セニラン錠はどんな効果があるのか【医師が教える抗不安薬のすべて】

セニラン錠は「レキソタン」という抗不安薬のジェネリック医薬品(後発品)です。

抗不安薬は文字通り、不安感を和らげるおくすりで、「安定剤」「精神安定剤」とも呼ばれます。

レキソタンのジェネリックであるセニランは、その効果もレキソタンと全く同じです。

セニランは強い抗不安作用を持ちますが、強く効くため、副作用には注意する必要があります。

「セニラン(レキソタン)が一番良く効きます」と評価する患者さんも多く、頼れるおくすりなのですが、副作用が少なくないので注意しながら使う必要があります。

ここではセニラン錠の効果や特徴、また他の抗不安薬との比較などを紹介していきます。

【注意】
***レキソタンと同じ効果であるため、記事の内容も「レキソタンの効果・効き目」と同じです***

1.セニランの総評

まずはセニランの全体的な特徴を紹介します。

【効果】

  • 強い抗不安作用
  • 中等度の筋弛緩作用
  • 中等度の催眠作用
  • 中等度の抗けいれん作用

現在使われている抗不安薬は、ほとんどが「ベンゾジアゼピン系」と呼ばれるものであり、
セニランもそのひとつです。

ベンゾジアゼピン系には、不安を取る作用以外にも、
筋弛緩作用(筋肉の緊張をほぐす)、催眠作用(眠くする)、抗けいれん作用(けいれんを抑える)
があります。

それぞれの強さは抗不安薬によって異なりますが、セニランはと言うと
上記のようになります。
(個人差も大きいため、あくまで目安です)

セニランの最大の特徴は、その強力な抗不安作用です。
セニランが抗不安薬の中で最強だと評価する医師・患者さんも少なくありません。

しかし効果が強い分、筋弛緩作用や催眠作用も出やすいため、
ふらつきや転倒などの副作用には注意しましょう。

【良い特徴】

  • 強力な抗不安作用を持つ
  • 筋弛緩作用もあるため、肩こり・筋緊張性の頭痛にも効く

【悪い特徴】

  • 眠気やふらつきが強め
  • 耐性・依存形成もやや多め

良く効くけど副作用も少なくない。
ざっくりとした表現ですが、これがセニランの特徴です。

2.セニランの強さ -他剤との比較-

抗不安薬には、たくさんの種類があります。

それぞれ強さや作用時間が異なるため、患者さんの状態によって、
どの抗不安薬を処方するかが異なってきます。

抗不安薬の中でセニランは、強力な抗不安作用(不安を和らげる作用)を持ちます。

主な抗不安薬の「抗不安作用」の強さを比較すると下図のようになります。

抗不安薬作用時間(半減期)抗不安作用
グランダキシン短い(1時間未満)
リーゼ短い(約6時間)
デパス短い(約6時間)+++
ソラナックス/コンスタン普通(約14時間)++
ワイパックス普通(約12時間)+++
レキソタン/セニラン普通(約20時間)+++
セパゾン普通(11-21時間)++
セレナール長い(約56時間)
バランス/コントール長い(10-24時間)
セルシン/ホリゾン長い(約50時間)++
リボトリール/ランドセン長い(約27時間)+++
メイラックス非常に長い(60-200時間)++
レスタス非常に長い(約190時間)+++

このように、セニランの抗不安作用は強い部類に入ります。

3.セニランを使う疾患は?

セニランの適応疾患を添付文書を見ると、

1. 神経症における不安・緊張・抑うつ及び強迫・恐怖
2. うつ病における不安・緊張
3. 心身症(高血圧症、消化器疾患、自律神経失調症)における身体症候並びに
不安・緊張・抑うつ及び睡眠障害
4. 麻酔前投薬

と書かれています。

添付文書には難しく書かれていますが、ざっくりいうと、
様々な不安や恐怖・強迫を和らげるために使用するという事です。

具体的には、不安感が強く、それが正常なレベルを超えていて様々な支障が出ている場合です。
また、恐怖や強迫が強く、同様に様々な支障が出ている場合にも使われます。
(強迫:自分でもおかしい事だと分かっているのに、特定の観念や行為にとらわれてしまう事)

