ドリエルの効果と特徴【医師が教える睡眠改善薬の全て】

ドリエルは睡眠改善薬と呼ばれるお薬で、主に不眠に対して用いられています。

お薬といっても病院で処方されるお薬(医療用医薬品)ではなく、薬局やドラッグストアで誰でも自由に購入する事が出来るお薬(一般用医薬品、OTC医薬品)になります。

ドリエルは眠りに導く作用はあるものの、病院で処方される睡眠薬とは作用機序が異なります。それぞれメリット・デメリットがあるため、「薬局で買えるものだし、安全だろう」と安易に考えて服用を続けるのはよくありません。

ではドリエルとはどのような不眠に向き、どのような効果が期待できるお薬なのでしょうか。

ここではドリエルの効果や強さ、他の睡眠薬との比較などを紹介します。

1.ドリエルの特徴

まずはドリエルというお薬の特徴を簡単に紹介します。

ドリエル(一般名:ジフェンヒドラミン)は「抗ヒスタミン薬」という種類のお薬になります。ヒスタミンは神経伝達物質(神経間で情報を伝える役割を持つ物質)の1つで、脳を覚醒させる作用があります。

抗ヒスタミン薬はヒスタミンのはたらきをブロックします。すると、脳の覚醒が弱まるため眠くなる、というのがドリエルの機序になります。

薬物動態(体内でのお薬の動き)としては、服用してから2~4時間後に血中濃度が最大となり、以後5~8時間で血中濃度が半分に下がります。

服用してから効果を感じ始めるまでには個人差もありますが1時間前後である事が多く、作用の持続時間も同じく個人差がありますが、6時間前後になります。

服用してからすぐ眠くなるものではありませんので、寝つきの改善に利用したい場合は、就寝時間の1時間ほど前に服用する必要があります。

ドリエルのメリットは何といっても入手の手軽さです。医師の診察を受けなくても手軽にドラッグストアで購入できるのは大きなメリットでしょう。通常、医師の診察の上で処方される睡眠薬は「不眠症」などの病名がつかないと処方される事はありませんが、ドリエルのような睡眠改善薬は病名がなくても自由に入手する事ができます。

そのため「旅行中の時差ボケで眠れない」「明日会議があってその緊張で眠れない」といった一時的な不眠に用いる際には良い適応となります。

ドリエルのデメリットとしてはいくつかあるのですが、

  • すぐに耐性が出来てしまう
  • 薬価が高い
  • 医師の診察を受けていないため、本当に自分に合っている睡眠薬なのか分からない

といった点が挙げられます。

まず一番のデメリットとしてドリエルのような抗ヒスタミン薬の眠気というのはすぐに耐性ができる事が知られています。

耐性というのは「慣れ」です。服用を続けていると次第に身体がお薬に慣れてしまい、効きにくくなってくるという事です。おおよそ1週間も連用すれば耐性が出来てしまい、ほとんど効果がなくなると言われています。

つまり1日2日使うくらいであればいいけども、1週間以上継続して使うのであれば不向きなお薬だという事です。

また薬価の高さもデメリットです。ドリエルは1回分で約300円ほどします。対して睡眠薬は1回分で10円から高くても100円前後であり、更に保険が効きますからその3割が支払う額になります(負担割合は患者さんによって異なります)。おおよそ10倍ほどの差がありますのでこれは大きなデメリットとなります。

2.ドリエルの強さは?

ドリエルの購入を検討している方が気になっている事の1つに、

「このお薬でちゃんと眠れるのだろうか?」
「強すぎて翌朝起きれなくなったりしないだろうか?」

といった眠らせる作用の強さが挙げられるのではないでしょうか。

はたしてドリエルの強さはどのくらいなのでしょうか?

お薬の効きは個人差が大きいため一概には言えませんが、一般的にドリエルは服用初日はまずまずの効果が得られます。

病院で処方される代表的な睡眠薬に「ベンゾジアゼピン系睡眠薬」「非ベンゾジアゼピン系睡眠薬」がありますが、これらと同等の効果が期待できると考えてよいでしょう。

ただしドリエルをはじめとした抗ヒスタミン薬の眠気は、急速に耐性が形成されます。服用して4日経つと、何も服用していないのと同じレベルにまで慣れが生じてしまうという報告もあります。そこまではいかないにしても、効果を得られるのは1週間以内だと考えて置いた方が良いでしょう。またその間も日を追うごとに確実に効果は減弱していきます。

ちなみに抗ヒスタミン薬というのは、アレルギーを抑える作用もあるため、アレルギー性のかゆみや花粉症などにも用いられてます。

花粉症のお薬は飲むと眠くなりやすいものですが、服用を続けていると段々眠気を感じなくなってきます。これは眠気に対して耐性が生じているからなのです。

ドリエルの眠気もこれと全く同じです。服用を続けると、段々と慣れが生じてきます。

3.ドリエルの作用時間は?

