レキソタンはベンゾジアゼピン系に分類されるお薬です。
ベンゾジアゼピン系には依存性があることが知られており、レキソタンにも依存性があります。
依存は注意すべき副作用ではありますが、レキソタンを飲めば必ず依存になってしまうわけではありません。使い方さえ間違えなければ、過度に恐れる必要はないのです。
ここではレキソタンの依存性について、また依存にならないために気を付けることについて説明します。
1.レキソタンの依存のなりやすさ
レキソタンをはじめとしたベンゾジアゼピン系は、全て依存性があることが知られています。レキソタンにも依存性は認め、その多さはベンゾジアゼピン系の中で「やや多め」になります。
依存というのは、その物質(ここではレキソタンのこと)が無いと落ち着かなくなってしまい、常にその物質を求めてしまう状態です。
アルコール依存であれば、アルコールが無いといても立ってもいられなくなる、ゲーム依存だったら、ゲームをしていないと落ち着かずにゲームが手放せなくなってしまう、このような状態のことです。
レキソタンの依存とは、レキソタンに頼り切ってしまい、常に手放せなくなってしまうことです。
ベンゾジアゼピン系は全て依存を起こす可能性がありますが、その生じやすさは、
- 効果が強いほど生じやすい
- 半減期(=お薬の作用時間の目安)が短いほど生じやすい
- 服薬期間が長いほど生じやすい
- 服薬している量が多いほど生じやすい
事が分かっています。
効果が強いと「効いている!」という感覚が得られやすいためつい頼ってしまいやすく、依存も生じやすくなります。
半減期が短いとお薬がすぐに身体から抜けてしまうので、何度も服薬する事につながり、これもまた依存しやすい原因になります。
また飲んでいる期間・量が多いほど身体がレキソタンに慣れきってしまうため、依存になりやすいと考えられています。
レキソタンは、半減期は約20時間と長めではあるのですが、効果が強力であり、また即効性があります。依存形成という面からみるとこれはデメリットで、しっかりと不安を取ってくれるし、困った時にすぐに効いてくれるため、ついつい頼ってしまいやすいお薬になります。
そのため、依存性の強さとしては「やや強い」お薬になり、依存しやすいお薬に該当します。
依存が生じないために、服薬期間や服薬量を適宜見直しながら、漫然と飲み続けないように気を付けて使っていく必要があります。
2.依存にならないために気を付ける事
アルコール依存の方が、アルコールをやめるのはかなり大変です。何とか一度やめても、多くの方は耐えきれずにしばらく経つとまたアルコールを飲んでしまいます。
ここからも分かるように、一度依存になってしまうとそこから抜け出すのはかなりの労力を要します。
そのため、依存になってから焦るのではなく、「依存にならないように注意する」という予防が何よりも大切になります。
では依存にならないためには、どんなことに気を付ければいいでしょうか。
先ほど、依存になりやすい特徴をお話ししました。
復習すると、
- 効果が強いほど生じやすい
- 半減期(=くすりの作用時間の目安)が短いほど生じやすい
- 服薬期間が長いほど生じやすい
- 服薬している量が多いほど生じやすい
でしたね。
これと反対のことを意識すれば、依存は生じにくくなるという事です。
つまり、
- 効果が弱い抗不安薬を選択する
- 半減期が長い抗不安薬を選択する
- 服薬期間はなるべく短くなるようにする
- 服薬量をなるべく少なくなるようにする
ということです。
ひとつずつ、詳しく説明していきます。
Ⅰ.効果が弱い抗不安薬を選択する
抗不安薬の中で、極力弱いものを選ぶことは安全性の上では大切です。
仮にあなたの不安が数値で表せるとして「5」であったとして、「10」の強さがある抗不安薬を服薬していたとしたら、それは強すぎになります。
この場合は、「5」の強さの抗不安薬で充分ですよね。
もちろん、弱めすぎる必要はありません。「5」の強さの不安があるのに、「2」の強さしかない抗不安薬を使っていたら症状が取れません。これでは苦しいですし症状が取れないから病気もいつまでも治りません。
この場合はもちろん強めて構いませんが、必要以上に強いお薬を使うのは良くありません。自分の不安と同程度の抗不安薬を選択する事は大切です。
一般的にレキソタンの抗不安作用は強力です。強い不安感がある時に、レキソタンでしっかりと不安を取ってあげるのは意味のある事ですが、不安が軽くなってきているのに、いつまでも強いお薬を漫然と続けるのは良くありません。
主治医と相談しながら定期的に「弱い抗不安薬に切り替えられないか」と検討してみることは依存を生じさせないために大切です。
Ⅱ.半減期が長い抗不安薬を選択する
依存形成という面でみれば、半減期の長いお薬の方が依存になりにくいようです。
