リーゼ錠は1979年に発売された抗不安薬です。
抗不安薬は文字通り、不安感を取るおくすりで、「安定剤」「精神安定剤」とも呼ばれます。
リーゼは非常に緩やかな作用を示し、軽度の不安を持つ方に良く使われます。
副作用も軽く、安全性の高いおくすりです。そのため、精神科以外でもよく処方されます。
ここでは、リーゼの効果や特徴をはじめ、不安を抑える強さがどれくらいなのか、また他の抗不安薬との比較などを紹介していきます。
1.リーゼの強さ
抗不安薬には、たくさんの種類があります。
それぞれ強さや作用時間が異なるため、患者さんの状態によって、
どの抗不安薬を処方するかをが異なってきます。
リーゼは、抗不安薬の中では効果が弱いおくすりです。
不安を取る力は、最弱クラスといってもいいでしょう。
しかしこれは悪いことではありません。
強く効きすぎないリーゼは、軽い不安を取るのに使いやすいですし、
効果が弱いということは副作用も弱いため、安全性が高いということでもあります。
そのためリーゼは、軽度の不安を持つ患者さんに適していると言えます。
副作用に苦しむことも少なく済むでしょう。
反対に重度の不安で苦しんでいる方には、物足りなさを感じるかもしれません。
ちなみに主な抗不安薬の「抗不安効果」の強さを比較すると下図のようになります。
抗不安薬 | 作用時間(半減期) | 抗不安作用 |
---|---|---|
グランダキシン | 短い(1時間未満) | + |
リーゼ | 短い(約6時間) | + |
デパス | 短い(約6時間) | +++ |
ソラナックス/コンスタン | 普通(約14時間) | ++ |
ワイパックス | 普通(約12時間) | +++ |
レキソタン/セニラン | 普通(約20時間) | +++ |
セパゾン | 普通(11-21時間) | ++ |
セレナール | 長い(約56時間) | + |
バランス/コントール | 長い(10-24時間) | + |
セルシン/ホリゾン | 長い(約50時間) | ++ |
リボトリール/ランドセン | 長い(約27時間) | +++ |
メイラックス | 非常に長い(60-200時間) | ++ |
レスタス | 非常に長い(約190時間) | +++ |
2.リーゼを使う疾患は?
添付文書を見るとリーゼは、
- 心身症(消化器疾患、循環器疾患)における身体症候ならびに不安・緊張・心気・抑うつ・睡眠障害
- 自律神経失調症におけるめまい・肩こり・食欲不振
- 麻酔前投薬
に適応があると書かれています。
心身症とは、身体の異常の主な原因が「こころ」にある病気の群です。例えば食生活が悪くて胃潰瘍になるのは心身症ではありませんが、ストレスで胃潰瘍になるのは心身症になります。同じようにタバコで血圧が上がるのは心身症ではありませんが、ストレスで血圧が上がってしまうも心身症になります。
臨床では、心身症に限らず軽い不安感に使うことがほとんどです。
ストレスで不安感が強くなったり、気分の落ち込みが出てきたり、
緊張が取れなくなってしまう場合などですね。
また、軽い筋弛緩作用(筋肉をほぐす作用)がありますので、
ストレスが原因で生じた肩こりや頭痛などにも効果が期待できます。
3.リーゼが向いている人は?
リーゼは、穏やかな抗不安作用を持つおくすりですので、
軽度の不安、抑うつ、緊張などを持つ方に向いているおくすりです。
それに伴う肩こり、頭痛などの身体症状の改善にも役立ちます。
副作用も少ないため、
「副作用がなるべく少ないおくすりがいい」
「できる限り安全性の高いおくすりがいい」
という場合にも候補に挙がるでしょう。
リーゼは、半減期(≒おおよそのおくすりの作用時間)が6時間程度です。
個人差はありますが、一回服薬したらだいたい6時間で効果がなくなります。
そのため、1日中効かせるためには1日に何回か内服する必要があります。
実際、添付文書にも1日3回に分けて内服するよう書かれています。
1日中と通して不安を取りたいのであれば、リーゼの場合は3回飲まないといけませんので、
やや面倒かもしれません。
これを負担に感じない方であれば問題ありませんが、
負担である場合は、もう少し作用時間が長いおくすりの方が良いでしょう。
例えば、同じ抗不安薬であるメイラックスなら1日1回の服用で済みます。
しかし半減期が短いのは、一概に悪いことではありません。
1日中効かせたいのであれば複数回内服しないといけませんが、
反対に1日の中の特定の時間だけ効いてほしいのであれば、半減期は長すぎない方がいいのです。
例えば、「朝礼で毎日発表するんだけど、その時だけ効かせたい」ということであれば、
朝食後だけリーゼを内服すればいいわけです。
そうすれば、朝礼の時にはしっかり効いていますが、午後には効果がなくなっています。
4.リーゼの作用機序
リーゼは「ベンゾジアゼピン系」という種類のおくすりです。
リーゼに限らず、ほとんどの抗不安薬はベンゾジアゼピン系に属します。
ベンゾジアゼピン系は、GABA受容体という部位に作用することで、
抗不安効果、催眠効果、筋弛緩効果、抗けいれん効果を発揮します。
ベンゾジアゼピン系のうち、抗不安効果が特に強いものが「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」になり、
リーゼもそのうちのひとつです。
ちなみに睡眠薬にもベンゾジアゼピン系がありますが、
これはベンゾジアゼピン系のうち、催眠効果が特に強いもののことです。
ベンゾジアゼピン系は、基本的には先に書いた4つの効果が全てあります。
ただ、それぞれの強さはおくすりによって違いがあり、
抗不安効果は強いけど、抗けいれん効果は弱いベンゾジアゼピン系もあれば、
抗不安効果は弱いけど、催眠効果が強いベンゾジアゼピン系もあります。
リーゼはというと、
- 軽い抗不安効果
- 非常に軽い筋弛緩効果
- 非常に軽い催眠効果
- 抗けいれん効果はほとんどない
といったところでしょうか。