漢方薬で治療する!半夏厚朴湯にはどんな効果があるのか

漢方薬には、精神に作用するものもあります。穏やかに効き、副作用が少ない漢方薬は患者さんから好まれることも多く、精神科領域でもしばしば用いられます。

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)は、不安症状に対して用いられることの多い漢方薬です。不安障害(神経症)や心身症をはじめ、うつ病や不眠症にも補助的に用いられることもあります。

半夏厚朴湯にはどんな効果があるのか、どんな人に効果のあるお薬なのかについてお話していきます。

1.半夏厚朴湯の成分

漢方薬は、様々な生薬(しょうやく)を配合して作られています。

半夏厚朴湯も5つの生薬が配合されており、その内訳は

・半夏(はんげ)3.0g・・・鎮吐作用、去痰作用
・茯苓(ぶくりょう)2.5g・・・利尿作用、鎮静作用
・厚朴(こうぼく)1.5g・・・収斂作用、利尿作用、去痰作用、筋弛緩作用
・蘇葉(そよう)1.0g・・・精神安定
・生姜(しょうきょう)0.5g・・・発汗作用、健胃作用、鎮吐作用

となっています。
(製薬メーカーによって配合比率は多少異なります)

鎮静作用、精神安定作用、筋弛緩作用などによってリラックスさせ気分を落ち着かせ、これが神経症や不眠症に効果をもたらします。また鎮吐作用、去痰作用、健胃作用を持つため、咳や胃炎、つわりなどにも使われることがあります。

これら二つの作用から、特に「喉に何かが詰まっているような感じがする」といった神経症状に効果的な漢方薬です。

2.半夏厚朴湯の証

漢方薬には「証」という概念があり、その人の証によって使用する漢方薬を選びます。証は、西洋医学には無い漢方独特の考え方なので、慣れないと分かりにくい概念かもしれません。

証とは、かんたんに言えば「あなたの体質」のようなものです。どのような体質を持つ人なのかによって効果がある漢方薬が違ってくる、というのが漢方医学の考えなのです。

証にはいくつもの分け方がありますが、代表的な2つの証を見てみましょう。

まずは虚実という証の概念です。精神疾患においては、実とは体力が強いこと、虚とは体力が弱いことを表します。「実」「虚」、そしてそれらの間である「中間」に分けられます。

次は、寒熱という証の概念があります。これは代謝の良さや患者さん本人が自覚する身体の熱感を表します。体温の高さではありませんので注意してください。これも「熱」「中等」「寒」の三段階に分けて考えます。

このうち、半夏厚朴湯は、

虚実:虚~中間証
寒熱:中等証

の方にもっとも効果があると考えられています。

なお、漢方医学には多くの流派があり、証の考え方はそれぞれで違いがあります。このコラムは「証」を専門的に説明するものではないため、あくまでも簡単に証の概念を説明しているということをご了承下さい。

3.半夏厚朴湯が効果を示す疾患

半夏厚朴湯はどんな疾患に効果があるのでしょうか。
添付文書の記載には

気分がふさいで、咽喉、食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う次の諸症。不安神経症、神経性胃炎、つわり、せき、しわがれ声、神経性食道狭窄症、不眠症。

と書かれています。

半夏厚朴湯は、

精神安定作用や鎮静作用、筋弛緩作用から不安神経症、不眠症に効果を示します。
鎮吐作用や健胃作用から、神経性胃炎や神経性食堂狭窄症、つわりにも効果があります。
去痰作用から咳、しわがれ声にも効果があります。

精神的に落ち着かせる作用と胃腸、喉への作用があることから、
特に「咽頭部や胃腸に症状の出る不安神経症(不安障害)」の方によく用いられます。

  • 不安症状から喉が詰まった 感じが取れない方
  • パニック障害や社交不安障害などで不安感のある方
  • 不安から様々な身体症状(胃痛、動悸、吐き気など)が出ている方

によく用いられます。

また、これ以外でも主治医の判断によっては使用することもあります。

4.半夏厚朴湯の実際の効果

実際の精神科臨床での半夏厚朴湯の効果や評判はどうなのでしょうか。

まず、これは漢方薬全体に言えることですが、効果の個人差は非常に大きいです。効く人には著効しますが、効かない人には全く効果を示しません。特に証から大きくはずれている患者さんや、不安症状などがあまりに重度な患者さんは効果が乏しいことが多いようです。

効果の強さとしては、穏やかに症状を和らげてくれるような感じです。飲めばガツンと不安が治まる、というものではなく、穏やかに不安を抑えます。

即効性は乏しく、緩やかに効き始めます。抗不安薬のように即効性があって、すぐに発作をバシッととってくれるような作用は期待できません。ゆっくりと穏やかに、自然に症状を取っていってくれる印象を持ちます。

不安を抑えたり、うつを和らげる力はそこまで強くありませんが、パニック発作にはある程度の効果を感じます。特に呼吸器症状(息苦しい、過呼吸、のどの詰まった感覚)中心のパニック発作・不安発作には比較的良く効く印象があります。

証が合う患者さんの方が効果は高いのですが、証が完全には合わなくても使用することもあります。

5.半夏厚朴湯の効果的な使い方

半夏厚朴湯に限らず、漢方薬は食前に服薬することが推奨されています。ほとんどのおくすりは食後に服薬するのに、なぜ漢方薬は食前なのでしょうか?

これは漢方薬に含まれる「配糖体」という成分が関係しています。

配糖体には糖が含まれていますが、これはこのままでは体内に吸収できない構造になっています。腸管で腸内細菌によって糖がはずされると、体内に吸収できる構造に変化し、これによって腸管から血液内へ吸収されていきます。

腸内細菌が糖をはずしてくれないと、配糖体は吸収されずにそのまま排泄されてしまうのです。

漢方薬を食後に服薬すると、腸内細菌は食物を処理するのに大忙しのため、漢方薬の配糖体をはずすヒマがありません。そのため、漢方薬の吸収効率が落ちてしまいます。空腹時であれば、食べ物がないため腸内細菌は漢方薬の配糖体をしっかり処理してくれるので、空腹時の方が好ましいと考えられているのです。

そのため、漢方薬は可能であれば食前に服薬しましょう。

しかし、他のおくすりのほとんどは食後に服薬するため、漢方薬だけ食前だと、服薬が煩雑になってしまいます。この場合は主治医と相談の上、漢方薬も食後に服薬することもあります。上記のように理論上は漢方薬は食前服薬が良いのですが、実際には食前でも食後でもそこまで大きな効果の差はないと指摘する専門家もいます。

また、服薬回数は1日2~3回に分けて服薬します。

(注:ページ上部の画像はイメージ画像であり、実際の半夏厚朴湯とは異なることをご了承下さい)