メイラックスの半減期・作用時間【医師が教える抗不安薬の全て】

メイラックスは抗不安薬に分類される、不安を和らげる作用をもつおくすりです。

このおくすりの最大の特徴は、「半減期が非常に長いこと」です。半減期とは、内服したおくすりの血中濃度が半分になるまでの時間のことで、おくすりの作用時間のひとつの目安になります。

ここでは、メイラックスの半減期や他の抗不安薬との比較、そこから考えられるメイラックスの効果的な服薬方法について紹介していきます。

また、「半減期」の定義についても詳しくみてみましょう。

1.メイラックスの半減期はどのくらい?

メイラックスは服薬後、約1時間で血中濃度が最大となり、半減期は約122±58時間です。

抗不安薬は、半減期で分けるとだいたい3種類に分類できます。

  • 半減期が短い ・・・半減期が~6時間
  • 半減期が普通 ・・・半減期が6~24時間
  • 半減期が長い ・・・半減期が24時間~

半減期とは、おくすりの血中濃度が半分になるまでにかかる時間のことで、
おくすりの作用時間とある程度相関するため、作用時間を知る目安になる値です。

おおよそですが、「半減期が122時間」≒「作用時間が122時間くらい」と考えていいでしょう。

おくすりが身体がから抜けていくスピードは個人差があるため、
半減期はあくまでも目安ですが、おくすりを選ぶ際の大きな指標になる数値です。

メイラックスの抗不安薬の中でも、最長クラスの半減期を持ちます。
服薬してから1時間ほどで血中濃度が最高値になり、半減期は約122±58時間です。

これは、理論上は1回の服薬で約1週間ほど効き続けるという事です。
非常に長く効くおくすりですね。

2.抗不安薬の半減期一覧

抗不安薬はたくさんの種類があり、それぞれ半減期が異なります。
主な抗不安薬の半減期を比較してみると下図のようになります。

抗不安薬作用時間(半減期)最高血中濃度到達時間
グランダキシン短い(1時間未満)約1時間
リーゼ短い(約6時間)約1時間
デパス短い(約6時間)約3時間
ソラナックス/コンスタン普通(約14時間)約2時間
ワイパックス普通(約12時間)約2時間
レキソタン/セニラン普通(約20時間)約1時間
セパゾン普通(11-21時間)2~4時間
セレナール長い(約56時間)約8時間
バランス/コントール長い(10-24時間)約3時間
セルシン/ホリゾン長い(約50時間)約1時間
リボトリール/ランドセン長い(約27時間)約2時間
メイラックス非常に長い(60-200時間)約1時間
レスタス非常に長い(約190時間)4~8時間

抗不安薬によって、半減期や最高濃度到達時間はそれぞれ異なります。

半減期が短いと、効果がすぐなくなるため細かい調整がしやすいというメリットがあります。
しかし1日何回も飲まないといけなかったり、依存にもなりやすいのがデメリットです。

反対に半減期が長いと、一回飲むと身体からなかなか抜けないため細かい調整がしにくいのですが、
服薬回数も少なくて済みますし、ゆっくり効くため依存にもなりにくいと言われています。

どちらも一長一短ありますので、自分の症状・状態に合わせて適切なおくすりを選択することが大切です。

メイラックスはというと、約122±58時間というかなり長い半減期を持ちます。
他の抗不安薬と比較しても、これは最長クラスです。

しかもメイラックスは意外と即効性もあります。
ゆっくりじわじわと効くイメージがありますが、理論上は服薬後1時間で血中濃度が最大になるのです。

3.半減期から考えるメイラックスの使い方

メイラックスは抗不安薬なので、不安感を改善するために使われます。

一般的な抗不安薬は、

  • 一日を通して不安を抑える(定期的に服薬する)
  • 特定の時間帯だけ不安を抑える(頓服で服薬する)

