ロヒプノール錠(一般名:フルニトラゼパム)は1984年に発売された睡眠薬で、ベンゾジアゼピン系という種類に属します。
ベンゾジアゼピン系は効果も良く、重篤な副作用も少ないため、現在でも不眠治療でよく使われるおくすりです。
ここではロヒプノールの効果の強さや作用機序、作用時間、他の睡眠薬との比較などを紹介していきます。
ちなみにロヒプノールは中外製薬が販売している睡眠薬ですが、エーザイ社が販売している「サイレース」と主成分が全く同じおくすりです。
1.ロヒプノールはどんな睡眠薬か
まずはロヒプノールの全体的な特徴をお話します。
ロヒプノールの最大の特徴は、その効果(催眠作用)の強さにあります。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬の中では最強という声も多く、眠らせる力には定評があります。
また作用時間のバランスが非常に良く、使いやすいおくすりでもあります。
具体的には服薬後約1時間で血中濃度が最大になり、約7時間で半減期を迎えます。
(半減期:おくすりの血中濃度が半分になるまでにかかる時間。作用時間の目安になる)
欠点としては、効果が強いため耐性・依存形成が起こりやすい点です。
実際、アメリカではロヒプノールの乱用・依存が過去に問題となり、
現在は処方もできず持ち込みもできない違法薬物に指定されています。
ロヒプノールは、
効果は強いんだけど、その分依存性などに注意も必要なおくすりなのです。
2.ロヒプノールの強さは?
ロヒプノールの睡眠薬としての強さはどのくらいなのでしょうか?
個人差もありますが、一般的にロヒプノールは「効果が強い」睡眠薬だと言われています。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬の中では一番強い、と言ってもいいでしょう。
しかし、とは言ってもベンゾジアゼピン系睡眠薬はどれも強さに劇的な差はないとも言われており、
他と比べて劇的に強い、というわけではありません。
ちなみに、ベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬はどれも大きな差はなく、
「強さがピークになる時間帯」や「効果が続く時間」に違いがあります。
上図のように、睡眠薬はどれもピーク時の強さは同程度です。
強さが大きく変わらず、強さがピークになる時間帯が違うのです。
そのため効果を強めたい場合は、睡眠薬の種類を変えるよりも「量を増やす」方が効果的だと
いうことが分かります。
ロヒプノールは0.5mgから2mgの間の量で使いますが、量を増やせばそれだけ効果は強くなります。
ただし量を増やせば効果も強くなりますが、副作用も現れやすくなります。
そのため、まずは0.5mgや1mgで開始し、効果が不十分な場合に限り2mgを使うようにするのがいいでしょう。
3.ロヒプノールの作用時間
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は作用時間で大きく4種類に分類されています。
- 超短時間型・・・半減期が2-4時間
- 短時間型 ・・・半減期が6-10時間
- 中時間型 ・・・半減期が12-24時間
- 長時間型 ・・・半減期が24時間以上
半減期というのは、その薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間の事で、
「おおよその薬の作用時間」の目安として使われています。
ロヒプノールは「中時間型」の睡眠薬に分類され、
服薬してから1-1.6時間ほどで血中濃度が最高値になり、半減期は約7時間です。
中時間型ではありますが、飲んでから1時間ほどで効果が最大になるため即効性も期待できます。
半減期も7時間あるため、持続力もあります。
即効性もあり作用時間の長さもある、という万能型の睡眠薬なのです。
寝付きの悪さにも効くし、中途覚醒にも効くため、
患者さんからの評判も良く、処方される事も多いおくすりですが、
反面で、依存しやすいおくすりでもあるため過剰に使いすぎないよう注意が必要です。
必要な時に必要な範囲で内服することは問題はありませんが、
安易な処方・内服は避けるべきでしょう。
4.各睡眠薬の作用時間比較
よく使われる睡眠薬の作用時間を比較してみましょう。
睡眠薬 | 最高濃度到達時間 | 作用時間(半減期) |
---|---|---|
