寝汗はどのような原因で生じるのか?

寝汗 原因

5人に1人が不眠症と言われている現在では、睡眠の問題で悩んでいる患者んは非常に多くいらっしゃいます。診察中でも、睡眠について相談されることは少なくありません。

相談される内容は「眠れない」というものが多いのですが、その1つに「寝汗がひどい」という悩みがあります。睡眠について詳しく診察で聞かせて頂くと、寝汗がひどくて困っていらっしゃる方は意外と多いことに気付きます。

寝室の温度が高すぎれば寝汗が出てしまうのも当然ですが、室温は適正なのに寝汗がひどくて起きてしまうこともあります。このように寝汗が睡眠に悪影響を及ぼしてしまうと、睡眠不足から日中の精神状態の悪化を引き起こしてしまうこともあります。

寝汗によって不眠が生じている場合、それを改善させることはメンタルヘルス上も大切なことなのです。

今日は寝汗という現象がなぜ生じるのかについて知り、睡眠に支障を来たすような寝汗が生じる原因について考えてみましょう。

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1.正常な寝汗の役割

寝汗はなぜ生じるのでしょうか。

実は私たちは毎日寝汗をかいています。睡眠が問題なく取れている時は寝汗をかいている事を自覚しないものですが、寝汗は正常な睡眠でも毎日かいているものなのです。

寝汗というとそれだけで悪者のように扱われてしまいがちですが、実は寝汗は正常な反応の1つで、適正な寝汗は睡眠の質を高めるために必要なものであったりするのです。

寝汗というのは「寝ている時にかく汗」のことですから、これについて理解するためにはまず「なぜ私たちは汗をかくのか」ということから理解しないといけません。まずは正常な汗の役割について理解し、その上で「寝汗」の役割について理解していきましょう。

Ⅰ.汗の役割とは?

私たちは汗をかく事があります。この汗というのは一体どんな役割があるのでしょうか。

実は汗というのは、「体温を下げる」ために分泌されています。

私たち人間の身体は、体温が常に一定に保たれるような仕組みを持っています。みなさん平熱はだいたい36℃前後だと思います。外が暑くても、寒い日でも、私たちの体温は変化しません。

このように外界に関係なく体温を一定に保っているからこそ、私たちの身体は常に最適な生命活動を行えるているのです。

しかし時には体温を上げてしまうようなイベントが生じることもあります。例えば身体がばい菌に感染した時は、ばい菌と身体が闘うため体温が上がってしまいます。あるいは緊張状態にある時は身体の代謝が亢進するため、これも体温が上がる原因となります。

体温が高くなってしまうと、生命活動を行っている酵素などのはたらきが悪くなってしまうことがあります。これでは困るため、このような時は体温を一定に保つため、私たちの身体は汗を分泌します。汗腺から汗(水分)が分泌されると、汗はやがて蒸発します。水分は蒸発する時に周りの熱を奪うことが知られており、これを「気化熱」と呼びます。

汗は気化熱によって皮膚の熱を奪い、それによって体温を適切な温度に下げてくれるのです。

つまり私たちが高熱を出してしまった時や緊張時に汗をかくのは、高まった体温を適正に下げるためなのです。

これが私たちが汗をかく理由です。

Ⅱ.寝汗が生じる理由とその役割

では次に寝汗についてみてみましょう。

まず誤解しないで頂きたいことがあります。それは先ほどもお話した通り、寝汗は通常でもかくものだと言うです。寝汗があるとそれだけで「異常」だと判断してしまう方がいらっしゃいますが、適切な量の寝汗はむしろ必要なものなのです。

成人の一日の寝汗の量はおおよそコップ1杯分程度と言われています。これって結構な量ですよね。正常であってもこれくらいの寝汗は生じているものであり、これは無理矢理止めるべき寝汗ではありません(無理に止めれば睡眠の質はかえって低下します)。

では、寝汗というのはどのような役割があるのでしょうか。

寝汗も通常の汗と同じく、その役割は「体温を下げる」ことです。

しかし通常の汗との違いがあります。私たちがかく通常の汗は「上がりすぎた体温を適正に下げるため」に分泌されます。高熱が出たときに汗が出るのは、異常に高くなった体温を正常値(36℃前後)に下げるためです。

