アスペルガー症候群にはどんなお薬が用いられるのか?

アスペルガー症候群の薬

アスペルガー症候群は、主に対人関係やコミュニケーションを苦手とする特性であり、自閉症スペクトラム障害に属する概念になります。

アスペルガー症候群の治療には、お薬が用いられることが少なくありません。アスペルガー症候群に対する特効薬はありませんが、アスペルガー症候群の方は「生きずらさ」を抱えて生活している事が多く、そのストレスから様々な精神的不調が出現しやすいため、補助的にお薬が用いられるケースが多いのです。

アスペルガー症候群の方に用いられるお薬にはどのようなものがあるのでしょうか。今日はアスペルガー症候群で使われるお薬について紹介します。

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1.薬物療法は必須ではない

アスペルガー症候群は自閉症スペクトラム障害(発達障害)に属する概念です。その原因は先天性(生まれつき)の要素が大きいと考えられており、基本的に特効薬というものはありません。

そのため、アスペルガー症候群に対しての薬物療法は必須ではありません。むしろ使う必要がないのであれば、なるべくお薬は使わない方が良いでしょう。

しかしアスペルガー症候群の方はその症状から社会の中でストレスを受ける事が多く、その精神的ストレスをによって精神的不調をきたしやすい傾向があります。そのため現状としては、二次的な精神症状の改善のためにお薬を用いることは少なくありません。

アスペルガー症候群に対してお薬を用いる事は間違った事ではありません。しかしお薬は補助的なものに過ぎず、疾患そのものを治すものではないという事はしっかりと理解しておく必要があります。この認識をしっかりと持って投薬を行わないと、お薬の量がどんどんと増えてしまい、お薬による弊害の方が大きくなってしまいます。

アスペルガー症候群の中心的な症状には、「対人関係が苦手」「コミュニケーションが苦手」「相手の立場に立って考えるのが苦手」といったものがあります。これら中核症状に対して、お薬が効果を示すという事はありません。

お薬が効くのは、これらの中核症状が原因で生じる二次的な症状になります。例えば、対人関係がうまくいかなくて、

・イライラや攻撃性、衝動性が高まっている
・落ち込みや不安が強くなっている
・眠れなくなったり、食欲が落ちたりしている

このような場合、これらの二次的な症状に対してお薬は効く可能性はあります。

アスペルガー症候群の方は、「生きずらさ」を抱えながら生活しているため、二次的な精神的不調を起こしやすい傾向があります。一般の方と比べても、うつ病や強迫性障害、不安障害、アルコール依存症などにもかかりやすく、そのためお薬が必要となるケースが多いのは仕方のないところもあります。

しかし大量にお薬を使ってしまうとむしろデメリットの方が大きくなってしまいます。アスペルガー症候群の方にお薬を使う場合は、「お薬で全てを解決しようとしない」「お薬に期待しすぎない」事が大切です。大量投与にならないよう、必要最小限の投与に留めるよう注意しなければいけません。

2.基本は少量投与から

個人差もありますが、アスペルガー症候群の方はお薬が「効きやすい」方が多いようです。

この理由は不明ですが、アスペルガー症候群の症状の1つに「感覚過敏性」があり、これに関連してお薬に対しても「過敏性」があるのかもしれません。

「普通であればちょうどいい処方量なのに効きすぎてしまった」、ということはアスペルガー症候群の方の投薬において、よく経験する事です。個人差もありますが、アスペルガー症候群の方はお薬が効きやすく、また副作用も出現しやすい傾向にあるようです。

そのため、最初はなるべく少量のお薬から開始する事が望ましいと思われます。

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3.未成年に使用する場合は特に慎重に

どんなお薬でもそうですが、お薬は未成年、特に幼児や小児においては、できる限り使わないようにすべきです。

幼児期や小児期は、まだ身体が発達段階にあります。このような時期にお薬を投与してしまい、万が一にも発達に悪影響を与えてしまうという事は出来る限り避けるべきです。

アスペルガー症候群は先天性のものであるため、幼児期より症状を認める事も多く、そのためその時期から投薬が検討されることもあります。未成年にお薬を使わざるを得ないことももちろんありますが、安易に使うべきではありません。

4.アスペルガー症候群で使われるお薬

アスペルガー症候群に対しての特効薬はありません。

そのため、アスペルガー症候群に用いるお薬というのは、アスペルガー症候群の本質的な症状に効くものではなく、二次的な症状に対して効果を発揮します。

本質的な症状というのは、

・社会性の障害(対人関係の障害)
・コミュニケーション能力の障害
・想像力の障害

を指します。

「お薬を飲んだらコミュニケーション能力が上がった!」
「お薬を飲んだら、相手の立場に立って物事を考えられるようになった!」

という事はなく、これらの中核症状に対してお薬を用いることはまずありません。

しかし、このような症状から二次的に

・イライラや攻撃性・衝動性、自傷など
・落ち込みや不安
・不眠や食欲低下

などが生じた場合は、この二次的な症状に対してはお薬の効果は期待できます。

アスペルガー症候群に対してのお薬の位置づけというのは、「二次的な症状に対して用いる」というものです。そのため、二次的な症状が少ない場合、お薬を必ずしも用いなくても良いのです。

