特発性過眠症の特徴と診断・治療法

特発性過眠症

特発性過眠症は過眠症の1つで、夜間に十分な睡眠時間を取っているにも関わらず、日中に強い眠気が生じてしまい生活に支障を来す疾患です。

頻度の多い疾患ではないため、世間的にはあまり知られていません。

主に10代~20代といった学生や新社会人の時期に発症するため、「不真面目だ」「やる気がない」と誤解されてしまい、大きな不利益をこうむる事もあります。

特発性過眠症は、専門家の指示のもとでしっかりと治療を行えば改善させることができます。日中の強い眠気で困っている時は、「気持ちの問題」や「気合いが足りない」などと考えるのではなく、病院を受診して専門家に相談してみてください。

ここでは特発性過眠症について、その原因や症状、治療法などを詳しく説明します。

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1.特発性過眠症とは

特発性過眠症は、夜に十分な睡眠時間をとっているにも関わらず、日中に強い眠気が生じる疾患です。眠気の他、自律神経症状(頭痛やめまい、動悸、腹痛など)を認める事があるというのも特徴です。

特発性過眠症の主な症状は日中の眠気であり、「日中いつも眠い」というのが症状です。これは日中の集中力や作業効率を落としてしまうだけでなく、周囲に「アイツはいつもやる気がない」と誤解されてしまう事もあります。

10代~20代といった若い時期に発症する事が多く、発症に明らかな男女差はありません。患者さんの数は多くはなく、そのためにあまり広く知られている疾患ではありません。精神科以外の医師では気付かない事もあり、「体質」で片づけられてしまう事もあります。

しかし特発性過眠症は体質や気合不足といったものではなく、脳の覚醒中枢・睡眠中枢の異常だと考えられています。気合いを入れれば治るものではなく疾患ですので、専門家を受診し、適切な治療が必要になります。

2.特発性過眠症の原因

特発性過眠症はどのような原因で生じるのでしょうか。

実はこの原因は全く分かっていません。

推定されている原因として、脳の覚醒を維持するシステム(覚醒中枢)や睡眠をコントロールするシステム(睡眠中枢)に何らかの異常が生じている事が考えられていますが、病因の解明はまだまだ進んでいないのが現状です。

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3.特発性過眠症の症状

特発性過眠症ではどのような症状を生じるのでしょうか。

まず十分な睡眠をとっているにも関わらず、日中の強い眠気を認めます。ただ眠気があるだけでなく、その眠気によって生活に何らかの支障が生じている事がほとんどです。

例えば日中に強い眠気があり、それによって仕事で重大なミスをしてしまったり、学校を遅刻ばかりしてしまって成績が落ちてしまったりします。

また特発性過眠症は自律神経症状を認める事があり、これはこの疾患の特徴の1つです。

自律神経症状というのは、自律神経のバランスの崩れが生じる事で、

  • 頭痛
  • 胃痛
  • 動悸
  • めまい
  • 低血圧

などといった症状が生じる事です。

夜の睡眠時間は正常かそれ以上は取れており、にも関わらず日中に強い眠気が生じます(反対に夜に睡眠時間が少なくて日中に眠くなるのはただの寝不足です)。

日中に眠気はありますが、仮眠をとっても眠気は十分に改善せしません。また仮眠からの覚醒が困難で無理矢理起こされるともうろう状態になってしまう事があります。

4.特発性過眠症の診断法と診断基準

特発性過眠症の診断は、精神科医が慎重に診察を進めながらされていきます。

特発性過眠症を疑うポイントとしては、

  • 10代~20代で発症している
  • 睡眠時間が正常以上であるにも関わらず日中に強い眠気が生じる
  • 無理矢理覚醒させようとするともうろう状態となる事がある
  • 自律神経症状を認める