睡眠薬を使う時、

  • 服用してからどのくらいで効いてくるのか
  • 服用してからどのくらい効果が続くのか

も皆さん気になるところだと思います。

ドリエルは医療用医薬品ではないため、薬物動態(身体の中でお薬がどのように動くか)の詳しい調査はあまり行われていません。

しかしドリエルの主成分であるジフェンヒドラミンは、「レスタミン」「ベナ」という医療用医薬品にも配合されている成分であり、こちらで薬物動態について調べられています。

ジフェンヒドラミンは、服用してから2~4時間後に血中濃度が最大となり、以後5~8時間で血中濃度が半分に下がると報告されています。

実際の感覚としては、服用してから1時間前後で効果が出現し始め、約6時間前後効果は続きます。

なお効果には個人差がありますので、これらの数値はあくまでも目安と考えて下さい。

4.ドリエルと他の睡眠改善薬の比較

医師の診察を必要とせず、薬局やドラッグストアで買えるような睡眠薬は「睡眠改善薬」と呼ばれます。

病院で処方されるお薬は「医療用医薬品」と呼ばれ、薬局やドラッグストアで誰でも自由に購入する事が出来るお薬は「一般用医薬品」あるいは「OTC医薬品」と呼ばれますが、睡眠薬は医療用医薬品であり、睡眠改善薬は一般用医薬品であるという違いがあります。

ドリエルは睡眠改善薬であり一般用医薬品ですが、薬局やドラッグストアに行くとドリエル以外にもいくつかの睡眠改善薬があります。

薬局で様々なお薬を目にすると、「一体どれが一番効くのだろう??」と悩んでしまうものですが、これらの睡眠改善薬とドリエルはどのような違いがあるのでしょうか。

まず、現在薬局・ドラッグストアで販売されている睡眠改善薬は大きく3種類に分けられます。

  • ジフェンヒドラミンを含むもの
  • 漢方薬を含むもの
  • ブロムワレリル尿素を含むもの

の3つです。

ほとんどの睡眠改善薬は、「ジフェンヒドラミン」を含むもので、ドリエルもそうです。ジフェンヒドラミンの量もどれも同じで50mgが含まれています。

ドリエルと同様にジフェンヒドラミン50mgが含まれている睡眠改善薬には、

  • ナイトール(発売会社:グラクソスミスクライン)
  • ネオディ(発売会社:大正製薬)
  • マイレスト(発売会社:サトウ製薬)
  • グ・スリーP(発売会社:第一三共ヘルスケア)
  • プロリズム(発売会社:カイゲン)
  • カローミン(発売会社:大昭製薬)
  • おやすみーな(発売会社:浅田飴)
  • ドリーネン(発売会社:東宝製薬)
  • アンミナイト(発売会社:ゼリア新薬工業)

などがあります。このように、ほとんどの睡眠薬はジフェンヒドラミンが主成分となっており、含有量もどれも50mgと同じです。

多少の添加物の差はあるものの、ざっくりと言ってしまえばこれらの睡眠改善薬はどれを用いても効果に大した差はないという事です。

漢方薬を含んでいる睡眠改善薬もいくつかあり、

  • ホスロールS(発売会社:救心製薬)
  • アロパノール(発売会社:全薬工業)

などがあります。

これらは、漢方薬の中で鎮静作用・抗不安作用がある生薬を用いています。漢方薬は強制的に脳を鎮静させるお薬ではないため、心を穏やかにする事で眠りを導くような効き方をするお薬になります。

効果は個人差がありますが一般的に効きは穏やかで、ジフェンヒドラミンよりも弱い事が多いと考えられます。

最後のブロムワレリル尿素を含むものには、

  • ウット

が挙げられます。

ブロムワレリル尿素は1900年代に開発された非常に古いお薬であり、非バルビツール酸系という種類に属します。確かに眠らせる作用はあるのですが、危険性が高いお薬でありあまり用いるべきお薬ではありません。

実際にアメリカではブロムワレリル尿素は医薬品として使う事を禁止されているほどです。ウットに含まれるブロムワレリル尿素は少量にはなっていますが、それでも使用はお勧めできません。

ブロムワレリル尿素は耐性・依存性もあり、大量に服薬することで中毒となったり命に関わる副作用が生じる可能性のある物質です。精神への影響や脳の萎縮といった副作用も指摘されています。

これらのデメリットを考えると、あまりお勧めはできません。

5.ドリエルと睡眠薬の比較

病院で医師の診察を受けて処方される眠りのお薬は「睡眠薬」と呼ばれ、ドリエルのような薬局で自由に購入できる睡眠改善薬とは区別されます。

では睡眠薬と睡眠改善薬はどのように違うのでしょうか。

まずは作用機序が異なります。

前述したように、睡眠改善薬は基本的には抗ヒスタミン薬であるジフェンヒドラミンが主成分になっています。これはヒスタミンという脳を覚醒させる物質のはたらきをブロックする事で、脳の覚醒レベルを落とすというお薬になります。

