イソミタール原末の副作用と対処法【医師が教える睡眠薬の全て】

イソミタールの副作用

イソミタール原末(一般名:アモバルビタール)は1950年から発売されているお薬で、バルビツール酸系に属する睡眠薬です。

古いお薬であり、現在ではほとんど用いられる事はありません。

使われていないのは単に古いからという理由ではありません。イソミタールは副作用の強さと多さに問題があります。イソミタールは問題となるような副作用が多いため、極力用いるべきでない睡眠薬の1つなのです。

ここでは、イソミタールにはどのような副作用があるのか、副作用の問題点や対処法について紹介していきます。

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1.イソミタールの副作用の特徴

イソミタールはバルビツール酸系に属する睡眠薬で、一番古いタイプの睡眠薬になります。

昔のその危険性があまり認識されておらず、また現在のように何種類もの睡眠薬がなかったため用いられていました。イソミタールと、同じく古い睡眠薬である「ブロバリン」というお薬の2剤を併用すると強力な効果が得られたため、難治性の不眠症患者さんからも人気がありました(この処方は「イソブロ」と呼ばれたりしていました)。

しかし次第にイソミタールの危険性が知られるようになり、また安全性の高い睡眠薬がその後次々と開発されてきたことからイソミタールが処方される頻度は徐々に少なくなり、現在ではほとんど使われなくなりました。

イソミタールに限らずバルビツール酸系の効果は非常に強力で、その特徴を一言で言うと、

効果は非常に強力、でも副作用も非常に強力

だと言えます。

イソミタールも同様であり、眠らせる力は非常に強力である一方で、問題となる副作用も多く認めます。

イソミタールの副作用の問題は大きく2つあります。それは、

  • 耐性・依存性が強く、また急速に生じる
  • 大量に服薬すると呼吸停止などの危険な副作用がある

ということです。

【耐性】
服薬を続けていくと、徐々に身体がお薬に慣れていき、お薬の効きが悪くなってくること。耐性が形成されてしまうと、同じ効果を得るためにはより多い量が必要となるため、大量処方につながりやすい。

【依存性】
服薬を続けていくうちに、そのお薬を手放せなくなってしまうこと。依存性が形成されてしまうと、お薬を飲まないと精神的に不安定になったり、発汗やふるえといった離脱症状が出現してしまう。

イソミタールは非常に強力な催眠効果(眠りに導く効果)があるため、使用初期においては高い満足感が得られます。患者さんも「やっと眠れるようになった!」と喜びます。一見すると良いお薬に見えるかもしれません。しかしそれは初期に限った話なのです。

イソミタールの使用を続けていると、すぐに耐性が生じます。耐性が生じたら以前と同じ満足度を得るためにはより多くのイソミタールを服用しなくてはいけなくなります。するとイソミタールの服用量が2倍、3倍・・・と増えていってしまいます。

またイソミタールは治療域と中毒域の近いお薬です。これは治療に適した血中濃度と、中毒となってしまう危険な血中濃度が近いということで、多く服薬すると危険なお薬だということです。専門的にはこのようなお薬のことを「治療指数が低い」と言い、イソミタールは治療指数の低いお薬になります。

つまり耐性が生じてイソミタールの服用量が増えていくと、イソミタールの血中濃度が上がり、中毒域に入りやすくなっていくということです。そうなると重篤な副作用である呼吸停止や血圧低下、昏睡などが生じる危険性が高まります。

実際イソミタールは常用量(治療に使われる一般量)の5倍ほどで中毒量になるとも言われています。耐性が生じた患者さんが、医師に無断で通常の5倍以上の量を服用してしまうと非常に危険だという事です。

更に困ったことにイソミタールには強力な依存性があります。耐性が生じて、イソミタールの使用量が増えて「これはまずい」とようやく気付いても、その頃には依存性が形成されているため、イソミタールをやめることができない身体になっているのです。

これがイソミタールをはじめとしたバルビツール酸系の悪循環です。

簡単に言うと、

「満足感を得られるのは最初だけ。あとは非常に苦しむことになる。」

というのがバルビツール酸系なのです。

非常に強い催眠効果(眠らせる力)があるのは事実ですが、このような理由からイソミタールは極力用いるべきではありません。

2.イソミタールの副作用と対処法

どんなお薬でも、副作用は必ずあります。

中でもイソミタールは副作用が多く、またその程度も重篤なものが少なくありません。

ここではイソミタールで認められる主な副作用と対処法を紹介します。対処法は基本的には「イソミタールを使わないこと」に尽きますが、それ以外にも患者さんに知っておいてほしい対処法も紹介していきます。