しかし寝汗は、正常な体温を「睡眠に最適な体温」に更に下げるために分泌されます。

体温が急激に下がると私たちの脳は眠気を感じるようになっています。よく雪山で遭難してしまって「眠くなってしまう」というシーンがありますが、あれも急激に体温が下がってしまうから眠くなってしまうわけです。

同じように、みなさん風呂にゆっくりつかった後はよく眠れるという経験があると思いますが、これもお風呂で体温を高めたことにより、その後体温が急激に低下しやすくなるため、眠気を感じやすくなるのです。

このように、眠りを得るためには「速やかに体温を下げる」ことが必要なのです。

眠りに入る時、スムーズに体温が下がると深い眠りを得やすくなる事が知られています。実際に正常な睡眠では、深い眠りについている時の体温は日中の活動時と比べると1℃ほど低くなっています。

そして私たちの身体は、「速やかに体温を下げて眠りの質を上げる」ために、2つの仕組みを持っています。

1つ目が、眠りに入ると手足などの末梢の動脈が拡張するという仕組みです。手足の動脈が拡張すると、そこに多くの血液が集まります。すると手足が熱くなり、これによって手足から熱が放散され、体温が下がりやすくなります。

眠り始めた人の手足を触ってみてください。暖かくなっていることが分かるはずです。これは体温を下げるために熱を放散しているのです。

そして2つ目が今回のお話である「寝汗」です。寝汗は深い睡眠(徐波睡眠)に入る直前で多くなる事が知られています。これは寝汗によって一気に体温を下げることで、深い眠りに入りやすくする役割があるのです。

実際、睡眠の研究においても睡眠初期の深い眠り(徐波睡眠)の直前になると発汗量が増え、体温が急激に下がることが確認されています。そして一度スムーズに深い眠りに入ると、その後は寝汗は多くは認められなくなります。

この2つの仕組みによって体温が急激に下がり、私たちは良い眠りを得ることが出来るのです。

2.正常な寝汗は寝ている間ずっと出ているわけではない

正常な寝汗は、深い眠りに入る直前に多く分泌されることをお話しました。

ここから正常な寝汗の特徴が見えてきます。

正常な寝汗というのは睡眠の前半で、体温を下げて眠りを深くするために分泌されているものなのです。睡眠の前半にのみ出現し、通常は後半にはあまり認められません。

睡眠に問題がない時は寝汗をかいていても気付かないものですが、これは寝汗が睡眠の前半にのみ認められるからです。睡眠の前半にしか出ない寝汗は、朝目覚めた時にはすっかり乾いてしまっています。

通常、睡眠が良好に取れている時、私たちがあまり寝汗を自覚しないのは、このように朝になってしまうと寝汗はすっかり乾いてしまっているからなのです。

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3.寝汗で困っている時は、どのような原因が考えられるか

寝汗の役割と正常な寝汗についてみてきました。

それを踏まえた上で、寝汗で困っている場合に考えられる主な原因についてお話していきます。

自分に当てはまるものがないか、ひとつずつチェックしてみてください(具体的な治療法や対処法については別の記事で詳しく説明します)。

Ⅰ.正常な寝汗が分泌されている時に起きてしまった

寝汗は正常でも出ているものだとお話しました。

正常な睡眠では、眠りに入ると徐々に深い眠り(徐波睡眠)に移行していきます。そして深い眠りに入る直前で寝汗が最大となり、その後寝汗の分泌は低下します。

この寝汗が最大となった時点で起きてしまう(中途覚醒)と、「寝汗をすごくかいている!」「この寝汗のせいで眠れないのだ!」と勘違いしてしまう事があります。

実際はそれは正常な寝汗であり、たまたまその寝汗が多く出ているタイミングで起きてしまっただけなのですが、目覚めた時に寝汗が多いため「寝汗が悪者」と考えてしまうのです。

