リントンの副作用と対処法【医師が教える抗精神病薬の全て】

リントンの副作用

リントンは1964年に発売された「セレネース」という抗精神病薬(統合失調症の治療薬)のジェネリック医薬品になります。その成分はセレネースとほぼ同じで、効果や副作用もセレネースとほぼ同じです。

抗精神病薬には古い第1世代(定型)と比較的新しい第2世代(非定型)がありますが、リントンは古い第1世代に属します。

第1世代は効果は強力なのですが、副作用も強力だという問題があります。特に問題なのは、命に関わるような重篤な副作用が生じるリスクがあるという点です。

そのため現在ではリントンのような第1世代はやむを得ない症例に限ってのみ用いるお薬となっており、安易に投薬するお薬ではなくなっています。しかし統合失調症の幻覚や妄想に対して確実で強力な効果のあるリントンは、今でも使用される事があります。

ここでは、リントンで特に注意すべき副作用と、臨床で比較的見られやすい副作用について紹介させていただきます。

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1.リントンの副作用の特徴

抗精神病薬は、大きく分けると2つの種類に分けられます。

1950年頃から使われている古いタイプである第1世代(定型)抗精神病薬と、1990年頃から使われている比較的新しいタイプである、第2世代(非定型)抗精神病薬です。

第1世代は強力な作用がありますが、副作用も強力なのが難点です。そのため副作用の軽減を目指して開発されたのが第2世代で、現在では第2世代が主に使用されています。

第2世代は、第1世代と比べると、

  • 錐体外路症状(ふるえなどの神経症状)
  • 高プロラクチン血症(ホルモンバランスの異常で生じる副作用)

などの神経系の副作用やホルモンバランスを崩してしまう副作用は少なくなりました。

また、

  • 悪性症候群(高熱、筋破壊で死に至ることもある危険な副作用)
  • 心室細動・心室頻拍(命に関わることもある重篤な不整脈)
  • 麻痺性イレウス(腸がまったく動かなくなってしまう副作用)

などの重篤な副作用の頻度も大きく低下しました。

しかし、第1世代よりも身体をリラックスさせて代謝を抑制するため、

  • 血糖やコレステロールなどを上昇させる
  • それに伴い、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞などの発症リスクを上げる

といったデメリットがあります。

第2世代は全てにおいて第1世代と比べて優れているわけではなく、第2世代は第2世代の問題点があります。しかし総合的に見れば、第2世代の方が安全性は高いと考えられており、現在の統合失調症治療は、第2世代から始めることが基本となっています。

この中でリントンは第1世代(定型)抗精神病薬に属しています。今となっては古いお薬であり第2世代と比べると副作用の多さが目立ちます。

リントンは脳のドーパミンのはたらきを強力にブロックし、その他の物質(ムスカリンやヒスタミン、アドレナリンなど)には作用しにくいという特徴があります。そのため、ドーパミンの過剰で生じている症状(幻覚・妄想など)には確実な効果が期待でき、その他の物質が原因で生じる副作用(口渇・便秘・尿閉・体重増加・血圧低下・性機能障害など)が少ないというメリットがあります。

しかしリントンのデメリットとしては、

  • ドーパミンが少なくなりすぎる事による副作用が生じやすい
  • 命の関わるような重篤な副作用が起こることがある

という点があります。

ドーパミンを強力にブロックするリントンは、必要な量のドーパミンまでもブロックしてしまう事があり、これは副作用となってしまいます。具体的には、錐体外路症状(EPS)と呼ばれる神経症状があり、これは手足のふるえやムズムズ、不随意運動(身体が勝手に動いてしまう)などが挙げられ、これは患者さんの生活に質を大きく低下させます。また脳のホルモンバランスを崩す事により高プロラクチン血症を生じてしまい、これは性機能障害や骨粗しょう症、乳がんなどのリスクとなります。

