自立支援医療とは?精神科の通院治療費を軽減できる制度です。

自立支援医療

精神疾患はゆっくりと少しずつ改善していく疾患が多く、そのため治療は長期にわたる通院が必要になります。

これは精神疾患の特性であるため仕方がないところですが、経済面で考えると「長期間通院しなければいけない」というのは大きな負担です。日本の医療保険制度は世界的に見ても患者さんへの負担が少なく充実しているとは言われていますが、それでも診察、検査、投薬などを長期受け続ければ医療費の負担は決して軽いものではないでしょう。

中には療養のため、主治医の指示で仕事をストップしている患者さんもいらっしゃいます。この場合、経済的な問題は更に深刻になります。せっかくストレスを下げるため休職したのに、医療費の負担がストレスになってしまうと精神状態はかえって悪化してしまう事もあります。これでは本末転倒です。

このような問題から、「長期通院が必要となる精神疾患患者さんへの経済的な負担を軽くしよう」という目的で作られたのが「自立支援医療」になります。

この制度を利用すると、精神科通院の経済的負担が大きく軽減されます。

今日は自立支援医療について、どのような方が適用になり、どのように取得すればいいのかを紹介します。

また自立支援医療を使うにあたっての注意点もお話しさせて頂きます。

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1.自立支援医療とは

自立支援医療という制度をかんたんに説明すると、

精神疾患の患者さんの医療費(診察費・投薬費・治療費など)を軽減しましょう

という制度になります。

正確には自立支援医療には、

  • 精神通院医療(主に精神疾患の方が対象)
  • 更生医療(主に成人で身体的な障害がある方が対象)
  • 育成医療(主に未成年で身体的な障害がある方が対象)

と3つがありますが、今回は精神通院医療についての自立支援医療制度の説明をさせて頂きます。

自立支援医療は、外来通院をしている患者さんを対象とした制度になります。入院中の患者さんは適用となりません。

精神疾患の通院は、数回の診察で終わることはほとんどありません。どんなに短くても数か月、長いと十年以上通院が続くこともあります。治療期間が長期に渡れば、その経済的な負担は深刻なものとなります。

更に精神疾患の場合、精神的な症状(意欲低下、集中力低下、判断力低下、疲労感など)で生産性が低下するため、仕事を十分にできなくなってしまうこともあり、これも経済的な問題に拍車をかけます。

精神疾患のほとんどは、精神的ストレスによって症状は悪化します。そのため金銭面での精神的ストレスがかかってしまうと精神症状も悪化してしまい、更に治りが悪くなっていくという悪循環にはまってしまうことがあります。

こういった事態を避け、経済的な負担を感じることなく治療に専念できるようにするために作られたのが自立支援医療です。

では自立支援医療は、どのくらい経済的な負担が軽減されるのでしょうか。

私たちが普段、医療を受ける際には医療保険が適用され、通常は3割負担になります(70歳以上の高齢者や小学生未満のお子様は2割負担)。医療費の3割を自分が払い、残りの7割は国が負担してくれているのです。

つまり医療保険制度を利用して医療を受けると、仮に医療費が10,000円かかった時、患者さん本人が負担する金額は3,000円で、残り7,000円は国が払ってくれます。

これが自立支援医療の適用となると、患者さん本人の負担は更に1割まで下がります。

つまり、仮に医療費が10,000円かかった時、患者さん本人が負担する金額は1,000円になります。

長期通院をする方にとってこれは非常にありがたい制度になります。

更に自立支援医療では自己負担費の上限も設けられています。基本的には1割負担になりますが、患者さんの世帯収入に応じて負担額には上限があり、月0円(実質負担なし)、月2500円まで、5000円まで、10000円まで、20000円まで、上限なしなどの上限が設定されています。

これによって、予想外の大きな医療費の出費が防げるようになっています。

世帯収入によって負担額が異なるため、所得が一定以上ある方(具体的には市町村民税が235,000円以上の方)は基本的には自立支援医療を受けることが出来ません(医師が「重度かつ継続」に該当すると判断すれば受けることが出来ることもあります)。

