双極性障害をチェックする方法と診断基準について

双極性障害のチェック

双極性障害は、私たち精神科医にとっても診断が難しいと感じる疾患です。

双極性障害は、「躁状態」と「うつ状態」という全く正反対の症状、そして「寛解期」という一見すると全く正常に見える期間が存在します。この症状の移り変わりが診断を難しくさせます。

例えば双極性障害のうつ状態は、うつ病と全く見分けが付かないことがほとんどです。この場合、このうつ状態が双極性障害のうつ状態なのかうつ病のうつ状態なのか、最初は完全に見分けることは出来ず、双極性障害であったとしても「うつ病」と暫定的に診断してしまうことは少なくありません。

双極性障害を正しく診断するためには、何よりも重要なチェックポイントがあります。それを意識し、目の前の症状だけにとらわれず、幅広い視野で病気全体をとらえることが正しい診断をするために非常に大切なことです。

今日は双極性障害を診断・チェックするためのポイントについて紹介したいと思います。

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1.自分が双極性障害かどうかチェックするには?

「自分が双極性障害なのかどうか知りたい」
「自分でかんたんにチェックできるようなツールはないのか」

このように考えている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし双極性障害は診断はとても難しい疾患であるため、一般の方が独断で判断することはあまりオススメできません。

そのため、「自分が双極性障害かどうか知りたい」という質問に対して一番適切な回答は、「心配であれば、精神科を一度受診して精神科医の見解を聞きましょう」になり、これが一番精度の高いチェック方法になります。もし自分以外の家族に対して「双極性障害なのではないか?」と心配なのであれば病院に連絡し、まずは家族だけでも相談に行っても良いでしょう。

なぜならば双極性障害は、専門家の精神科医であっても診断が非常に難しい疾患だからです。それを一般の方が簡単にチェックして、正確に判断できるかというと無理があります。

まず双極性障害にはいくつかの病相がありますが、それぞれによって症状が全く異なってきます。典型的な病相としては、「躁状態」「うつ状態」「寛解期(ほぼ無症状)」といった病相がありますが、それ以外にも「混合状態」といった病相もあります。

双極性障害は、これらの病相を総合的に見極めて診断するものです。今ある1つの病相だけをみて診断することは出来ません。

また双極性障害は、それぞれの病相に対して症状がよく似ている別の疾患があります。そのため、1つの病相しかみていないと、全体像を見誤り、別の疾患だと判断してしまう事があります。

例えば「双極性障害のうつ状態」と「うつ病のうつ状態」は症状が非常によく似ています。これを「うつ状態」という1つの病相しかみていないと、本当は双極性障害のうつ状態なのに、「うつ病だ!」と判断してしまい、適切な治療が導入できなくなります。

また「双極性障害の躁状態」と「統合失調症の幻覚・妄想状態」も症状によっては見分けがつきにくい事があります。それ以外にも双極性障害の気分の波と、パーソナリティ障害の気分の波の見分けがつきにくいことも珍しくありませんし、自閉症スペクトラム障害(アスペルガー症候群など)の気分の波と見分けがつきにくいこともあります。

更に困ったことに双極性障害は他の精神疾患を合併しやすい疾患です。不安障害などの疾患の他、パーソナリティ障害やAD/HD(注意欠陥性多動性障害)などの合併も多いことが知られています。他の疾患を合併していた場合、更に正確な判断は難しくなりますから、やはり専門家の意見を聞くのが一番確実になります。

どんな病気でもしっかりと治療するためには、まずは適切な診断が下され、適切な治療が行われることが重要です。

双極性障害はそれが特に難しい疾患であるため、独自にチェックして自己判断するのではなく、最初から専門家と相談しながら診断や治療方針を考えていった方が良いのです。

2.双極性障害かをチェックする重要なポイント

とはいっても、まずは大体でもいいから双極性障害の可能性があるのか知りたい、という方もいらっしゃると思います。

そのため、上記の「双極性障害は特に専門家に判断してもらう事が重要である」という前提を念頭に置いてもらった上で、双極性障害をチェックする方法についてお話します。

双極性障害を疑う一番重要なポイントは「経過」にあります。

現在ある1つの病相だけで判断しようとすると間違えます。今までの自分の気分の波の経過を思い出し、それが双極性障害に当てはまるかを見返してみることが大切です。そのため双極性障害は今の症状だけをみて、ワンポイントの判断で診断をすることはできません。

