い不安や苦痛の原因となる。

2. その人はその思考、衝動、またはイメージを無視したり抑え込もうとしたり、 あるいは何か他の思考や行為(例:強迫行為を行うなど)によって中和しようと試みる。

<強迫行為は以下の1.と2.によって定義される>

1.繰り返しの行動(例:手を洗う、順番に並べる、確認する)または心の中の行為(例:祈る、数える、声を出さずに言葉を繰り返す)であり、その人は強迫観念に対応して、または厳密に適用しなくてはならないある決まりに従って、それを行うよう駆り立てられていると感じている。

2. その行動や心の中の行為は、不安または苦痛を避けるかまたは緩和すること、 または何か恐ろしい出来事や状況を避けることを目的とし ている。しかし、この行動や心の中の行為は、それによって中和したり予防したりしようとしていることとは現実的な意味ではつながりを持たず、または明らかに過剰である。(注:幼い子供は、その行動や心の中の行為について十分な言語化による説明ができないことがある。)

強迫性障害と診断するためには強迫観念か強迫行為のどちらかを認める必要があります。多くの場合で強迫観念と強迫行為はセットになっており両方認められます。

強迫観念は、ある考えやイメージにとらわれてしまうことで、「侵入的」で「不適切」である必要があります。

難しい言い方ですが、要するに「とらわれから逃れようとしても、勝手に考えやイメージが侵入してくる感じ」であり、「一般的な常識から考えて、そのイメージは明らかに極端なもの」であるということです。

またその強迫観念に対して、それを打ち消すための行動(強迫行動や無視しようとするなど)が認められます。

例えば、外出した直後に「家の鍵をかけ忘れたのではないか」という不安が湧くことがありますが、それ自体は別に異常な考えではありません。

ここで健常の人であれば、

・鍵をかけた記憶を思い出して「かけたはず」と安心する
・一回家に戻って確認する
・一緒に出た人がいれば「鍵かけたよね?」と確認する

といった確認をし、それで安心してこの不安は終わります。

しかし強迫観念の場合、この確認を行っても「やはり家の鍵をかけ忘れているのではないか」という不安が消えず、「大丈夫」と考えようとしても「いや、でももしかしたら・・・」といったとらわれが侵入してきます。

その結果、

・「そんなはずはない」と何とか無視しようとする(が、大概は無視しきれない)
・何度も何度も家に戻って確認する
・何度も何度も一緒に出た人に「大丈夫だよね?」と確認する

といった打ち消し行為が認められます。

これが強迫観念です。

次に強迫行為を見てみましょう。

強迫行為の多くは、強迫観念や患者さんの中で出来てしまったルールに従った結果生じるものになります。

強迫行為を行う目的は「不安の軽減」です。

ここで注意すべきなのは、この不安の軽減はあくまでも本人の中でのルールにのっとった上での不安が軽減されるということで、周りから見たら一見理解できないものであることもあります。しかし本人の中では「不安軽減」の目的を持って行われているのが強迫行為になります。

例えば、「虫を見ると身体が汚染される」という強迫観念が生じている場合、不安軽減のために行う強迫行為は「身体を洗う」ことになります。

この場合、身体を洗うことは不安軽減のために行われていますが、周囲は「何で虫を見ただけで身体を洗うの?」と理解できないでしょう。このように、例え一般的には理解できない行為であっても、本人的には「不安軽減」のため行われるのが強迫行為なのです。

また明確な強迫観念がなくても、「患者さんの中でのルール」があって、それにのっとって行われる強迫行為もあります。

典型例は「常に整理整頓されてないと落ち着かない」といったもので、家具や家のもの全てが角度を揃えてぴったりと配置されていないと落ち着かず、少しでもズレると不安で仕方なくなるというものもあります。何時間もかけて整理整頓をし、「少しでもズレたら不安」と常に考えてしまい、それが不安で何も手につかなくなってしまいます。

この場合の強迫行為は「整理整頓」になります。明確な強迫観念がなくても、整理整頓は「不安軽減」のために行っているというのは他の強迫行為と同じです。

強迫性障害と診断するためには、まずはこの「強迫観念」あるいは「強迫行為」のどちらかを認める必要があります。

Ⅱ.強迫症状によって支障が生じている

B.強迫観念または強迫行為は、時間を浪費させる(1日1時間以上かける)、または臨床的に意味のある苦痛、まはは社会的、職業的、あるいはその他の重要なりょういきにおける機能の障害を引き起こしている。

これらの強迫症状があることによって、時間が浪費されている、本人が困っている・苦しんでいる、あるいは生活への支障が出現している必要があります。逆に言えば、症状はあっても、本人がそこまで困っていなかったり、生活が普通に送れている場合は強迫性障害の診断には該当しません。

 

Ⅲ.他の疾患ではないことの確認

C.強迫症状は、物質(例:乱用薬物・薬物)または他の身体疾患の生理学的作用によるものではない。

D.その症状は、他の精神障害では上手く説明されない。

これは医師の診察を受けないと判断できないため、セルフチェックで判定は難しいのですが、要するに「他の病気で生じている症状ではない」ということの確認になります。

他の疾患によってこれらの症状が生じているのであれば、それは強迫性障害ではなく、別の疾患になります。

しかしこの判断はセルフチェックでは困難ですので、誰でも気づくような明らかな他の原因がなければ、セルフチェックであればここは除外しても良いでしょう。

以上を全て満たした場合、強迫性障害の診断基準を満たすことになります。

4.心理検査から強迫性障害をチェックする

心理検査からも強迫性障害をセルフチェックできます。

強迫性障害に用いられる心理検査であるY-BOCSは、本来であれば1人でできる検査ではなく、検査者が患者さんの症状を聞きながら専門的な視点で判断していくものです。そのため、Y-BOCSをそのままセルフチェックに用いることは出来ませんが、セルフチェックできるように簡易化したY-BOCSもあります。

セルフチェック用のYーBOCSを別記事で紹介しますので、ご利用下さい。

(近日中にアップ予定)

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