エリミン錠(ニメタゼパム)の効果・強さ【医師が教える睡眠薬の全て】

エリミン錠(一般名:ニメタゼパム)は1977年に発売された睡眠薬で、ベンゾジアゼピン系という種類に属します。

ベンゾジアゼピン系は効果も良くて重篤な副作用も少ないため、現在でも不眠治療の主役となっているおくすりです。

ここではエリミンの効果の強さや作用機序、作用時間、他の睡眠薬との比較などを紹介していきます。

1.エリミンはどんな睡眠薬か

まずはエリミンの特徴をお話します。

エリミンは、効果が強い・バランス型の睡眠薬です。

バランス型、というのは、即効性もあり、持続力もある、という意味です。データ上は、血中濃度が最大に達するまでには2~4時間かかると書かれていますが、服薬後1時間も経てば最高値に近い濃度まで上がっています。また半減期(≒作用時間の目安)も12~21時間と持続力もあります。

効果も強めのため、患者さんウケも良い睡眠薬です。

しかしエリミンは違法に売買されたり、乱用されるケースが目立つため、現在は処方しにくいおくすりになっています。実際、エリミンの横流しや違法流通はメディアに取り上げられたこともあり、問題となりました。

バランスが良く効果も強い。錠剤も橙色でいかにも効きそうな見た目をしています(「赤玉」という異名も持っています)。そのため、悪用されやすいのかもしれません。

実際は悪いおくすりではなく、正しく使ってくれれば他の睡眠薬と変わらないのですが、このような背景があるため、医師側としては悪用されるケースが多く「処方しずらいおくすり」です。

現在はエリミン以外の睡眠薬の選択肢もたくさんあるため、エリミンが処方される頻度は徐々に少なくなっています。しかし悪い睡眠薬ではありませんので、適正に使用できる方でエリミンが適していると判断される患者さんには処方することもあります。

2.エリミンの強さは?

エリミンの睡眠薬としての強さはどのくらいなのでしょうか?

個人差もありますが、一般的にエリミンは「効果が強め」の睡眠薬です。 

とは言ってもベンゾジアゼピン系睡眠薬はどれも強さに劇的な差はないとも言われており、他と比べて劇的に強い、というわけではありません。あえて強弱の差をつけるならば「強め」、という程度です。

ベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は強さに関しては、どれも大きな差はありません。違うのは「強さがピークになる時間帯」や「効果が続く時間」です。

sleepdrug

上図のように、睡眠薬はどれもピーク時の強さは同程度です。強さはあまり変わらず、強さがピークになる時間帯がそれぞれ違うのです。

そのため、もし効果を強めたり弱めたりしたい場合は、睡眠薬の種類を変えるよりも「量を増やす/減らす」のが効果的だということが分かります。

エリミンは3mg~5mgの量で使いますが、量を増やせばそれだけ効果は強くなります(症状・年齢によって医師の判断で適宜増減されます)。

ただし量を増やせば効果も強くなりますが、副作用も現れやすくなります。そのため、まずは3mgなどの少量から開始し、効果が不十分な場合に限り5mg以上を使うようにするのがいいでしょう。

3.エリミンの作用時間

ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は作用時間で大きく4種類に分類されています。

  • 超短時間型・・・半減期が2-4時間
  • 短時間型 ・・・半減期が6-10時間
  • 中時間型 ・・・半減期が12-24時間
  • 長時間型 ・・・半減期が24時間以上

半減期というのは、その薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間の事で、「おおよその薬の作用時間」の目安として使われています。

エリミンは「中時間型」の睡眠薬に分類され、服薬してから2~4時間ほどで血中濃度が最高値になり、半減期は約12~21時間です。

飲んでから効果が最大になるため2~4時間かかりますが、前述のように1時間で最高値にかなり近くなるため、実際は即効性がそれなりにあります。半減期も長く持続力もあります。

中途覚醒(夜中に何度も起きてしまう)タイプの不眠に適している睡眠薬ですが、入眠障害(寝付けない)タイプの不眠にも一定の効果は示す、バランス型の睡眠薬です。

即効性・持続力ともにあり、効果も強いので、患者さんからの受けは良いおくすりです。しかしそのためか、違法流通したり乱用されるケースが散見されます。良く効くからとたくさん使ったり長く使ってしまい、耐性や依存性を起こしてしまうケースも少なくありません。

