ベンザリンの効果【医師が教える睡眠薬の全て】

ベンザリンは1972年に発売された睡眠薬で、ベンゾジアゼピン系という種類に属します。

ベンゾジアゼピン系は効果も良く、重篤な副作用も少ないため、不眠症治療によく使われるお薬の1つです。

ここではベンザリンの効果の強さや作用時間、他の睡眠薬との比較などを紹介していきます。

ちなみにベンザリンは塩野義製薬が販売している睡眠薬ですが、あすか第一三共が販売しているネルボンと全く同じ主成分からなっています。

1.ベンザリンの特徴

まずはベンザリンの全体像をお話します。

ベンザリンは睡眠薬の一種であり、主に「眠れない」という不眠症の方に用いられます。

不眠症の治療に適切な睡眠薬を用いるために重要なポイントは、

  • その睡眠薬の作用の「強さ」
  • その睡眠薬の服用してからの作用発現時間(即効性)
  • その睡眠薬の服用してからの持続力

の3つがあります。

一口に「眠れない」といっても、寝付きが悪かったり(入眠障害)、眠りが浅くて夜中に何度も目覚めてしまったり(中途覚醒)、その両方であったりと様々なタイプがあります。

入眠障害には即効性に優れる睡眠薬が適していますし、中途覚醒には持続力に優れる睡眠薬が適しています。

睡眠薬によってこれらの特徴は異なりますので、自分の不眠に合った睡眠薬を選択する事が大切です。

ベンザリンの3つの作用については、

  • 作用の強さはベンゾジアゼピン系の中で中等度
  • 服用してから血中濃度が最大になるまでには約2時間(即効性はそこまでない)
  • 半減期は約24時間(持続力はまずまず)

となります。

そのため、不眠症の中でも中途覚醒(夜中に何度も目覚めてしまう)や、早朝覚醒(朝早くに目覚めてしまう)などに適した睡眠薬であると言えます。

では次にそれぞれの作用の特徴について詳しく見ていきましょう。

2.ベンザリンの作用時間

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は作用時間で大きく4種類に分類する事が出来ます。

超短時間型・・・半減期が2-4時間
短時間型 ・・・半減期が6-10時間
中時間型 ・・・半減期が12-24時間
長時間型 ・・・半減期が24時間以上

半減期というのは、その薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間の事で、そのお薬の作用時間とある程度相関します。

ベンザリンは「中時間型」の睡眠薬に分類され、服薬してから2時間ほどで血中濃度が最高値になり、半減期は約24時間前後です。

中時間型に分類されてはいますが、長時間型にも匹敵する作用時間を持つため、長時間型に分類されることもあります。

飲んでから効果が最大となるまで2時間程度になります。個人差もありますが、服用してから効果を感じ始めるまでには30~60分ほどかかり、即効性はあまり期待できません。

しかし半減期は長いため、持続力は期待でき、夜中に何度も起きてしまったり早朝に目覚めてしまうという方には向いています。

しかし半減期が長いという事は、日中にまで眠気が持ち越してしまうリスクもあり、日中の集中力低下やふらつきの原因にもなりえます。

3.睡眠薬の作用時間比較

よく使われる睡眠薬の作用時間を比較してみましょう。

睡眠薬最高濃度到達時間作用時間(半減期)
ハルシオン1.2時間2.9時間
マイスリー0.7-0.9時間1.78-2.30時間
アモバン0.75-1.17時間3.66-3.94時間
ルネスタ0.8-1.5時間4.83-5.16時間
レンドルミン約1.5時間約7時間
リスミー3時間7.9-13.1時間
デパス約3時間約6時間
サイレース/ロヒプノール1.0-1.6時間約7時間
ロラメット/エバミール1-2時間約10時間
ユーロジン約5時間約24時間
ネルボン/ベンザリン1.6±1.2時間27.1±6.1時間
ドラール3.42±1.63時間36.60±7.26時間
ダルメート/ベジノール1-8時間14.5-42.0時間