例えば、今回はじめて気分の大きな不調が発症しうつ状態となっている方は、「うつ病かもしれないし、双極性障害のうつ状態なのかもしれない」という判断になります。この時点でどちらかなのかを100%の精度で判断することはできません。その後、今までの経過やこれからの経過を慎重に判断し、うつ病なのか双極性障害なのかを判断しないといけません。

よく「最初はうつ病だと言われたけど、途中から双極性障害が診断が変わった」という事がありますが、これは双極性障害という疾患の特性上仕方のないことで「誤診」とは異なります。うつ状態から始まった双極性障害は、躁状態が出現しなければ、双極性障害なのかうつ病なのかの判定は出来ないのです。

うつ病なのか、双極性障害のうつ状態なのかの判断が付かなくても、私たちは「うつ病・うつ状態」と暫定的な診断を付けることはあります。これは「職場に診断書を出さないといけない」などの事情がある場合は、何か診断名を付けないといけないため、現在もっとも疑われる診断名を暫定的に書く他ありません。しかしそうは書いても、「双極性障害のうつ状態かもしれない」とは念頭に置き、診療は続けます。

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3.双極性障害の診断基準でチェックする

双極性障害かどうかをチェックするためには、双極性障害の診断基準に当てはまっているのかを確認する必要があります。

国際的な精神疾患の診断基準の1つである、DSM-5の双極性障害の診断基準を紹介します。

DSM-5では

  • 躁病エピソード
  • 軽躁病エピソード
  • 抑うつエピソード

の3つがあります。診断基準的に言えば、

  • 躁病エピソードを満たせば「双極Ⅰ型障害」
  • 軽躁病エピソードと抑うつエピソードを満たせば「双極Ⅱ型障害」

と診断されます。

ではそれぞれのエピソードの診断基準を見てみましょう。

Ⅰ.躁病エピソード

ではまずは躁病エピソードの診断基準をみてみましょう。各診断項目を紹介し、説明も加えます。

A.気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的または易怒的となる。加えて、異常にかつ持続的に亢進した目標志向性の活動または活力がある。このような普段とは異なる期間が、少なくとも1週間、ほぼ毎日、1日の大半において持続する(入院治療が必要な場合はいかなる期間でもよい)。

躁状態は気分の異常な高揚が認められます。これは「気分高揚」「爽快気分」などと表されます。また怒りっぽくなるという気分の上がり方をすることもあります。短時間の気分の高揚であれば正常な心因反応である可能性もありますが、躁病エピソードではこのような気分が持続的に認められるという事が1週間以上続きます。

B. 気分が障害され、活動または活力が亢進した期間中、以下の症状のうち3つ(またはそれ以上)(気分が易怒性のみの場合は4つ)が有意の差をもつほどに示され、普段の行動とは明らかに異なった変化を象徴している。

(1)自尊心の肥大、または誇大
(2)睡眠欲求の減少(例:3時間眠っただけで十分な休息がとれたと感じる)
(3)普段よりも多弁であるか、しゃべり続けようとする切迫感
(4)観念奔逸、またはいくつもの考えがせめぎ合っているといった主観的な体験
(5)注意散漫(すなわち、注意があまりにも容易に、重要でないまたは関係のない外的刺激によって他に転じる)が報告される、または観察される
(6)目標指向性の活動(社会的、職場または学校内、性的のいずれか)の増加、または精神運動焦燥(すなわち、無意味な非目標指向性の活動)
(7)困った結果につながる可能性が高い活動に熱中すること(例:制御のきかない買いあさり、性的無分別、またはばかけた事業への投資などに専念すること)

躁状態でよく認められる症状が出現しているかを確認する項目です。上記の多い症状が3つ以上(易怒性のみの場合は4つ以上)ある場合、この項目を満たすことになります。

C.この気分の障害は、社会的または職業的機能に著しい障害を引き起こしている、あるいは自分自身または他人に害を及ぼすことを防ぐため入院が必要であるほど重篤である。またはまたは精神病性の特徴を伴う。

ただ気分が高くなっているだけで誰も困っていないのであれば問題ありません。躁病エピソードと診断するためには、「本人あるいは周囲の生活に著しい支障が生じている」という事が重要です。

D.本エピソードは、物質(例: 乱用薬物、医薬品、または他の治療)の生理学的作用、または他の医学的疾患によるものではない。
注: 抗うつ治療(例:医薬品、電気けいれん療法)の間に生じた完全な躁病エピソードが、それらの治療により生じる生理学的作用を超えて十分な症候群に達してそれが続く場合は、躁病エピソード、つまり双極Ⅰ型障害の診断とするのがふさわしいとする証拠が存在する。