睡眠に入ってから1~2時間ほどで中途覚醒してしまって「寝汗が多い」という方は、このようにたまたま寝汗が多いタイミングで起きてしまっているという可能性があります。

この場合は寝汗を少なくすることを目指してはいけません。その寝汗は正常なものですから、これを少なくしてしまえば眠りの質はむしろ悪くなってしまうのです。

この場合は寝汗を標的にするのではなく、そのタイミングで起きないような工夫をすべきになります。

Ⅱ.手足からの放熱が行われていない

深い眠りに入るためには体温を下げることが大切だとお話しました。そして体温を下げる方法には、2つあることもお話しました。

先ほど説明したように、1つ目が手足の動脈が開くことで放熱するという仕組みで、2つ目が寝汗によって汗が熱を奪って体温を下げるという仕組みです。

この2つの仕組みはどちらも大切で、どちらか一方がうまくはたらいていないともう一方に負担がかかります。

例えば、手足の末梢動脈から熱を放散できないような状況だと、その分寝汗をたくさん分泌することで熱を下げなくてはいけなくなってしまいます。こうなると寝汗の量が増えてしまいます。

具体的には寝室の室温が高すぎたり、布団の中の通気性が悪すぎて熱がこもりすぎている場合などでは、いくら手足の動脈が拡張しても、外部の温度の方が高いために熱を放散できなくなります。

この場合、私たちの身体は寝汗の量を増やすことで体温を何とか下げようとしますので、寝汗の量が増えてしまいます。

末梢からの熱の放散が上手く行えずに寝汗が増えている場合も、寝汗を少なくしようと考えるのは間違いになります。熱が手足からうまく放散できるような工夫をしないと解決ははかれません。

Ⅲ.自律神経のバランスが崩れている

精神的に不調にある方が寝汗を訴える場合、自律神経のバランスが崩れているというケースが考えられます。

寝汗は深い睡眠に入る直前にもっとも多く分泌されるとお話しましたが、この寝汗の調整を行っているのは自律神経になります。実際、深部睡眠に入る直前で交感神経(自律神経の一種)の活動が急速に弱まることが報告されており、これによって寝汗が生じていると考えられます。

精神的に不調になると、自律神経のバランスが乱れることが知られています。

こころが不調な時は様々な身体症状が出現します。胃がキリキリ痛んだり、頭痛がしたり、心臓が痛くなったりなど様々な症状が現れますが、これらは全身に分布している自律神経のバランスが崩れた結果として生じます。その証拠に自律神経の異常によってこれらの症状が生じている場合は、「心臓が痛い」と感じて心臓の検査をしても何の異常もみつかりません。

こころの状態が不調だと、同じように睡眠時にも自律神経の乱れが生じます。すると、睡眠前半の深い眠りに入る直前に多くの寝汗を分泌する、というシステムがうまくはたらかなくなってしまいます。そうなると変なタイミングで寝汗が出てしまったり、寝汗の量が多くなってしまったりして、寝汗で困るばかりでなく、深い睡眠も得られなくなってしまうのです。

自律神経のバランス異常によって寝汗が生じている場合は、自律神経を整えるような生活をすることや、自律神経を乱している原因を対処することです。例えばストレスが原因などであればストレスを回避したりストレスを上手に発散するような工夫が必要になります。精神疾患などが背後にある場合は適切な治療を行うことが大切になってきます。

いたずらに寝汗だけを止めようとしてしまうと、かえって自律神経のバランスを乱してしまうことになるため、表面上の「寝汗」だけに捉われず、「自律神経のバランスを整える」ための工夫をすることが大切です。

Ⅳ.身体疾患で発汗レベルが上がっていることが原因

発汗しやすいような病気にかかっていると、夜の寝汗もひどくなります。

そのような「汗をかきやすい病態」にあれば、日中も汗が多くなりますが、夜も寝汗が生じやすくなります。

例えば、代表的なものでは次のような病態がが挙げられます。

  • 感染症(高熱が出ている)
  • 甲状腺機能亢進症
  • お薬の副作用

高熱が出ていると、私たちの身体は汗を分泌することで体温を下げようとします。夜間も高い熱が続いていればやはり汗の量は増えます。例えば、風邪(上気道炎)や気管支炎、胃腸炎などの感染症にかかってしまい高熱が出ている場合では、寝汗も多くなります。

甲状腺機能亢進症というのは、代謝を高めるホルモンである甲状腺ホルモンがたくさん出てしまう疾患です。甲状腺ホルモンが多くなると代謝が亢進するため汗もかきやすくなり、寝汗も多くなります。

これらの場合は寝汗は病気の症状の1つですので、根本の病気の治療を行うべきになります。

またお薬の副作用で発汗が出ることもあります。

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