そしてリントンをはじめとした第1世代の一番の問題点は、「命の関わるような副作用が生じることがある」点です。

  • 悪性症候群
  • 重篤な不整脈(心室細動、心室頻拍)
  • 麻痺性イレウス
  • 無顆粒球症

など、命に関わるような副作用の報告があります。特に高用量を服用していると生じやすく、このため第1世代は現在では積極的に投与することは推奨されていません。

以上から、リントンの副作用の特徴として、下記のことが挙げられrます。

  1. 古い第1世代であり、全体的に副作用は多め
  2. 命の関わるような副作用の報告もある
  3. ドーパミンを遮断しすぎることで、ドーパミン欠乏の副作用が起こりやすい
    (具体的には、錐体外路症状(EPS)や高プロラクチン血症など)
  4. その他の受容体には影響しにくいため、その他の副作用は少なめ
    (具体的には体重増加や口渇・便秘、眠気など)
  5. 副作用の問題から、現在では第1選択として使われる薬ではない

2.リントンの副作用

それでは、リントンの副作用をそれぞれみていきましょう。

一般的な対処法なども記載しますが、これらの対処法は独断では行わないでください。必ず主治医と相談の上、主治医の指示に従いながら慎重に行ってください。

Ⅰ.錐体外路症状(EPS)

統合失調症は脳のドーパミン過剰で発症すると考えられていますが、お薬で逆に脳のドーパミンを少なくしすぎてしまうと生じるのが、錐体外路症状です。

リントンは錐体外路症状を起こしやすいお薬だと言えます。その理由はリントンはドーパミンを強力にブロックする作用を持つからです。

錐体外路症状には、

  • 振戦(手先のふるえ)
  • 筋強直(筋肉が硬く、動かしずらくなる)
  • アカシジア(足がムズムズしてじっとしてられなくなる)
  • ジスキネジア(手足が勝手に動いてしまう)

などがあり、直接命に係わるものではないものの患者さんにとっては非常に苦痛な症状になります。リントンがドーパミン受容体をブロックしすぎることで生じる副作用のため、特に高用量のリントンを服用している場合に起きやすいと考えられます。

これらの副作用が生じた場合は、まずはリントンの減薬、あるいは副作用の少ない第2世代への変薬が試みられます。

また抗コリン薬と呼ばれるお薬で副作用の改善をするという方法が取られることもあります。具体的な薬物としては、ビペリデン(商品名アキネトン)やプロフェナミン(商品名パーキン)、トキヘキシフェニジル(商品名アーテン)などが挙げられます。

抗コリン薬によってアセチルコリン神経の活性を抑制してあげると、ドーパミン神経の活性が相対的に上がります。するとドーパミン濃度が増えるため、錐体外路症状を改善させてくれるのです。

しかしお薬によって生じている副作用を別にお薬で治す、というのはあまり推奨されている方法ではありません。お薬の量がどんどん増えてしまいますし、抗コリン薬にだって別の副作用があるからです。

Ⅱ.高プロラクチン血症

高プロラクチン血症というのは、脳下垂体から出るプロラクチンというホルモンの量が多くなってしまう副作用です。原因はリントンが脳下垂体のドーパミン受容体もブロックしてしまうためです。ドーパミン受容体がブロックされると、プロラクチンがたくさん出てしまいます。

ドーパミンを強力にブロックするリントンは、高プロラクチン血症も起こしやすいお薬です。

プロラクチンとは、本来は授乳中の女性で上昇しているホルモンです。授乳中の女性は胸が張り、乳汁が出て、月経が止まります。高プロラクチン血症になるとこれと同じ状態になるため、胸の張り、乳汁分泌、月経不順、性欲低下などが生じます。また男性であれば、勃起障害などが生じることもあります。

問題はこれだけではありません。一番の問題は、プロラクチンが高い状態が続くと乳がんになる可能性が高くなります。また、骨代謝に影響を与えて骨粗しょう症にもなりやすくなります。