Ⅰ.耐性・依存性形成

睡眠薬には耐性・依存性を認めるものが少なくありません。

現在良く用いられている睡眠薬である「ベンゾジアゼピン系睡眠薬」「非ベンゾジアゼピン系睡眠薬」にも耐性・依存性はあります。

【ベンゾジアゼピン系睡眠薬】
GABA-A受容体に結合することで、催眠作用・筋弛緩作用などを発揮する。効果と安全性のバランスに優れるが長期使用による耐性・依存性に注意が必要
(代表薬:ハルシオン、レンドルミン、サイレース、ロヒプノール、ドラールなど)

【非ベンゾジアゼピン系睡眠薬】
GABA-A受容体のω1という部位に選択的に結合することで筋弛緩作用を起こしにくくし、ふらつきや転倒のリスクが減っている睡眠薬。耐性・依存性はベンゾジアゼピン系よりは軽いという報告もある。
(代表薬:マイスリー、アモバン、ルネスタ)

イソミタールは、バルビツール酸系睡眠薬という種類になり、ベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系睡眠薬よりも昔に開発されたお薬です。

バルビツール酸系は耐性・依存性が強く、また急速に形成されます。イソミタールはベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系よりも非常に強力な耐性・依存性を認めるのです。

この耐性・依存性の強さはイソミタールの大きな問題です。

耐性というのは、身体が徐々に薬に慣れてしまう事。最初は普通の量を飲めばぐっすり眠れていたのに、だんだんと身体が慣れてしまい、同じ量を飲んでも全然眠れなくなってしまう、という状態です。耐性が形成されると必要なお薬の量がどんどんと増えてしまいます。

依存性というのは、次第にその物質なしではいられなくなる状態をいいます。依存性が生じると、そのお薬がなくなると落ち着かなくなり、お薬から離れることができなくなってしまいます。

耐性も依存性もアルコールで考えると分かりやすいかもしれません。

アルコールにも耐性と依存性があります。

アルコールを常用していると、次第に最初に飲んでいた程度の量では酔えなくなるため、次第に飲酒量が増えていきます。これは耐性が形成されているという事です。また飲酒量が多くなると、常に飲酒していないと落ち着かなくなり、いつもアルコールを求めるようになります、これは依存性が形成されているという事です。

イソミタールは耐性・依存性形成が非常に強く、アルコールなどよりも強いと考えられています。そのため極力用いるべきではありません。睡眠薬が必要な状態であっても、バルビツール酸系以外の睡眠薬を選択することが望まれます。

またやむを得ずイソミタールを用いる場合は、必ず主治医の指示のもとで使用するようにし、勝手な増薬は絶対にしないようにしてください。勝手な増量はお薬の血中濃度が中毒域に入ってしまう可能性があり、大変に危険です。

睡眠薬で耐性・依存を形成しないためには、まず「必ず医師の指示通りに服用する」ことが鉄則です。アルコールも睡眠薬も、量が多ければ多いほど耐性・依存性が早く形成される事が分かっています。医師は、なるべく耐性・依存性を起こしにくいように考えて処方をしています。それを勝手に倍の量飲んだりしてしまうと、より急速に耐性・依存性が形成されてしまいます。

またアルコールとの併用も危険です。アルコールと睡眠薬を一緒に使うと、これも耐性・依存性の急速形成の原因になると言われています。特にイソミタールはアルコールと併用すると中毒域に入ってしまう可能性もあるため、絶対に併用してはいけません。

また、「漫然と飲み続けない」ことも大切です。睡眠薬はずっと飲み続けるものではなく、不眠の原因が解消されるまでの「一時的な」ものです。時々、「睡眠薬の量を減らせないか」と検討する必要があり、本当はもう睡眠薬が必要ない状態なのに漫然と長期間内服を続けてはいけません。

服薬期間が長期化すればするほど、耐性・依存形成のリスクが上がるからです。

Ⅱ.呼吸抑制・血圧低下

バルビツール酸系が危険である理由は、「耐性・依存性」以外にももう1つあります。

それは治療域と中毒域が非常に近いことです。治療域というのは「この血中濃度が効果を得るにはちょうど良い」という濃度であり、中毒域というのは「この血中濃度になると危険な副作用が出やすくなる」という濃度のことです。

イソミタールは常用量(治療に使われる一般的な量)の5倍ほどで中毒域に入ってしまうと考えられています。これは誤って5日分のお薬を一気に飲んでしまっただけで危険な状態になってしまう可能性があるという事です。