必要な時に必要な範囲で内服することは問題はありませんが、安易な内服や漫然と服薬を続けることは避けるべきでしょう。

4.各睡眠薬の作用時間比較

よく使われる睡眠薬の作用時間を比較してみましょう。

睡眠薬最高濃度到達時間作用時間(半減期)
ハルシオン1.2時間2.9時間
マイスリー0.7-0.9時間1.78-2.30時間
アモバン0.75-1.17時間3.66-3.94時間
ルネスタ0.8-1.5時間4.83-5.16時間
レンドルミン約1.5時間約7時間
リスミー3時間7.9-13.1時間
デパス約3時間約6時間
サイレース/ロヒプノール1.0-1.6時間約7時間
ロラメット/エバミール1-2時間約10時間
ユーロジン約5時間約24時間
ネルボン/ベンザリン1.6±1.2時間27.1±6.1時間
ドラール3.42±1.63時間36.60±7.26時間
ダルメート/ベジノール1-8時間14.5-42.0時間

作用時間が睡眠薬によって様々であることが分かります。

最高濃度到達時間が早いお薬は、「即効性がある」と言えます。ハルシオンをはじめ、ルネスタ、マイスリー、アモバンなどの「超短時間型」は1時間前後で血中濃度が最高値になるため、「すぐに寝付きたい」という方にお勧めです。

しかし、3~4時間で効果が切れてしまいますから長くぐっすり眠りたい方には不適であることが分かります。

反対に7-8時間ぐっすり眠りたい場合は、リスミー、デパスやロラメット/エバミール、ユーロジンなどの睡眠薬が適していることが分かります。

エリミンはというと、「入眠障害(すぐに寝付きたい)」「中途覚醒(長く眠りたい)」の両方に対応できますが、その特徴から見ると中途覚醒タイプに使うことが多いおくすりです。

それぞれ特徴が違いますので、主治医と相談して、自分に合った睡眠薬を選びましょう。

5.エリミンが向いている人は?

不眠には大きく分けると2つのタイプがあります。

一つ目が「寝付けない事」で、これは「入眠障害」とも呼ばれます。
そして二つ目は「寝てもすぐに起きてしまう事」で、これは「中途覚醒」と呼ばれます。

一般的には、

  • 入眠障害には超短時間、短時間型、
  • 中途覚醒には中、長時間型

の睡眠薬が適していると言われています。

エリミンは中時間型ですから、セオリー通りにいけば「寝てもすぐに起きてしまう」という中途覚醒に向いていることになります。

実際にも中途覚醒タイプの不眠に用いられることが多いのですが、エリミンは入眠障害にもある程度の効果を発揮します。そのため、中途覚醒が主なんだけども、入眠障害もやや困っている患者さんに向いているおくすりだと言えます。

しかしエリミンは前述の通り、悪用されることが多かった背景のあるおくすりですので、医師側としてはどうしても必要なケース以外は処方は控えたいという面もあります。

そのため、中途覚醒の場合まずは別の中~長時間型の睡眠薬を使用し、エリミンを検討するのは「他の中~長時間型の睡眠薬がいまひとつ効かない」など、やむを得ないケースに限るのが現実的でしょう。

安易に処方してしまうと、今までの傾向から言って、違法流通・乱用に利用される可能性があるからです。

6.エリミンの作用機序

エリミンは「ベンゾジアゼピン系」という種類のおくすりです。

ベンゾジアゼピン系はGABA受容体という部位に作用し、その効果を増強することで、抗不安効果、催眠効果、筋弛緩効果、抗けいれん効果という4つの効果を発揮することが知られています。

ベンゾジアゼピン系と呼ばれるおくすりは、基本的にはこの4つの効果を全て持っています。

ただ、それぞれの強さはおくすりによって違いがあり、抗不安効果は強いけど、抗けいれん効果は弱いベンゾジアゼピン系もあれば、抗不安効果は弱いけど、催眠効果が強いベンゾジアゼピン系もあります。

ベンゾジアゼピン系のうち、催眠効果が特に強いものを「ベンゾジアゼピン系睡眠薬」と呼びます。エリミンもそのひとつです。

(注:ページ上部の画像はイメージ画像であり、実際のエリミン錠とは異なることをご了承下さい)