ちなみに正常な人にでも不安はありますが、そういった「正常範囲内の不安」に用いる事は
推奨されていません。

正常範囲内の不安にも抗不安薬は効果はあります。確かに不安は軽減するでしょう。
しかし、健常者に使ってしまうと副作用(依存など)のデメリットの方が大きいため、
総合的に考えると使用すべきではないのです。

不安感があり、医師が「抗不安薬による治療が必要なレベルである」と判断された場合は
セニランなどの抗不安薬が使われます。

疾患で言えば、パニック障害や社交不安障害などの不安障害圏、強迫性障害などの疾患には
用いる機会は多いです。
また、うつ病や統合失調症などで不安が強い場合も補助的に使用されることがあります。

4.セニランが向いている人は?

セニランは、「強力な抗不安作用」が特徴です。
しかしその分、副作用も強く出てしまう可能性のあるおくすりです。

そのため、「不安感がとても強く、他の抗不安薬では不十分な人」に良いのではないでしょうか。

一番初めに用いる抗不安薬、というよりは、
他の抗不安薬を使っても効きが不十分な時、「もう少し強いものを」という時に
候補に挙がる抗不安薬です。

一方で催眠作用による眠気、筋弛緩作用によるふらつきや転倒の可能性があるため、
特に高齢者に使う際には、細心の注意を払う必要があります。
なるべく低用量からはじめましょう。

ただし、これはあくまでも一般論であり、例外も多々あります。
医師が診察した結果、「これは最初からセニランを用いた方がよい」というケースもあるし、
高齢者にセニランを使わざるを得ない事もあります。

細かいところは、主治医とよく相談して決めてください。

また、セニランは即効性に優れるという特徴があります。
飲んでから血中濃度が最大になるまで理論上は約1時間であり、これは抗不安薬の中で
かなり早い方です。

参考までに、よく使われる抗不安薬の最高血中濃度到達時間をみてみると、

  • ワイパックス:2時間
  • ソラナックス:2時間
  • セルシン  :1時間
  • デパス   :3時間

となっており、セニランが即効性に特に優れるのが分かると思います。
臨床的な体感としては内服後15-20分ほどで効果を感じ始めることが多いようです。

そのため不安なイベントや緊張するイベントの前に飲むといった頓服的な使い方もできます。

ただし半減期(おくすりの作用時間の目安)が20時間と長めであるため、注意が必要です。
即効性はあるんだけど、その後長く効き続けてしまうため、頓服として使う場合は、
本当にセニランで合っているのか、主治医とよく相談して決めましょう。

5.セニランの作用機序

セニランは「ベンゾジアゼピン系」という種類のおくすりです。
セニランに限らず、ほとんどの抗不安薬はベンゾジアゼピン系に属します。

ベンゾジアゼピン系は、GABA受容体という部位に作用することで、
先ほど説明した抗不安効果、催眠効果、筋弛緩効果、抗けいれん効果を発揮します。

ベンゾジアゼピン系のうち、抗不安効果が特に強いものが「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」と呼ばれます。
セニランもそのひとつです。

セニランは、先ほども書きましたが、

  • 強い抗不安効作用
  • 中等度の筋弛緩作用
  • 中等度の催眠作用
  • 中等度の抗けいれん作用

を持っています。

ちなみに睡眠薬にもベンゾジアゼピン系がありますが、
これはベンゾジアゼピン系のうち、催眠効果が特に強いもののことです。

ベンゾジアゼピン系は、基本的には先に書いた4つの効果が全てあります。

ただ、それぞれの強さはおくすりによって違いがあり、
抗不安効果は強いけど、抗けいれん効果は弱いベンゾジアゼピン系もあれば、
抗不安効果は弱いけど、催眠効果が強いベンゾジアゼピン系もあります。

(注:ページ上部の画像はイメージ画像であり、実際のセニラン錠とは異なることをご了承下さい)