気分変調症(気分変調性障害)で生じる症状とその特徴

気分変調症の症状

気分変調症(気分変調性障害)は、うつ病の類縁疾患の1つです。

症状もうつ病と似ている点が多いため、「うつ病」と診断される事も少なくありません。しかし両者は共通した症状もありますが、それぞれの症状の特性や経過は異なる点もあります。

両者を見分けるために「症状の違い」について理解しておく事は有用です。

ここでは気分変調症で生じる症状について、類縁疾患であるうつ病と対比しながら紹介していきます。

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1.気分変調症で生じる症状とは

気分変調症ではどのような症状が生じるのでしょうか。

気分変調症はうつ病と似ている疾患で、気分が異常に低下してしまう疾患の1つです。

気分変調症の症状は、

  • 軽度のうつ症状が
  • 長期間続く

というのが特徴です。

「軽度」というのは、ざっくり言えば「日常生活にギリギリ支障を来たさないくらい」と考えると分かりやすいと思います。

気分が晴れない日が続いていてそれなりに苦しいんだけど、仕事に行ったり身の回りの事をしたりとかは何とか出来ている。

軽度とはこのような状態です。

また、「長期間」というのは数年単位の期間になります。診断基準上は「2年以上(未成年は1年以上)」となっていますが、「いつからこのような気分なのか覚えてない」とおっしゃる患者さんも多く、通常はとても長い間症状が持続しています。

気分変調症で生じる症状は、基本的にはうつ病で生じる症状と共通しています。

具体的には、

  • 抑うつ気分(気分の落ち込み)
  • 食欲の異常(多くは食欲低下)
  • 睡眠の異常(多くは不眠)
  • 疲労感、気力の低下
  • 自尊心(自分を大切だと思える気持ち)の低下
  • 集中力の低下
  • 絶望感

などのうつ症状が認められます。

それぞれの症状は決して重篤ではないものの、1日のほとんどの時間に認められ、また数年単位でこれらの症状が持続しているのが気分変調症です。

しばしば気分変調症は、症状が軽度である事から「大したことない疾患」と誤解されてしまう事がありますが、そんな事はありません。

何とか生活は回っているけど、気分が沈んでいて苦しいという日々が何年も続く事を想像してみてください。

何事に対してもマイナスに考えてしまう、将来に対して絶望しか感じられない。このような日々が何年も続き、「普通」になってしまうわけです。

何とか生活は保てているため周囲からも気付かれにくく、また長期間症状が続いているため自分自身も「病気なのではないか」と気付かず、「自分は元々こういった考えなのだ」と錯覚してしまう事もあります。

症状自体が軽度であったとしても、人生に大きな不利益を与える可能性の高い疾患である事が分かると思います。

気分変調症の症状は確かに軽いのですが、だからといって軽視して良い疾患ではないのです。

2.気分変調症とうつ病の症状の違い

気分変調症という疾患を簡単に説明すると、「程度の軽いうつ病が長期間続く疾患」だという事が出来ます。

うつ病の類縁疾患であり、生じる症状としてはうつ病と共通しています。ではうつ病と気分変調症はどのような違いがあるのでしょうか。

先ほど気分変調症の特徴を、

  • 軽度のうつ症状が
  • 長期間続く

とお話ししましたが、この2点が両者を見分けるポイントになります。

まず、気分変調症のそれぞれの症状の程度はうつ病と比べると軽く、生活に大きな支障をきたすほどにはならないのが通常です。

しかしうつ病であっても「軽症うつ病」は日常生活に大きな支障を来たさない程度の重症度ですので、症状の程度だけではうつ病と気分変調症を見分ける事はできません。

「軽度」という以外に両者を見分けるポイントとしては、「認知(ものごとのとらえ方)の歪み」が気分変調症ではほとんどないかあっても軽度であるのに対して、うつ病では認められやすいという点が挙げられます。

うつ病は気分の落ち込みによって状況や物事を正しく判断できなくなりがちなのです。

例えば、一例として「死にたい」という感情は気分が落ち込むと現れやすい症状の1つですが、うつ病と気分変調症では同じ「死にたい」でもその背景が少し異なります。

うつ病は気分が異常に落ち込み、正常に自分の状況を判断できなくなってしまうため「希死念慮」がしばしば認められます。希死念慮というのは「自分は生きている価値がない」「自分が存在している事が世の中に迷惑だ」と異常に状況を認知してしまう事で生じる「死ななくてはいけない」という思いです。