という2つの使い方に分けられますが、メイラックスの場合は一度飲むと数日は効いてしまうので、
頓服として使うことは稀です。

ほとんどの場合、定期的に服薬するという使い方をします。

メイラックスの作用時間が約122±58時間であることを考えると、
数日に1回の服薬でも良さそうです。

しかし実際は、1日1回と毎日服薬することがほとんどです。
これは、数日に一度の服薬だと飲み忘れが多くなるから、そして理論上は数日効くとしても
体感的には数日間も効いているような感覚は乏しいからだと思われます。

添付文書には「年齢・症状により適宜増減する」と書かれてますから、
もし2日に1回とか3日に1回の服薬で効果が十分感じられ、飲み忘れなく服薬できるのであれば、
主治医と相談の上、そういった飲み方でも構わないでしょう。

定期的に服薬しているとワンポイントで飲むよりも強くしっかりと効きます。
これは服薬を続けることで、ベースの血中濃度が徐々に上がっていくからです。

一般的には、半減期の約5倍の期間、定期的に服薬を続けると血中濃度が高い状態で安定する
と言われています。メイラックスであれば理論上は「122時間×5=610時間」ですので約1か月ですね。

次にメイラックスは頓服としてはどうなのかを考えてみましょう。

実はメイラックスは服薬後約1時間で血中濃度が最大となるため、意外と即効性はあります。
そのため、「不安な時に飲む」という頓服的な使い方も出来ることは出来ます。

しかし問題点もあります。それは頓服にしては「長く効きすぎてしまう」という事です。

頓服というのは多くの場合、「一時的に不安を抑える」ために使います。
具体的には、

  • 発作が起きかけている時に止めるため
  • 電車に乗ると不安を感じる人が、電車に乗ってる間だけ
  • 人前の発表で不安が強くなる人が、発表の間だけ

などです。

たいていの場合、これらは長くても数時間ですので、おくすりは数時間効いてくれれば十分です。
しかし、メイラックスは数時間ところが数十時間、場合によっては100時間以上効き続けます。
これは頓服としては長すぎます。

そのため、頓服として使う場合はメイラックスよりも
半減期が数時間や長くても10時間前後のものを使うことが多いのです。

4.半減期とは?

せっかくなので「半減期」について詳しく勉強してみましょう。
半減期というのは「お薬の血中濃度が半分になるまでに要する時間」のことです。

半減期は、お薬の作用時間と相関するため、
半減期が分かれば作用時間がおおよそ推測できます。

例えば、下記のような薬物動態を示すお薬があるとします。

半減期イメージ

だいたいのお薬は内服すると、このグラフのようにまず血中濃度がグンと上がり、
それから徐々に落ちていきます。

このお薬は、投与10時間後の血中濃度は「10」ですが、
投与20時間後には血中濃度は半分の「5」に下がっています。

血中濃度が半分になるのに要する時間は「10時間」ですので、
このお薬の半減期は「10時間」です。

そして半減期が10時間ということは「だいたい10時間くらい効くおくすり」なんだと分かります。

正確には半減期と作用時間の長さは完全に一致するわけではありません。

実際は、おくすりを飲むとまずは血中濃度は上がり最高血中濃度に到達して
それから下がっていきますので、厳密に言えば
最高濃度に到達するまでの時間も加味しなければいけないでしょう。

もっと言えば、すべての人が、血中濃度が半分になったら薬効を感じなくなるとは言えません。
血中濃度がどれくらい下がれば薬効を感じなくなるかは人それぞれでしょう。
半分の人もいれば、それ以上・それ以下の方もいます。

更に個々人の体質や代謝能力まで考え出すとキリがなく、
そうなると作用時間を数値化することは不可能です。

でも、「どれくらいの効くかは、人それぞれですから分かりません」では話にならないので、
ひとつの目安として、半減期を使用しているのです。

細かいことを考え出せばキリがありませんが、あまり難しく考えずざっくりと
「だいたい半減期が作用時間と同じくらいだ」と考えていいのではないかと思います。

このように半減期はあくまでも目安であり、個人差があります。
「絶対的な数値である」と思わないように気を付けてくださいね。