気分変調症(気分変調性障害)はどのような原因で生じるのか

気分変調症の原因

気分変調症(気分変調性障害)は、うつ病の類縁疾患の1つです。

うつ病と同じく気分の落ち込みが生じますが、うつ病より落ち込みの程度は軽く、また数年単位で長期間症状が続き、なかなか治りにくいという特徴があります。

精神的なエネルギーの低下はうつ病より軽いため軽視されがちですが、症状は長期間続くため患者さんの苦しみは決して軽いものではありません。

気分変調症はうつ病と近い疾患ではありますが、うつ病と全く同じ疾患ではありません。その原因や症状、治療法もうつ病のそれとは一部異なると考えられています。

「気分変調症」=「軽いうつ病」と安易に考えてしまうと、誤った対処法や治療法が行われてしまい、思うように疾患が治らない事もあります。

ではこの気分変調症は一体どのような疾患で、どのような原因で発症するのでしょうか?

今日は、気分変調症の原因についてお話します。

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1.気分変調症とうつ病の原因の違い

気分変調症という疾患を簡単に説明すると、「程度の軽いうつ病が長期間続く」ような疾患だという事が出来ます。

気分変調症は、生じる症状としてはうつ病と共通しており、

  • 抑うつ気分(気分の落ち込み)
  • 興味と喜びの喪失(何にも興味や関心を持てない)
  • 疲労感
  • 不眠
  • 食欲低下
  • 集中力・意欲低下
  • 絶望感

などがあります。

それぞれの症状の程度はうつ病と比べると軽く、生活に大きな支障をきたすほどにはならないのが通常です。

しかしだからといって放置していいものでもありません。気分変調症は症状の程度としては軽いものの、数年単位といった長い期間症状が続くため、患者さんの苦しみは決して軽くはないからです。

ではこの気分変調症はどのような原因で生じるのでしょうか。分かりやすいように「うつ病」と比較して紹介したいと思います。

うつ病はその原因の全ては解明されていませんが、主に「内因性」の原因によって生じると考えられています。内因性というのは、私たちの脳の中に原因があるという事です。

具体的には、脳神経間の情報を伝達する「神経伝達物質」の一種である「モノアミン」に異常が生じているのではないかと考えられています。

モノアミンにはセロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンなどがありますが、これらは主に「感情」という情報を伝達する物質であり、これらに異常が生じる事がうつ病の一因ではないかと考えられているのです。

対して気分変調症は、主に「心因性」の原因によって生じると考えられています。心因性とは、何らかの体験によってこころがダメージを受けてしまう事が原因だという事です。

うつ病のように脳の機能に異常が生じているわけではなく、気分が低下するような何らかの体験がきっかけで精神エネルギーが低下してしまいます。

このような心因性で生じるうつ病は、以前は「神経症性うつ病」「心因性うつ病」と呼ばれていました。現在でも気分変調症を「神経症性うつ病」「心因性うつ病」と呼ぶ先生もいらっしゃいます。

もちろん、うつ病にも多少は心因性の要素もあります。何らかのショックな体験がきっかけとなってうつ病になってしまう方もいらっしゃるでしょう。また気分変調症も多少は内因性の要素もあります。

しかし「主な」原因としてみると、

  • うつ病は内因性の原因が主である
  • 気分変調症は心因性の原因が主である

という事が出来ます。

2.気分変調症の原因となるもの

気分変調症は、何らかの体験によってこころがダメージを受ける事で発症します。

では発症の原因となる事はにはどのようなものがあるでしょうか。

Ⅰ.精神的にストレスとなる体験

気分変調症の原因のうち、もっとも大きなウエイトを占めるのが精神的ストレスです。

精神的ストレスというと漠然とした言い方ですが、これはその人が不快に感じるような刺激が該当します。

自分にとってひどく不快に感じるような出来事があると、精神が大きくダメージを受け、気分変調症発症の要因となります。また不快の程度が大きくなくても、不快な出来事が長期間続く事でも発症しえます。

特にストレス耐性(ストレスに対する抵抗力)が未熟な幼少期にショックな事を経験したりする事で発症するケースが多く、子供の頃に両親が離婚したり、学校でひどいいじめに遭ってしまって発症する事もあります。

また成人しても大きくストレスを受けたり(大切な人との死別など)、ストレスを長期間受け続けると発症してしまう事もあります。

Ⅱ.遺伝

気分変調症は遺伝性の強い疾患ではありませんが、ある程度遺伝の影響もあると考えられています。

気分変調症やうつ病の家族歴がある方は、そうでない方に比べて気分変調症を発症しやすい事も報告されており、ここから多少は遺伝の影響もある事が分かります。

Ⅲ.性格

性格も気分変調症の発症に関係します。

なぜならば、ストレスとなりうる出来事に遭遇した時、その人の性格によってその刺激に対するとらえ方は異なるからです。

例えば「親から怒られた」という刺激があった時、「親は自分のためを思って注意してくれたんだ」と受け取る性格なのか、「親が自分の事が嫌いなんだ」と受け取る性格なのかで、こころへのダメージは全く異なるでしょう。

気分変調症を発症しやすい性格傾向としては、

  • 自尊心が低い(自分に価値を感じていない)
  • 完璧主義
  • まじめ
  • 他者配慮性(他者への気遣いが過剰)

といったものが挙げられます。これらはうつ病を発症しやすい性格傾向とも共通します。

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3.気分変調症は原因がよく分からずに発症する事も多い

気分変調症と診断されると、「何が原因で発症してしまったのでしょうか」と質問される方は少なくありません。

確かに病気を発症してしまった原因は誰もが気になるものです。

基本的に気分変調症は前項で紹介したような原因が重なる事で発症すると考えられていますが、実際の臨床的な経験からお話すると、明確に「あなたはこれが原因で気分変調が発症したのでしょう」と特定できるケースは多くはありません。

なぜならば気分変調症の特徴として、症状が軽く経過が非常に長いという点が挙げられるからです。

気分変調症は軽い症状が長々と続くため、明確にいつから病気が発症していたのかを特定しずらい疾患なのです。気分が晴れない期間が何年も続いていると、患者さん自身も「いつからこのような気分なのか覚えてない」とおっしゃられる事もあります。

このような状態で原因を特定する事は困難です。

もちろん病気の原因は特定できるに越した事はないのですが、気分変調症はこのような特性から原因がはっきりと分からない事が珍しくありません。

原因が特定しにくいケースは仕方がありませんので、このような場合は原因に過剰にとらわれるのではなく、「どのように治していけばいいのか」「これからどのような考え方を持って生活していけばいいのか」という事に目を向けるようにした方が建設的です。

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