市販の睡眠薬と病院でもらう睡眠薬との違いについて

市販の睡眠薬

一般的に睡眠薬は、病院で医師の診察を受けて処方してもらいます。

お薬は身体に様々な作用をもたらすため、正しく使えば良い効果が得られる一方で間違った使い方をしてしまうと害にもなります。そのためお薬は専門家である医師の指導の下でしか使えないように決められているのです。

ところが薬局やドラッグストアに行くと、誰でも自由に購入できる睡眠薬も売られています。このように市販されている睡眠薬は「睡眠改善薬」と呼ばれ、病院で処方される「睡眠薬」とは正確には区別されます。

この市販の睡眠薬(睡眠改善薬)ってどうなのでしょうか。

わざわざ病院を受診しなくても、ドラッグストアで手軽に睡眠薬を買えるのであればそちらの方が助かると考える方もいらっしゃるでしょう。しかし病院の睡眠薬と市販の睡眠薬はどのような違いがあって、それぞれどのような特徴があるのでしょうか。

市販の睡眠薬を自分の判断で使い続けていて大丈夫なのでしょうか。また、どこまでだったら市販の睡眠薬で対処して良くて、どこを越えたら病院でちゃんと専門家に診てもらうべきなのかといった基準はあるのでしょうか。

今日は市販の睡眠薬の特徴と、病院で処方される睡眠薬との違いについてみていきましょう。

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1.市販の睡眠薬ってどんなお薬なの?

「睡眠薬」というのは、病院で医師から処方されるお薬を指します。

医師が処方する睡眠薬というのは、「向精神薬」に属します。向精神薬は「精神に作用するお薬」の総称で、睡眠薬の他にも抗うつ剤や抗精神病薬(統合失調症の治療薬)、気分安定薬(双極性障害の治療薬)、抗不安薬などがあります。また覚せい剤やアルコールなども「精神に作用する」物質ですので、これらも向精神薬に含まれます。

向精神薬は正しく使えばこころを穏やかにする良い効果が得られますが、乱用すれば危険もあります。実際に向精神薬は、犯罪などに悪用されてしまったり、乱用によって依存となってしまうなどの問題もあります。向精神薬はこのような特徴から、誰でも簡単に入手する事ができないようになっており、専門家である医師が必要と判断した時にしか処方されない事となっています。

一方で市販の睡眠薬(睡眠改善薬)は向精神薬には属さない成分から作られています。つまり眠りに導く作用はある程度あるけども、危険性がそこまで高くはないと判断されている物質から作られています。そのために誰でも薬局などで簡単に購入する事ができるのです。

では市販の睡眠薬にはどのような成分が用いられているのでしょうか。

市販の睡眠薬は、そのほとんどが「抗ヒスタミン薬」を主成分としています。

抗ヒスタミン薬というのは文字通り「ヒスタミン」という物質のはたらきをブロックする作用を持つお薬です。

ヒスタミンは私たちの身体の中で様々な作用をする物質で、

  • アレルギー反応
  • 覚醒
  • 食欲
  • 吐き気やめまい

などに関わっています。

例えば抗ヒスタミン薬は、花粉症やじんま疹などのアレルギー疾患の治療薬としてもよく用いられています。花粉症のお薬は抗ヒスタミン作用によってアレルギー反応を抑えてくれます。ちなみに花粉症のお薬を飲むと眠気を感じますが、これはヒスタミンをブロックする事で覚醒レベルが抑えられてしまうためです。ヒスタミンは脳の覚醒にも関わっている物質ですので、ブロックされると脳が鎮静されて眠気が生じるのです。

抗ヒスタミン薬にも多くの種類がありますが、ざっくりと言うと、

  • 第一世代抗ヒスタミン薬(古いお薬。脳に移行しやすく眠気を感じやすい)
  • 第二世代抗ヒスタミン薬(新しいお薬。脳に移行しにくく眠気を感じにくい)

の2種類に分けることができます。

第一世代は脳にまで達しやすいため、脳に作用することで得られる効果・副作用が生じやすいという特徴があります。例えば脳を鎮静させることで眠気を生じやすく、また嘔吐中枢に作用することで吐き気やめまいの改善も得やすいお薬です。

第二世代は脳に達しにくいため、脳への作用・副作用が生じにくいという特徴があります。睡眠薬や吐き気止めとしての効果の少ないけども、脳とは関係ないアレルギー症状は効率よく抑えてくれます。

