インプロメンの効果【医師が教える抗精神病薬の全て】

インプロメンの効果

インプロメン(一般名:ブロムペリドール)は1986年から発売されている抗精神病薬(統合失調症の治療薬)です。

抗精神病薬には古い第1世代と比較的新しい第2世代があり、インプロメンは第1世代に属します。新しい第2世代の方が安全性は高く、現在では第2世代を使うことがほとんどですので、インプロメンは今は使用される機会は多くはありません。

しかし中には第2世代があまり効かない方や第2世代のお薬が合わない方もいらっしゃり、そのような場合には第1世代が使用されることがあります。

古いお薬であるため安易に使用して良いお薬ではありませんが、インプロメンは統合失調症をはじめとした精神疾患の治療に大きく貢献してきたお薬です。

ここではインプロメンの効果や特徴、どんな作用機序を持っているお薬でどんな人に向いているお薬なのかを紹介していきます。

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1.インプロメンの特徴

まずはインプロメンの特徴について簡単に紹介します。

インプロメンは、脳のドーパミン受容体を強力にブロックすることで、強力に幻覚・妄想を改善させる抗精神病薬です。

セレネース(一般名:ハロペリドール)の改良薬であり、セレネースよりも即効性・持続力に優れます。

抗精神病薬は基本的には脳のドーパミンのはたらきを抑える作用を持っています。具体的に言うと、ドーパミンが作用する部位である「ドーパミン受容体」をブロックする事でドーパミンが作用出来ないようにしてしまうのです。

統合失調症は、脳のドーパミンが過剰になってしまっている事が一因だと考えられています。これを「ドーパミン仮説」と呼びますが、この仮説に基づけばドーパミンのはたらきを抑えれば統合失調症の症状を改善できるわけです。

抗精神病薬はこのドーパミン仮説に基づき、ドーパミンをブロックする作用を持っているのです。

そしてインプロメンは抗精神病薬の中でも「ブチロフェノン系」という種類に属します。

インプロメンをはじめ、ブチロフェノン系はドーパミンをブロックする作用が強いお薬になります。ピンポイントでドーパミン受容体を狙うお薬、といった感じであり、これがインプロメンの特徴です。

そのためドーパミン過剰によって生じている症状に対しては、強力な効果を発揮します。具体的には、統合失調症における「幻覚」「妄想」「興奮」といった陽性症状は、ドーパミン過剰によって生じると考えられているため、インプロメンはこれらの症状に対して高い効果を発揮します。

【陽性症状】
本来はないものがあるように感じる症状の総称で、「本来聞こえるはずのない声が聞こえる」といった幻聴や、「本来あるはずのない事をあると思う」といった妄想などがある。

また持続性もあり1日1回の服用で良い点もインプロメンのメリットです。

インプロメンは服用してから4~6時間ほどで血中濃度が最大になり、半減期(お薬の血中濃度が半分に下がるまでの時間)は薬20~30時間と報告されています。

ここから1日に1回の服用でも1日を通してある程度効果が保てると考えられています。

しかし強力にドーパミンをブロックするインプロメンは、ドーパミンをブロックしすぎてしまうリスクもあります。これはインプロメンのデメリットになります。

脳のドーパミンは多すぎても問題ですが、少なすぎてもこれもまた問題なのです。

脳のドーパミンが少なくなりすぎる疾患として「パーキンソン病」がありますが、インプロメンはドーパミンを強力にブロックしすぎてしまうため、薬剤によるパーキンソン症状(薬剤性パーキンソニズム)を起こしてしまう事があります。

抗精神病薬による薬剤性パーキンソニズムは「錐体外路症状(EPS)」とも呼ばれ、手足のふるえや動かしにくさ、不随意運動(勝手に動いてしまう)などが認められます。また脳のホルモンバランスを崩してしまい高プロラクチン血症が生じることもあります。

【錐体外路症状(EPS)】
ドーパミンのブロックによって生じる神経症状。手足のふるえやムズムズ、不随意運動(身体が勝手に動いてしまう)などが生じる。

【高プロラクチン血症】
脳のドーパミンをブロックすることでプロラクチンというホルモンが増えてしまう事。プロラクチンは本来は産後の女性が乳汁を出すだめに分泌されるホルモンであり、これが通常の方に生じると乳房の張りや乳汁分泌などが生じ、長期的には性機能障害や骨粗しょう症、乳がんなどのリスクとなる。

また古い第1世代であるインプロメンは、重篤な副作用を起こすリスクがある事も忘れてはいけません。重篤な不整脈(心室細動、心室頻拍など)や悪性症候群、麻痺性イレウスなど、命の関わるような副作用が稀にですが生じることがあり、これが第1世代があまり使われなくなってきた一番の理由になります。

第1世代抗精神病薬であるインプロメンは、現在ではその副作用の問題から処方される頻度は少なくなっています。

第2世代でインプロメンと似たような作用を持つものにはSDA(セロトニン・ドーパミン遮断薬)があり、現在ではインプロメンの適応となるような症例ではSDAなどが用いられることが一般的です。

