ワイパックスは1978年に発売された抗不安薬です。
抗不安薬は不安感を取る作用があるおくすりで、「安定剤」「精神安定剤」とも呼ばれます。抗不安薬にはたくさんの種類があり、それぞれ強さが異なります。
ワイパックスはというと、個人差もありますが一般的に不安を和らげる強さは強めで、不安に対する効き目は強いと言えます。
不安に強く効き、「効いている!」という実感も得やすいため、ワイパックスを持っていると安心できる、という患者さんも少なくありません。不安で苦しむ患者さんの大きな助けになっているおくすりです。
ただし、効き目や強さが強いという事は、「つい頼ってしまいやすい」「依存しやすい」ということでもあるため、注意も必要です。
ここではワイパックスの効き目の強さ、また他の抗不安薬との比較などを紹介していきます。
1.ワイパックスの効き目の強さ
抗不安薬には、たくさんの種類があります。
それぞれ強さや作用時間が異なるため、患者さんの状態によって、
どの抗不安薬を処方するかが異なってきます。
抗不安薬の中でワイパックスは、不安を改善する作用(抗不安作用)は強い部類に入ります。
肝臓への負担が少なく、抗不安作用が強い割には副作用が少ないため、
使い勝手がよいおくすりです。
また、半減期(おおそよの作用時間の目安)は12時間ほどで、
内服すると約半日ほど効果が続きます。
2.他剤との強さの比較
様々な抗不安薬の「抗不安作用」の強さを比較すると下図のようになります。
抗不安薬 | 作用時間(半減期) | 抗不安作用 |
---|---|---|
グランダキシン | 短い(1時間未満) | + |
リーゼ | 短い(約6時間) | + |
デパス | 短い(約6時間) | +++ |
ソラナックス/コンスタン | 普通(約14時間) | ++ |
ワイパックス | 普通(約12時間) | +++ |
レキソタン/セニラン | 普通(約20時間) | +++ |
セパゾン | 普通(11-21時間) | ++ |
セレナール | 長い(約56時間) | + |
バランス/コントール | 長い(10-24時間) | + |
セルシン/ホリゾン | 長い(約50時間) | ++ |
リボトリール/ランドセン | 長い(約27時間) | +++ |
メイラックス | 非常に長い(60-200時間) | ++ |
レスタス | 非常に長い(約190時間) | +++ |
ワイパックスは不安を取る作用に優れることが分かりますね。
薬効の長さも中程度で、バランスがよく使い勝手の良いおくすりです。
しかし効果が良いという事は、「依存しやすい」「クセになりやすい」という事でもあります。
ワイパックスの副作用については別に記事で詳しく書きますが、
良く効くいいくすりだからと、漫然と飲み続けたり、大量に飲んだりすることはよくありません。
3.ワイパックスが向いている人は?
ワイパックスは優れた抗不安作用を持つおくすりですので、
強い不安や緊張で苦しんでいる方には向いているおくすりでしょう。
反対に、不安感がそこまで強くない場合は、
より抗不安作用が弱い抗不安薬から始めた方がいいかもしれません。
またワイパックスは抗不安薬の中では、肝臓への負担が少ないため、
肝機能が悪い方や高齢者で抗不安薬を使う際には、安全に使いやすいと言えます。
飲んでから血中濃度が最大になるまで約2時間かかりますが、
臨床的な体感としては内服後20-30分ほどで効果を感じられ、即効性にも優れるため、
緊張するイベントの前に飲むといった頓服的な使い方もできます。
特定のイベント時だけなど、ワンポイントで不安を抑えたいという方にも良いでしょう。
例えば、「朝礼で毎日発表するんだけど、その時だけ効かせたい」ということであれば、
朝食後だけワイパックスを内服すればいいのです。
ワイパックスは、半減期(≒おおよそのおくすりの作用時間)が12時間程度です。
個人差はありますが、一回服薬したらだいたい12時間で効果がなくなります。
そのため、1日中効かせるためには1日に2-3回内服する必要があります。
実際、添付文書にも1日2-3回に分けて内服するよう書かれています。
ある特定の時間だけ不安を取りたいのであれば1日1回の内服でも問題ありませんが、
1日を通して不安を取りたいのであれば、ワイパックスを1日2回以上に分けて内服しましょう。