つまり花粉症の治療といった「アレルギー症状を抑える作用だけが欲しい」といった場合には第二世代が適しています。実際、花粉症の治療には現在ほとんど第二世代が使用されています。

一方で市販の睡眠薬は、第一世代抗ヒスタミン薬である「ジフェンヒドラミン」が用いられています。

ジフェンヒドラミンは非常に古い抗ヒスタミン薬なのですが、

  • 脳に移行しやすい
  • 鎮静作用が強い

という特徴があるため眠気を得やすく、睡眠改善薬として適しているのです。

ジフェンヒドラミンを用いた睡眠改善薬には、

  • ドリエル(エスエス製薬)
  • ナイトール(GSK)
  • ネオディ(大正製薬)
  • マイレストS(佐藤製薬)
  • グ・スリーP(第一三共ヘルスケア)
  • プロリズム(カイゲンファーマ株式会社)

などがあります。

いずれも1回の使用量にジフェンヒドラミンが50mgほど含まれています。

2.市販の睡眠薬は効くのか

市販の睡眠薬のほとんどはジフェンヒドラミンを主成分とした抗ヒスタミン薬になりますが、これらは不眠に対してちゃんと効いてくれるのでしょうか。またどのような特徴を持つお薬なのでしょうか。

花粉症のお薬を飲むと眠くなることから分かるように、抗ヒスタミン薬は確かに眠気を催します。

ジフェンヒドラミンの眠りに対する調査は大規模なものはあまり行われていませんが、少数の規模で行われた調査によると

  • 眠りに入るまでの時間を短くする(睡眠潜時を短縮させる)
  • 睡眠時間を増やす
  • 深部睡眠に悪影響を与えない
  • 軽睡眠を増やす

といった効果を認める事が報告されています。

眠りに入るまでの時間を短縮させてくれるわけですので、「寝付けなくて困っている」という不眠の方にある程度の効果は期待できるでしょう。

また、深い眠り(深部睡眠)を増やす作用はないものの深部睡眠を減らしてしまう事もありません。その上で浅い眠り(軽睡眠)を増やしてくれるため、その分総睡眠時間も増えます。

それなりにメリットは得られる結果となっています。

ただし問題点もあります。

一番の問題は、抗ヒスタミン薬の眠りの効果はすぐに耐性が形成されることが知られています。

【耐性】
服薬を続けていくと、徐々に身体がお薬に慣れていき、お薬の効きが悪くなってくること。耐性が形成されてしまうと、同じ効果を得るためにはより多い量が必要となるため、大量処方につながりやすい。

短いと4日程度で耐性が形成されてしまい、眠気を感じにくくなってしまうという報告もあります。

そのため、ある程度の期間(1週間など)以上続ける場合は、あまり向かないお薬となります。

ちなみに医薬品にもジフェンヒドラミンを主成分としたお薬があります。「レスタミン(一般名:ジフェンヒドラミン)」というお薬なのですが、医療現場ではレスタミンを睡眠薬として処方することはまずありません。その理由はすぐに耐性が出来てしまうためです。耐性が出現してしまうと、それを解決するためにはお薬の量を増やすしかありません。しかしレスタミンは古いお薬であるため、安易に増薬してしまうと副作用が出てしまう可能性が高く、そう考えると得られるメリット(眠りの改善)よりもデメリット(副作用)が高くなり、睡眠薬としてあまり良いお薬だとは言えないのです。

レスタミンを使うよりも医師の指導の下で睡眠薬を用いた方が、効率的に睡眠の改善が得られます。そのため、睡眠の改善にレスタミンを処方することは医療現場ではほぼありません。

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3.市販の睡眠薬のメリットとデメリット

市販の睡眠薬の特徴についてみてきました。

市販の睡眠薬の特徴と注意点、どんな時に使用すべきなのかを病院で処方される睡眠薬と比較して紹介させて頂きます。

Ⅰ.効果は弱い

市販の睡眠薬は「向精神薬」に属さないお薬です。

お薬の中で精神に作用する度合いが強いものは「向精神薬」に分類されます。「精神に作用する」というと怖く感じるかもしれませんが、精神(こころ)というのは実体のないものですので具体的には、感情や認知を作り出している「脳」に作用することが精神に作用するということになります。そのため、正確に言えば「脳に作用することで精神に影響を与えるお薬」が向精神薬だということになります。