作用時間が睡眠薬によって様々であることが分かります。

最高濃度到達時間が早いお薬は「即効性がある」と言えます。

ルネスタ、マイスリー、アモバンなどの「超短時間型」は1時間前後で血中濃度が最高値になるため、「すぐに寝付きたい」という方にお勧めですが、3~4時間で半減期を迎えてしまうため、長くぐっすり眠りたい方には不適であることが分かります。

反対に7~8時間ぐっすり眠りたい場合は、レンドルミンやリスミー、サイレース/ロヒプノールやデパス、ロラメット/エバミール、ユーロジンなどの睡眠薬が適していることが分かります。

ベンザリンは即効性はありませんので、寝付きの改善に用いるのはあまり適していません。寝付きだけを改善したい場合は、超短時間型や短時間型を用いるべきでしょう。

しかし半減期は24時間前後ありますから、長くぐっすり眠りたい方には向いています。一方で長く効きすぎて日中にも眠気が持ち越してしまう可能性がありますので、注意して使用しましょう。

このように睡眠薬は「眠らせる」という作用は同じでも、それぞれその特徴は異なります。主治医とよく相談して、自分に合う睡眠薬を選びましょう。

4.ベンザリンの強さは?

ベンザリンの睡眠薬としての強さはどのくらいなのでしょうか?

これは個人差もありますが、総じていうと「普通」くらいでしょう。

現在の不眠治療は、ベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系睡眠薬が主流となっていますが、これらの睡眠薬はどれも強さに大きな差はないと言われています。

強さは同じくらいで、「強さがピークになる時間帯」や「効果が続く時間」が違うだけです。

sleepdrug
上図のように、睡眠薬はどれもピーク時の強さには大きな差はありません。強さがピークになる時間帯が違うのです。

そのため、もし睡眠薬の作用を強めたい場合は、睡眠薬の種類を変えるよりもまずは「量を増やす」方が効果的です。ベンザリンは5mg~10mgの間の量で使いますが、量を増やせばそれだけ作用は強くなります。

ただし量を増やせば作用も強くなりますが、副作用も現れやすくなります。そのため、まずは5mgで開始し、10mgは効果が不十分な場合に限り使うようにしましょう。

5.ベンザリンが向いている人は?

不眠症には大きく分けると2つのタイプがあります。

一つ目が「寝付けない事」で、これは「入眠障害」とも呼ばれます。そして二つ目は「寝てもすぐに起きてしまう事」で、これは「中途覚醒」と呼ばれます。

一般的には、

  • 入眠障害には超短時間、短時間型
  • 中途覚醒には中時間型、長時間型

の睡眠薬が適していると言われています。

ベンザリンは中時間型ですから、セオリー通りに考えると、「夜中に何回も起きてしまう」という中途覚醒に向いていることになります。

実際もその通りで、即効性はないため入眠障害に使っても効果はあまり期待できません。中途覚醒の改善に用いられる場合はほとんどです。

しかし中時間型に分類されてはいるものの、長時間型に匹敵する長い半減期を持ちます。これは夜間にしっかり効き続けるというメリットでもありますが、お薬の作用が翌日の日中にも持ち越しやすいということでもあります。

夜は眠れるようになったけど、日中も眠くて仕方ない。これでは困りますよね。

そのため単純な中途覚醒の改善のために用いるのであれば、まずはもう少し半減期の短いものを試してみて、それでも「効きが短い」と感じる場合に、ベンザリンを検討するのがいいでしょう。

まずは半減期がベンザリンより短い、リスミーやレンドルミン、ロラメット/エバミールなどからはじめて、それでも「効果がまだ短い」と感じるのであれば、ベンザリンが役立つ可能性はあります。

また、ベンザリンは不安を和らげたり、てんかんやけいれんを抑えたりする作用もあります(これを抗不安作用、抗けいれん作用と言います)。そのため日中の不安も改善したい、日中のけいれんを抑えたいという場合には向いています。

上手く作用してくれれば、夜は中途覚醒を改善し、日中は不安やけいれんを改善してくれることも期待できます。