治療域と中毒域が近いことを「治療指数が低い」という言い方をしますが、治療指数が低いお薬は、危険性が高いお薬になります。

イソミタールは治療指数が低く、特に大量に服薬すると

  • 呼吸抑制・呼吸停止
  • 血圧低下、ショック
  • 体温低下
  • 昏睡

などの危険な副作用を生じる可能性があります。場合によっては命に関わるような重篤な状態になってしまう事もあり、これは大変に危険です。

このような理由もありイソミタールは極力用いるべきではないのです。

イソミタールを服用していて、このような徴候が出始めたらすぐに主治医に相談し、指示を仰いでください。医師の管理のもと、速やかにイソミタールを中止する必要があります。

Ⅲ.眠気

当たり前ですが、睡眠薬は眠気を起こすお薬です。時にこれは副作用となってしまうことがあります。

寝る前に睡眠薬を飲んで、そのまま眠くなるのはイソミタールの「効果」ですから問題ないのですが、「朝、起きる時間になってもまだ眠い」「日中眠くて仕事に集中できない」となるとこれは問題で、副作用になります。

日中まで睡眠薬の効果が残ってしまう事を「持ち越し効果(hang over)」と呼びます。眠気だけでなく、だるさや倦怠感、ふらつき、集中力低下なども生じます。

イソミタールは薬効自体はそこまで長くはなく、だいたい4~6時間前後だと言われています。「中時間型バルビツール酸系」と呼ばれることもあり、そこまで長く効くお薬ではありません。しかし自覚的な効果は短くても半減期(お薬の血中濃度が半分に落ちるまでの時間)は約20時間程度とまずまず長く、人によっては日中にまで効果を持ち越してしまう事は十分に考えられます。

そのため人によっては日中に眠気を感じたりだるさ・ふらつきを感じる方もいます。

イソミタールの服薬で日中に支障がある眠気・ふらつき・倦怠感などが出るようであればやはりイソミタールを中止し別の睡眠薬にすべきでしょう。バルビツール酸系から他の睡眠薬への切り替えを検討してみましょう。

どうしても中止できない場合は、睡眠時間を増やせないか検討してみてください。睡眠時間が短いほど持ち越し効果は起こりやすくなりますので、睡眠時間をより確保できれば改善する可能性があります。

また、どうしてもイソミタールをすぐに変更できないという場合は、内服量を減らしてみるという方法もあります。効果も弱くなってしまいますが、量を減らすと一般的に薬効は多少短くなります。

Ⅳ.もうろう状態、一過性前向性健忘

イソミタールを内服したあと、自分では記憶がないのに、歩いたり人と話したりと行動している事があります。

これは即効性に優れて強い効果を持つ睡眠薬で多く認められる副作用です。イソミタールは服用してから血中濃度が最大になるまでには2~4時間ほどかかりますが、薬効自体が強いため感覚的には服用後30分程度で効果が現れ始めます。

そのためもうろう状態や一過性前向性健忘が生じる可能性があります。

睡眠薬はまれに中途半端な覚醒状態にしてしまう事があり、この中途半端な覚醒状態が「もうろう状態」「一過性前向性健忘」の正体です。一般的には急激に効くお薬(超短時間型)に多く、また多くの量の睡眠薬を内服しているケースで起こりやすいようです。

イソミタールでこれらの症状が起こってしまったら、やはりイソミタールを中止して別の睡眠薬にしましょう。どうしても中止できない場合はイソミタールの量を減量しましょう。もちろんいずれも独断は危険ですので、主治医に相談して指示に従ってください。

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3.イソミタールを極力使うべきではない理由

イソミタールの副作用をみてきました。

イソミタールは副作用が多く、時に命に関わるような副作用が生じることがあるという事がご理解いただけたでしょうか。

イソミタールをはじめとしたバルビツール酸系を極力使うべきではない理由はここにあります。

イソミタールは重症の不眠症の患者さんに現在でもしばしば処方されている現状があります。特に一昔前に流行ったイソミタールとブロバリンを併用する「イソブロ」療法は、効果も強力であるため、現在でも難治性の不眠症患者さんに処方されている事があります。

確かに「眠れない」というのは非常につらい症状です。強いお薬を使ってでも治したい気持ちはとても良く分かります。

しかし「命に関わる副作用が生じるリスク」をとってまでして、治すものではないはずです。

現在は安全性の高い優れた睡眠薬が次々と発売されています。また睡眠薬以外の治療法として「睡眠衛生指導」や「睡眠への認知行動療法」などの手法も確立されてきており、睡眠薬に劣らずの効果があることが確認されています。

なるべくイソミタールは使わずに、このような安全性の高い治療法を上手に組み合わせて不眠は治していくようにしましょう。

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