そのため、高プロラクチン血症を発見したら放置せずに速やかに治療することが望まれます。

リントンで高プロラクチン血症が出現した時は、原則としてリントンを中止する必要があります。中止し、必要があれば第2世代などの別の抗精神病薬に変更しましょう。

Ⅲ.重篤な不整脈

稀ですがリントンのような第1世代は重篤な不整脈を起こすことがあります。

不整脈といっても様々なものがあり、中には特に放置しておいても問題ない程度の不整脈もあります。このような不整脈であればまだ良いのですが、リントンのような第1世代は時に心室細動、心室頻拍などといった重篤な不整脈を起こすことがあります。特に服薬量が多いと起こしやすいため、服薬量は最小限になるように注意を払わないといけません。

普段から注意すべきなのがQT延長という心電図上の変化です。これを放置していると致命的な不整脈(心室細動やトルサード・ド・ポアンツ)に移行してしまう可能性があります。

そのため抗精神病薬を使う際は定期的に心電図検査を行い、QT延長を見逃さないようにしないといけません。そしてQT延長が認められた場合は、速やかに減薬あるいは変薬をしていく必要があります。

Ⅳ.悪性症候群

悪性症候群もリントンをはじめとした第1世代で特に生じる可能性のある副作用です。

その頻度は多くはないのものの、

  • 高熱
  • 意識障害(意識がボーッとしたり、無くなったりすること)
  •  錐体外路症状(筋肉のこわばり、四肢の震えや痙攣、よだれが出たり話しずらくなる)
  • 自律神経症状(血圧が上がったり、呼吸が荒くなったり、脈が速くなったりする)
  • 横紋筋融解(筋肉が破壊されることによる筋肉痛)

などの重い症状が生じます。原因は明確に解明されてはいませんが、ドーパミンが関係すると考えられており、ドーパミンに強力に作用するリントンは悪性症候群のリスクは高いお薬だと考えられます。

特にリントンの増薬・減薬時に生じやすいため、増薬・減薬は慎重に行う必要があります。

悪性症候群は命の関わる可能性もある重篤な副作用であるため、悪性症候群が疑われたら原則入院とし、十分な点滴やダントロレンというお薬の投与などを行う必要があります。

Ⅴ.ふらつき

リントンはふらつきの頻度が多いお薬ではありませんが、時に生じることはあります。

ふらつきが生じる機序はいくつかあります。お薬の作用でヒスタミン受容体がブロックされると眠気が生じてふらつくこともあります。また、アドレナリン受容体がブロックされると血圧が下がってしまうため、これもふらつきの原因となります。

しかしリントンは、ヒスタミン受容体・アドレナリン受容体への作用はほとんどないお薬であり、そのためふらつきが生じる程度は多くはありません。

リントンによるふらつきの副作用がひどい時は、減薬・あるいは変薬を行います。

ふらつきはお薬で改善するという方法もあります。特に血圧低下によって生じているふらつきであれば、は昇圧剤(リズミック、メトリジンなど)が用いられることがあります。しかし血圧を上げるお薬ですので、高血圧の方などは使用する際に注意が必要です。

Ⅵ.体重増加(太る)

体重増加の副作用もリントンでは多くはありません。

体重増加は精神科のお薬の多くに認められる副作用ですが、その原因はお薬が主にヒスタミン受容体、セロトニン2C受容体をブロックするためだと考えられています。

リントンのヒスタミン受容体、セロトニン受容体への影響は軽度であり、体重増加は少なめだと考えられてます。しかし、長期間服薬を続けていればリントンでも徐々に体重増加は生じてしまう事は十分に考えられます。

リントンで体重増加が生じた時、まず望まれるのは生活習慣の改善です。食生活の偏りや運動不足など、太りやすい習慣がある場合は、まずそちらを是正することで体重の軽減ははかれないかを見ます。

