睡眠サプリ「グリナ」は不眠症状に対して有効なのか

グリナは不眠症に効果があるのか

グリナは味の素から発売されている睡眠サプリメントです。

グリシンというアミノ酸が主成分となっており、他の製薬会社からも似たような製品は発売されています。

お薬ではなくサプリメントであり、食品などにも含まれているアミノ酸が主成分です。そのため安全性も高く、それでいて睡眠にも良い作用があるという事がウリですが、このグリナ(グリシン)は睡眠に本当に良い効果が期待できるのでしょうか。

ここではグリナ(グリシン)の睡眠に対する作用についてお話しさせていただきます。

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1.グリナの特徴

まずはグリナがどのような成分から作られているサプリメントなのかを紹介します。

グリナの主成分は「グリシン(Glycine)」というアミノ酸です。

アミノ酸はたんぱく質を構成する物質であり、20種類あります。全てのたんぱく質はこのアミノ酸20種類の組み合わせで作られており、グリシンはそのうちの1つです。

アミノ酸は食事からたんぱく質として摂取され、そのはたらきはたくさんあります。

代謝される過程でエネルギー(ATP)を産生し、身体を動かす原動力として使われる事もありますし、アミノ酸を元に身体に必要なたんぱく質(筋肉など)が合成される事もあります。

グリシンも他のアミノ酸と同じく体内でこのようなはたらきもしますが、グリシンならではのはたらきもあります。

それは「神経伝達物質」としてはたらくというものです。

神経から神経に情報を伝える物質を神経伝達物質と呼びます。神経伝達物質にはグリシン以外にも様々な物質があり、一例を挙げると、

  • セロトニン
  • ノルアドレナリン
  • ドーパミン
  • ヒスタミン
  • GABA(γアミノ酪酸)

などがあります。

神経伝達物質は神経から神経に情報を伝達するため、神経伝達物質が正常に作られなくなると中枢神経(脳など)のはたらきに異常をきたします。そのためこれら神経伝達物質の異常はうつ病や統合失調症、不眠症など精神疾患を引き起こす原因となる事が知られています。

グリシンもこれらの神経伝達物質と同じように、神経から神経に情報を伝える役割があります。

グリシンは神経伝達物質の中でも「抑制系の神経伝達物質」と呼ばれており、主に心身を鎮静・リラックスさせる方向にはたらく神経伝達物質になります。

同様の神経伝達物質にGABA(γアミノ酪酸)があります。

ちなみに「ベンゾジアゼピン系」と呼ばれる睡眠薬や抗不安薬がありますが、ベンゾジアゼピン系はこの抑制系の神経伝達物質であるGABAの作用を増強する事によって鎮静・催眠作用を発揮しています。

抑制系の神経伝達物質は、気持ちを落ち着けたり、眠りに導く作用がある事がここからも分かりますね。

グリシンはGABAほど中枢に作用しないため、GABAほどの強い効果は得られません。しかし心身を鎮静・リラックスさせる作用があるのに変わりません。

そのため、グリシンをたくさん摂取すれば心身がリラックスしやすくなり、眠りも改善されるのではないかというのが、グリナをはじめグリシンを含むサプリメントが睡眠に対して使われている理由です。

2.グリシンを食事から摂取する事はできないのか

グリナの主成分である「グリシン」はアミノ酸の1つであり、食品にも含まれている栄養素だとお話しました。

という事は、わざわざグリナからグリシンを摂取しなくても、食事から日常的に摂取する事が出来るのではないでしょうか。

実はこれは十分に可能です。

グリシンはアミノ酸ですから、食品の中にも含まれています。特にグリシンを多く含む食品としては「ゼラチン」や「魚介類」が挙げられます。

参考までに代表的な食品とグリシン含有量(100g当たり)を挙げると、

【食品】 【グリシン含有量(食品100g当たり)】
ゼラチン(ブタ) 24,000mg
ホタテ貝 7,700mg
するめ 5,000mg
真鱈 4,000mg
ブタ軟骨 3,900mg
大豆 3,600mg
あわび 3,500mg
クルマエビ 3,400mg
卵白 3,200mg
鶏手羽(皮付) 2,100mg

となっています。

ゼラチンというのは、ゼリーなどに使われるあのゼラチンです。ゼラチンというのはブタやウシなどの結合組織(いわゆるコラーゲン)であり、実はグリシンを非常に多く含んでいるのです。

また貝や魚、エビといった魚介類にもゼラチンは多く含まれています。

グリナ1包中にはグリシンが3,000mg含まれていますが、この表を見れば食品から同量のグリシンを摂取する事は十分に可能である事が分かります。

ちなみにグリナは1包(グリシン3,000mg)で約200円ちょっとで販売されています。一方でゼラチンは100g(グリシン24,000mg)当たり300円ほどで売られていますので、グリシン3,000mgだと約37.5円で購入できる事になります。