ハルシオン | 1.2時間 | 2.9時間 |
マイスリー | 0.7-0.9時間 | 1.78-2.30時間 |
アモバン | 0.75-1.17時間 | 3.66-3.94時間 |
ルネスタ | 0.8-1.5時間 | 4.83-5.16時間 |
レンドルミン | 約1.5時間 | 約7時間 |
リスミー | 3時間 | 7.9-13.1時間 |
デパス | 約3時間 | 約6時間 |
サイレース/ロヒプノール | 1.0-1.6時間 | 約7時間 |
ロラメット/エバミール | 1-2時間 | 約10時間 |
ユーロジン | 約5時間 | 約24時間 |
ネルボン/ベンザリン | 1.6±1.2時間 | 27.1±6.1時間 |
ドラール | 3.42±1.63時間 | 36.60±7.26時間 |
ダルメート/ベジノール | 1-8時間 | 14.5-42.0時間 |
作用時間が睡眠薬によって様々であることが分かります。
最高濃度到達時間が早いお薬は、「即効性がある」と言えます。
ルネスタ、マイスリー、アモバンなどの「超短時間型」は1時間前後で血中濃度が最高値になるため、
「すぐに寝付きたい」という方にお勧めですが、3-4時間で効果が切れてしまいますから
長くぐっすり眠りたい方には不適であることが分かります。
反対に7-8時間ぐっすり眠りたい場合は、レンドルミンやリスミー、サイレース/ロヒプノールや
デパス、ロラメット/エバミール、ユーロジンなどの睡眠薬が適していることが分かります。
ロヒプノールは超短時間型ほどの即効性はありませんが、服薬後1-1.6時間で効きがピークになり、
半減期も7時間と丁度いい長さです。
(人の平均睡眠時間は6-7時間と言われています)
それぞれ特徴が違いますので、主治医と相談して、自分に合いそうな睡眠薬を選びましょう。
5.ロヒプノールが向いている人は?
不眠には大きく分けると2つのタイプがあります。
一つ目が「寝付けない事」で、これは「入眠障害」とも呼ばれます。
そして二つ目は「寝てもすぐに起きてしまう事」で、これは「中途覚醒」と呼ばれます。
一般的には、
- 入眠障害には超短時間、短時間型、
- 中途覚醒には中、長時間型
の睡眠薬が適していると言われています。
ロヒプノールは中時間型ですから、セオリー通りにいけば
「夜中に何度も起きてしまう」という中途覚醒に向いていることになります。
しかしロヒプノールは先ほど説明した通り、バランスの良い薬物動態を持つ睡眠薬であるため、
入眠障害と中途覚醒、どちらにも効果が期待できます。
(内服後1-1.6時間で効果が最大となり、半減期は約7時間程度)
加えて効果も強いため、ロヒプノールのお世話になる患者さんは多いように感じます。
期待した効果が得られやすいのは良い事なのですが、しかしこれは注意も必要です。
キレが良く、効きも良いという事は、
「依存しやすい」「睡眠がロヒプノール頼りになりやすい」という事でもあります。
実際、米国でロヒプノールの依存や乱用が問題となり、
現在、米国ではロヒプノールを合法的に入手することができなくなっています。
これはやはり、ロヒプノールは他の睡眠薬より依存形成を起こしやすい、という事を
表していると思われます。
これらの事を考えると、
- 他の睡眠薬(例えばレンドルミンなど)で十分な効果が得られなかった方の第2選択薬として
良いのではないでしょうか。
他の睡眠薬よりも特に耐性・依存形成には注意を払い、漫然と内服を続けないようにしましょう。
また、効果が強いため、高齢者では上限が1mgまでとなっていますので注意してください。
6.ロヒプノールの作用機序
ロヒプノールは「ベンゾジアゼピン系」という種類のおくすりです。
ベンゾジアゼピン系は、GABA受容体という部位に作用することで、
抗不安効果、催眠効果、筋弛緩効果、抗けいれん効果という4つの効果を発揮することが知られています。
ベンゾジアゼピン系と呼ばれるおくすりは、基本的にはこの4つの効果を全て持っています。
ただ、それぞれの強さはおくすりによって違いがあり、
抗不安効果は強いけど、抗けいれん効果は弱いベンゾジアゼピン系もあれば、
抗不安効果は弱いけど、催眠効果が強いベンゾジアゼピン系もあります。
ベンゾジアゼピン系のうち、催眠効果が特に強いものを「ベンゾジアゼピン系睡眠薬」と呼びます。
ロヒプノールもそのひとつです。
(注:ページ上部の画像はイメージ画像であり、実際のロヒプノール錠とは異なることをご了承下さい)