それでも難しい場合は、減薬あるいは変薬です。

現在はリントンのような第1世代よりも、全体的には副作用が少ない第2世代を使うように推奨されていますが、体重増加の副作用に限って言えば、リントンよりも第2世代の方が生じやすいことがあります。

第2世代の中でもMARTA(ジプレキサ、セロクエル)などは体重増加の頻度が多いため、体重増加に限って言えば、MARTA以外のお薬が好ましいかもしれません。具体的には、エビリファイ(アリピプラゾール)、ロナセン(ブロナンセリン)、ルーラン(ペロスピロン)辺りが体重増加は比較的起こしにくいと考えられています。

Ⅶ.口渇、便秘(抗コリン作用)

アセチルコリンという物質の働きをブロックしてしまうことで生じる、抗精神病薬の副作用です。抗コリン作用は、お薬がアセチルコリン受容体に結合してしまうことで生じます。

口渇や便秘が代表的ですが、他にも尿閉、顔面紅潮、めまい、悪心、眠気なども起こることがあります。

リントンの抗コリン作用は弱めであり、これらの副作用の頻度は少なめです。

抗コリン作用への対応策としては

  • リントンを減量する
  • 他の抗精神病薬(第2世代)に変更する
  • 抗コリン作用を和らげるお薬を併用する

などの方法があります。

抗コリン作用を和らげるお薬として、

  • 便秘がつらい場合は下剤(マグラックス、アローゼン、大建中湯など)、
  • 口渇がつらい場合は漢方薬(白虎加人参湯など)、

などが用いられます。

Ⅷ.眠気

眠気は、主にヒスタミン受容体をブロックすることで生じます。他にもアドレナリン受容体やセロトニン2受容体なども多少関与している考えられています。

リントンはヒスタミン受容体への影響は少ないため、眠気の頻度は多くはありません。

眠気の副作用に対しては、まずは睡眠環境の見直しから行います。睡眠時間がしっかりとれているのか、睡眠の質を下げるようなことをしていないか、などを改めて見直しましょう。

寝床でスマホをいじってる、寝る前にタバコを吸っている、寝る前にアルコールを飲んでいる。

こういった習慣を持っている人は少なくありません。思い当たる原因がある場合は、まずはその習慣を治しましょう。

それでも改善が無い場合は、可能であればおくすりの減薬や変薬が検討されます。しかしどの抗精神病薬でも眠気は起きるため、変薬は慎重に行われます。また、どうしても減薬できない場合はやむを得ず多少の眠気と付き合っていきながら生活せざるを得ないこともあります。

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3.他の抗精神病薬とリントンの副作用比較

リントンの副作用を見てきましたが、他の抗精神病薬との比較をしてみましょう。

抗精神病薬EPS、高PRL体重増加ふらつき性機能障害眠気抗コリン作用
コントミン++++++++++++++++++++++
セレネース++++++++++++++
リスパダール++++++++++±
インヴェガ++++++±
ロナセン+++±±±±+
ルーラン++++++±
ジプレキサ+++++++++++++++++
セロクエル++++++++++++++
エビリファイ++±++±±

*EPS・・・錐体外路症状
*高PRL・・・高プロラクチン血症
*抗コリン作用・・・口渇、便秘など

コントミンとセレネースが第1世代、その他は第2世代の抗精神病薬です。

リントンは「セレネース」のジェネリックであるため、副作用の頻度も上記の「セレネース」と同じだと考えて問題ありません。

リントンは第1世代であるため、全体的な副作用は多めです。ドーパミンをブロックする作用に優れるリントンは、特にEPS(錐体外路症状)や高プロラクチン血症の頻度が多いことが分かります。

その他の副作用は少ないのですが、第1世代の副作用で忘れてはいけないのが「命の関わるような重篤な副作用を生じるリスクがある」という点です。

そのため、現在では第1世代はできる限り処方しないようになっています。

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