エビリファイは痩せるのか|機序から考えるエビリファイと体重の関係

エビリファイは痩せるのか

先日、若い女性の患者さんから「先生、エビリファイを飲むと痩せるって聞いたんですけど本当ですか?」と聞かれました。

精神科のお薬は太りやすいものが多いため、「太らないお薬」「太りにくいお薬」というのは若い患者さんや女性患者さんに人気があります。「痩せるお薬」ともなれば尚更かもしれません。

確かにエビリファイの副作用一覧を見ると「体重減少」の記載はあります。しかし、私の実感としてはエビリファイで痩せるという印象はありません。エビリファイが太りにくいお薬であることは確かですが、統計的に見れば「他の薬よりは太りにくいけども、若干太るお薬」といったところでしょう。

エビリファイは服薬すると痩せるのでしょうか。また痩せるのだとしたらどうして痩せるのでしょうか。実際にエビリファイで痩せた人はいるのでしょうか。

エビリファイの作用機序や実際に投与している印象などから、エビリファイと体重減少について考えてみます。

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1.エビリファイと体重減少の報告について

結論から言うと、エビリファイで痩せるという事はほとんど経験しません。体重は変わらないか若干増えるというケースがほとんどです。少なくとも痩せ薬として使えるようなお薬ではありません。

その理由を説明していきます。

まずは発売元の大塚製薬が公表しているエビリファイの副作用の報告を見てみましょう。体重に関する副作用の発生頻度については次のように記載があります。

【体重増加】

統合失調症:2.96%、双極性障害:9.38%、うつ病・うつ状態:10.06%

【体重減少】

統合失調症:9.15%、双極性障害:1.56%、うつ病・うつ状態:0.21%

エビリファイは、

・統合失調症
・双極性障害における躁症状の改善
・うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)

の3つの疾患に使用する事ができ、疾患ごとの副作用の頻度が報告されています。

疾患によって発生する副作用の頻度は異なるのですが、これは疾患によって脳の状態が違うため、エビリファイの作用の仕方も異なってくるからだと考えられます。

この報告を見ると、確かに「体重減少」の報告はあります。

しかし見て頂ければ分かるように、統合失調症では体重減少は認めるものの、双極性障害やうつ病・うつ状態では稀です。双極性障害、うつ病・うつ状態に体重減少の報告がないわけではありませんが、体重増加の頻度の方が圧倒的に多いのです。

なぜこのような副作用の発生のしかたをするのかは、はっきりとは分かっていません。しかし、少なくともここから言える事は、

体重減少は、統合失調症にエビリファイを使用した時には生じる可能性がある。しかし、双極性障害、うつ病・うつ状態への使用で体重が減少することは稀である。

という事です。

冒頭の質問をされた女性はうつ病でしたので、体重減少を起こす可能性は極めて低いと言えるでしょう。

2.臨床で感じるエビリファイと体重の関係

では実際に診療でエビリファイを使用していて「エビリファイって痩せるよね」「エビリファイで痩せた人が多い」という感覚はあるのでしょうか。

これは私の個人的な見解が含まれてしまいますが、エビリファイで痩せるという印象はほとんど持っていません。

他の抗精神病薬(例えばジプレキサやセロクエルなど)のように、劇的に体重が増えてしまうという事は確かにありませんが、別に痩せるという事もありません。エビリファイを使用した場合、体重はほとんど変わらないか若干太るという印象です。

統合失調症においてもそれは同じです。統合失調症の方にエビリファイを投与した場合も、体重はほぼ変わらないか若干太るという事がほとんどであり、統合失調症にエビリファイを使うと痩せるという印象はありません。

ただし、エビリファイは抗精神病薬(統合失調症の治療薬)の中で一番新しいお薬であるため、他の抗精神病薬からエビリファイに切り替えるというケースがよくあります。この場合、他の抗精神病薬の方がエビリファイよりも相対的に体重増加の程度が強いため、切り替えた事で体重増加の程度が弱まり、体重が減少するということはよく経験します。

