レキソタンの半減期・作用時間【医師が教える抗不安薬の全て】

レキソタンは抗不安薬に分類されるお薬で、主に不安を和らげる作用を持ちます。

レキソタンはその特徴として、

  • 抗不安作用が強力
  • 即効性がある
  • 作用時間が比較的長め

という点があります。

ではレキソタンは具体的に服用してどのくらいで効き始め、その効果はどのくらい続くものなのでしょうか。

お薬の効きは個々の体質や臓器の状態によって異なってくるため、万人にとって絶対的な作用時間を知る事はできませんが、おおよその目安として知る事は出来ます。

そのためにはお薬の薬物動態(体内に入ってからのお薬の動き)を知る必要があり、「最高血中濃度到達時間」と「半減期」という数値が一つの目安になります。

ここでは、レキソタンの作用時間他の抗不安薬との比較、そこから考えられるレキソタンの効果的な服薬方法について紹介していきます。

1.レキソタンの半減期と最高血中濃度到達時間

服用したお薬がどのくらいで効き始めるのか(即効性)、そしてその作用時間はどのくらい続くのか(持続力)は、「最高血中濃度到達時間」と「半減期」という数値が答えの目安になります。

最高血中濃度到達時間というのは、お薬を服用してから血中濃度が最大になるまでにかかる時間の事です。血中濃度が早く最大になるという事は、お薬が早く効くという事であり即効性があるという事が出来ます。

半減期というのは、服用したお薬の血中濃度が半分に下がるまでにかかる時間の事です。半減期が長いほどお薬が身体から抜けにくいため、持続力があるという事ができます。

ではレキソタンの最高血中濃度到達時間と半減期はどのくらいなのでしょうか。

レキソタンは服薬後、約1時間で血中濃度が最大となり、半減期は約20時間です。

最高血中濃度到達時間は約1時間で、これは他の抗不安薬と比べても早い方です。体感的には服用してから15~20分ほどで効果が感じられます。

半減期は約20時間で、これは他の抗不安薬と比べてもやや長めです。個人差はありますが、だいたい半日ほどは効果が持続すると考えても良いでしょう。

2.抗不安薬の半減期一覧

抗不安薬はたくさんの種類があり、それぞれ最高血中濃度到達時間や半減期は異なります。

代表的な抗不安薬の最高血中濃度到達時間・半減期を比較してみると下図のようになります。

抗不安薬作用時間(半減期)最高血中濃度到達時間
グランダキシン短い(1時間未満)約1時間
リーゼ短い(約6時間)約1時間
デパス短い(約6時間)約3時間
ソラナックス/コンスタン普通(約14時間)約2時間
ワイパックス普通(約12時間)約2時間
レキソタン/セニラン普通(約20時間)約1時間
セパゾン普通(11-21時間)2~4時間
セレナール長い(約56時間)約8時間
バランス/コントール長い(10-24時間)約3時間
セルシン/ホリゾン長い(約50時間)約1時間
リボトリール/ランドセン長い(約27時間)約2時間
メイラックス非常に長い(60-200時間)約1時間
レスタス非常に長い(約190時間)4~8時間

半減期や最高濃度到達時間が様々であることが分かります。

一般的に半減期が短いと、効果がすぐに消えるため細かい調整がしやすいというメリットがあります。しかし1日何回も飲まないといけなかったり、血中濃度が大きく上下するためお薬の抜けを感じやすく、大量服用や依存にもなりやすいというデメリットもあります。

反対に半減期が長いと、一回飲むと身体からなかなか抜けないため細かい調整がしにくいのですが、服薬回数も少なくて済みますし、ゆっくり効くため依存にもなりにくいと言われています。

最高血中濃度到達時間も半減期も、一概に「早いと良い」「長いと良い」と言えるものではありません。それぞれ一長一短ありますので、自分の症状・状態に合わせて適切な抗不安薬を選択することが大切です。

レキソタンは、即効性があるわりに、作用時間もまずまず長いというのが特徴です。

3.最大血中濃度到達時間・半減期から考えるレキソタンの使い方

レキソタンは抗不安薬なので、不安を和らげるために使われます。

その使い方は主に2通りで、

  • 一日を通して不安を抑える(定期的に服薬する)
  • 特定の時間帯だけ不安を抑える(頓服で服薬する)

