大切な人を失った悲しみを乗り越える方法。喪失体験とグリーフワークについて

大切な人を失った時の上手な悲しみ方。死別・離別を乗り越える方法

人生において、最大の悲しみを感じる時というのは「大切な人を失った時」ではないでしょうか。自分にとってとても大切な人を失った時の悲しみというのは、計り知れないものがあります。

大切な人を失った時に悲しい気持ちが沸いてくるのは当然のことです。しかし、あまりに強い悲しさに対して上手く向き合う事が出来ないことがあります。また、「泣くのは恥ずかしいことだ」などといった考えから、しっかりと悲しめないままになってしまう人もいます。

これは後々に、非常に問題となってきます。

悲しい出来事に対してしっかりと悲しまないと、整理のつかない悲しみは後遺症のようにいつまでも心の中に留まってしまうのです。そうなれば、うつ病やパニック障害などの精神疾患を引き起こしてしまう可能性もあります。

大切な人を失うことは非常に悲しい事です。それを乗り越えることも、非常につらいことではあります。でも、それはつらい気持ちと上手に向き合いながら乗り越えていかなければいけません。

今日は、大切な人を失ってしまった時に、どのように気持ちの整理をつけていけばいいのかについてお話します。

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1.大切な人を失った時に起こる3つの反応

大切な人を失った時、私たちは大きなショックを受けます。

大きな精神的ショックを受けると私たちはどのような精神状態の変化をたどるのか、ということに対して多くの学者がそれぞれの説を報告しています。それぞれ多少の違いはあるものの、典型的にはおおむね次のような経過をたどると考えられています。

Ⅰ.否認

大切な人が亡くなったという報告を聞いたとき、すぐにすんなりと受け入れることが出来る人は稀です。

「〇〇さんが亡くなってしまったそうです」と初めて聞いた時は、あまりのショックな報告に対して普通の精神状態ではいることは出来ないでしょう。

その場ですぐに冷静になって気持ちの整理が出来る、なんて人はいるはずもありません。

そんな中、私たちが一番最初に取る反応は「そんなはずはない」「何かの間違いではないのか」と、その事実を受け入れないことです。

これを否認と言います。

Ⅱ.絶望

否認を続けても、残念ながら現実が変わるわけではありません。いずれ「あの人は、本当にいなくなってしまったんだ・・・」と現実に直面する時はやってきます。

お通夜や告別式などの葬儀や、遺品の整理などで現実に直面すれば、もう現実的に否認することはできません。

すると次にやってくる反応は「あの人がいないなんて、もう人生真っ暗だ・・・」「もう何も考えられない・・・」という絶望です。

Ⅲ.受容と回復

絶望は非常に苦しいものです。しかし絶望の中あっても、自分のつらい気持ちと真摯に向き合い、また他者と自分のつらい気持ちを共有していくことで、私たちは少しずつ気持ちに整理をつけていくことが出来ます。

気持ちの整理がある程度出来ると、「あの人がいなくなってしまったことは悲しいけども、前を向いていかなきゃ」「○○さんも、私が絶望的になることは望んでないはずだ」と徐々に現実に目を向けられるようになり、また悲しいながらもそれを受け入れて日常生活を再び送れるようになります。

大切な人を失ったという事実が消えるわけではないため、元の精神状態に完全に戻るわけではないし、悲しみがゼロになるわけでもありませんが、悲しみを抱えながらもそれを受け入れて日常生活を送れるような精神状態に回復していくのです。

このような経過をたどることで、私たちは大切な人を失ったつらい悲しみを乗り越えていくのです。

2.悲哀プロセスをしっかりと踏むことが重要

「否認」⇒「絶望」⇒「受容・回復」

この3つのプロセスが、大切な人を失った時にたどる典型的な経過だとお話しましたが、これはこのような経過をしっかり踏まないと気持ちの整理がつかないというものでもあります。

否認のまま止まっていたり、絶望から受容・回復へ進めなかったりすると、いつまでも悲しみの整理が出来ず、いずれ日常生活に大きな支障を来すようになっていきます。

この悲哀プロセスを送ることを「グリーフワーク(grief work)」と呼ぶこともあります。「グリーフ(grief)」は悲しみ、「ワーク(work)」は仕事や作業のことですから、グリーフワークと言うのは、「悲しむ仕事」と訳すことができます。