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3.エビリファイは痩せるのか

副作用の報告、そして実際に使用している印象をお話しました。今回の主題である「エビリファイは痩せるのか?」という事についてのまとめと私が思うところをお話します。

Ⅰ.痩せる可能性はあるが頻度は少なく、多少であろう

「エビリファイで痩せる可能性があるのか?」

と問われれば、「可能性はあるが稀であろう」というのが答えになります。

確かに副作用の報告に「体重減少」がありますから、体重が減少する可能性は0ではありません。しかし体重が増加する可能性もそれ以上にあるため、総合的に見れば体重増加に向かう可能性の方が高いでしょう。双極性障害やうつ病・うつ状態に使用する場合はなおさらです。

「〇〇というお薬は痩せるらしい」という噂が出回ると、一部の若い女性が「痩せ薬」としてダイエット目的で入手しようとすることがあります。しかしエビリファイは、痩せ薬などとして使えるものではありません。むしろ若干太ってしまう可能性の方が高いですからね。

Ⅱ.吐き気などの副作用で一時的に痩せることはある

エビリファイで体重が減少した例を思い出してみると、

・吐き気や食欲低下で一時的に痩せた
・下痢で一時的に痩せた

という症例が時々ありました。

特にエビリファイの服薬を始めたばかりの時は、また身体がエビリファイに慣れていないため、吐き気や食欲不振・下痢といった副作用が生じる事があります。吐き気や下痢が続けば当然体重は落ちます。これらの副作用は間接的に体重減少を引き起こすでしょう。

エビリファイの副作用の報告を見ても、

【悪心】

統合失調症:3.63%、双極性障害:8.85%、うつ病・うつ状態:4.42%

【嘔吐】

統合失調症:2.29%、双極性障害:7.81%、うつ病・うつ状態:2.85%

【下痢】

統合失調症:0.54%、双極性障害:3.13%、うつ病・うつ状態:1.14%

【腹部不快感】

統合失調症:3.10%、双極性障害:1.04%、うつ病・うつ状態:1.50%

と体重減少に間接的にかかわりそうな副作用の報告は少なくありません。体重減は、これらの副作用の2次的な結果として生じることはあります。

しかしこれらの副作用は、1~2週間様子を見れば自然と改善することがほとんどであるため、これらによって生じた体重減少も長続きはしません。これらの副作用が落ち着けば、体重も元に戻っていくと考えられます。

Ⅲ.他剤からの切り替えで痩せた

統合失調症の治療薬である抗精神病薬は、基本的には太りやすいものがほとんどです。この中ではエビリファイは太りにくい方に属します。

抗精神病薬の中でもMARTAと呼ばれるお薬(ジプレキサやセロクエルなど)は、特に太りやすいと言われています。こういったお薬からエビリファイに切り替えた時、相対的に体重増加の程度が弱まるため、見かけ上体重減少に向かうことがあります。

これを「エビリファイで痩せた!」と判断した、というケースもあると感じます。

臨床でエビリファイを使用して患者さんが「痩せました!」という場合、ほとんどがこのケースであると感じます。これはエビリファイで痩せたというより、以前に使っていたお薬の体重増加の副作用が取れた、という事です。

ちなみに双極性障害に使われる気分安定薬は、体重をそこまで増やさないものが多いため、双極性障害の方が気分安定薬からエビリファイに切り替えても、体重が相対的に減るということはあまりありません。

うつ病やうつ状態においては、エビリファイは補助的に用いられ元々服薬していた抗うつ剤に追加されることが多いため、これも相対的に体重が減る方向には向かいません。

他剤に切り替えることで体重が落ちてきたという事は、特に統合失調症の場合は、十分に可能性のある事です。

まとめ

エビリファイには体重減少の報告があるが、実際には痩せることはほとんどなく、体重は変わらないか若干増えることがほとんどです。

統合失調症への使用であれば、時に体重が減少することもありますが、双極性障害やうつ病・うつ状態への使用で体重が落ちるのは極めて稀です。

統合失調症で体重が落ちた場合も、他剤から切り替えたために相対的に見て体重増加の程度が弱まって痩せたように見えているだけであったり、一時的な食欲不振・下痢などの副作用で二次的に体重が落ちていたりという可能性もあり、純粋にエビリファイの作用によって体重が減少することは多くはありません。

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