ユーロジンの副作用【医師が教える睡眠薬の全て】

ユーロジンはベンゾジアゼピン系というタイプの睡眠薬です。

1977年に発売された古いおくすりなのですが、ベンゾジアゼピン系は効果も良く、重篤な副作用も少ないため現在でも使われることの多いおくすりです。とは言っても、副作用がないわけではありません、漫然と使い続けると副作用に苦しむ事もあります。

ここでは、ユーロジンの副作用を紹介し、その対処法についても考えていきたいと思います。

1.ユーロジンの副作用とその対処法

どんなおくすりでも副作用は必ずあります。
副作用が全く無いおくすりなど無いのです。

しかし、おくすりを「怖いもの」「使わない方がいいもの」と決めつけるのではなく、
効果と副作用をしっかり見極めて、必要なときは上手に利用することが大切です。

ここではユーロジンを使用していて臨床でよく見られる副作用を紹介していきます。
また、副作用が出てしまったときの対処法についても考えていきましょう。

Ⅰ.眠気

ユーロジンは睡眠薬ですので「眠気」を引き起こします。
そして時としてこれが副作用になります。

夜に睡眠薬を飲んで眠くなって眠る。
これは「効果」ですから問題ありません。

しかし、
「起床時間になってもまだ眠い」「日中眠くて仕事に集中できない」
となればこれは問題で、副作用と判断されます。

日中まで睡眠薬の効果が残ってしまう事を「持ち越し効果(hang over)」と呼びます。
眠気だけでなく、だるさや倦怠感、ふらつき、集中力低下なども生じます。

持ち越し効果は、半減期(薬が効く時間の目安)の長い睡眠薬で多く認められます。
ユーロジンは半減期が24時間程度と長いため、持ち越し効果が起こりやすい睡眠薬です。

睡眠時間が短い方や、おくすりを分解・排泄する力が弱い方などは
特に持ち越しやすいようです。

睡眠時間は、5時間未満の方では日中まで持ち越す可能性がかなり高くなります。
ユーロジンは内服して血中濃度が最高値になるのが5時間後ですから当然ですね。

おくすりを分解・排泄する力が弱い人というのは、元々の体質もあります。
いつもおくすりが効きやすいという方はあらかじめ主治医に伝えておくべきでしょう。
他にも肝臓や腎臓が弱っている方は、分解・排泄能力が落ちてしまいます。

 

眠気が日中に持ち越してしまう場合、一番の対処法は「睡眠時間をより多くとる」ことです。

例えば、毎日6時間睡眠で、翌朝に持ち越してしまっているようであれば、
7-8時間と睡眠時間を増やすことです。

当たり前のことですが、睡眠時間を多く取れれば持越しは起きにくくなります。
これが、一番間違いのない対処法になります。

どうしても睡眠時間を確保できない、という方は
半減期のより短い睡眠薬に変えることが次の対策になります。

ユーロジンは半減期が約24時間と、かなり長い部類に入ります。

半減期が約10時間のロラメット/エバミール、
半減期が約7時間のサイレース/ロヒプノール、
半減期が約8-13時間のリスミー

あたりが候補になるでしょう。

 

また、ユーロジンの服薬量を減らしてみるという手もあります。

例えばユーロジン2mgを内服しているのであれば1mgに、
1mgを内服しているのであれば,0.5mgなどにしてみます。

効果も弱くなってしまいますが、量を減らすと一般的に半減期は多少短くなります。

Ⅱ.耐性・依存性形成

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、耐性や依存性が形成されることがあります。
多くの睡眠薬に言える事ですが、長期的に見ると「耐性」「依存性」は睡眠薬の一番の問題です。

昔に使われていたバルビツール系睡眠薬などと比べると、ベンゾジアゼピン系睡眠薬は
耐性・依存性形成はかなり少なくなりましたが、起こさないわけではありません。

耐性というのは、身体が徐々に薬に慣れてしまう事。
最初は1錠飲めばぐっすり眠れていたのに、だんだんと身体が慣れてしまって
2錠、3錠飲まないと眠れなくなり、必要量がどんどん増えてしまう状態です。

依存性というのは、次第にその物質なしではいられなくなる状態をいいます。

耐性も依存性もアルコールで考えると分かりやすいかもしれません。
アルコールにも強い耐性と依存性があります。

アルコールを常用していると、次第に最初に飲んでいた程度の量では酔えなくなるため、
次第に飲酒量が増えていきます。これは耐性が形成されているという事です。

また、飲酒量が多くなると、飲酒せずにはいられなくなり、常にアルコールを求めるようになります、
これは依存性が形成されているという事です。

睡眠薬には耐性と依存性がありますが、アルコールと比べると軽度であり、
医師の指示通りに内服していれば問題になる事は多いはないように感じます。

たまに「睡眠薬は依存が怖いから」といって寝酒で眠ろうとしている方がいますが、
これは全くおかしな話だという事が分かります。
だって、睡眠薬よりアルコールの方が依存性は強いのですから。

睡眠薬で耐性・依存を形成しないためには、まず「必ず医師の指示通りに服用する」ことが鉄則です。
アルコールも睡眠薬も、量が多ければ多いほど耐性・依存性が早く形成される事が分かっています。

医師は、耐性・依存性を起こさないような量を考えながら処方しています。
それを勝手に倍の量飲んだりしてしまうと、急速に耐性・依存性が形成されてしまいます。

アルコールとの併用も危険です。
アルコールと睡眠薬を一緒に使うと、これも耐性・依存性の急速形成の原因になると言われています。

また、「漫然と飲み続けない」ことも大切です。
睡眠薬はずっと飲み続けるものではなく、不眠の原因が解消されるまでの「一時的な」ものです。

定期的に「睡眠薬の量を減らせないか」と検討する必要があり、
本当はもう睡眠薬が必要ない状態なのに漫然と内服を続けているということは避けるべきです。
服薬期間が長期化すればするほど、耐性・依存形成のリスクが上がります。

Ⅲ.もうろう状態、一過性前向性健忘

睡眠薬を内服したあと、自分では記憶がないのに、歩いたり人と話したりする事があります。
これは超短時間型のベンゾジアゼピン系(ハルシオンなど)を多量に摂取しているケースで多いと言われています。

中時間型のユーロジンでは、このような健忘を起こすことは稀ですが
可能性は0ではありません。

睡眠薬は脳を中途半端に眠らせてしまう事があり、
この中途半端な覚醒状態が「もうろう状態」「一過性前向性健忘」を引き起こします。

この「中途半端な覚醒状態」は睡眠薬の内服直後に一番起こりやすいものです。
内服直後は、おくすりの効きが不十分で中途半端になりやすい時間帯だからです。
睡眠薬は中途半端ながらも効いているため、行動はするけど記憶には残りません。

一般的には急激に効くお薬(超短時間型)に多く、
また多くの量の睡眠薬を内服しているケースで起こりやすいと考えられています。

万が一ユーロジンでこれらの症状が起こってしまったら、量を減らすか、
作用時間のより長い睡眠薬へ切り替える事が対応策となります。

ユーロジンより半減期が長いものというと、ドラールやダルメート・ベノジールなどの
長時間型の睡眠薬が候補に挙がります。

これらの症状が起こると、患者さんは「自分がおかしくなってしまったのでは・・・」と不安になりますが、
睡眠薬が中途半端に効いた結果起こっただけですので、心配はいりません。

脳がおかしくなってしまったのではなく、睡眠薬の副作用で起こっただけです。
この状態を放置すれば問題となりえますが、
眠剤を変えたり量を減らしたりと適切な対応を取れば後遺症が残ったりすることはありません。