他の原因(お薬の乱用や他の疾患など)で生じたものではない、という確認項目です。

ただし抗うつ剤などで躁状態が誘発された場合、その治療を中止したにも関わらず(例えば抗うつ剤を中止した、など)、想定されるより長い期間躁状態が続いた場合などは躁病エピソードとすることもあります。

Ⅱ.軽躁病エピソード

次に軽躁病エピソードの診断基準を紹介します。

A.気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的または易怒的となる。加えて、異常にかつ持続的に亢進した活動または活力がある、普段とは異なる期間が、少なくとも4日間、ほぼ毎日、1日の大半において持続する。

軽躁状態でも、気分の異常な高揚が認められます。躁状態よりも期間は短くても良く、このような気分の高揚をを4日以上、ほぼ毎日いつでも認めます。

B. 気分が障害され、かつ活動および活力が亢進した期間中、以下の症状のうち3つ(またはそれ以上)(気分が易怒性のみの場合は4つ)が持続しており、普段の行動とは明らかに異なった変化を示しており、それらは有意の差をもつほどに示されている。

(1)自尊心の肥大、または誇大
(2)睡眠欲求の減少(例:3時間眠っただけで十分な休息がとれたと感じる)
(3)普段よりも多弁であるか、しゃべり続けようとする切迫感
(4)観念奔逸、またはいくつもの考えがせめぎ合っているといった主観的な体験
(5)注意散漫(すなわち、注意があまりにも容易に、重要でないまたは関係のない外的刺激によって他に転じる)が報告される、または観察される
(6)目標指向性の活動(社会的、職場または学校内、性的のいずれか)の増加、または精神運動焦燥(すなわち、無意味な非目標指向性の活動)
(7)困った結果につながる可能性が高い活動に熱中すること(例:制御のきかない買いあさり、性的無分別、またはばかけた事業への投資などに専念すること)

躁状態で多く見られる症状が出現しているかを確認する項目です。躁状態と軽躁状態では、程度の違いはありますが、認められる症状の種類は同様になります。出現頻度の多い症状が3つ以上(易怒性のみの場合は4つ以上)ある場合、この項目を満たすことになります。

C.本エピソード中は、症状のないときのその人固有のものではないような、疑う余地のない機能の変化と関連する。

軽躁状態は、一見すると「ちょっと気分が良いだけ」という状態にも見えてしまいます。正常内の気分の高揚と軽躁状態の違いは、「その人固有の気分の波とはやはり違う」という点です。これは判断が非常に難しいところですが、軽躁状態は「病気」によって生じている症状ですので、その人本来の正常範囲内の気分の波とは本質的に異なるものなのです。

D.気分の障害や機能の変化は、他者から観察可能である。

正常内の気分の高揚と軽躁状態を見分けるもう1つのポイントとして、明らかに他者から見ても軽躁の症状が観察できるという点も挙げられます。正常内の気分の高揚でも他者から観察可能なこともありますので、これで100%鑑別できるわけではありませんが、軽躁状態は病気によって生じている症状であるため、客観的にみても観察されやすいという特徴があります。

E.本エピソードは、社会的または職業的機能に著しい障害を引き起こしたり、または入院を必要とするほど重篤ではない。もし精神病性の特徴を伴えば、定義上、そのエピソードは躁病エピソードとなる。

躁病エピソードと診断するためには、「本人あるいは周囲の生活に著しい支障が生じている」という事が必要でしたが、軽躁状態は、著しい支障までは至っていないというのも鑑別点になります。まったく支障が生じていないわけではなく、ある程度の支障は生じているのですが「著しい支障」とまでは言えないのが軽躁状態です。

生活への支障が軽度であっても、精神病性の症状(幻覚や妄想など)が出現している場合は、軽躁状態ではなく躁状態になります。

F.本エピソードは、物質(例: 乱用薬物、医薬品、または他の治療)の生理学的作用によるものではない。
注: 抗うつ治療(例:医薬品、電気けいれん療法)の間に生じた完全な軽躁病エピソードが、それらの治療により生じる生理学的作用を超えて十分な症候群に達して、それが続く場合は、軽躁病エピソードと診断するのがふさわしいとする証拠が存在する。しかしながら、1つまたは2つの症状(特に、抗うつ薬使用後の、易怒性、いらいら、または焦燥感)だけでは軽躁病エピソードとするには不十分であり、双極性の素因を示唆するには不十分であるという点に注意を払う必要がある。