代表的なSDAには、

  • リスパダール(一般名:リスペリドン)
  • インヴェガ(一般名:パリペリドン)
  • ロナセン(一般名:ブロナンセリン)
  • ルーラン(一般名:ペロスピロン)

などがあります。

以上から、インプロメンの特徴として次のような事が挙げられます。

【良い特徴】

  • 強力な抗幻覚・妄想作用
  • ドーパミン以外の部位に作用しにくく、余計な作用(副作用)が生じにくい
  • 持続力があり1日1回の服用も可

【悪い特徴】

  • 高プロラクチン血症や錐体外路症状などのドーパミン系の副作用が生じやすい
  • 重篤な不整脈や悪性症候群など命に関わる副作用も起こり得る
  • 副作用が多い第1世代であるため、現在ではあまり用いられない

2.インプロメンの作用機序

インプロメンはどのような作用機序を持つお薬なのでしょうか。

抗精神病薬は、ドーパミンのはたらきをブロックするのが主なはたらきになります。統合失調症は脳のドーパミンが過剰に放出されて起こるという説(ドーパミン仮説)に基づき、ほとんどの抗精神病薬はドーパミンを抑える作用を持ちます。

インプロメンは抗精神病薬の中でも、「ブチロフェノン系」という種類に属します。

ブチロフェノン系には、インプロメン(ブロムペリドール)以外にも、

  • セレネース(一般名:ハロペリドール)
  • プロピタン(一般名:ピパンペロン)
  • トロペロン(一般名:チミペロン)
  • スピロピタン(一般名:スピペロン)

などがあります。

ブチロフェノン系の全体的な特徴としては、ドーパミン受容体を集中的に狙い、それ以外の受容体(ヒスタミン受容体、アドレナリン受容体、ムスカリン受容体など)には作用しにくいという特徴があります。

そのため、ドーパミン過剰で生じる陽性症状(幻覚・妄想・興奮)への効果に優れています。

またヒスタミン受容体、アドレナリン受容体、ムスカリン受容体などの余計な受容体には作用しにくいため、これらの受容体に作用する事で生じる症状が起きにくくなっています。

それぞれの受容体をブロックする事で生じる症状というと、具体的には、

  • ヒスタミン受容体:眠気、食欲亢進
  • アドレナリン受容体:ふらつき、鎮静
  • ムスカリン受容:抗コリン症状(口喝、便秘、尿閉など)

などが挙げられます。

インプロメンはブチロフェノン系の中でも、幻覚・妄想に対する作用は非常に優れています。しかし強力にドーパミンをブロックするため、「ドーパミンが足りなくなってしまう」状態にもしやすいお薬だとも言えます。そのため脳のドーパミンを枯渇させてしまい、錐体外路症状(EPS)や高プロラクチン血症などを起こしやすいというリスクもあります。

また、インプロメンは統合失調症の陽性症状には非常に有効ですが、陰性症状や認知機能障害はむしろ悪化させてしまうリスクもあると言われています(特に高用量を使用している場合)。

【陰性症状】
本来はある能力がなくなってしまう症状の総称で、活動性が低下しこもりがちになってしまう「無為自閉」や、感情表出が乏しくなる「感情鈍麻」、意欲消失などががある。

【認知機能障害】
認知(自分の外の物事を認識すること)に関係する能力に障害を来たすことで、情報処理能力、注意力・記憶力・集中力・理解力や計画能力・問題解決能力などの高次能力(知的能力)に障害を認めること。

そのため近年ではインプロメンはあまり用いられておらず、インプロメンを用いるような症例に対しては、第2世代抗精神病薬が用いられます。第2世代の中でも特にSDAという種類の抗精神病薬がインプロメンと比較的作用が似ているため、用いられます。

SDA(Serotonin Dopamine Antagonist:セロトニン-ドーパミン拮抗薬) は、1990年頃より発売され始めた比較的新しいお薬で、セロトニン2A受容体と、ドーパミン2受容体を遮断する作用に優れるお薬のことです。

具体的には、

  • リスパダール(一般名:リスペリドン)
  • インヴェガ(一般名:パリペリドン)
  • ロナセン(一般名:ブロナンセリン)
  • ルーラン(一般名:ペロスピロン)

などがあります。

SDAとブチロフェノン系は、共にドーパミンを強力にブロックして主に幻覚妄想といった陽性症状をしっかりと改善させるという特徴があります。

更にSDAの利点として、

  • 全体的に副作用が少ない
  • 命の関わるような重篤な副作用が少ない
  • 陰性症状にも多少の効果が期待できる

というメリットがあります。そのため、現在ではまずはSDAを用いることが多くなっており、インプロメンなどの第1世代が検討されるのは、第2世代では効果が不十分な場合など、やむを得ないケースに限られます。