対して、代表的な睡眠薬には、

  • ベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系
  • メラトニン受容体作動薬
  • オレキシン受容体拮抗薬

などがあります。

これらの睡眠薬とドリエルのような睡眠改善薬を比較してみましょう。

Ⅰ.作用機序

ベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系は、脳の神経細胞に存在するGABA-A受容体を刺激する作用があります。

GABA-A受容体は脳のはたらきを抑制させる方向にはたらく受容体であり、刺激されると気分がリラックスしたり(抗不安作用)、眠くなったり(催眠作用)、筋肉がほぐれたり(筋弛緩作用)、神経の興奮が和らいでけいれんが抑えられたり(抗けいれん作用)します。

これにより睡眠へ導くのがベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系になります。

メラトニン受容体作動薬は、メラトニン受容体を刺激することで眠気を引き起こすお薬です。暗くなると脳の松果体という部位からメラトニンが分泌されるのですが、メラトニンはメラトニン受容体にくっつくことで眠気を感じさせるはたらきがあります。

この作用を利用してメラトニン受容体をお薬で刺激するのがメラトニン受容体作動薬です。

オレキシン受容体拮抗薬は、脳を覚醒させる物質であるオレキシンのはたらきをブロックするお薬です。オレキシンがブロックされると脳は覚醒を維持できなくなるため眠くなります。

このように作用機序が異なります。

Ⅱ.耐性

また「耐性」にもそれぞれ違いがあります。

耐性というのは「お薬を服用し続ける事で慣れが生じてしまうこと」で、耐性が強いお薬ほどすぐに効かなくなってしまいます。

この中で耐性が最も強いのがドリエルをはじめとした抗ヒスタミン薬です。抗ヒスタミン薬は数日~1週間ほどで耐性が出来てしまうといわれています。

ベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系も耐性が出来るお薬ですが、これらはアルコールと同程度の耐性の強さになります。

アルコールは大量に飲み続けていると段々同じ量では酔えなくなってしまいますよね。でも節度を持った飲酒であれば問題となるほどの耐性が形成される事はありません。

それと同じで、適正な期間・適正な量の服用にとどめていればベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系は耐性を起こすリスクは高くはありません。

メラトニン受容体作動薬・オレキシン受容体拮抗薬は基本的には耐性は生じないと考えられています。

Ⅲ.効果の強さ

また効果の強さにも違いがあります。

この中で一番強いのはベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系睡眠薬です。その次がオレキシン受容体拮抗薬で、メラトニン受容体作動薬はかなり弱い効きになります。

抗ヒスタミン薬はというと、服用した初日はベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系睡眠薬と同程度の強さがありますが、すぐに耐性が生じて効かなくなってきます。一週間も服用を続けているとメラトニン受容体作動薬よりも効きは弱くなり、ほとんど効きがなくなるといわれています。

6.ドリエルが向いている人は?

以上からドリエルが向いている人はどのような人でしょうか。

まずはドリエルの特徴をおさらいしてみましょう。

  • 病院を受診しなくても薬局で手軽に購入できる
  • すぐに効かなくなってしまう
  • 薬価が高い

という特徴がありました。

ここから、ドリエルの使用が適しているのは、

  • 原因が明確である一時的な不眠

であるといえます。

何らかの理由によって数日のみ眠れないという場合、その数日を乗り切るためだけに使用するのには向いているでしょう。

「旅行の時差ボケで眠れなくなった」
「明日緊張する事があって眠れない」

といった原因が明確で、明らかに一時的に眠れないだけの時にはドリエルは向いています。

反対に、耐性がすぐに生じ、また経済的負担も大きい事から、

  • 眠れない状態が1週間以上続きそうな時

には向いていません。

このような時には病院を受診し、医師に今の症状を伝えて睡眠薬等を検討してもらう必要があるでしょう。

ちなみに不眠(眠れない)には入眠障害(寝付けない)と中途覚醒(夜中に何度も起きてしまう)がありますが、ドリエルはどちらに向いているでしょうか。

これは両者に使えますが、ドリエルの特性を理解して不眠のタイプによって服用時間を変える事が効果的です。ドリエルは服用して約1時間ほどで眠くなるため、入眠障害の場合は寝る直前に服用してしまうと、それからしばらくは寝付けません。

入眠障害の方がドリエルを使う場合は、眠る30~60分前に服用すると良い効果が得られるでしょう。

一方で中途覚醒の方がドリエルを使う場合には、眠る直前の副作用で問題ありません。