他の原因(お薬の乱用や他の疾患など)で生じたものではない、という確認項目です。

ただし抗うつ剤などで軽躁状態が誘発された場合、その治療を中止したにも関わらず(例えば抗うつ剤を中止した、など)、想定されるより長い期間軽躁状態が続いた場合などは軽躁病エピソードとすることもあります。軽躁状態は近年過剰診断されやすい傾向があるため、抗うつ剤によって多少の軽躁症状が出ただけで安易に軽躁状態と判断しないようには注意が必要です。

軽躁病エピソードは軽躁状態を診断するエピソードになります。

現在あるいは過去のこのような状態があり、かつ下記の抑うつエピソードも現在あるいは過去に認めた場合、双極Ⅱ型障害の診断となります。

Ⅲ.抑うつエピソード

最後の抑うつエピソードについて紹介します。

これはうつ病の診断基準とほぼ同様になります。

A. 以下の症状のうち 5 つ (またはそれ以上) が同じの2週間の間に存在し、病前 の機能からの変化を起している。これらの症状のうち少なくとも1つは、(1)抑うつ気分、または(2)興味または喜びの喪失である(注: 明らかに他の医学的疾患に起因する症状は含まない)。

(1)その人自身の言葉 (例:悲しみ、空虚感、または絶望感を感じる)か、他者の観察(例:涙を流しているように見える)によって示される、ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分。(注:子供や青年では易怒的な気分もありうる)

(2)ほとんど1日中、ほとんど毎日の、すべて、またはほとんどすべての活動における興味または喜びの著しい減退(その人の説明、または他者の観察によって 示される)。

(3)食事療法をしていないのに、有意の体重減少、または体重増加 (例:1 ヶ月で体重の5%以上の変化)、またはほとんど毎日の、食欲の減退または 増加。(注:子供の場合、期待される体重増加が見られないことも考慮せよ)

(4)ほとんど毎日の不眠または過眠。

(5)ほとんど毎日の精神運動焦燥または制止(他者によって観察可能で、ただ単に落ち着きがな いとか、のろくなったという主観的感覚ではないもの)

(6)ほとんど毎日の疲労感、または気力の減退。

(7)ほとんど毎日の無価値感、または過剰であるか不適切な罪責感 (妄想的であることもある。単に自分をとがめること、または病気になったことに対する罪悪感ではない

(8)思考力や集中力の減退、または決断困難がほとんど毎日認められる。(その人自身の言葉による、または他者によって観察される)

(9)死についての反復思考(死の恐怖だけではない)。特別な計画はないが反復的な自殺念慮、または自殺企図、または自殺するためのはっきりとした計画。

うつ病の診断と同様の診断項目にになります。

  • 抑うつ気分
  • 興味と喜びの喪失

のどちらか1つを認め、

  • 食欲低下(あるいは増加)、不眠(あるいは過眠)、精神運動制止(あるいは焦り)、疲労感、無価値観、罪責感、集中力低下、気力低下、死についての考え

などのうち一定数以上の症状を認めます。

B.その症状は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

抑うつエピソードも、ただ気分が低くなっているだけで誰も困っていないのであれば問題ありません。抑うつエピソードと診断するためには、「本人あるいは周囲の生活に支障が生じている」という事が重要です。

C.そのエピソードは物質の生理学的作用、または他の医学的疾患のよるものではない。

他の疾患やお薬の副作用で生じている抑うつではない、という事の確認です。

4.顕著な躁状態があれば診断は比較的容易

双極性障害の診断が比較的容易なケースが「躁状態」から発症するタイプの双極性障害で、これは比較的診断は容易です。

診断基準上も躁状態を認めればそれだけで双極Ⅰ型障害と診断できますし、また臨床上も患者さんの気分が明らかに異常に高揚していれば「これは双極性障害の躁状態だろう」と判断しやすいのです。

しかし双極性障害のうち、躁状態から発症するのは約1/3ほどという報告もあり、このケースがそこまで多いわけではありません。

5.双極性障害の診断が難しい4つのケース

双極性障害の診断が難渋するケースは次のようなケースがあります。

Ⅰ.軽躁状態とうつ状態を繰り返す「双極性障害Ⅱ型」

双極Ⅱ型障害は、「反復性うつ病」との鑑別が非常に難しい疾患です。

というのも、軽躁状態と「正常内の気分の高揚」の区別というのが非常に難しいからです。

双極性障害で、「うつ状態」⇒「軽躁状態」⇒「うつ状態」⇒・・・を繰り返しているのと、反復性うつ病で「うつ状態」⇒「正常」⇒「うつ状態」⇒・・・・と繰り返しているのは区別がなかなかつきません。