アスペルガー症候群に対しての特効薬はないため、二次的な症状に対しては、どんなお薬でも用いられる可能性があります。アスペルガー症候群の二次症状に対して用いられるお薬について、代表的なものを紹介します。

Ⅰ.抗うつ剤

主に神経間のセロトニンなどのモノアミンの濃度を上げる事で、

・抗うつ作用(落ち込みを和らげる)
・抗不安作用(不安を和らげる)
・こだわりや強迫症状を改善する

などの効果が期待できます。気分が落ち着く事により攻撃性やイライラ・自傷の改善が得られることもあります。

SSRI:商品名ルボックス、デプロメール、パキシル、ジェイゾロフト、レクサプロ
SNRI:商品名サインバルタ、トレドミン
NaSSA:商品名リフレックス、レメロン

などがあります。

三環系抗うつ剤、四環系抗うつ剤といった古い抗うつ剤が用いられることもありますが、副作用の多さから使われる頻度は多くはありません。

Ⅱ.抗精神病薬

主にドーパミン受容体をブロックすることで、ドーパミンの作用を弱めるお薬です。本来は統合失調症や双極性障害に用いられています。統合失調症においては、ドーパミンをブロックする事により幻覚や妄想の改善に効果がある事が確認されており、また双極性障害の躁状態を落ち着かせる効果もあることから、興奮・易怒性などの改善にも効果を期待できます。

そのため、アスペルガー症候群においても幻覚や妄想、興奮などに用いられることがあります。

ちなみに抗精神病薬の中には、自閉症障害に対して唯一保険適応を持つ「オーラップ」というお薬があります。しかしオーラップは自閉症(自閉症スペクトラム障害)に対する特効薬ではありません。

オーラップもドーパミン遮断作用により、自閉症スペクトラム障害に伴う諸症状に効果があるだけです。しかし自閉症スペクトラム障害に保険適応を持っているというメリットは大きく、アスペルガー症候群をはじめとした自閉症スペクトラム障害に用いられることがあります。

代表的な抗精神病薬には

SDA:リスパダール(一般名リスペリドン)、インヴェガ(一般名パリペリドン)、ロナセン(一般名ブロナンセリン)、ルーラン(一般名ペロスピロン)
MARTA:ジプレキサ(一般名オランザピン)、セロクエル(一般名クエチアピン)
DSS:エビリファイ(一般名アリピプラゾール)

などがあります。

古い抗精神病薬である定型抗精神病薬もありますが(オーラップもここに含まれます)、副作用の多さから現在では用いられる頻度は少なくなっています。

Ⅲ.気分安定薬

気分安定薬は主に双極性障害(躁うつ病)の治療に用いられるお薬で、躁状態(興奮、気分高揚、易怒性)などの改善、および気分の波を抑えるといった効果を持ちます。

そのため、興奮、多動、攻撃性、衝動性などに用いられます。また感覚過敏に対して用いられることもあります。

気分安定薬は「抗てんかん薬」とも呼ばれており、てんかんを抑える作用もあります。アスペルガー症候群をはじめとした自閉症スペクトラム障害は、てんかんを合併することが多い事が知られているため、てんかん発作を抑える目的で投与されることもあります。

代表的な気分安定薬には、

・リーマス(一般名:リチウム)
・デパケン(一般名:バルプロ酸)
・ラミクタール(一般名:ラモトリギン)
・テグレトール(一般名:カルバマゼピン)

などがあります。

また、てんかんにしか適応を持たないお薬ですが、

・トピナ(一般名:トピラマート)

も使われる事があります。

5.これからの開発が期待されるお薬

アスペルガー症候群の治療薬として、現在注目されているお薬があります。それは「オキシトシン」という物質です。

アスペルガー症候群の原因。アスペルガー症候群はなぜ生じるのか」という記事でも紹介したように、アスペルガー症候群をはじめとした自閉症スペクトラム障害の方は血中のオキシトシン濃度の低下が認められると報告されています。

オキシトシンは社会性な活動に関連している物質だと考えられているため、オキシトシンの投与によってアスペルガー症候群の中核症状である社会性の障害が改善することが期待されています。

オキシトシンは、上記で紹介したような二次的な症状に対して用いる補助的なお薬ではなく、中核症状に対する治療薬になります。中核症状に効果を示すお薬は今までなかったため、現在オキシトシンは非常に注目されており、大学や研究機関において研究が進められています。

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