半減期というのは、そのお薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間のことです。身体から早く抜けるお薬の方が作用時間が短いわけですから、半減期はそのお薬の作用時間を知る1つの目安になります。
一般的に半減期が短いお薬というのは、すぐに効き、すぐに効果がなくなります。すぐ効くため「効いてきた!」という実感を得やすいので、つい頼ってしまいやすくもあります。また、すぐに効果が消えてしまうため、何度も服薬をしてしまいがちです。
反対に半減期の長いお薬は、ゆっくり効いてきて、ゆっくり身体から抜けます。じわじわ効いてくるため「効きがよく分からない」というのがデメリットですが、依存にはなりにくいというメリットがあるのです。
レキソタンの半減期は20時間と、抗不安薬の中ではやや長めです。
短くはないため、無理してより作用時間の長いものに変える必要はありませんが、「依存を出来る限り起こしたくない」と考えるのであれば、より長時間作用型のお薬に変えてみることは有効な選択肢です。
ただし長く効くお薬は、依存面でいえば良いのですが、眠気やだるさが一日中続いたりと、長く効くことによる問題もありますので、お薬を変える際は主治医とよく相談してから判断してください。
Ⅲ.服薬期間はなるべく短くなるようにする
抗不安薬は漫然と飲み続けてはいけません。
ベンゾジアゼピン系は1か月で依存性が形成される、と指摘する専門家もいます。もちろん種類や量によるので一概には言えませんが、長期間飲めば依存形成が生じやすくなるのは間違いありません。
病気の症状がつらく、抗不安薬が必要だと判断される期間に服薬をするのは問題ありません。この期間は、病気の症状を取ってあげるメリットと依存形成のデメリットを天秤にかけてメリットの方が大きいと判断されれば、服薬はすべきです。
しかし、良くなっているのにいつまでも「なんとなく」「やめるのも不安だから」と服薬を続けるのは注意です。
原則として抗不安薬は、ずっと飲むものではありません。症状がつらい間だけ服薬する「一時的な」ものだという認識を持ちましょう。
症状や病気が改善してきたら定期的に主治医と「量を減らせないだろうか?」と検討してみてください。
Ⅳ.服薬量をなるべく少なくなるようにする
強い不安感があると、ついつい「不安を取りたい!」とたくさんのお薬を飲みたくなります。しかし、服薬量が多ければそれだけ依存になりやすくなります。
服薬量は、必ず主治医の先生が指定した量を守ってください。医師は依存性のリスクも常に念頭に置きながら服薬量を決めています。それを勝手に2倍飲んだり3倍飲んだりすれば、急速に依存が形成されてしまいます。
また、症状や病気が改善してきたら定期的に「抗不安薬の量を減らせないだろうか?」と検討してみてください。
3.依存を過剰に怖がるのも問題
抗不安薬や睡眠薬の依存は社会問題にもなっており、しばしば新聞などでも取り上げられています。
そのためか、最近は依存性を過剰に怖がって、「依存が怖いから精神科のお薬は一切飲みたくありません!」という方もいらっしゃいます。
もちろんお薬を飲まないで治るのであれば、飲まないに越したことはありません。しかし、診察した医師が「お薬を使った方が良い」と判断する状態なのであれば服薬は前向きに検討してみてください。
服薬した方が総合的なメリットは高い、と判断したから主治医はそのように言っているのです。
精神科のお薬を飲むと絶対に依存になると怖がる人がいますが、そんなことはありません。
むしろ医師の指示通りの量を、決められた期間だけ服薬していただけであれば、依存にならない人の方が圧倒的に多いのです。
依存になるのは、医師の指示を守らずに
- 勝手に量を調節してしまう
- 医師が減薬を勧めても、「くすりをやめるのが不安」と現状維持を希望する
- 定期的に来院せず、服薬も飲んだり飲まなかったりバラバラ
などの方がほとんどです。
依存形成を起こす身近な物質にアルコールがありますが、「アルコール依存になるのが怖いから、飲み会は欠席します!」という人はいないと思います。
それは、アルコールは依存にはなる可能性がある物質だけど、適度な飲酒を心掛けていれば、依存になることなどないからです。
そしてほとんどの人は節度を持った飲酒が出来ており、依存になりません。
アルコール依存になるのは、
- 度を越した飲酒をし続ける人
- 周囲や医師が「飲酒を控えて」とアドバイスしても聞かない人
ですよね。
アルコールだって、抗不安薬だってその点は同じです。
アルコールは依存なんて気にせず飲むのに、抗不安薬になると「依存になる!」と過剰に怖がるのは、私たち専門家から見るとなんだか不思議に感じます。
もちろんお薬を飲まないに越したことはないのですが、必要がある期間はしっかりと内服することも大切です。