そもそも反復性うつ病において、うつ状態から正常に回復した時、抑うつ気分から解放されたのが嬉しくて少し気分が上がってしまうという事は、普通の心因反応として十分に考えられることです。これを軽躁状態とは言えません。

うつ病と双極性障害のうつ状態の鑑別として、

  • 中核症状(抑うつ気分、興味と喜びの喪失、疲労感)のいずれかがない(うつ病は全て揃っていることが多い)
  • 過眠・食欲亢進がある(うつ病は不眠・食欲減退が多い)
  • 気分反応性がある(うつ病は落ち込みのみである事が多い)
  • 身体的な訴えが少ない(うつ病は痛み・しびれなど身体的な訴えも多い)
  • 精神病症状(幻覚・妄想など)が多い(うつ病は少ない)
  • 双極性障害の家族歴がある
  • うつ病を何度も繰り返している
  • うつ病の発症が早い(25歳未満)
  • 産後うつ病での発症

などは双極性障害のうつ病の可能性があるという報告があるため、これらを1つの参考にすることもあります。

また治療中、

  • 抗うつ剤によって躁状態に転じやすい(躁転)
  • 抗うつ剤の効きが途中から悪くなる

なども双極性障害を疑う要素になるという指摘もありますので、これを鑑別の参考にすることもあります。

しかしこれらの報告は常に当てはまるものではないため、専門家が入念に診察して判断する他ありません。

Ⅱ.うつ状態から始まる双極性障害

双極性障害は、躁状態とうつ状態を繰り返しますが、一番最初に生じる気分の波は躁状態とうつ状態どちらなのでしょうか。これはどちらの事もあります。しかし「うつ状態」から始まることの方が多いという報告が多く、おおよそ60%ほどの方はうつ状態から発症します。

うつ状態から始まってしまった場合、最初の段階では「これは双極性障害のうつ状態だろう」と特定することはまず困難です。

前述の双極性の要素がある場合は、「双極性かもしれない」と念頭におきながらうつ状態の治療を行い、双極性障害なのかどうかはその後の経過から判断するしかありません。

Ⅲ.幻覚・妄想などの精神病症状を伴う躁状態から始まる双極性障害

躁状態から始まる双極性障害であっても、幻覚や妄想を伴うような双極性障害であった場合は、統合失調症との鑑別が困難なこともあります。

両者の鑑別点の1つとして、一般的に統合失調症の妄想は「一次妄想」であり、双極性障害の妄想は「二次妄想」であることが多いと言われています。

一次妄想は、「なんでそういった確信に至ったのか、常識的な考えでは理解できない」という妄想で、主に統合失調症で認められる妄想はこのタイプになります。

例えば、いきなり

・「自分は悪の組織に狙われている」
・「電磁波で攻撃されている」
・「自分は〇〇の生まれ変わりなのだ」

と患者さんが訴えた場合、いきなりこんな事を言われたら周囲は「なんでそんな風に考えているのか、まったく理解できない」と困惑してしまいます。これが一次妄想です。

対して二次妄想は、「状況からして、なぜそのような確信に至ったのかは理解できる」という妄想です。双極性障害で認める妄想の多くは二次妄想になります。

例えば、双極性障害の方は誇大妄想(自分は何でもできる、という妄想)をいう妄想が出現することがあります。この妄想は「躁状態によって気分が高くなっているから、このように考えてしまうのだ」という事は了解はできます。これが二次妄想です。

しかし著明な幻覚妄想状態になると、一次妄想・二次妄想の区別を付けることが困難になる事も多く、これで100%鑑別が出来るというものではありません。また上記はあくまでも原則であり、統合失調症でも二次妄想が生じることもあるし、双極性障害でも一次妄想が生じることがあります。

この鑑別はやはり専門家である精神科医が入念に診察して判断するしかありません。

Ⅳ.他の疾患を合併している双極Ⅱ型障害

双極性障害は合併症の多い疾患で、中でも双極Ⅱ型障害は合併する精神疾患が多いと言われています。

  • AD/HD(注意欠陥性多動性障害)
  • 不安障害
  • パーソナリティ-障害
  • 自閉症スペクトラム障害

などと多くの疾患を合併する可能性があります。

これらが合併していた場合、診断はより困難になります。

例えば興奮が、AD/HDの多動によって生じているのか、双極性障害によって生じているのか、あるいはその両者なのかなど、これも専門家であっても判断に苦慮することは珍しいことではありません。

焦燥(焦り)を認める場合も、これが軽躁状態によるものなのか、不安障害の不安からきているものなのかの判断が難しくなることもあります。

一般の方が正確に判断することは難しく、やはり専門家に判断してもらうことが一番安全です。

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