ジェネリック医薬品とその問題点

国がジェネリック医薬品の使用を推奨していることもあり、ジェネリック医薬品を見る機会は日に日に増えています。

実際にジェネリックを服用されている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

一般的にも大分浸透してきたジェネリック医薬品ですが、そもそもジェネリック医薬品って何なのでしょうか?何故国はジェネリックの使用を促進しているのでしょうか?先発品と比べて安全性や有効性など、本当に問題がないのでしょうか?

今日のコラムではジェネリック医薬品についてお話してみたいと思います。

1.そもそもジェネリック医薬品って何?

ジェネリック医薬品は、「ジェネリック」「後発医薬品」とも呼ばれます。

ジェネリック医薬品は、先発医薬品の特許期間が切れた後、その特許を利用して
先発医薬品と同じ主成分で作られるおくすりのことです。

ジェネリック医薬品(後発医薬品)の反対に当たるのが、先発医薬品です。

先発医薬品とは、最初に開発・承認・発売された、新しい薬効・成分を持つ医薬品の事です。
先発医薬品を開発した企業は、その医薬品・製造方法などに特許が与えられ、
特許期間として一定期間、そのくすりを独占販売することができます。

独占、というと聞こえが悪いかもしれませんが、すぐにマネされてしまい、
二番煎じの他社が儲けてしまうようであれば、誰も新薬を発明しなくなってしまいます。

先発医薬品は開発・製造に数百億円という巨額の費用と、
10年前後という長い年月がかかるのが普通です。

ある程度の期間、新薬を発明したものに独占権をあたえることは、
新しいものを発明・開発するために必要なことなのです。

特許期間が切れて独占期間が終わると、製造方法などは無料で開放され、共有財産となります。

特許が切れて独占権が無くなれば、他の会社もその特許を使用して、
同じようなおくすりを製造することができるようになります。
しかも開発費がほぼかからないため、先発品と比べて安く作れます。

これがジェネリック医薬品です。

2.なんで国はジェネリック医薬品の使用を勧めてるの?

国はジェネリックをなるべく使用するように推奨しています。

平成25年9月時点で、ジェネリックのシェアは46.9%だそうですが、
国は平成30年までには、ジェネリックのシェアを60%以上にすることを目標として掲げています。

アメリカやイギリスなどの先進国ではすでにジェネリックのシェアが60%を超えている
国もたくさんあります。

なぜ国はジェネリックを推奨するのでしょうか?

これは「ジェネリック医薬品の方が安い」からです。

高齢化社会である日本の医療費は年々上昇を続けています。
おおよそ毎年1兆円ずつ上昇しており、
平成23年度の医療費は合計で38兆5850億円だったそうで、以降も上昇を続けています。

国民一人あたりで考えても30万円以上になっており、これはかなりの高額に達しています。

国の目標である、ジェネリックのシェアが60%以上になると5300億円の医療費削減につながり、
仮にジェネリックのシェアが100%になると1兆5300億円の医療費削減につながります。

医療費削減がこのままどんどん増えていけば、いずれ破綻してしまうことは明らかです。
医療費削減は国の重要課題なのです。

医療費削減の一つの方法として、国はジェネリック医薬品への切り替えを推奨しているのです。

3.ジェネリック医薬品で先発品と本当に同じなの?

患者さんから「先発品とジェネリックの効果に差はありませんか?」という質問をよく頂きます。

基本的には全く同じ効果だと考えていいでしょう。

ジェネリックは安いので、「成分が少ないのでは?」「質が悪いのでは?」と考える方がいますが、
これは全くの誤りです。

先発品は「最初に作られたおくすり」ですので、
その研究や開発に多額のお金がかかっています。

おくすりの成分を発見・抽出するのにも費用がかかります。
数千人の人を対象にした臨床試験をすれば、これもまた費用がかかります。

聞くところによると数百億のお金と10年前後の長い時間がかかるそうです。

先発品を発売する製薬会社は、その費用を回収しないといけませんから
必然的に薬価は高くせざるを得ません。

これが先発品の薬価が高い理由です。
製薬会社も企業である以上、利益を上げないといけませんから仕方ないのです。

しかしジェネリックはというと、研究費や開発費がほぼかかりません。
だって、先発品ですでにおくすりの開発や研究はしてもらってますから、
何百億かけて同じことをやる必要はないのです。

ジェネリックが行うべきことは、主に
「このジェネリック薬は、先発品と同じ程度の効果効能がありますよ」
ということを証明するだけです。
(これを生物学的同等性試験といいます)

このように、先発品とジェネリックは初期投資額が全く異なるのです。

ジェネリックは、質が悪いから安いのではなく、
多額の研究費や開発費の分が引かれた分安くなっているのです。

しかし、稀にですがジェネリックに変えたら、おくすりの効きが悪くなった、
というケースもあります。

ジェネリックは、主成分は先発品と同じですので、基本的には効果は同等のはずですが、
なぜこのようなことが起きてしまうのでしょうか。

主成分的には先発品もジェネリックも同じなのですが、主成分以外の添加物などが微妙に違う場合があり、
それが人によっては合わなかったり、分解や吸収に多少の影響を与えてしまうからではないかと
考えられています。

また、あまり信じたくはないことですが、中には粗悪なジェネリックメーカーがあり、
品質管理が甘いために薬効が落ちているのではないか、という意見もあります。

そのため、もしジェネリックに変更して違和感を感じるのであれば、
先発品に戻すものひとつの方法でしょう。
主治医とよく相談しながらどちらを使うかを判断してください。

4.ジェネリック医薬品の今後や問題点

このままのペースで医療費がどんどん上昇すれば、いずれ国民が負担しきれなくなり
日本の保険制度が破綻するのは想像に難くありません。

お金は沸いて出てくるものではありませんから、医療費の削減は仕方ありません。
となると、ジェネリックのシェアが徐々に上昇していくことはほぼ間違いないでしょう。

先発医薬品の処方頻度が減り、ジェネリックの処方頻度が増えていくと、
どんな問題が起きるでしょうか。

もし、先発品とジェネリックの効果・効能がまったく同じであれば、
効果は同じで価格だけ安くなるわけですから、ユーザー(ここでは患者さん)側としては
何の問題も起きません。

「今までよりもおくすり代が安くなって良かった」
となるだけでしょう。

しかし、現時点ではジェネリックは玉石混交です。
中には「先発品よりも工夫されていて素晴らしい!」と思えるジェネリックもある一方で
「これはちょっと効きが悪いのではないか」と感じてしまうものも残念ながらわずかにあります。

精神科のおくすりだと効果の違いは感覚的なものなので分かりにくいのですが、
血圧のおくすりなどでは、ジェネリックに変えたら、血圧が上がってしまった、というのが
はっきりと分かり、これは私自身も実際に経験したことがあります。

今後はジェネリック医薬品の質の安定化が課題となるでしょう。
「安いけどその分品質があやしいおくすり」では話になりません。
「安くて品質も良い」おくすりであれば、それは自然を使われるようになるはずです。

現在は多くのジェネリック会社がありますが、今後は優秀なジェネリック会社が生き残り
粗悪なおくすりを作っているジェネリック会社は淘汰されていくと思われます。

それまでの間、ジェネリックを使う時に私たち医療者は
患者さんの訴えにしっかりと耳を傾け、万が一効果に違いが出るようであれば、
ジェネリックの種類を変えたり、先発品に戻すといった方法を取る必要があります。