これは非常に的を得た用語です。グリーフワークは、「このように悲しんでもいい」というものではなく、「このように悲しまないと気持ちの整理がつかない」という「仕事や作業」のような一面を持つものなのでしょう。

もちろん、悲しみ方には人それぞれのやり方があるでしょうし、「このような経過をたどらなきゃいけないから」と機械的に行うものではありません。自分なりのやり方で、悲しい事があってもうまく適応できているのであればそれはそれで問題はありません。

しかし大切な人を失ってある程度の時間が経っているのに、いつまでも気持ちの整理が出来ていないのであれば、自分の悲哀プロセスはこのようなものから大きく外れていないか、グリーフワークとしっかりと行えているのか、今一度確認してみる必要はあるでしょう。

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3.悲哀プロセスをしっかりと踏まないとどうなるのか?

大切な人を失った時、悲しみを抱えながらもそれを受け入れで気持ちの整理をつけるためには、悲哀プロセスをしっかりとたどり、グリーフワークを行う事が大事だとお話しました。

では、このグリーフワークをしっかりと行わない場合はどうなってしまうのでしょうか。

いつまでも悲しい気持ちに整理がつかないと、徐々に日常生活が普通に送れなくなっていく可能性があります。大きな悲しみを常に抱えたまま生きていれば、日常的な活動(種々の仕事や作業)に大きな支障を来すのは明らかでしょう。ひどい場合は、何にも手が付かず、外に出るのも怖くなって家に引きこもりがちになってしまうこともあるし、うつ病などの精神疾患を発症してしまうこともあります。

実際に、グリーフワークをしっかり行えずに止まってしまう、2つのケースを見てみましょう。

Ⅰ.否認で止まってしまうケース

グリーフワークの失敗の中で多いものの1つが、否認から抜け出せないというものです。大切な人が亡くなってしまった時、「そんなはずはない」と現実から目をそらしたままで経過してしまうのです。

例えば、大好きな人が急に交通事故で亡くなってしまったとしましょう。昨日まで一緒に楽しく過ごしていた最愛の人が突然亡くなってしまうのは、当然とても大きなショックです。すぐに受け入れられないのも無理はありません。

しかし、ずっと「そんなはずはない」「何かの間違いなんだ」と現実を否定していると、いつまで経っても気持ちは整理できません。

更にまずいのは、否認が強い方は現実と向き合うのが怖いという心理から、葬式などの現実に直面せざるを得ない儀式への参加を拒否してしまうことがあります。また、亡くなった方の家族からの連絡も拒否してしまったりと、その出来事に関連すること全てを避けてしまうのです。

このように現実を受け入れなることを拒み続ければ、いつまで経っても心は解放されません。

「あの人はいないんだ」という現実に薄々気づいている心とそれを受け入れない心が葛藤し、心は徐々に疲弊していき、日常生活にも支障を来し始めます。次第に仕事に行けなくなったり、うつ病などの精神疾患を発症してしまう可能性もあるでしょう。

否認から絶望に進むためには、「現実と直面する」必要があります。辛い現実を目の当たりにしないといけませんから、これは非常につらいことです。避けたくなるのも無理はありません。でも、ここを超えなければいつまで経っても心は解放されず、気持ちは前を向かないのです。

否認から絶望へ進む、つまり現実に直面するために、葬式などの儀礼はとても重要な役割を果たします。こういった儀式に参加すれば否が応でも「あの人はいなくなってしまったんだ・・・」と向き合うことになります。また亡くなった人とゆかりのある人たちと連絡したり会ったりすることも同様に現実と向き合うためには大切なことです。

つらいことではありますが、これは気持ちの整理をするために必須であるひとつのステップなのです。

Ⅱ.絶望から抜け出せないケース

否認から絶望へ進んだけども、気持ちの整理がいつまでもつかずに受容や回復に至れないケースも少なくありません。

大切な人が亡くなって最初は否認していたけども、葬儀に参加した事で「あの人は本当にもういないんだ・・・」と現実に直面した。しかしその後、絶望の中で気持ちの整理がいつまでも出来ず、現実を受け入れて気持ちを回復させていくことができないというものです。

絶望の中にいる時も、非常につらいものです。今まで普通に送れていた日常が、真っ暗に感じることでしょう。この状態も長く続けば、先ほどのケースと同じように徐々に日常生活に支障が出てきます。

絶望から、受容・回復に至るためには、十分な時間をかけて「大切な人がいなくなった現実と向き合うこと」、そして「つらい気持ちを一人で抱え込まずに話すこと」が大切です。

