花粉症のお薬と精神科のお薬の飲み合わせは大丈夫なのか?

2月に入り、本格的な花粉症シーズンに入ってきました。

花粉症にかかっている方は多く、有病率はおおよそ20~30%前後にも達するのではないかとも推測されています。10人中2~3人もの人がかかっているという、非常に罹患率が多い病気なのです。みなさんの周りにも花粉症だという方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

精神科に通院中の患者さんの中にも花粉症にかかっている人はたくさんいらっしゃいます。花粉症の治療は、お薬が使われることが多く、抗アレルギー薬などのお薬を服薬することが一般的です。

精神科のお薬を服薬している方で、花粉症のお薬も飲まないといけないとなると、「飲み合わせは大丈夫なのか」と心配になるかもしれません。実際、最近の診察ではそのような質問が増えてきました。

今日は、精神科のお薬を服薬している方が花粉症のお薬も服薬しても大丈夫なのか、飲み合わせは問題ないのか、ということについてお話させていただきます。

1.基本的には問題はない

精神科のお薬にも、花粉症のお薬にもそれぞれいくつかの種類がありますが、基本的にはどれも飲み合わせには問題はありません。

精神科のお薬は、主に以下のものが挙げられます。

【抗精神病薬】
主に統合失調症の治療に使われる。
代表的な薬物(商品名):リスパダール、インヴェガ、ゼプリオン、ルーラン、ロナセン、ジプレキサ、セロクエル、エビリファイ、コントミン、セレネースなど

【抗うつ剤】
主にうつ病の治療に使われる。
代表的な薬物(商品名):パキシル、ルボックス、デプロメール、ジェイゾロフト、レクサプロ、サインバルタ、トレドミン、レメロン、リフレックス、アモキサン、トフラニール、アナフラニール、トリプタノール、デジレル、レスリンなど

【気分安定薬】
主に双極性障害(躁うつ病)に使われる。
代表的な薬物(商品名):リーマス、デパケン、デグレトール、ラミクタールなど

【抗不安薬】
主に不安障害や心身症に使われ、その他疾患の補助薬としても使われる。
代表的な薬物(商品名):リーゼ、ワイパックス、ソラナックス、デパス、レキソタン、セルシン、セパゾン、メイラックスなど

【睡眠薬】
主に不眠症に使われる。
代表的な薬物(商品名):アモバン、マイスリー、ルネスタ、ロゼレム、ベルソムラ、ハルシオン、レンドルミン、ロメラット、エバミール、リスミー、サイレース、ロヒプノール、ベンザリン、ユーロジン、エリミン、ドラールなど

などがあります。

また、花粉症はアレルギー反応ですので、「抗アレルギー薬」と呼ばれるお薬が使われます。これらもいくつかの種類があり、代表的なものには

【抗ヒスタミン薬】
ヒスタミン受容体をブロックすることで、抗アレルギー作用を示す
代表的な薬物(商品名):ザジテン、アレグラ、アレジオン、アレロック、エバステル、ジルテック、ザイザル、タリオンなど

【ロイコトリエン拮抗薬】
ロイコトリエン受容体をブロックすることで、鼻粘膜の血管収縮作用、血管透過性抑制作用を来し、鼻閉などを改善する
代表的な薬物(商品名):オノン、キプレス、シングレアなど

【メディエーター遊離抑制薬】
肥満細胞からヒスタミンなどの様々なメディエーターが遊離するのを抑制し、アレルギーを抑える
代表的な薬物(商品名):インタール、リザベン、アレギサールなど

【トロンボキサンA2阻害薬】
トロンボキサンの合成を阻害したり受容体をブロックすることで、、鼻粘膜の血管収縮作用、血管透過性抑制作用を来し、鼻閉などを改善する
代表的な薬物(商品名):バイナスなど

などがあります。

これらはすべて、飲み合わせに大きな問題はありません。

そのため、基本的には併用して服薬することが可能です。

2.心配であれば精神科で花粉症のお薬を処方してもらうことも可能

精神科のお薬と花粉症のお薬は基本的には一緒に服薬して問題ありません。

しかし、そうは言ってもお薬に対しての不安が強い方などでは、本当に一緒に服薬して大丈夫なのかと心配になる方もいるでしょう。特に不安症や神経症の方は、不安になりやすい傾向がありますので、そう考えてしまう方が多いように見受けられます。

その理由の一つとして、それぞれを別の医師に処方してもらうからだというのがあります。一般的には精神科のお薬は精神科医が処方しますが、花粉症のお薬は耳鼻科や内科で処方してもらうのが通常です。異なる医師がそれぞれを処方しているから、飲み合わせチェックに抜けが出てしまうのではないかと心配されるようです。

どんな医師でも新たにお薬を処方する場合は、その人の現在の内服薬をチェックしますから、その心配は無用です。しかし、どうしても不安だと言う場合は、かかりつけの精神科医に、精神科医から花粉症のお薬を処方してもらえないか相談することは可能です。

同じ医師が処方すれば、飲み合わせのチェックも問題ありませんし、万が一何らかの問題が出てもすぐに対処してもらえます。

特に、すでに花粉症だという事が分かっていて、自分に合う抗アレルギー薬も分かっている場合は、精神科医も処方しやすいでしょう。

処方するかどうかはその精神科医の判断になるため、必ず処方してもらえるわけではありませんが、「飲み合わせが心配だから、精神科薬を処方している先生に花粉症のお薬も処方してもらえると安心できる」と相談することは問題ないと思います。

ただし新たに花粉症を発症した方であったり、症状が重度である方は、専門医に診察を受けることが望ましいので、耳鼻科受診を指示されることもあります。

3.どちらも眠気を起こす。眠気の悪化に注意

精神科のお薬と花粉症のお薬の併用は、基本的には問題ありません。しかしひとつだけ気を付けないといけないことがあります。

それは「眠気」です

精神科のお薬のほとんどが眠気を起こします。これは主に「抗ヒスタミン作用」によるものです。抗ヒスタミン作用とは、お薬がヒスタミンのはたらきをブロックしてしまう作用のことです。ヒスタミンは脳の覚醒を促すというはたらきを持っているため、ヒスタミンをブロックされると覚醒レベルが落ちて眠くなるのです。多くの精神科薬が抗ヒスタミン作用を持っています。

そして、花粉症のお薬も眠気を起こすものが多くあります。花粉症のお薬の眠気も、精神科のお薬と同様に「抗ヒスタミン作用」が原因です。

つまり、精神科のお薬と花粉症のお薬と一緒に飲むと、抗ヒスタミン作用が強くなってしまい、眠気も強く出る可能性があります。

ちょっと眠いくらいであれば様子をみていいのですが、眠気は時に大きな危険を引き起こします。高所で作業する方や運転などをする方は特に気を付けなければいけません。

4.主治医への報告は必要です

基本的に飲み合わせには問題がないとは言っても、お薬を服用している場合は主治医に必ず報告しましょう。

新たに花粉症のお薬を飲み始めたのであれば、精神科医に「〇月〇日から、××というお薬を服用しています」と必ず伝えてください。

また、花粉症のお薬を耳鼻科で処方してもらう時も、「精神科で●●というお薬を飲んでいます」と耳鼻科医に必ず伝えてください。