喉が詰まる感じが取れない…。それはストレスによるヒステリー球かも!?

「いつも喉に何かが詰まっている感じがする」
「のどの違和感が続いていて、心配・・・」

喉の奥は自分で見る事ができないため、違和感が生じるとこのように不安に感じるものです。しかし一方で大きな痛みや苦痛ではないため、心配でありながらもつい放置してしまう事も少なくありません。

喉の違和感が生じる原因としては様々なものが考えられます。咽頭・喉頭・甲状腺など喉の周辺にある臓器・器官の異常といった身体的な原因で生じる事もありますし、精神的な原因(ストレスなど)で生じる事もあります。

「ストレスで喉が詰まったりするの?」と思うかもしれませんがストレスによる喉の詰まりは珍しい症状ではありません。実際、喉の違和感を感じる方の70%ほどが精神的な原因であるという報告もあります。

精神的な理由によって喉の詰まる感じが生じる疾患は「咽喉頭異常感症(通称:ヒステリー球)」と呼ばれます。

このヒステリー球はどのような機序で生じるのでしょうか。身体疾患による喉の詰まりとは見分け方はどうすればいいのでしょうか。またどのようにすれば治す事ができるのでしょうか。

ここでは精神的な原因で喉が詰まる感じが生じる、ヒステリー球についてお話させていただきます。

1.その喉が詰まる感じはヒステリー球かも!?

喉が詰まる感じが続いている時、その原因としては様々な状態が考えられますが、大きく分ければ

  • 身体的な原因(器質的異常)
  • 精神的な原因

の2つが考えられます。

1つ目は喉に何らかの器質的な異常(物理的に確認できる身体的な異常)が生じている状態です。

これは喉に癌(ガン)が出来ているとか、甲状腺(喉の前方にある臓器)が腫れているとか、そういった身体的な原因で実際に喉が圧迫されて、違和感が生じているというものです。

器質的な原因の場合は実際に身体に異常があるため、喉の違和感の他、進行すると喉の痛みや咳・痰(時に血痰)などが生じる他、疾患によっては発熱や倦怠感・体重減少などといった症状も生じる事があります。

そして2つ目は、精神的な異常によって喉の違和感が生じている状態です。

精神的な原因によって喉に違和感が生じる事を専門的には「咽喉頭異常感症(通称:ヒステリー球)」と呼びます。ヒステリー球では、内視鏡などで喉を見ても何の異常所見も認めないのに、喉の違和感が続きます。

ヒステリー球は強い精神的ダメージを受けたり、あるいは弱くても慢性的な精神的ダメージを受け続ける事で、自律神経のバランスが乱れて生じると考えられています。昔は神経症の1つだと考えられており、「咽喉頭神経症」と呼ばれる事もありました。

精神的ダメージが原因ですから、不安や落ち込みなどといった精神症状も生じる事があります。また自律神経系の乱れで生じる自律神経症状(めまいやふらつき、発汗、動悸、息苦しさなど)が合併する事もあります。

喉が詰まる感じが取れない時は、喉に何らかの身体的異常が生じている可能性の他、「ヒステリー球」という精神的な可能性も考える必要があります。

2.なぜストレスで喉が詰まる感じが生じるのか

喉の詰まりが取れないという方に、「これは精神的な原因かもしれませんね」とお話すると、「精神的な原因で喉の詰まりなど生じるのか?」と不思議な顔をされる方もいらっしゃいます。

確かにストレスといった目に見えない原因によって、喉がおかしくなるなんて不思議な感じがしますね。

しかし実は精神的なダメージというのは、私たちの心のみならず身体にも影響を与えるものなのです。

例えば私たちは強いストレスを感じると、

  • 動悸がしたり
  • お腹を下してしまったり
  • 汗が止まらなくなったり
  • 身体が震えたり

しますね。

大勢の前で発表したり、イヤな仕事に行かないといけなかったりという時にこのような身体症状を経験した事がある方は少なくないはずです。このような症状が生じるのは「ストレス」という精神的な原因によって心臓や胃腸・汗腺・神経などが影響を受けているという事に他なりません。

同じように考えれば、ストレスで喉が影響を受けても何もおかしくないのです。

咽頭や喉頭は「迷走神経」という自律神経の支配を受けており、特に知覚(詰まりなどを感じる感覚)は迷走神経がその多くを担っています。

そしてこの迷走神経は咽頭・喉頭のみならず、

  • 心臓にまで枝を伸ばして、心拍数の調整を行う
  • 胃腸にまで枝を伸ばして、胃腸の動きの調整を行う
  • 発汗の調整を行う

などといったはたらきも担っています。

迷走神経は自律神経系に属しますが、自律神経はストレスなどの精神的な原因によってそのはたらきが不安定になりやすい神経です。「自律神経失調症」という言葉を聞いたことがあるかと思いますが、これは精神的な原因によって自律神経のはたらきが不安定になった(失調)状態の事です。

精神的ストレスによって自律神経失調の状態になれば、自律神経の1つである迷走神経のバランスも当然崩れます。

すると心拍数が増えて動悸がしたり、胃腸の動きが亢進して下痢をしたり、汗が止まらなくなるのです。

同じように迷走神経のバランスが崩れる事で咽頭・喉頭の知覚に異常が生じ、「喉に何か詰まっている感じがする」という違和感が生じるのだと考えられています。

つまりヒステリー球は、精神的ストレスによって自律神経のバランスが崩れた結果、生じているのです。