忙しい日常に忙殺されて、大切な人を失った自分のこころと向き合わなかったり、「気持ちを人に話したからといって何かが変わるわけではない」と考えてつらい気持ちを自分の中に溜め込んでいると、いつまで経っても絶望した気持ちの整理はつきません。

4.グリーフワークを上手に行うために大切なこと

大切な人を失い、大きなショックを受けるのは当然のことです。

しかし私たちはいつかはそこから立ち直らなければいけません。大切な人を失った事実は変えられないけれども、それを受け入れて生きていかなければいけないのです。

グリーフワークを上手に送るためには、どのようなことに気を付ければいいでしょうか。

Ⅰ.儀式には参加する

お通夜、告別式、四十九日など、人が亡くなった時には儀式がいくつかあります。

最近ではこういった儀式が昔と比べて軽くみられる傾向がありますが、実はこういった儀式は気持ちの整理をつけるために非常に重要な役割を果たしてくれます。

葬式に参加することで、大切な人がいなくなってしまった現実にイヤでも直面します。そうなれば、否が応でも否認はできなくなり次のステップに進みやすくなります。

また、こういった儀式には故人と関係のある人が多く参加するため、故人を失った悲しみを共有しやすく、これも気持ちの整理につながります。

Ⅱ.気持ちを押し込めない

特に男性では、「泣く事は恥ずかしい」「弱音は吐いてはいけない」という考えを持っている方がいらっしゃいます。

これが極端だと、グリーフワークを上手に行えなくなってしまうことがあります。

大切な人を失うことは本当に大きな悲しみです。これを悲しまなかったり、悲しくないふりをすると、心に大きな負担がかかります。

とても悲しいのに「男なんだから泣いたらダメだ」と悲しみを表に出すことをこらえたり、「悲しんだってあの人が戻ってくるわけじゃない。強く生きないと」と、悲しまずに強気でふるまい続けるのは、精神的にはあまり良い事とは言えません。

これは、自分の中にある「悲しい」という感情と向き合うことを避けているということになります。

悲しいという感情がそこにあるのに、それと向き合うことを避け続ければ、いつまで経っても悲しい気持ちの整理がつくはずもありません。整理がつかないため、自然と消えていくこともなく、いつまでも心の中でくすぶり続けることになります。

悲しい気持ちがあるのであれば、それを乗り越えるためにはその悲しさがあることを認めてあげなくてはいけません。悲しむことは弱いことでも情けないことでもないのです。

大人だって、本当に悲しいことがあれば大泣きすることだってあるでしょう。それは人間として普通のことであり、全くおかしいことではありません。

Ⅲ.つらい気持ちを隠さずに話そう

絶望から受容・回復に向かうためには、ある程度の時間が必要ですが、時間さえ経てば勝手と治っていくというものではありません。しっかりと悲しみ、気持ちの整理をしないと、整理がつかない悲しみはいつまでも心の中に留まり続けます。

気持ちの整理をするためには、「Ⅱ.気持ちを押し込めない」ことも大切ですが、もう一つ大切なのは「話すこと」です。誰にでも話せることではないので、できればあなたにとって親しい人や故人を知っている人に話を聞いてもらうのがよいでしょう。

話したからといって、何か現実が変わるわけではありません。しかし気持ちの整理を付けるために、話すことというのはとても大切です。話していく中で自分の想いや感情を再確認することができます。そしてそれを繰り返していくうちに少しずつ少しずつ気持ちを整理がついていき、現実を受け入れていくことができるのです。

5.精神科・心療内科でも助けになれます

大切な人を失った後、グリーフワークがしっかりと行えずに精神的につらい思いをしているのであれば、精神科や心療内科の助けを借りることも有効です。

大切な人を失って悲しい気持ちになること自体は、正常な反応ですのでこれだけで受診をする必要はありませんが、

● 悲しみがあまりに深くてつらい
● いつまでも悲しみが軽くならない
● どのように気持ちの整理をつけたらいいのかが分からない

などといった場合は、私たちに相談してください。

基本的には、正常な悲哀プロセスを踏めるように、今後のグリーフワークの行い方を一緒に考えていきます。周囲に話せる人がいない場合は、カウンセリングなども利用して気持ちの整理を行っていくこともあります。

お薬は使用しないことも多いのですが、あまりに悲しみがひどい場合や日常生活に大きな支障を来している場合には、本人と相談の上、一時的に使用することもあります。

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