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3.インプロメンの適応疾患

インプロメンはどのような疾患に使われるのでしょうか。

添付文書にはインプロメンの適応疾患として、

統合失調症

が挙げられています。

臨床現場でも主な用途は添付文書の通り統合失調症です。統合失調症の中でも特に幻覚妄想が前景に立っているタイプによく使われます。

また、インプロメンはドーパミン受容体を強力に遮断することで、興奮・衝動・怒りなどを抑える作用があるため、

  • 双極性障害の躁状態で興奮が強い患者さん
  • 認知症で易怒的となっている患者さん
  • 自閉症スペクトラム障害やパーソナリティ障害などで衝動性の強い患者さん

に用いられることもあります。

しかし前述の通り、現在では第1選択として用いられるお薬ではありません。

4.抗精神病薬の中でのインプロメンの位置づけ

抗精神病薬には多くの種類があります。その中でインプロメンはどのような位置づけになっているのでしょうか。

まず、抗精神病薬は大きく「第1世代」と「第2世代」に分けることができます。第1世代というのは定型とも呼ばれており、昔の抗精神病薬を指します。第2世代というのは非定型とも呼ばれており、比較的最近の抗精神病薬を指します。

第1世代として代表的なお薬は、セレネース(一般名:ハロペリドール)やコントミン(一般名:クロルプロマジン)などです。これらは1950年代頃から使われている古いお薬で、強力な効果を持ちますが、副作用も強力だという難点があります。

第1世代には「フェノチアジン系」と「ブチロフェノン系」があります。フェノチアジン系はコントミンなどが該当します。

フェノチアジン系はドーパミン受容体をはじめ、ヒスタミン受容体、アドレナリン受容体、ムスカリン受容体など様々な受容体に幅広く作用するという特徴があります。

そのため、幻覚妄想といった陽性症状の改善のみならず、不眠や不穏・興奮を改善させたりと、付加的な効果も期待できますが、一方で眠気やふらつき、食欲亢進といった副作用も生じやすいというデメリットもあります。

ブチロフェノン系はセレネースなどが該当し、インプロメンもここに属します。

ブチロフェノン系はドーパミン受容体に集中的に作用するのが特徴で、その他の受容体にはあまり作用しません。

そのため、幻覚妄想といった陽性症状の改善作用には優れますが、その他の症状を抑える作用は低めです。ドーパミンをブロックしすぎる事による副作用(錐体外路症状や高プロラクチン血症など)が生じやすいというデメリットがあります。

また全体的にみると第1世代は特に錐体外路症状と呼ばれる神経症状の出現頻度が多く、これは1950年代以降の当時から問題となっていました。また、悪性症候群や重篤な不整脈など命に関わる副作用が起こってしまうこともありました。

そこで、副作用の改善を目的に開発されたのが第2世代です。第2世代は第1世代と同程度の効果を保ちながら、標的部位への精度を高めることで副作用が少なくなっているという利点があります。また、ドーパミン以外の受容体にも作用することで、陰性症状や認知機能障害の改善効果も期待できます。

第2世代として代表的なものが、SDA(セロトニン・ドーパミン拮抗薬)であるリスパダールやMARTA(多元受容体作用抗精神病薬)であるジプレキサ(一般名:オランザピン)、DSS(ドーパミン部分作動薬)であるエビリファイ(一般名:アリピプラゾール)などです。

現在では、まずは副作用の少ない第2世代から使用することがほとんどであり、第1世代を使う頻度は少なくなっています。第1世代が使われるのは、第2世代がどうしても効かないなど、やむをえないケースに限られます。

インプロメンの抗精神病薬の中での位置づけは、

  • 第1世代のブチロフェノン系抗精神病薬である
  • 幻覚・妄想の改善に特に優れる
  • ドーパミンをブロックしすぎてしまい、錐体外路症状や高プロラクチン血症が生じやすい
  • 第1世代であり、重篤な副作用が生じるリスクもある
  • 副作用の多さから、現在では最初から使う事はないお薬

といったところです。

かんたんに言えば「昔のお薬」であり、現在では「今のお薬が効かない場合に限って使用を検討されるお薬」という位置づけになります。

5.インプロメンが向いている人は?

インプロメンの特徴をもう一度みてみましょう。

  • 強力な抗幻覚・妄想作用
  • 作用時間がまずまず長い
  • 高プロラクチン血症や錐体外路症状などのドーパミン系の副作用が生じやすい
  • 副作用が多い第1世代であるため、現在ではあまり用いられない

ということが挙げらました。

古いお薬であり、副作用の多さもありますので、現在ではあまり使われる事はありません。

インプロメンを使うのは、

  • 第2世代がどうしても使えないケース
  • 第2世代では効果が不十分なケース
  • 幻覚・妄想が著明なケース

などに限られるでしょう。

昔であればインプロメンの使用を検討された症例は、現在では作用機序が比較的似ているSDA(リスパダール、ロナセンなど)が検討されます。

何らかの理由で第2世代が使えず、

  • 幻覚・妄想といった陽性症状が主の方
  • 服薬回数が少ない方が好ましい方

などにはインプロメンを検討しても良いかもしれません。

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