ネルボンの効果・作用時間【医師が教える睡眠薬の全て】

ネルボンは1967年に発売された睡眠薬で、ベンゾジアゼピン系という種類に属します。

ベンゾジアゼピン系は効果も良く、重篤な副作用も少ないため、不眠治療によく使われています。

ここではネルボンの効果の強さや作用時間、他の睡眠薬との比較などを紹介していきます。

ちなみにネルボンはあすか第一三共が販売している睡眠薬ですが、塩野義製薬が販売しているベンザリンと全く成分が同じです。

1.ネルボンの作用時間

睡眠薬は作用時間で大きく4種類に分類されています。

超短時間型・・・半減期が2-4時間
短時間型 ・・・半減期が6-10時間
中時間型 ・・・半減期が12-24時間
長時間型 ・・・半減期が24時間以上

半減期というのは、その薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間の事で、
「おおよその薬の作用時間」の目安として使われています。

ネルボンは「中時間型」の睡眠薬に分類され、
服薬してから2時間ほどで血中濃度が最高値になり、半減期は約24時間前後です。

中時間型に分類されてはいますが、中時間型と長時間型の間くらいの作用時間を持つため、
長時間型に分類されることもあります。

飲んでから効果が最大となるまで2時間程度のため、即効性はあまり期待できません。
反面、長く効果が続くため、長くぐっすり眠りたい方には向いています。

しかし24時間という長い半減期を持ちますので、日中にまで効きが残るリスクもあります。
使用する際は注意しなければいけません。

2.睡眠薬の作用時間比較

よく使われる睡眠薬の作用時間を比較してみましょう。

睡眠薬最高濃度到達時間作用時間(半減期)
ハルシオン1.2時間2.9時間
マイスリー0.7-0.9時間1.78-2.30時間
アモバン0.75-1.17時間3.66-3.94時間
ルネスタ0.8-1.5時間4.83-5.16時間
レンドルミン約1.5時間約7時間
リスミー3時間7.9-13.1時間
デパス約3時間約6時間
サイレース/ロヒプノール1.0-1.6時間約7時間
ロラメット/エバミール1-2時間約10時間
ユーロジン約5時間約24時間
ネルボン/ベンザリン1.6±1.2時間27.1±6.1時間
ドラール3.42±1.63時間36.60±7.26時間
ダルメート/ベジノール1-8時間14.5-42.0時間

作用時間が睡眠薬によって様々であることが分かります。

最高濃度到達時間が早いお薬は、「即効性がある」と言えます。

ルネスタ、マイスリー、アモバンなどの「超短時間型」は1時間前後で血中濃度が最高値になるため、
「すぐに寝付きたい」という方にお勧めですが、3-4時間で効果が切れてしまいますから
長くぐっすり眠りたい方には不適であることが分かります。

反対に7-8時間ぐっすり眠りたい場合は、レンドルミンやリスミー、サイレース/ロヒプノールや
デパス、ロラメット/エバミール、ユーロジンなどの睡眠薬が適していることが分かります。

ネルボンは即効性はありませんので、寝付きの改善に用いるのは不適でしょう。
半減期は24時間前後ありますから、長くぐっすり眠りたい方には向いていますが、
長く効きすぎて日中にも眠気が持ち越してしまう可能性があります。

それぞれ特徴が違いますので、主治医と相談して、自分に合いそうな睡眠薬を選びましょう。

3.ネルボンの強さは?

ネルボンの睡眠薬としての強さはどのくらいなのでしょうか?

これは個人差もありますが、総じていうと「普通」くらいでしょう。

現在の不眠治療は、ベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系睡眠薬が主流となっていますが、
これらの睡眠薬はどれも強さに大きな差はないと言われています。

強さは同じくらいで、「強さがピークになる時間帯」や「効果が続く時間」が違うだけです。

sleepdrug上図のように、睡眠薬はどれもピーク時の強さには大きな差はありません。

強さがピークになる時間帯が違うのです。

そのため効果を強めたい場合は、睡眠薬の種類を変えるよりも「量を増やす」方が効果的です。
ネルボンは5mgから10mgの間の量で使いますが、量を増やせばそれだけ効果は強くなります。

ただし量を増やせば効果も強くなりますが、副作用も現れやすくなります。
そのため、まずは5mgで開始し、効果が不十分な場合に限り10mgを使うようにするのがいいでしょう。

4.ネルボンが向いている人は?

不眠には大きく分けると2つのタイプがあります。

一つ目が「寝付けない事」で、これは「入眠障害」とも呼ばれます。
そして二つ目は「寝てもすぐに起きてしまう事」で、これは「中途覚醒」と呼ばれます。

一般的には、

  • 入眠障害には超短時間、短時間型
  • 中途覚醒には中時間型、長時間型

の睡眠薬が適していると言われています。

ネルボンは中時間型ですから、セオリー通りに考えると、
「夜中に何回も起きてしまう」という中途覚醒に向いていることになります。

実際もその通りで、即効性はないため入眠障害に使っても効果はあまり期待できません。
中途覚醒の改善に用いられる場合はほとんどです。

しかしネルボンは中時間型に分類されてはいるものの、長時間型に匹敵する長い半減期を持ちます。
長く効くという事は、くすりの効果が日中にも持ち越しやすいということでもあります。

夜は眠れるようになったけど、日中も眠くて仕方ない。
これでは困りますよね。

そのため、単純な中途覚醒の改善のために用いるのであれば、
まずはもう少し半減期の短いものを試してみて、それでも不十分な場合に限り、
ネルボンを検討するのがいいでしょう。

まずは半減期がネルボンより短い、リスミーやレンドルミン、ロラメット/エバミールなどから
はじめて、それでも「効果がまだ短い」と感じる場合は、ネルボンを検討しましょう。

また、ネルボンは不安を和らげたり、てんかんやけいれんを抑えたりする作用もあります。
そのため、日中の不安も改善したい、日中のけいれんを抑えたいという場合には向いています。

上手く効けば、
夜は中途覚醒を改善し、日中は不安やけいれんを改善してくれることになるからです。

 

(注:ページ上部の画像はイメージ画像であり、実際のネルボン錠とは異なることをご了承下さい)