などがあります。

また診断基準を参考にする事もあります。

特発性過眠症の診断にもっとも役立つのは、アメリカ睡眠医学会が発刊しているICSD-3という診断基準です。

ICSD-3における特発性過眠症の診断基準を紹介します。

【特発性過眠症】
A.耐えがたい睡眠欲求や日中に寝込んでしまうことが毎日、少なくとも3ヶ月以上続く

B.情動脱力発作が存在しない

C.反復睡眠潜時検査(MSLT)においてSOREMPが2回未満、もしくは前夜のPSGでSOREMPがみられれば、MSLTでSOREMPがみられないこと。
(SOREMP:入眠してから15分以内に出現するレム睡眠の回数)

D.下記の少なくとも1つが存在する

(1)MSLTにおいて平均睡眠潜時が8分以下
(2)24時間PSGにて24時間の総睡眠時間が660分以上(典型的には12-14時間)であり、アクチグラフや睡眠日誌によって確認されている

E.睡眠不足が除外されている

F.過眠の症状やMLSTの所見が、他の睡眠障害、精神疾患、薬剤による
影響によって説明することができない。

特発性過眠症では、日中の強い眠気があり、それが一定期間(3か月以上)続いている必要があります(A)。

更にナルコレプシー(過眠症の1つ)でみられる情動脱力発作(強い感情が生じると力が抜けてしまう)が見られてはいけません(B)。

検査においては、反復睡眠潜時検査(MSLT)やポリソムノグラフィ検査(PSG)が行われます。

MSLTは日中の眠気を見る検査で、前夜に十分で寝てもらった上で翌日の日中に眠ってもらいます。検査は2時間置きに計4~5回行われます。脳波上、検査開始から何分で眠りに入るのかをみるもので、特発性過眠症では8分以下で眠りに入る必要があります(D)。

PSGは夜間の睡眠の際に脳波を付けて眠ってもらう検査です(24時間PSGでは1日を通して脳波を付けてもらいます)。特発性過眠症では24時間PSGで24時間中の11時間以上睡眠に入っている必要があります(D)。

またMSLTやPSGにおいて入眠直後のレム睡眠が少ない必要があります(C)。

5.特発性過眠症の治療

特発性過眠症の治療はどのように行われるのでしょうか。

まずは睡眠環境の見直しです。特発性過眠症は脳に問題があって生じると考えられているため、睡眠環境を見直しただけで解決するものではありません。しかし睡眠の質を下げてしまう環境で眠っていると、過眠症を更に悪化させてしまう事になるため、少しでも睡眠の質を上げる事は過眠症状を緩和させる効果が期待できます。

治療の中心となるのはお薬になります。

特発性過眠症は、脳の覚醒中枢や睡眠中枢の異常によって脳の覚醒度が下がっている事が原因だと考えられているため、脳の覚醒レベルを上げるようなお薬が用いられます。

具体的には、

  • ベタナミン(一般名:ペモリン)
  • リタリン・コンサータ(一般名:メチルフェニデート)

などといったお薬が有効です(保険適応があるのはベタナミンのみ)。

これらは「精神刺激薬」と呼ばれ、脳神経に作用しドーパミンの量を増やす事で脳の覚醒レベルを上げるお薬です。

これらのお薬は特発性過眠症の眠気にしっかりと効果と示します。しかし一方で取り扱いに注意も必要です。

精神刺激薬は、いわゆる「覚せい剤」と同系統の薬物になります。覚せい剤としてもっとも利用されているのは「アンフェタミン」ですが、ペモリンもメチルフェニデートもアンフェタミンに似た作用を持つ薬物なのです。

もちろん覚せい剤と異なり医薬品ですから、穏やかに効くような工夫がされていますが、一定の注意は必要になります。

具体的には依存性が認められるほか、肝臓にも負担をかけやすいという特徴もあります。実際にペモリンは肝障害による死亡例も出ており、そのため海外ではペモリンの発売を中止している国もあるほどです。

これらのお薬が特発性過眠症の症状改善に有効なのは事実です。正しく使えば患者さんの生活の質を挙げてくれますので、必要な方には使用すべきお薬ですにはなります。

ただ安易に投与すべきではなく、その適応は専門家と相談しながら慎重に判断していく必要があります。

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