2.どのような精神疾患が対象となるのか

自立支援医療は精神疾患であれば、どんな疾患でも適用となる可能性があります。

実際の現場では、対象となる代表的な疾患としては、

  • 統合失調症
  • 気分障害(うつ病、双極性障害)
  • 強迫性障害
  • 知的障害(精神遅滞)
  • 自閉症スペクトラム障害(アスペルガー症候群など)
  • パーソナリティー障害

などが多くを占めます。しかし、それ以外でも

  • 認知症などの器質性精神障害
  • アルコール・薬物などの物質使用による障害
  • てんかん
  • 不安障害(不安神経症)
  • 摂食障害(過食症・拒食症)

なども症状・経過によっては適用となります。

これらの疾患であれば全てが自立支援医療の適用になるわけではなく、主治医が「精神科的医療を長期継続する必要がある」と判断した方に限られます。これらの以外の精神疾患であっても主治医が自立支援医療の適用と認め、都道府県・指定都市もそれに同意すれば自立支援医療の適用となることもあります。

また適用となるのは症状が重い場合などに限りません。例え症状が落ち着いていたとしても、主治医が「再発の可能性があるから、引き続き医療を継続する必要がある」と判断すれば、自立支援医療の適用となります。

自立支援医療が適用となる医療の対象としては、外来で行われる全ての医療が対象となります。

具体的には、

  • 診察費
  • お薬代

などの他、

  • デイケア
  • 訪問看護

なども自立支援医療の適用となります。

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3.自分が自立支援医療の適用かどうかを知るには

自立支援医療の適用となるかどうかの最終的な判断は主治医がするものですので、確実な答えを知りたいのであれば、主治医に聞く他ありません。精神科の通院加療を受けていて、毎月の医療費が負担になっているのであれば一度主治医の先生に相談してみましょう。

一般的な回答としては、

  • 上記に該当する精神疾患の診断が付いていて、
  • 長期の通院が必要と考えられる方

であれば、適用になる可能性が高いと言えます。

4.自立支援医療の申請方法

自立支援医療を受けるためにはどのような手続きをすればいいのでしょうか。

Ⅰ.主治医に自立支援医療の適用が確認する

自分が自立支援医療の適用になるのかどうかは、主治医に聞かないと分かりません。まずは主治医に相談してみましょう。

Ⅱ.申請用紙をもらう

主治医から自立支援医療の申請を勧められたら、まずは申請用紙をもらいます。

役所に行って、自立支援医療の申請用紙をもらいましょう。自立支援医療は都道府県・指定都市が母体となっている制度ですので、市役所に申請用紙は置いてあります。

あるいはクリニックに申請用紙を置いているところもありますし、申請用紙のテンプレートをパソコンに取り込んであるクリニックも最近では多くあります。この場合は、わざわざ役所に用紙をもらいにいかなくても、クリニックで直接申請用紙を入手することができます。

Ⅲ.主治医に申請用紙に記入してもらう

申請用紙には氏名・住所・年齢などといった個人情報から、病名や症状、投薬内容、経過などの病気の詳細についても記載しなければいけません。これは基本的には主治医が記載するものになります。

そのため、申請用紙を主治医に渡し、記入してもらう必要があります。

忙しい先生だと記載までに時間を頂くこともありますが、通常は早ければ即日、遅くとも1~2週間程度で記載してくれます。完成したら患者さんが病院に取りにきても構いませんし、なかなかすぐには来れないという場合は郵送させていただくこともあります。

医者側の立場でお話すると、作成自体は10分もあれば終わるものです。しかし診察中に作成してしまうと次の患者さんを待たせてしまうことになるため、患者さんが多い時は診察時には書かず、その日の診察が終わってからまとめて書くようにしている先生が多いと思います。