グリナはサプリメントですからある程度お金がかかるのは仕方ありませんが、実はコストパフォーマンス面で考えればあまり優れていないのです。

理論的にはグリナを1つ服用するのと、ゼラチンを12.5g摂取するのは同じ事であり、グリシンは食事から摂取する事が十分に可能です。

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3.グリナは不眠症に効果があるのか

「グリナって安全な成分って聞いたので試してみたいんですけど・・・」
「グリナって不眠に効きますか?」

不眠症で悩む患者さんからこのような相談を頂く事があります。

グリナを試してみたいという方の多くが、グリナがグリシンというアミノ酸から出来ているため、病院で処方される睡眠薬のような副作用がなく安全性に優れる点に魅力を感じているようです。

確かにグリナは安全性には優れます。

グリナの主成分である「グリシン」は食べ物にも含まれているアミノ酸の一種であり、化学的な物質ではないため、服用によって身体に何らかの害が出る可能性は極めて低いでしょう。

前項でグリシンはゼラチンや魚介類に多く含まれると説明しましたが、「ゼラチン・魚介類を食べて身体が障害を受けた」という方はほとんどいませんよね。

しかし、その効果(眠りに導く力の強さ)を見ると、決して「強い」とは言えません。

誰でも1日に魚を1匹(100~200g)ほどは食べたことがあると思いますが、「魚を食べたら、急に眠くなって朝までぐっすり眠れた」という経験をした人は多くはないはずです。

魚を100~200g摂取すれば、グリナ1包分のグリシンを摂取しているはずですが、これで睡眠薬のように強い催眠作用を得る事はまずできない事は経験からも分かるでしょう。

グリシンは神経を鎮静させる方向にはたらく抑制系の神経伝達物質です。そのため、十分量摂取すれば、脳を含めた神経は落ち着きやすくなりますので、眠気が生じる可能性も十分に考えられます。また睡眠中も心身がリラックスする事で深部睡眠が改善する事も期待できます。

実際、グリシンと同様の抑制系の神経伝達物質にはGABA(γアミノ酪酸)がありますが、GABAを増強する作用を持つ物質である「ベンゾジアゼピン系」は、睡眠薬や抗不安薬として用いられて、高い効果を有しています。

しかしグリシンはGABAほど強く中枢神経を鎮静させる事はありません。

これはGABAは神経の中でも大脳などの上位の中枢神経を抑制する作用を持ちますが、グリシンは脳幹・脊髄など下位の中枢神経を抑制する作用を持つ事が一因です。

以上から考えると、グリナは「睡眠薬」のような効果を期待するものではなく、心身をリラックス状態に向かわせる事で、心身を眠りに入りやすいような状態に持っていく「眠りを穏やかに補助するサプリメント」の1つというイメージを持つと良いでしょう。

「飲んだら眠くなってグッスリ眠れる」「睡眠薬の代わりになる」というものではありません。

実際、グリナの有効性の調査では「深部睡眠(深い眠り)」を増やしたという報告はありますが、「ベッドに入ってから眠るまでの時間(睡眠潜時)」を短くしたという報告はありません。

グリナで深部睡眠が増えたのは、グリシンの作用で睡眠中の心身がリラックス状態に保たれやすくなったためだと考えられます。

またグリシンは摂取すればするほど眠れるというものでもありません。摂取したグリシンの一部は神経伝達物質として使われますが、それ以上にグリシンを摂取しても過剰なグリシンは他の目的(エネルギーを産生したり筋肉を合成したりなど)に使われてしまいます。

そのため、すでに十分量のグリシンを摂取できている方が、より睡眠の質を高めるためにグリシンを摂取しても、その効果はほとんどないという事になります。

少なくとも、1日3,000mg以上のグリシンを食事から摂取できている方は、グリナのようなサプリメントでグリシンを追加摂取してもあまり意味はないでしょう。

4.グリナが向いている人は?

グリナは「アミノ酸が主成分の安全な睡眠サプリ」という宣伝広告から、「安全に不眠症を治したい」という方が関心を持ちやすいサプリメントです。

ではこのグリナが向いているのは、どのような方でしょうか。

まず基本的にサプリメントに頼る前に、グリシンを日常の食事で摂取できないかを考えてみましょう。グリシン3,000mgの摂取はそんなに難しい事ではありません。

コラーゲン、魚介類、卵などを意識的に摂取するようにすれば、1日3,000mg程度のグリシンを摂取する事は難しくありません。

そして前述の通り、食事から十分量のグリシンを摂取できていれば、追加でグリナを服用する事に意味はありません。

グリナのようなサプリメントを検討するのは、このような食生活の工夫がどうしてもできない場合に限ります。

生活習慣の工夫をしていても、どうしても魚介類やコラーゲン(ゼラチン)をしっかりと取る事が出来ない、という場合はグリナでグリシンを補う事で眠りの質を高める効果が期待できます。

ただしグリナは睡眠薬のように「服用したらすぐに眠気がやってくる」といったものではありません。むしろ寝付きにはあまり効かず、眠りを深くする事により中途覚醒を減らしたり、熟眠感を高めたりする作用が期待できます。

ここから入眠障害には向かず、中途覚醒や熟眠障害のタイプの方々に適していると考えられます。

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