デパスの眠気と5つの対処法【医師が教える抗不安薬のすべて】

デパス(一般名エチゾラム)は抗不安薬に分類されており、主に不安を和らげる作用を持っています。

デパスは不安を和らげ心身をリラックスさせてくれます。しかしリラックスさせるということは、同時に眠気をきたしてしまうことでもあります。

少々の眠気であればまだ良いのですが、強い眠気が生じて生活に支障を来たすようでは問題です。

ここではデパスで眠気が生じる理由や、その対処法について考えていきます。

1.デパスでなぜ眠気が生じるのか

なぜデパスを飲むと眠気が生じることがあるのでしょうか。その理由を知るために、まずはデパスの作用について見てみましょう。

デパスは「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」という種類に分類されます。ベンゾジアゼピン系は、脳のGABA-Aという受容体を刺激し、その作用を強めることが主なはたらきです。

GABA-A受容体は「抑制系受容体」と呼ばれており、この受容体が刺激されると脳や身体は鎮静の方向に向かい、具体的には次の4つの作用が認められることが知られています。

  • 抗不安作用(不安を和らげリラックスさせる)
  • 催眠作用(眠くする)
  • 筋弛緩作用(筋肉の緊張を和らげる)
  • 抗けいれん作用(けいれんを抑える)

デパスに限らずベンゾジアゼピン系のお薬は全て、基本的にこの4つの作用を持っています(それぞれの作用の強さは各薬によって異なります)。

そしてベンゾジアゼピン系のうち、抗不安作用に優れるものは「抗不安薬」と呼ばれ、催眠作用に優れるものは「睡眠薬」と呼ばれ、筋弛緩作用に優れるものは「筋弛緩薬」と呼ばれ、抗けいれん作用に優れるものは「抗けいれん薬」と呼ばれています。

デパスはベンゾジアゼピン系の中で、特に抗不安作用に優れるために抗不安薬と呼ばれているのです。

しかしデパスは抗不安作用に優れてはいますが、その他の筋弛緩作用や催眠作用、抗けいれん作用がないわけではありません。

GABA-A受容体を刺激することで、抗不安作用だけでなく、催眠作用も生じます。そして、この催眠作用により眠気が生じるのです。

つまり、眠気の副作用はベンゾジアゼピン系であれば程度の差はあれ、どのお薬でも生じえるということです。

デパスの催眠作用はまずまずの強さであるため、患者さんによってはデパスを睡眠薬として利用する方もいらっしゃるほどです。

2.各抗不安薬で生じる眠気の比較

ベンゾジアゼピン系抗不安薬は全て、眠気を起こす可能性があります。しかし、眠気の起こしやすさは各薬によって異なります。

具体的にそれぞれのお薬でどのくらい眠気が生じるのかを表したのが、次の表にになります。

【抗不安薬名】【抗不安作用/作用時間】【眠気】
リーゼ+ / 6時間±
デパス+++ / 6時間+++
ソラナックス/コンスタン++ / 14時間++
ワイパックス+++ / 12時間++
レキソタン/セニラン+++ / 20時間++
セパゾン++ / 11-21時間++
セレナール+ / 56時間+
バランス/コントール+ / 10-24時間+
セルシン/ホリゾン++ / 50時間+++
リボトリール/ランドセン+++ / 27時間+++
メイラックス++ / 60-200時間+
レスタス+++ / 190時間++

(お薬の効きには個人差がありますので、必ず表の通りになるわけではありません。この表は、あくまでも目安としてご覧ください)

基本的には、作用(不安を和らげる強さ)が強いほど、副作用(眠気など)も多くなる傾向があります。

デパスは睡眠薬として用いられることもあり、眠気の程度もそれなりに強いことが分かります。

3.デパスで眠気が生じたときの5つの対処法

デパスを服薬していて、困るくらいの眠気が出てしまった場合は、どうすればいいでしょうか。よく用いられる対処法を紹介します。

なお、これらの対処法は決して独断で行わないで下さい。必ず主治医と相談の上で行ってください。

Ⅰ.様子をみる

あらゆる副作用に言えることなのですが「少し様子をみてみる」というのは有効な方法です。

特に内服をはじめて間もない場合は、身体がまだお薬に慣れていないために副作用が強く感じられる場合があります。

この場合は、1~2週間程度様子をみてみると、お薬が身体になじんでくるため、副作用も徐々に軽くなってくることがあります。

なんとか耐えられる程度の眠気なのであれば、少し様子をみてみるのも良いでしょう。

Ⅱ.服薬量を減らす

内服する量を減らせば、眠気の程度は軽くなります。

服薬量が減れば効果も弱くなってしまいますが、副作用で困っている場合は検討すべき方法のひとつになります。

なぜならば、副作用が強く出すぎている場合、「薬の量が多すぎる」という可能性があるからです。この場合はお薬の量を減らした方が適量になるため、良い結果をもたらします。

服薬量が今の自分にとっての適正量なのか、定期的に主治医と相談し、服薬量の見直しを行いましょう。

Ⅲ.服薬時間を変えてみる

服薬する時間を変えれば、眠気が起こる時間をずらすことができます。

例えば、デパス0.5mgを毎食後(1.5mg/日)服薬していたとします。この状態で、午後の眠気で困っているようであれば、昼食後の服薬を中止してみても良いかもしれません。つまり、朝・夕食後にそれぞれ0.5mgずつ服薬する、という事です。

昼食後のデパスがなくなるため、その間の不安感が増悪してしまう可能性もありますが、、試してみる価値はあります。

Ⅳ.抗不安薬の種類を変えてみる

精神科のおくすりは、効果や副作用の個人差がとてもあります。
患者さんとおくすりの相性というのは軽視できません。

デパスが自分にあまり合っていなかった、という可能性もありますので、
あまりに副作用が苦しいようなら、種類を変えてみるのも手です。

一例ですが、似たような抗不安薬だと、

  • ワイパックス      : 作用時間12時間、効果強い
  • レキソタン/セニラン  : 作用時間20時間、効果強い
  • セパゾン        : 作用時間11-20時間、効果やや強い

(ソラナックス:作用時間14時間、効果中等度)

などがあります。

ただしどの抗不安薬にも眠くなる作用はありますので、
主治医とよく相談して変えるおくすりは選びましょう。

Ⅴ.睡眠を見直す

意外と見落としがちなのですが、根本の睡眠に問題がないのかを見直し忘れてはいけません。
睡眠の質が悪ければ、日中の眠気が悪化してしまいます。

そもそもが最近夜更かしをしていたりしていれば、それは眠いのは当たり前ですよね。

おくすりを飲み始めて不調を感じると、「くすりのせい!」と考えてしまいがちですが、
「他の原因は本当にないのか?」という視点は必ず持つようにしましょう。

よくあるのが、

  • 最近、睡眠時間が少ない → 睡眠時間を増やす
  • うるさい、明るいなど寝室の環境が悪い → カーテン、アイマスクや耳栓などの対策をする
  • ベッドに入ってからマンガを読んだりスマホをいじっている → やめる
  • 寝る前にお酒を飲んでいる → 断酒する
  • 寝る前に食べ物を摂取している → 睡眠3時間前からは胃に負担がかかるものは食べない

などです。

睡眠の質を悪くしてしまう原因があるのであれば、まずはそちらの改善を優先してみてください。