睡眠薬の「眠らせる」という効果は脳への作用が不可欠です。脳に作用せずに睡眠効果を得ることはできません。つまり睡眠薬である以上、向精神薬に属してしまうのは仕方がないことなのです。

しかし市販の睡眠薬は、向精神薬に属していません。という事は病院の睡眠薬と比べると、睡眠に導く効果は弱いという事になります。

抗ヒスタミン薬で病院の睡眠薬と同じ効果を得続けようとしたら非常に高用量(用法で認められていないほどの量)を使わないといけません。しかし本来許可されている量以上の高用量を使えば、副作用の危険性が高まります。

Ⅱ.安全性は高いが、過信は禁物

市販の睡眠薬は誰でも買えてしまうくらいですので、確かに安全性は高めではあります。しかしそれは「正しく使っていれば」という前提での話であり、安易に「病院の睡眠薬よりも市販の睡眠薬の方が安全だから、こっちを使おう」と考えるのは早計です。

市販の睡眠薬は確かに安全性は高いのですが、医師の指導などを受けることができないため自己判断での使用になってしまいます。お薬の知識がない方が自分の判断で服用をすると、「あまり効かなかったから」と安易で服用量を増やしてしまったり、「今日は良く寝たいから」と決められた量の何倍もの量を一気に飲んでしまうことがあります。

確かに同程度の量で比較すれば、病院の睡眠薬よりも市販の睡眠薬の方が安全性は高いのかもしれません。市販の睡眠薬は自己判断で用法より多く飲んでしまう事もあり、このリスクを考えると一概に安全とは言えません。どんなに副作用が少ないお薬でも、大量に飲めば副作用は生じます。

  • 向精神薬を専門家である医師のサポートを受けながら適切に服用する
  • 市販の睡眠薬を自己判断で服用する

のどちらが安全かというのは一概に言う事はできません。

Ⅲ.本当に自分に合った睡眠薬なのかが分からない

例えば不眠といっても、

  • 寝付けないのか(入眠障害)
  • 寝付けるけども、夜中に何度も目覚めてしまうのか(中途覚醒)
  • 全体的に眠りが浅いのか
  • うつ病や不安障害など、何らかの疾患に伴う不眠なのか
  • 不眠の原因に生活習慣の乱れはないのか
  • 不眠の原因となるようなお薬を服用していないか

といった背景によって、使用する睡眠薬は異なってきます。あるいは原因によっては睡眠薬以外のお薬や治療法で治療を行うこともあります。

病院を受診すれば、専門家である医師が患者さんの不眠の症状や程度を聞き、最適な睡眠薬を提案してくれます。

しかし市販の睡眠薬を買う場合、どんな不眠に対しても「抗ヒスタミン薬」の一つ覚えで治療することになります。そのお薬が本当に今の自分の症状の改善に合っているのかが分からないため、効率よく不眠を治すことが難しくなります。自分に合っていない睡眠薬を漫然と使っていたとすれば、効果がないばかりか害となる事もあります。

Ⅳ.一時的な軽い不眠は市販の睡眠薬を使ってもよい

市販の睡眠薬の使い方に対しての結論を言うと、一時的な不眠であれば使っても良いという事ができます。「今日眠れないだけ」とか「2,3日使いたいだけ」といった短期間の不眠に対してなら検討しても良いでしょう。

例えば旅行で時差ボケになってしまい初日だけリズムを治すために使いたいとか、緊張するイベントの前日でその日だけ眠れないから使いたいとかです。こういった時に市販の睡眠薬(抗ヒスタミン薬)で一時的な不眠を解決するという使い方であれば、問題はないでしょう。

しかし一定期間続く不眠の場合は市販の睡眠薬はオススメできません。

その理由として、

  • すぐに耐性が生じる(効かなくなる)
  • 本当に今の自分に合っている治療法なのか分からない

ためです。

不眠の原因が明らかで、それが一過性である可能性が高い場合は、市販の睡眠薬でその場しのぎをしても良い出そう。しかし一定期間続くような不眠をしっかりと治すのであれば、病院を受診すべきです。

病院を受診して医師に不眠の程度をしっかりと評価してもらい、自分の状態にあった適切な睡眠薬(あるいは生活指導などの非薬物療法)を提案してもらう方が、安全だし、早く不眠を治すことが出来ます。

少なくとも、生活に支障を来たすほどの不眠であったり、本人が「苦しい」と感じている不眠なのであれば、自己治療をするのではなく、一度専門家に評価してもらってください。

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