という使い方があります。

それぞれの使い方を詳しく見ていきましょう。

Ⅰ.一日を通して不安を抑える

1日を通して不安を抑えたい場合、レキソタンの半減期が約20時間であることを考えると、1日1回の服薬でも良いように感じるかもしれません。

しかし実際は1日1回だと途中で効果が切れてしまうと感じる患者さんも多く、1日2回(中には1日3回)と分けて服薬する事がほとんどです。添付文書的にも「1日2~3回に分けて服薬する」事と書かれており、1日複数回の服用が推奨されています。

もちろん、服薬してみて「1日1回投与で1日中しっかり効く」ということであれば、1日1回投与でも構いません。添付文書にも「年齢・症状により適宜増減する」と書かれていますので、主治医と相談しながら、自分に最適な飲み方を選んでください。

定期的に服薬するメリットは、

  • 1日を通してしっかりと不安を抑えてくれること
  • 定期的に飲み続けた方が、ワンポイントで飲むよりも強くしっかりと効く

ということです。

意外と知られていないのですが、ワンポイントで頓服的に飲むよりも定期的に飲み続けた方がしっかりと効果が発揮されます。

これは服薬を続けることで、ベースの血中濃度が徐々に上がっていくからです。一般的には半減期の約5倍の期間、定期的に服薬を続けると血中濃度が高い状態で安定すると言われています。レキソタンであれば理論上は「20時間×5=100時間」ですので約4日です。

Ⅱ.特定の時間帯だけ不安を抑える

特定の時間帯だけ不安を抑える「頓服」としての使用であれば、飲む時間に気を付けなければいけません。

上の表を見ると、レキソタンの最高血中濃度到達時間は約1時間です。つまり、一番効かせたい時間の1時間前に服薬するのがベストだと考えられます。

例えば「毎朝10時にある朝礼発表で不安・緊張が強くなるから、それを抑えたい」ということであれば、朝9時頃にレキソタンを服薬するのがベストだということです(個人差はあります)。

ただし効きが最高値になるのは1時間後ですが、服薬後15〜20分もすればある程度効いてはきますので、急な服薬の必要が出て来た時に、その場ですぐ飲むという方法でもある程度の効果は期待できます。

ワンポイントの服薬は、手軽な方法で依存にもなりにくいのですが、効きの強さとしてはどうしても定期的に服薬する方法よりも弱くなってしまいます。

どちらの飲み方も一長一短がありますので、主治医とよく相談して自分にとっての最適な服薬法を選びましょう。

4.半減期とは?

最後に「半減期」という用語について詳しくお話しします。

半減期というのは「お薬の血中濃度が半分になるまでに要する時間」のことです。

お薬の血中濃度が下がっていけば、当然お薬の効きは弱くなっていきます。つまり半減期と作用時間はある程度相関するという事で、半減期が分かれば作用時間がおおよそですが推測できます。

例えば、下記のような薬物動態を示すお薬があるとします。

半減期イメージ

だいたいのお薬は内服すると、このグラフのようにまず血中濃度がグンと上がり、
それから徐々に落ちていきます。

このお薬は、投与10時間後の血中濃度は「10」ですが、投与20時間後には血中濃度は半分の「5」に下がっています。

血中濃度が半分になるのに要する時間は「10時間」ですので、このお薬の半減期は「10時間」です。

そして半減期が10時間ということは「だいたい10時間くらい効くお薬」なんだと分かります。

正確に言えば、半減期と作用時間は完全に一致するわけではありません。

実際は、お薬を飲むとまずは血中濃度は上がり最高血中濃度に到達してそれから下がっていきますので、厳密に言えば最高濃度に到達するまでの時間も加味しなければいけないでしょう。

もっと言えば、すべての人が血中濃度が半分になったら薬効を感じなくなるとは言えません。血中濃度がどれくらい下がれば薬効を感じなくなるかは人それぞれでしょう。半分の人もいれば、それ以上・それ以下の方もいます。

更に個々人の体質や代謝能力まで考え出すとキリがなく、そうなると作用時間を数値化することは不可能です。

でも「どれくらいの効くかは、人それぞれですから分かりません」では話にならないので、
ひとつの目安として、半減期を使用しているのです。

細かいことを考え出せばキリがありませんが、あまり難しく考えずざっくりと「だいたい半減期が長いお薬は作用時間も長い」と考える事が出来ます。

このように半減期はあくまでも目安であり、個人差があります。半減期を「作用時間を表す絶対的な数値」だと誤解しないようにしましょう。