実はこのような医師が書かないといけない書類というのは結構多く、1つ1つの書類は短時間で書き終わるものであっても書類が溜まっていると時間が必要になることがあります。そのため、状況によっては1〜2週間頂くこともあります。

Ⅳ.申請用紙を役所に持っていく

面倒ですが、申請用紙を役所まで持っていきましょう。

先ほどもお話しした通り、自立支援医療は都道府県・指定都市が母体となっているため、市役所などに持って行き、申請をしなければいけません。

申請する窓口は各市役所によって異なりますが、

  • 障害福祉課
  • 保健福祉課

などが多いようです。

Ⅴ.自立支援医療受給者証が届けば使用できる

1カ月ほど経つと、役所から自立支援医療受給者証が送られています(送られてくる期間は目安で差があります)。これをあらかじめ指定したクリニックや薬局で提示すれば、自立支援医療の適用となります。

注意点として、自立支援医療は、事前に登録した医療機関(クリニックや薬局)でしか利用できないものであり、どんな病院でも使えるものではありません。

例えば、Aクリニックでうつ病の治療を受けていて自立支援医療を申請した場合、自立支援医療が使えるのはAクリニックのみです。Aクリニックが休診だから急遽Bクリニックを受診した、という場合は自立支援医療は使えなくなります。

そのため転院する場合は、自立支援医療指定医療機関の変更を役所で行わないといけません。

また自立支援医療受給者証の有効期限は1年になります。そのため、引き続き更新する場合は1年経つ前に主治医に再度申請用紙を記入してもらう必要があります。有効期限が切れる3か月前から更新の手続きが出来ますので、余裕を持って行うようにしましょう。

ただし病状や治療方針に大きな変更がない場合は、2年に1回の更新でも認められることがあります。

5.自立支援医療の注意点

このように自立支援医療は、患者さんの経済的負担を軽減してくれるありがたい制度です。適用になる方は、ぜひ申請しましょう。。

1つ注意点として、自立支援医療はあくまでも「精神疾患の治療のため」に適用されるものです。そのため、それ以外の治療に関しては適用となりません。

よくあるのが、受診したついでに精神科治療以外のお薬をもらうというケースです。

精神科の診察を受け、

「最近、風邪気味だから風邪のお薬ももらえないか」
「花粉症の症状が出てきたから、抗アレルギー薬をもらえないか」
「最近腰痛がひどいから湿布をもらえないか」

と、「ついでの相談」をされることがあります。

この時、医師が診察して必要があると判断されれば風邪薬やアレルギーのお薬を出すことは可能です。しかし、これは精神疾患の治療のために行われた医療にはなりません。

そのため、この場合はこれらのお薬のみ、自立支援医療の適用外となります。

つまり、いつもの精神科の診察費やお薬代は1割負担となりますが、風邪薬やアレルギーのお薬だけは通常通り3割負担となります。時々、「全てのお薬が1割になる」と誤解している患者さんがいらっしゃいますが、そうではありませんので、注意して下さい。

しかし間接的に精神科治療に関わっていると判断されるお薬は自立支援医療の適用となることもあります。例えば、胃薬や下剤なども基本的には内科疾患の治療薬であるため自立支援医療の適用にはならないのですが、

・抗うつ剤の副作用で便秘になっていて、それを改善させるために下剤を投与している
・抗うつ剤の副作用で吐き気が生じていて、それを改善させるために胃薬を投与している
・うつ病の症状として腰痛が出現している

と医師が判断する場合、これは間接的にですが「精神疾患の治療のために行われた医療」だと考えることができます。この場合は胃薬や下剤と言った精神科のお薬ではないものでも自立支援医療の適用となります。

ここら辺の判断は微妙なものもありますが、基本的には処方した医師が自立支援医療の適用かどうかは判断します。しかしあまりに不自然な適用をさせると、役所の方から医師に問い合わせが来ることもあります。そのため、いくら患者さんの医療費を軽減してあげたいとは思っても、明らかに該当しないお薬を自立支援医療の適用とすることは出来ません。

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