気分変調症も、同じように気分の異常な落ち込みはあるものの、生活は何とか保てるため、状況を判断する能力はそこまで低下していません。そのため、「死んでしまいたいな」「消えてしまいたいな」という自殺願望が認められる事はありますが、異常な状況認知に基づく「希死念慮」が認められることはあまりありません。

このように、症状の重症度だけでなく、認知の歪みの程度も両者の鑑別の1つに上がります。

両者を見分けるにあたってもう1つ重要なものは、「長期間続いている事」とそれによって「いつから発症したのかが分かりにくい」という点があります。

うつ病も長期間続く事はありますが、気分変調症は「いつからこのような落ち込みがあるのか分からない」と患者さん自身が言うほど経過は長く、発症時期を特定する事が困難です。

いつから発症したのかが分からないため、「自分は元々こういうマイナス思考の性格なのだ」と錯覚している方も多くいらっしゃいます。この場合、本人は今の精神状態を異常なものだとは考えていないため、そもそも治療をしようと病院に来ない事も珍しくありません。

対してうつ病は、本人が「気分が落ちている」という事を意識できています。「昔はこんな感じではなかった」と今の精神状態が異常である事は認知できるため、気分変調症と比べると自分で治療のために病院を受診する確率は高くなります。

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3.気分変調症の各症状について

気分変調症で生じやすい症状について詳しく説明します。

Ⅰ.抑うつ気分

気分変調症の中核となる症状は抑うつ気分になります。

これは気分が落ち込んでいるという事で、うつ病の中核症状でも認められます。

気分変調症の抑うつ気分は、その程度はひどくはないものの、1日中続きます。また何年も続く事が特徴です。

ちなmに、うつ病では「日内変動」といって朝にもっとも悪く、夕方になってくると少しずつ改善してくるという特徴がありますが、気分変調症は日内変動はありません。1日を通して持続的に落ち込みます。

Ⅱ.食欲の異常

気分変調症では、食欲にも異常が認められます。

基本的には気分が落ちるため、食欲も低下するのが一般的です。うつ病であれば食事が全く取れずに体重がどんどんと落ちてしまう事もありますが、気分変調症の場合は食欲は低下するものの、生活に必要な体力は何とか維持できる程度にとどまります。

また頻度は多くはありませんが、イライラなどによって食欲が亢進してしまうケースもあります。

Ⅲ.睡眠の異常

気分変調症では、睡眠にも高頻度で異常を来たします。

多くは「眠れない」という不眠になりますが、中には「いくら寝ても一向に疲れが取れない」と過眠を呈する方もいらっしゃいます。

Ⅳ.疲労感、気力の低下

気分変調症では精神的なエネルギーが低下しているため、「何もやる気になれない」「おっくうでなかなか腰が上がらない」「常に疲れている」という症状が生じます。

全く動けないという程度にはならず、生活に必要な最低限の行動は出来るものの、それ以上の行動は出来ないという程度が多く、

  • ノルマの最低限の仕事は出来るけど、それ以上は出来ない
  • 最低限の家事しかやる事が出来ない

という状態が続きます。

Ⅴ.自尊心の低下

気分変調症では、自分に対する評価も低下します。

本来、私たち人間は皆「自尊心」を持っています。これは自分を大切だと思える気持ちです。この自尊心があるからこそ、私たちは人生に希望を持って生きていく事が出来ているのです。

しかし精神エネルギーが低下し、気分が落ち込んでいる気分変調症では、何事もネガティブな方向に考えやすくなるため自尊心・自己評価が低下しやすい傾向があります。

Ⅵ.集中力の低下

物事に集中する事は、精神力が必要です。

精神エネルギーが低下してしまっている気分変調症では、気力が低下しているため、物事に集中する事が困難になります。

そのため仕事中なのにボーッとしてしまったり、ミスが多くなってしまったリという事が目立ってくるようになります。

Ⅶ.絶望感

気分変調症では、抑うつ気分が長期間続く事に加えて自尊心の低下も生じるため、自分の将来に対して絶望感を感じるようになります。

この絶望感は、「死んでしまいたい」「この世から消えてしまいたい」といった自殺願望を引き起こす事もあります。

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