メイラックスは抗不安薬と呼ばれ、不安を和らげる作用を持ちます。
メイラックスの特徴は、1回の服薬で長く効き続けることです。そのため、頓服としては向かなそうな印象がありますが、実際はどうなのでしょうか?
頓服、というのは症状が出た時や出そうな時だけ、ワンポイントで服薬する事です。
ここでは、メイラックスを頓服として使うことについて、考えてみます。
1.頓服とは?
まず、「頓服」というのはどういった服薬方法なのでしょうか?
頓服というのは、
症状が出た時や出そうになった時だけ、
ワンポイントでおくすりを服薬すること
です。
例えば、
- 痛い時だけ、痛み止めを飲む
- 胃腸の調子が悪い時だけ胃薬を飲む
などが代表的な頓服の使い方になります。
症状が出た時だけ飲むので、頓服は「その場しのぎ」に過ぎない事が多く、
根本的な治療にはなっていない場合がほとんどです。
しかし、症状があまりにつらすぎる場合は、
たとえその場しのぎであったとしても症状を抑えてあげた方がいいこともあります。
例えば、末期がんの痛みで苦しんでいる方がいたとします。
この患者さんに痛み止めを与えたからと言って、癌が消えるわけではありません。
でも、この患者さんに痛み止めを投与するのは意味がないことなのかというとそんなことはありません。
たとえ一時的であっても、痛みが取れて穏やかに過ごせるなら、それは意味のある「治療」です。
同じように、精神科の場合でも、不安が強すぎて苦しい場合には、
例え一時的であったとしても、その不安を和らげてあげることは意味のあることなのです。
頓服とは、このような飲み方のことを言います。
ちなみに頓服と反対の飲み方は、「定期的におくすりを飲む事」です。
例えば抗うつ剤は毎日決まった時間に決まった量を飲みます。
うつがひどい時だけ飲むといったものではありません。
内科でもらう血圧のおくすりや糖尿病のおくすりも、毎日決まった時間に飲みます。
定期的に服薬する方法は、即効性はなく一時的な作用としては強くはありません。
しかし、一日を通して確実に病気を抑えてくれるというメリットがあります。
その場しのぎではなく、根本的な治療となるものも多いのです。
定期的に飲むこと、頓服として飲むこと、どちらにも一長一短あります。
状況に合わせて医師と相談しながら上手に使い分けていきましょう。
頓服は、症状が出そうな時にサッと使うわけですから、
- 即効性がある事
- 効果がある程度強い事
が求められます。
効いてくるまでに何時間もかかるおくすりや、
効いているんだか効いていないんだか分からない弱いおくすりは、頓服として適しません。
メイラックスは、効果は強めです。
また意外と即効性がある事が知られており、理論上は服薬してから約1時間で
血中濃度が最高値に達します。(これは他の抗不安薬と比べても早い方です)
ゆっくり長く効くイメージのあるメイラックスは、一見頓服に向かなそうですが、
意外と頓服に必要な条件は満たしているのです。
2.頓服としてのメイラックスはどうなのか?
メイラックスは抗不安薬ですから、頓服として使う状況は、
「不安が強くなってしまった時」「不安が強くなる事が予測される時」でしょう。
具体的には、
- パニック障害などの患者さんが、不安発作が出てしまった時に
- 電車などの人ゴミが苦手な人が、電車に乗る前に
- 上がり症の人が、人前でのスピーチや発表の時に
- 会食が苦手な人が、会食の前に
などがあります。
これ以外でも、「不安を一時的に軽減させたい」場合には使うことがあります。
メイラックスは、理論上は内服してから約1時間で血中濃度が最大になり、
約122時間で半減期を迎え、効果が消えていきます。
効きが最大になるのは約1時間待たないといけませんが、
15-20分もすれば「効いてきた!」と感じ始めるため、即効性が期待できます。
しかし、メイラックスを頓服として使うのには一つの問題点があります。
それは長く効きすぎてしまう、という事です。
一時的に不安を抑えたい時、その時間というのは数十分か多くても数時間である事が
ほとんどです。
しかしメイラックスはそれよりもはるかに長く効きます。
数十時間、数日と聞き続けてしまうため、余計に効いてしまう時間が多いのです。
この事を考えると、メイラックスは頓服としてダメなわけではないけども、
第一選択になるおくすりではないと言えます。
主治医の判断によっては第一選択で使うこともないとは言えませんが、一般的には
まずは、即効性があって作用時間もそこそこの抗不安薬を試してみて、
どうしても合わない場合のみメイラックスなどを検討してみるのがよいでしょう。
実際に頓服でメイラックスを使っている方はたまにいますが、
多くはありません。
メイラックスはある程度の即効性は期待できますが、
とは言っても数秒や数分で効くというわけではないので、
例えば不安発作が起こりそうであれば、その時点で予防的に飲んでおく方がいいでしょう。
スピーチや発表、会食の前に予防的に飲むのであれば、
ベストはイベントの約1時間前に服薬しておくことですが、
最低でもイベントの20分くらい前に服薬しておけば、効果は得られます。
頓服として使用する量は人それぞれですが、1回1~2mgで使う人が多いようです。
まずは1mgで試してみて、不十分な場合は2mgまで上げてみるのが良いでしょう。
多く使えば強くは効きますが、副作用や依存などの害も大きくなります。
使用する量は、必ず主治医とよく相談して決めてください。